獄門島
評判
獄門島の評価:
4.02/5点 レビュー 99件。 S ランク
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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全16件 1〜16 1/1ページ
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獄門島の評価:
4.02/5点 レビュー 99件。 S ランク
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ジャンルは探偵もの×怪奇小説。名探偵・金田一耕助が、復員船で亡くなった戦友から「自分の故郷である獄門島に赴き、3人の妹たちを殺人の魔の手から守ってくれ」との遺言を賜った。しかし、妹たちが次々と殺されてしまう。どうも、芭蕉の俳句の見立て通りに殺される殺人事件らしいと後で知る。
が、耕助の推理には真相解明の爽快感よりも、疑問が残る部分が大きい。しかも、第一の殺人事件の犯人と犯行手順を述べるだけで、第二、第三の殺人事件に関してはまったく解説がない。第一の事件も、「こじつけ」が多い。第一の事件では、懸想している恋人から手紙があって、呼び出された長女。が、その手紙を三女が横取りしてしまう。耕助の推理では、その時点で犯人側は手筈が狂い、犯行が不可能にならざるを得ないのだが。
第二、第三の殺人事件も、耕助は説明を省略している始末だ。特に、第三の殺人事件では、被害者本人も「次は自分が殺される」と理解しており、警察の保護を求めている。が、警察はなぜか彼女にボディガードすらつけず、一人きりにしてしまう。通常であれば、彼女は警察の完全な保護下にあり、もはや犯行は不可能になっているはず。クローズドサークルのような、外界と隔絶した孤島ではない。実際に、耕助の旧知の警部が捜査陣を引き連れてやってきている。犯人はその点に対する思索も手当もまったくしない。さも当たり前のように「彼女には警察の警護もつかないし、彼女自身の意志で殺されやすい環境に身を置いてくれるはず」と考える。ミステリー小説としてどうなのだろう?
狂人となって不可解な行動を取る父親、獄門島に逃げ込んできた海賊風の男、腹に一物ありそうな好色の懸想人、ヒロインの怪しげな行動。何か事件の手がかりを掴んでいるらしい住職。確かに謎とスリルは幾分か散りばめているし、島の駐在に疑われて留置場に入れられてしまう名探偵など、コミカルなシーンも用意されている。しかし、肝心の殺人事件が、箸にも棒にも掛からぬ。耕助自身が作中で、「単純な犯行が得てしてトリックになり得る」と言う趣旨の発言をしている。犯人側はあまりにもお粗末な犯行計画を立てており、いつ破綻をきたしてもおかしくない。現実に起こり得るのかなと訝しんでしまう。探偵小説として成り立たない。犯人側の動機も薄弱。故人の遺志を継ぐというのは日本人的な考えだが、作中でも述べられている通り、いまだ占領軍に占領されている時代、やはり気がおかしくなっていたのではないか。が、そのように説明されても、小説として評価しがたいのだ。
横溝作品はこれ以外に読んだことがないのだが、『獄門島』を傑作と評価するのはなぜだろうか。私はミステリーの歴史に疎いのでわからない。そこでchatGPTに聞いてみた。
文学的・演出的な完成度の高さや日本的な怪奇と土俗性の融合らしい。時代遅れの因習、排他的な人間関係、陰湿な村社会の空気と言う「孤島の閉鎖性と不気味さ」。圧倒的な舞台設定が魅力。しかし、おそらくAIは映画やドラマから引っ張ってきたのだと思う(笑)。原作の小説には、そこまでの舞台設定はない。押し並べて、登場人物はみな親切なのだ。ゆいいつ、被害者となった三姉妹は少し浮世離れしており、お客であり初対面の耕助に対しても「いい男でないわね」などと軽口を聞くぐらい。排他的な人間関係なるものは、そこまで本作からは見られない。実際、漁師らがみなで捜索のお手伝いをしたり、床屋に集まって談笑したり、耕助に対しても「俺っちは天下の名探偵と仲がいいんやぞ」と威張るお調子者キャラも。AIは間違っている。実際に、作中でも「獄門島と言う名前から、もっと陰湿で気味が悪いところと勘違いしていた」と耕助は語っている。耕助は、お客として下にも置かぬ待遇を受けておるのだ。強調するが、現実の獄門島に閉鎖性も不気味さもそれほど詰まっていない。
AIは、和風怪奇と論理的な本格推理の融合とも。が、俳句による見立て=和風怪奇というのは、ちょっとね。そもそも俳諧というのは庶民の娯楽であるのだ。サラリーマン川柳というのもある。呪いや風習の存在も和風怪奇らしいが、獄門島という名前は見掛け倒しであり、呪いの「の」の字すら本作には出てこない。これまた、映画やドラマの影響か。
「戦争が悪いんや。戦争がみんな狂わせたんや」という耕助のセリフが、当時の読者の深い共感と戦争批判が込められているとAIは言う。が、これも間違い。原作小説にそんなセリフはない。そもそも丁寧な標準語をどもりながら話す耕助が、なぜ関西弁なんや!おそらく、戦後民主主義者らが勝手に戦争批判を付け足したのだと思う。原作に戦争批判などない。1946年の戦後初期に起こった事件(というか、執筆時期)なので、「戦争は大変だったな」という登場人物のセリフはあるけど、「日本全国民がみな大変な目にあったね」という話。特に、獄門島が戦争被害を受けたという話ではない。
chatGPTの『獄門島』の評価は、映画やドラマによって脚色されたものにかなり影響を受けている。私以上のミステリー小説の読み手であるレビュアーの猛者たちが高評価をされるのも、昔に観た映画やドラマの影響を受けているのか。あるいは、傑作と言う評判に、多分に押し流されてしまっているのではと推察される。
耕助もそこまで動いていない。常人離れした洞察力、推理力を見せつけてどうだ!という場面が少ない。第三の殺人事件に対する備えなど、手抜かりも多い。横溝は名探偵・金田一耕助の魅力を描き切れていない。探偵ものとしても失敗している。最近の作家の作品と比べて、文章表現は豊かだと思うので、それなりに筆力はある作家なのだろう。文章は下手ではないが、推理小説としても、ミステリー小説としても低評価をつけざるをえない。☆1つとします。