■スポンサードリンク
(短編集)
しらみつぶしの時計
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
しらみつぶしの時計の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.24pt |
■スポンサードリンク
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全17件 1~17 1/1ページ
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
90年代後半から十年余りの間に発表されたノンシリーズの短編集。 探偵法月綸太郎は登場しないが、法月林太郎は登場するwww 10篇の短篇すべてが★★★なのが申し訳ないのだが、ことミステリのジャンルにおいて、コンスタントに★★★つをキープするのは、至難の業なのではないかと拝察する。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
タイトルになってる、しらみつぶしの時計が一番好きでした。ま~良く出来ています。よく、こんなこと考えられるなと。真剣に読んだので頭を使いましたが、なるほど!そして、最後はこう来ましたか!ただ、そのほかはあまり覚えていません・・・。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
「使用中」 途中からは犯人視点の倒叙ものと思わせておいて、さらにひねって、別の人物の疑心暗鬼によるリドルストーリーになっている。前半の推理作家と編集者の打ち合わせの内容がうまくラストのオチにつながっている。 「ダブル・プレイ」 見知らぬ人物から持ち込まれた交換殺人の顛末が語られていくが、思わぬ逆転劇が起こり、予期せぬカラクリが明らかになる。しかし、最後のある人物の独白にある「濡れ衣」はうまく行くとは思えない。 「素人芸」 浪費癖のある妻が腹話術の人形を買ったことにかっとなり、殺してしまったと思った夫。せんさく好きな隣人の通報で警察官がやってきて、死体の隠ぺいに四苦八苦する様子がコミカルに描かれている。 警察官が腹話術を見せてくれなんて言うはずがないと思ったが、意外なオチがあって納得した。 「盗まれた手紙」 2つの南京錠を使うことによって、他人には開封不可能な箱に入っていた手紙が盗まれた謎。極秘の手紙のやり取りの方法も面白いが、盗難の方法が論理的パズルになっている。私はこの方法を完全に見抜くことができ、謎解きの快感を味わった。 「イン・メモリアム」 存命中の作家の追悼文を書くことが会員となる条件の<評議会>のことを書いた文章。作中に出てくる「土方勇三」という人物は検索したところ、架空の人物のようだ。 作家先生であればいかにもやりそうな奇妙なことを想像した奇想か。 「猫の巡礼」 飼い猫の「猫の巡礼」の様子が切々と描かれている。実際にそんなことがあるのかと思い、検索したところ、「猫の巡礼」は見つからず、存在しない模様。 実際にはないものを、真に迫っていかにもあるかのように語ったほら話か。 「四色問題」 戦隊物ヒロインの女優がナイフで刺された後に、手首を切って死んだ謎。特殊な専門知識を使った面白いダイイングメッセージだが、ちょっと凝りすぎ。 「幽霊をやとった女」 妻を寝取られて、ルンペンに落ちぶれたニューヨークの元私立探偵が主人公。 ハードボイルドタッチの文章の中に、意外なカラクリを暴く本格的な内容を持った作品。 「しらみつぶしの時計」 論理的ではあるが、ちょっとわかりにくいし、中身にも疑問。最後の2つの内でどちらかを決めるロジックがあるのだろうかと思っていたが、最後はそうきたかという感じ。 (ネタバレ) ・「1440個の時計は、たったひとつの例外もなく、すべて異なった時刻に合わせてある」という書き方だと、午前と午後のペアは「デジタル/デジタル」の場合しか駄目なように感じる。「デジタル(午前)/アナログ(午後)」の場合は、同じ時刻を指しているのでは?「時計は1分ずつずらして設定したが、『正しい時刻を示している時計』と同じ時刻を指して時計はない」とすべきでは? ・12のブロックに分けた後、それぞれのブロックについて並べ替える必要などない。ブロックごとにデジタルの時計の数と、アナログの時計の数を数えて、2つの数が違うブロックに正しい時刻の時計は含まれている。そのブロックのデジタルの時計だけを並べ替えて、12時間違いの時刻を指している時計を見つければ良い。こちらの方が簡単だし、速い。 「トゥ・オブ・アス」 男の思い込みから生まれた勘違いによる事件だと思わせておいて、最後まで読むと、さらなる勘違いが秘められていることがわかる。読者をミスリードする叙述トリックも複数盛り込まれている。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
時計を探す話の結末が気になって購入。 しかし表題作以外の話のほうが面白かった。 矛盾がないというか、かなりよく考えている作者だなと思う。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
非シリーズものを集めた短編集。1998年から2008年発表の作品が中心とのこと。 収録作品: 使用中、ダブル・プレイ、素人芸、盗まれた手紙、イン・メモリアム、猫の巡礼、四色問題、幽霊をやとった女、しらみつぶしの時計、トゥ・オブ・アス いくつかの作品は別のアンソロジーなどで読了済みなのはわかっていたのだが、未読の作品もあるので購入したもの。 感想は、、、作品間のギャップが大きくて右往左往した感じであります。 いわゆる異色作(「猫の巡礼」はその最右翼)が多くて、個人的には入れ込みにくいというのもあるが、本格的なパズラーかと思って読み進めていたらそうではなかったりとか、ちょっと合いませんでした。 その中でも「四色問題」は冒頭でいきなり吹き出した。巻末の本人解説にもあるが、これは都築道夫の「退職刑事」シリーズの贋作というやつですわ。すごく楽しい。四色といわれて森博嗣の某ミステリも思い出したがそれは関係なかった。 個人的興味からじっくり読みこんでしまったのは「盗まれた手紙」。途中まで読んだあたりで情報処理技術をやったことがある人はふと思うでしょう、これ何かの実用技術に似てないか?と。そう、ここで扱われているのは暗号理論でいうところの中間者攻撃そのものである。なんともマニアックなネタを下敷きにしたものだと感心するやらあきれるやら。 表題作「しらみつぶしの時計」もかなり強引な問題解法を手掛けているし(最後のびっくりポイントはおいておいても)、意外に著者はこのあたりの技術に通じているのかもしれないという気がしました。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
表題作の「しらみつぶしの時計」は、なかなかの力作。 外界からシャットアウトされている施設の中にいる主人公が、1分ずつ時刻のずれている1440個の時計から、唯一の正確な時刻を刻んでいる時計を、論理的な思考で選び出すゲーム。 本当に力作だと思うが、論理的な頭を持っていない私には、楽しい話ではない。でも、パズルが好きな人にとっては、こたえられない作品かも。 しかしまあ、デジタル時計とランドルト環(視力検査に使われる「C」のマーク)をながめながら、こんな話を思いつくとはミステリ作家も本当に大変な職業だと思う。 その他「使用中」は、変則的な密室で、下ネタも入っていて、結構、笑えます。 特筆すべきは「猫の巡礼」。富士山のふもとに猫の聖地があって、野良猫はもちろん、飼い猫も一度は行った方が良いという話。もちろん、架空の話だが、妙に納得する場面もある。猫好きな人は、ぜひ、読んでみてください。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
単純に面白かったです。 場面への感情移入はありませんでしたが、正解を言い当てるまでのスピード感や理論が面白かったです。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
ノンシリーズの短編集。表題作の解決に至る経緯は、途中までは確かにロジックなのだが、最後の選択はそう言えるのか。「四色問題」はダイイングメッセージものだが、ありがちな感想として、死者の最後のアイディアにしてはちょっと凝りすぎかと思う。「幽霊をやとった女」を読む限り、この著者はハードボイルドの方に適性があるように感じる。「猫の巡礼」は謎もオチもないホラ話なので、ミステリを期待している人は読み飛ばした方が良い。全体的にはバラエティ豊かな小品で楽しめたが、やはりシリーズの新作が読みたいところ。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
他の方のレビューにもあるが、本書の収録作には、既にアンソロジー等に収録されてきた作品が複数含まれている。 私も、「既に読んた作品が多いし、ハードカバーで買うのはやめて文庫化を待とう」と考えた。 ようやく読んだが、もっと早く手にとっても良かったな、と少し後悔。 個人的には『猫の巡礼』には非常に感心した。 ありそうで無かった発想(と言うより奇想)に基づく小説だが、その奇想を、実際に愛猫家である作者の経験をふまえたディティールが支えている。 「奇想をディティールで支える」という意味からは、ミステリ小説と同じ手法で書かれており、戦前の探偵小説誌に掲載されていた奇妙な小説と同じようなテイストである。 都筑道夫作品へのオマージュあるいはパスティーシュも、いずれも良くできている。 霧舎巧の『新本格もどき』のような出来の悪い“小説もどき”とは、作家の格の違い、あるいは広義のミステリ全般への愛情の深さの違いが感じられた。 ただ、『四色問題』における退職刑事の設定、「昔硬骨、今恍惚」は原作どおりと言えばそうなのだが、若い読者は、このさらに元ネタである有吉佐和子の『恍惚の人』がベストセラーとなり映画化された時代など知らないはずだ。 「恍惚の退職刑事」というフレーズは、今でも通用するのだろうか? | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
法月探偵の出てこない短編作品を纏めた作品。収録作はここ10年くらいで各媒体に掲載されたもので、中には3ページほどの超ショートストーリーや全くミステリーでも何でもない猫の話などバラエティに富んでいる。そのため、純粋な法月氏の本格推理短編を求めるとやや肩すかしだが、本格推理というよりはブラックなオチのサスペンスミステリーとして楽しめる。表題作のしらみつぶしの時計は頭の体操的な完全頭脳ゲーム小説。最後のトゥーオブアスは長編の二の悲劇のオリジナル版なので、まだ二の悲劇を読んでいない人にはかなりプロットのネタばれになるのでその点を留意されたい。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
2008年に出た単行本の文庫化。 1998年からの十年間に発表されたノン・シリーズの短編10本が収められている。個別の作品は雑誌発表後、『大密室』『不透明な殺人』『不条理な殺人』などのアンソロジーにも入っているので、ひとによってはほとんど読んだことがあるなんて可能性も。私も半分くらいは既読だった。 おさめられているのは、「使用中」「ダブル・プレイ」「素人芸」「盗まれた手紙」「イン・メモリアル」「猫の巡礼」「四色問題」「幽霊をやとった女」「しらみつぶしの時計」「トゥ・オブ・アス」。 きらりとアイデアの光る秀作が多い。 「猫の巡礼」が変わっている。愛猫家は読まない方がいいかも。 表題作「しらみつぶしの時計」は、恐ろしいほど論理的ではあるが、面白いかどうかと言われるとなあ。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
■「しらみつぶしの時計」 1分ずつ異なり、全部で24時間を表す、 1440個の時計が配置された回廊。 「きみ」は6時間で、正しい時を示す 時計を見つけ出さなくてはならない……。 臨場感溢れる、二人称の語りによるタイムリミット・サスペンス。 唯一の正答が論理的に導き出せる、と保証されていることから、 難癖をつけるクレーマー的詭弁を封じ込めるようにゲームが構成 されているはずだ、というメタ視点に基づいた推理がなされます。 アナログ時計とデジタル時計が混在する 時計群から、選び出すべき組み合わせとは? そして、ゲームを象徴する図形だという ランドルト環(視力検査の「C」)の意味とは? トンチの効いたラストが秀逸です。 ■「盗まれた手紙」 二つの南京錠によって保護された頑丈な鉄の 状箱から、いかにして手紙を抜き取ったのか? ポオの小説に同名のものがありますが、本作は ホルヘ・ルイス・ボルヘス「死とコンパス」の前日 譚を意図して書かれたもの。 「死とコンパス」は、《後期クイーン的問題》を凝縮したような作品です が、本作は、それとは真逆なパズル的興味が前面に出されています。 探偵レンロットは、事件を連立方程式に見立て、二つ の南京錠と鉄の状箱からなる多項式を導き出します。 ■「イン・メモリアム」 デイヴィッド・イーリイ「ヨットクラブ」に倣い、 「謎の結社」を題材とした、ショート・ショート。 ■「猫の巡礼」 年をとった猫は、前半生のけがれを祓うため、足腰が しっかりしているうちに、猫の聖地へ巡礼に赴くらしい……。 心温まる、非ミステリな幻想譚です。 ■「幽霊をやとった女」 都筑道夫作品のパスティーシュ。 お定まりのシュチュエーションのもと、外套という小道具を巧みに 使うことで、往年のハードボイルドのテイストが再現されてます。 ■「使用中」 駅ビル内の喫茶店で、「密室」テーマの短篇について 打ち合わせをしていた中堅推理小説家と新人編集者。 急に便意を催した二人は、駆け込んだトイレで、 それぞれ思いもかけない災難に遭うことになる。 一人はトイレの個室で殺され、もう一人は、同じ個室の中で、死体と いっしょに閉じ込められ、出るに出られない状況に追いこまれたのだ……。 スタンリイ・エリン「決断の時」を下敷きにした作品。 下ネタ入りのドタバタ劇ですが、「密室の中に被害者以外の第三者が 閉じ込められる」という状況設定を巧みにリドル・ストーリーに処理した 快作です。 ■「ダブル・プレイ」 妻に対し、憎しみを募らせていた省平は、 バッティング・センターで知り合った男に、 交換殺人を持ちかけられる……。 『法月綸太郎の新冒険』所収の 「リターン・ザ・ギフト」の姉妹編。 交換殺人が、より狡猾な犯罪計画の 一部にすぎなかったことが、結末で 明らかになります。 真相を暗示する、タイトルもお洒落。 ■「素人芸」 妻が、無断で高価な腹話術の人形を買ったことに 腹を立てた保雄は、衝動的に妻を殺害してしまう。 その騒ぎを聞いた隣人が警察に通報し、 二人の警官がやって来るのだが……。 ロバート・ブロック「最後の演技」のテイストを目指したという作品。 腹話術の人形といった小道具で、ホラー的雰囲気を 醸成したかったのでしょうが、生々しく殺伐とした 夫婦関係とのギャップが激しく、成功しているとは 言いがたいです。 ただ、そのちぐはぐな感じが逆におもしろく、 脱力する結末も含め、味わい深い一品です。 ■「四色問題」 戦隊物のヒロインだった女性が、腹を刺されて殺された。 死の直前、なぜか被害者は左手にはめていた腕時計をはずし、 そこにナイフで、アルファベットのXのような傷を刻んだという……。 都筑道夫《退職刑事》シリーズのパスティーシュ。 判じ物的なダイイング・メッセージに、退職刑事の 昔の事件の回想がからむという趣向は、シリーズ 後期のパターンに倣ったものだそうです。 タイトルの「四色問題」は、あらゆる地図で隣りあった国どうしがおなじ色に ならないよう、四色で塗り分けることができるかどうかを数学的に証明する 問題のことで、それ自体は、本作の事件となんの関係もありません。 「色」に関しては、被害者が演じていた戦隊物と、彼女が以前 就いていた、ある職業の専門知識に着目する必要があります。 ■「トゥ・オブ・アス」 『二の悲劇』の原型となったデモ・バージョン。 短篇であるため、トリックの仕組みは長篇版よりもクリアでわかりやすいですが、 二人称叙述の挿入という作品の主題と連関した趣向がなく、人物の掘り下げも 浅いため、物語としては、どうしても奥行きや深みに乏しいものとなっています。 ちなみに、タイトルの「トゥ・オブ・アス」は、『ふたたび赤い悪夢』、 『二の悲劇』の作中に出てくる映画の題名であり、作者にとっては、 二人の従兄弟の合作者エラリー・クイーンを含意する言葉だそうです。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
■「しらみつぶしの時計」 1分ずつ異なり、全部で24時間を表す、 1440個の時計が配置された回廊。 「きみ」は6時間で、正しい時を示す 時計を見つけ出さなくてはならない……。 臨場感溢れる、二人称の語りによるタイムリミット・サスペンス。 唯一の正答が論理的に導き出せる、と保証されていることから、 難癖をつけるクレーマー的詭弁を封じ込めるようにゲームが構成 されているはずだ、というメタ視点に基づいた推理がなされます。 アナログ時計とデジタル時計が混在する 時計群から、選び出すべき組み合わせとは? そして、ゲームを象徴する図形だという ランドルト環(視力検査の「C」)の意味とは? トンチの効いたラストが秀逸です。 ■「盗まれた手紙」 二つの南京錠によって保護された頑丈な鉄の 状箱から、いかにして手紙を抜き取ったのか? ポオの小説に同名のものがありますが、本作は ホルヘ・ルイス・ボルヘス「死とコンパス」の前日 譚を意図して書かれたもの。 「死とコンパス」は、《後期クイーン的問題》を凝縮したような作品です が、本作は、それとは真逆なパズル的興味が前面に出されています。 探偵レンロットは、事件を連立方程式に見立て、二つ の南京錠と鉄の状箱からなる多項式を導き出します。 ■「イン・メモリアム」 デイヴィッド・イーリイ「ヨットクラブ」に倣い、 「謎の結社」を題材とした、ショート・ショート。 ■「猫の巡礼」 年をとった猫は、前半生のけがれを祓うため、足腰が しっかりしているうちに、猫の聖地へ巡礼に赴くらしい……。 心温まる、非ミステリな幻想譚です。 ■「幽霊をやとった女」 都筑道夫作品のパスティーシュ。 お定まりのシュチュエーションのもと、外套という小道具を巧みに 使うことで、往年のハードボイルドのテイストが再現されてます。 ■「使用中」 駅ビル内の喫茶店で、「密室」テーマの短篇について 打ち合わせをしていた中堅推理小説家と新人編集者。 急に便意を催した二人は、駆け込んだトイレで、 それぞれ思いもかけない災難に遭うことになる。 一人はトイレの個室で殺され、もう一人は、同じ個室の中で、死体と いっしょに閉じ込められ、出るに出られない状況に追いこまれたのだ……。 スタンリイ・エリン「決断の時」を下敷きにした作品。 下ネタ入りのドタバタ劇ですが、「密室の中に被害者以外の第三者が 閉じ込められる」という状況設定を巧みにリドル・ストーリーに処理した 快作です。 ■「ダブル・プレイ」 妻に対し、憎しみを募らせていた省平は、 バッティング・センターで知り合った男に、 交換殺人を持ちかけられる……。 『法月綸太郎の新冒険』所収の 「リターン・ザ・ギフト」の姉妹編。 交換殺人が、より狡猾な犯罪計画の 一部にすぎなかったことが、結末で 明らかになります。 真相を暗示する、タイトルもお洒落。 ■「素人芸」 妻が、無断で高価な腹話術の人形を買ったことに 腹を立てた保雄は、衝動的に妻を殺害してしまう。 その騒ぎを聞いた隣人が警察に通報し、 二人の警官がやって来るのだが……。 ロバート・ブロック「最後の演技」のテイストを目指したという作品。 腹話術の人形といった小道具で、ホラー的雰囲気を 醸成したかったのでしょうが、生々しく殺伐とした 夫婦関係とのギャップが激しく、成功しているとは 言いがたいです。 ただ、そのちぐはぐな感じが逆におもしろく、 脱力する結末も含め、味わい深い一品です。 ■「四色問題」 戦隊物のヒロインだった女性が、腹を刺されて殺された。 死の直前、なぜか被害者は左手にはめていた腕時計をはずし、 そこにナイフで、アルファベットのXのような傷を刻んだという……。 都筑道夫《退職刑事》シリーズのパスティーシュ。 判じ物的なダイイング・メッセージに、退職刑事の 昔の事件の回想がからむという趣向は、シリーズ 後期のパターンに倣ったものだそうです。 タイトルの「四色問題」は、あらゆる地図で隣りあった国どうしがおなじ色に ならないよう、四色で塗り分けることができるかどうかを数学的に証明する 問題のことで、それ自体は、本作の事件となんの関係もありません。 「色」に関しては、被害者が演じていた戦隊物と、彼女が以前 就いていた、ある職業の専門知識に着目する必要があります。 ■「トゥ・オブ・アス」 『二の悲劇』の原型となったデモ・バージョン。 短篇であるため、トリックの仕組みは長篇版よりもクリアでわかりやすいですが、 二人称叙述の挿入という作品の主題と連関した趣向がなく、人物の掘り下げも 浅いため、物語としては、どうしても奥行きや深みに乏しいものとなっています。 ちなみに、タイトルの「トゥ・オブ・アス」は、『ふたたび赤い悪夢』、 『二の悲劇』の作中に出てくる映画の題名であり、作者にとっては、 二人の従兄弟の合作者エラリー・クイーンを含意する言葉だそうです。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
収録作は、進行中の犯罪を描いたもの(倒叙もの?)の「使用中」「ダブルプレー」「素人芸」、パスティッシュの「盗まれた手紙」「四色問題」「幽霊をやとった女」、あえて分類するなら"奇妙な味"というしかない「イン・メモリアム」「猫の巡礼」、パズル小説(?)の「しらみつぶしの時計」、それにボーナストラックの「トゥ・オブ・アス」(『二の悲劇』の短編版)の全10篇。 法月綸太郎ものでは愚直なまでに本格ミステリの定型を意識している感じですが、非シリーズものを集めたこの短編集はバラエティに富んだ内容になっています。非シリーズものの短編集というと以前に『パズル崩壊』が出ていますが、『パズル崩壊』で顕著だった尖鋭的な面は本短編集では見られません。ああいう尖がった部分は、評論のほうで発散できているのかもしれませんね。 著者があとがきで「会心の作」といっている「使用中」が集中のベストだと思いますが、他のほとんどの作品も水準以上といっていいでしょう。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
収録作は、進行中の犯罪を描いたもの(倒叙もの?)の「使用中」「ダブルプレー」「素人芸」、パスティッシュの「盗まれた手紙」「四色問題」「幽霊をやとった女」、あえて分類するなら"奇妙な味"というしかない「イン・メモリアム」「猫の巡礼」、パズル小説(?)の「しらみつぶしの時計」、それにボーナストラックの「トゥ・オブ・アス」(『二の悲劇』の短編版)の全10篇。 法月綸太郎ものでは愚直なまでに本格ミステリの定型を意識している感じですが、非シリーズものを集めたこの短編集はバラエティに富んだ内容になっています。非シリーズものの短編集というと以前に『パズル崩壊』が出ていますが、『パズル崩壊』で顕著だった尖鋭的な面は本短編集では見られません。ああいう尖がった部分は、評論のほうで発散できているのかもしれませんね。 著者があとがきで「会心の作」といっている「使用中」が集中のベストだと思いますが、他のほとんどの作品も水準以上といっていいでしょう。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
処女作から読み続けてきた。「密閉教室」。反吐が出るほど嫌いだった。 しかし、どうだ。 情緒不安定な(それが魅力の)「雪密室」や「誰彼」をはじめ、「一の悲劇」以降の快進撃。そして、本書。 揺るがない、手堅い。 そして何よりも面白い。 これまで読み手を選ぶかのような話が多かった(と思う)が、本書は読者を選ばない。誰が読んでも、充実の時間を過ごすことができるだろう。 もはや、大家の風格。 すごいぞ!法月!!(年上だけど) | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
処女作から読み続けてきた。「密閉教室」。反吐が出るほど嫌いだった。 しかし、どうだ。 情緒不安定な(それが魅力の)「雪密室」や「誰彼」をはじめ、「一の悲劇」以降の快進撃。そして、本書。 揺るがない、手堅い。 そして何よりも面白い。 これまで読み手を選ぶかのような話が多かった(と思う)が、本書は読者を選ばない。誰が読んでも、充実の時間を過ごすことができるだろう。 もはや、大家の風格。 すごいぞ!法月!!(年上だけど) | ||||
| ||||
|
■スポンサードリンク
|
|
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!