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千年の黙 異本源氏物語



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【この小説が収録されている参考書籍】
千年の黙―異本源氏物語
千年の黙 異本源氏物語 (創元推理文庫)

千年の黙 異本源氏物語の評価: 10.00/10点 レビュー 1件。 Aランク
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(10pt)

千年の黙 異本源氏物語の感想

面白い、上手い、兎に角凄い作品である。

構成は3部となっている。

物語のベースは 副題の通り、源氏物語にまつわる話である。

時代背景が平安時代の藤原道長台頭期で、主な登場人物は既に主要な貴族は粛清され藤原家内での共食い状態で、その上はうようよと次の政権を狙っている皇族がいるのみ。

そんな分かりにくい時代の説明から、下級貴族の式部がどうやって一番の主流派の彰子へ参内できたのかを、単なる源氏物語の説明ではなく 全体の雰囲気が味わえるようになっている。

第一部では市井で起こる事件(彰子の猫捜し)について、式部の慧眼で解き明かす過程で、彼女の推理、判断、観察力を表現し どのような人物が源氏物語を作ったのかを象徴させている。

そういった意味では、第一部は よくある歴史人情モノの様な雰囲気が漂っているが、2部に入ると立ち位置が市井から宮中に変わることで、雰囲気もガラッと変化する。

参内後、続々と源氏物語が発表されていくが、あるとき発表したはずの1帖が出回ってないことに気づく。それが単なるミスなのか、それとも意図されたことなのか。。。

「かかやく日の宮」という表題に源氏物語に知見が深い人であれば気づくかも知れない、ミッシングリングについての謎解きとなっている。

また、この藤原時代に敵対する源氏を主人公にしているわけは、道長との関係はと、ある様々な謎を、もって回った理屈でなく 素直な解釈から自然に解明している。

最後の第三部では、これまた良く知れた「雲隠れ」。

この帖、ある意味では 現代の全ての芸術においても最高傑作かも知れない。

というのも、当帖は光源氏が身罷る全54帖中の第41帖に当たる作品なのだが、題名だけしか存在しないのである。

物語に「文章がない」ということは、例えば音楽で言えば「無音」、絵画なら「白紙」、彫刻で言えば「石の塊」「丸太」、という超荒技である。

理由は、紛失したとも 読者の想像に任せる とも言われているが、まずもって前者であることはありえないであろう。

彼女は、その大技をこの処女作であり人生をかけた大作のクライマックスにもってきたのである。それだけでも、源氏物語が古今東西の文学と比較しても突出している証明になるのではないだろうか。

兎に角、複雑で難解な源氏物語をそれほどの知識がなくとも平易に理解できる様になっており、といってところどころに玄人好みするネタを仕込み無理なく解明していく、非常に素晴らしい作品である。  了

とも
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