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どきどきフェノメノン



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どきどきフェノメノンの評価: 2.00/10点 レビュー 1件。 Eランク
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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
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(2pt)

はた迷惑な恋物語

リケジョの恋の仕方教えます!
そんなキャッチフレーズが似合いそうな森博嗣流理系女子ラヴ・コメディーが本書。しかしここでいう「恋の仕方」とは恋の指南書という意味ではなく、理系女子はこんな感じに恋をしているのだと森氏独特の文体と思考で語られる。

窪居佳那は24歳のとある大学の博士課程の1年。別に男は欲しいと思わないのだが、容姿がいいのか、研究室のM1の後輩鷹野史哉と水谷浩樹の2人は何かと彼女に絡んでくる。それぞれアプローチの仕方は違うのだが。

鷹野は典型的な爽やか系男子でいわゆるモテるタイプ。しかし女っ気は本書を読む限り感じられず、何かと佳那に声を掛けたり、試験の手伝いを申し出たりする。

水谷はどちらかと云えばマイペースで無関心ぶりを装っているが、デフォルメした人形を愛し、佳那はどうもそれが自分をモデルにしているのではないかと疑っている。コンピュータの知識と技術が高いことが次第に解ってきて、それまで眼中になかった佳那は次第に関心を持つことになるのが、彼に関する展開は意外な方向へと進む。

また彼女の周りには友人で同じ剣道教室に通う、花屋で働く藤木美保に友人の家を泊まり渡って暮らしている武蔵坊という巨漢の修行僧(?)に公園で犬の銅像を愛でるホームレスの諸星勝徳。
これらの仲間が佳那に関わってそれぞれ独特な展開を見せる。

そんなリケジョの日常と恋、そして思考と妄想が語られる本書の内容は彼女の日常で起きるちょっとした事件や出来事が取り留めもなく起こって進む。

また恋の話は主人公の窪居佳那だけでない。彼女の友人藤木美保の恋バナも語られるのだ。

合コンで知り合った猪俣と矢崎という男性2人のアプローチを後輩の水谷を使って逃れる件にその事件をきっかけに美保が水谷に好意を抱き、剣道の相手をさせて、情熱的なラヴシーンに発展したりする―このシーンは傑作!―。

また森氏は大学をよく舞台にしているが、私自身も理系学生であったので所々にノスタルジイを感じてしまった。特に夜の研究室に美保を伴って訪れて、そこで佳那と美保、そして後輩の水谷と鷹野の4人で酒宴が催されるシーンなどは、自分も学祭で同じようなことがあっただけに胸に迫るものがあった。

と読んでいて覚えた既視感があった。これはもしかして森博嗣版ちびまる子ちゃんではないか?

窪居佳那の独特な思考と彼女が自分の生活を平穏無事に送らせるために数々の誘いを断るための工作が語られるわけだが、それは何とも拙いもので小学生の悪戯の域を出ない。そして必ずしもそれは成功するわけでなく、寧ろ失敗し、そして意外な展開を招く。

そして読み進むにつれてこの窪居佳那という女性を私は次第に嫌いになっていった。

なぜなら彼女は自分勝手で大した能力もないのに先輩面をし、そして非常に鈍感である。

上に書いたように彼女は自分の身に起きた事象について沈思黙考するのだが、これが非常に長い。長すぎる。

この非常に長い思考は例えば『東京大学物語』の主人公村上直樹のそれを彷彿とさせるが、森氏独特のダジャレがふんだんに盛り込まれており、単なる作者の悪乗りにしか思えない―中には「鯉の病」といった爆笑ネタもあったが―。

そして彼女が考える謎は一般人である我々にしてみれば簡単に解る事なのに、恋愛慣れ、世間ずれしていない彼女はその当たり前のことが解らないため、延々と思考し続けるのだ。読者はとうに答えが解っているのに、この窪居佳那という鈍感女のしょうもなくも不必要なまでに長い思考に付き合わされるもどかしさを何度も何度も強いられる。

特に志保と水谷の剣道シーンに隠された真相は正直終ってからすぐに解るのに、延々「水谷はどうして研究室に自分より早く戻ってくることができたか」と最後まで引っ張る。

酔っ払って正気を失って奇行に奔って素面に戻って後悔するわと理不尽極まりない。

何ともイタイ女性なのである―ところでなぜ森作品に登場する助教授(本書では現在の呼び方准教授になっているが)は押しなべていい男でモテるのだろう。准教授であった作者自身の願望か、もしくは本当にモテたのか―。

また彼女がシャンプーにナンバリングして毎日違うシャンプーを使っているが、これが全く設定に、彼女の性格付けに活かされない。最後の台詞、彼氏になった水谷用に男性用シャンプーも用意しておいてねもさほど気の利いた台詞とは思えない。

どうでもいい女の、どうでもいい勘違いとどうでもいい恋バナを読まされた、そんな読後感が残る作品だった。
この頃の森氏は本当に何を書いても許されたのだなぁ。

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Tetchy
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