工学部・水柿助教授の日常



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初公開日(参考)2000年11月
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長編小説

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工学部・水柿助教授の日常 (幻冬舎文庫)

2004年11月30日 工学部・水柿助教授の日常 (幻冬舎文庫)

水柿小次郎三十三歳。後に小説家となるが、いまはN大学工学部助教授。専門は建築学科の建築材料。よく独身と間違われるが、二歳年下のミステリィ好きの奥さんがいる。彼はいつしか自分の周囲のささやかな不思議を妻に披露するようになっていた。きょうもまた、あれが消え、これが不可解、そいつは変だ、誰か何とかしろ!と謎は謎を呼んで…。 (「BOOK」データベースより)




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工学部・水柿助教授の日常の総合評価:8.55/10点レビュー 20件。Dランク


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全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(3pt)

別題『すべてが森になる』

とある国立大学の工学部建築学科の、建築材料を専門としている、どっかで聞いたことのあるような水柿助教授が出くわす、日常の謎系のミステリ短編集。

「ブルマもハンバーガも居酒屋の梅干しで消えた鞄と博士たち」は水柿助教授が奥さんの須磨子さんとの会話、そして学会出席のために訪れた金沢で起きたある出来事について語るミステリである。

例えばまずブルマの謎は家の地区にある中学・高校一貫教育の私学、S女学園がこのたびブルマを廃止して短パンにしたことについて奥さんとの間に齟齬が生まれる話であり、ハンバーガの話は2つ買ったはずのハンバーガが家に帰るといつの間にか無くなっていたという謎、出張先の金沢で学生たちと入った居酒屋では呼んでもいないのに注文を取りに来る店員と逆に呼出ボタンを押したのになかなか店員が来ない奇妙な状況について語られ、梅干しは水柿助教授の上司、高山教授が昔ホテルで起こしたロビーに梅干しを散乱させた顛末が語られる。そして最後の消えた鞄は高山教授の鞄がホテルの部屋から忽然と姿を消した謎のことだ。

そのどれもがミステリの謎としては実に弱く、例えばブルマとハンバーガの件はミステリにもなっていないネタだ。

とまあ、実に散文的な話で、誰かの一人語りのような地の文からしてまだ当初は連作ミステリとして書かれることを想定していなかったようにも取れる内容だ。とりあえず書いてみて、また機会とネタがあれば続きを書いてみるか、そんな具合の、イントロダクション的作品。

第2話「ミステリィ・サークルもコンクリート試験体も海の藻屑と消えた笑えない津市の史的指摘」は水柿君がまだ三重県にあるM大学の助手だった頃の話で物語の舞台は題名にも謳われている津市である。

本作でも色んな謎となり得るエピソードが書き連ねてあるが、メインの謎は水柿君が修論のテーマにしていた鋼繊維補強コンクリートの試験体を使っての海水暴露実験がなぜ成功しなかったかというものだ。

海の近くに旧水門跡に置かれた試験体は嵐の日にそのまま海に流されてしまったが、大学の研究等の屋上にも置かれた100個もの試験体が無意味になるという事件が起こる。
その他学校の実験室の前にある空き地に突如現れたミステリィ・サークルの謎、はたまた好立地の水柿君の借家の家賃がなぜ破格に安かったのか、そんな大小、いや小さな謎が散りばめられている。

因みに本作のテーマは物理トリック、化学トリックとのこと。訊いてみれば他愛のないことだが、上の謎を提示された時に、この他愛のない真相に気付いた人はどれだけいるだろうかと森氏は投げかけている。
そうそう、酒豪の高山先生がいきなり生徒の目の前で自転車に乗ったまま消え失せたトリックはすぐに解りました。同じような風景を私も見たことがあるので。

はてさて困ったことにここに書かれているのは微罪や重罪にもなる犯罪の証拠だ。

しかし最後に森氏は書いている。あくまでも、これは小説なのだと。ウソつけ!

とここまではどうにかミステリ風味が施されていたが、次の「試験にまつわる封印その他もろもろを今さら蒸し返す行為の意義に関する事例報告及び考察(『これでも小説か』の疑問を抱えつつ)」にはそのミステリ風味すらなく、水柿君が試験担当になったそれらにまつわるエピソードが語られる。

試験と云っても色々ある。通常の中間・期末試験、センター試験、そして二次試験。大学側の人間である水柿君が体験したそれらの試験で割り触られる諸々の役割、担当についてのお話だ。
試験の監督官になった時は大勢の受験者が思っている以上にカンニングしている様子が手に取って解ること、大学入試の監督官は事前に予行演習があり、ありとあらゆることを想定してケーススタディが行われていること。しかしそれでも想定外の事態が起こること。
試験監督者には2種類あり、教室で問題用紙の配布と監視を行う役ともう1つは控室で待機し、いざというときに出向く役があること。
採点委員というのがあり、試験問題の解答を作ることが要請されたり、また受験者たちの回答用紙を採点するが、筆記問題では回答の妥当性について話し合ったりして配点を決めたりすること。
そして問題作成委員があり、試験問題を作る役割があること。これは6月から始まり、決して秘密厳守でいなければならないこと、等々、我々一般人の多くが体験する大学受験、定期試験にまつわる、学校側のエピソードのそれらは、誰もが受ける側として経験しているのに試験を出す側のことは解らないものだなぁと案外面白い。
特に奇妙な受験者の話はどこまでが本当なのかと目を疑うものもあった(試験中に暑いといって服を脱ぎ出し、下着になって受けようとするのを止められて別室で受けたのは作戦だろうか。また着ぐるみを着ないと受験できない受験者はカンニングを隠すためなのでは?などと考えるのも面白い。私が()の中でこのように語るのは本作が故意にこのように演出している影響なのかもしれない)。

他には案外カンニングが成されていることに驚く。大学の先生というのはいい加減で、試験中に自分の論文を書いたりする先生や助手もいるようだが、自分の大学にもそんな人はいたかしらと思い出してみれば、確かにひたすら読書をしている教授がいたような記憶がある。堂々とノートと教科書を持ち込んでいい試験もあったりするらしいが自分の時はなかったと思う。

あとは現国の長文読解の問題の長文に妙に読み耽ってしまう、なんてあるあるネタは思わず同意してしまう。私は志賀直哉の「出来事」がいまだに印象に残っている。

だがしかし、全然ミステリがない。ほとんどエッセイである。「これでも小説か」と思わず自分で書くほどに何やら奇妙な話である。

更にミステリ風味は薄まっていく。次の「若い水柿君の悩みとかよりも客観的なノスタルジィあるいは今さら理解するビニル袋の望遠だよ」では若かりし頃の水柿君と妻須磨子との新婚時の話が出てくる。

今の妻須磨子さんが7番目に付き合った女性であること、それまでに付き合った女性のエピソードも語られる。その中の1人は大手貴金属商の娘で大金持ち。それがS&Mシリーズの西之園萌絵のモデルらしい。
更に合コンのエピソードにそれにまつわる大学の研究室のおかしな面々の話、そして須磨子との新婚の話が語られる。これらはもはや水柿君=森氏の懐かし話である。ミステリとしては先輩の鞄が合コンの夜、大学付近の歩道の真ん中になぜか置かれていたという謎が提示されるが、これが実話らしく、結局その原因は解らない。

最後の「世界食べ歩きとか世界不思議発見とかボルトと机と上履きでゴー(タイトル短くしてくれって言われちゃった)」では森氏、もとい水柿君の出張にまつわるエピソードに触れられている。

海外でも模型屋によることは欠かせなかったり、自分のお土産はすぐ開封するのに、妻への土産は1週間も放置したままだったり(こんなことあり得る?)、はたまた学校にまつわる全国の不思議事が紹介されたりしているが、もはや雑談と化している。


これら5話を通じて思うのは本書は森氏による、ちょっとしたミステリ風味を加えた自伝的小説なのか(これは反語表現である)。某国立大学工学部建築学科の水柿助教授はそのまま森氏に当て嵌まりそうな人物像である。

何しろ専門が建築材料であり、模型工作を趣味とし、読書とイラストを趣味にしている奥さん須磨子さんがおり、更に後々ミステリ作家になってデビューすることまでが1話目から語られるのだ。
これほど作者自身と類似した設定の人物は他にないのではないか。そして話が進むごとにミステリ風味も薄まり、どんどん水柿君と森氏が同化していく。

つまり本書は自分の教授生活の周囲で起きる出来事や見聞きしたエピソードの類を盛り込み、時々それらのエピソードに日常の謎系ミステリの味付けを加えた小説なのだ。

しかしその内容は、思いつくまま気の向くまま、取り留めのない日々雑感と云った趣で、建築学科の助教授水柿君の日常に起こっていることにミステリの種は結構あるんじゃないの?と書き連ねている体の話である。

しかしその傾向は正直第2話までで、第3話からはどんどん内容が水柿君の内側に、過去のエピソードに潜っていく。それらはミステリでは無くなり、本当に水柿助教授の日常話になってくるのだ。それは作者も確信的で最終話ではミステリィと見せかけてどんどんミステリィ風味を薄めていく、そういう「どんでん返し」を仕掛けていると述べている。

そして作中作者は事あるごとに「これは小説だ」、「これはフィクションだ」と述べているが、嘘つきが「嘘はついていない」というのと同様の信憑性しかない(と作者自身も書いていたような)。
つまり本当のことを語りつつ、それらの中には未だ事項になっていない軽犯罪、微罪、そして重犯罪になり得る危うさを孕んでいるからこそ、そのように作り話だと主張しているようにも取れる。その割に固有名詞が多く、イニシャルもほとんど本当の場所が特定できるほど安易な物であるのだが。そのあまりの自由闊達ぶりに正直苦情など来ていないのだろうかと思ったり。特に津市に関する記述はここまでこき下ろして大丈夫なのだろうかと無用の心配すらしてしまう。

やはりこれは水柿君の日常としながら、これらは全て同じN大学の建築学科の教授である作者自身が助手、助教授時代に経験した大学生活の思い出話、エピソード集なのだろう。従って水柿君の日常は「すべてが森になる」のだ。

ファンならば水柿君を通して森氏の過去が垣間見れるエピソードを愉しめるだろう。
しかしそうでない者にとっては文体、構成含め、単なる作家の悪乗りにしか取れない。この時期はS&Mシリーズで確固たるファン層を築き、そして続くVシリーズも好調で、おまけにブログも閲覧者数が凄かったから、何を書いても許されるだろう、何を書いても売れるだろうと思っていたのではないか。しかし書く方も書く方だが、それを許し、出版した幻冬舎の商業主義丸出し感にも腹が立つ。

既に本書において三部作構想も書かれており、恐らくは冗談だったのだろうが、それは形になっている。つまりこの後2つも続編が書かれたということはこの作風が世間に受け入れられたことだろう。商業ベースで成り立ったということである。

そう考えると作品の質よりも信奉者を作れば、その作者の全てを知りたいと思う読者が日本にはいることを示している。斯く云う私も注目作家の作品は全て買う、読む気質で、無論続編の2作も購入済みなので何も云えない立場なのだが。

小説ともエッセイとも判断しかねる奇妙な本書。従って読み方についてはかなり戸惑ったが、このテイストであることが解った今、次作からはそれなりに愉しめるかもしれない。
あくまでそれなりに。


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No.19:
(5pt)

理系(文系も)には最高に面白い!

【購入の経緯】
Kindleの日替わりセールで安かったので(^^;

【良かった点・理解できた点】
〇理系ならではの微妙なギャグが山盛りで楽しい
〇文系(?)というか日本語の面白さを突くネタも多い
〇ミステリーどころか、小説としても成り立ってないような気もしますが、それでも気にしない
〇以下、面白かった文のごく一部

・「鉄の融解温度は」という問いに80℃と答えるような人間は、他の99問が正解でも0点にすべきである
・「全身を襲う」というが、つま先や耳たぶで悲しみは味わったことがない
・頭で覚えられない分だけ、常に辞書や資料を参考にする人は無能ではない
・国語の先生の作文を見せてもらったことがあるか?
・青春の1ページのようだが、全部で何ページあるんだ?
・「作家」とは何を作るのか? 家か?
・太陽が爆発したら人類はみんな死ぬが、太陽が爆発しなくてもみんな死ぬ
・キツネにつままれた気分だが、実際につままれたらもっと驚く。まずキツネの手がモノをつままれるようにできていない
・あの人は腰が低い(足が短く重心が低いという意味ではない)

【イマイチだった点】
〇ちゃんとした(?)小説、ミステリー書と勘違いして買うと大変なことになるかも

【総合】
息抜きには最高でした。続編も買ってしまいました(^^)
工学部・水柿助教授の日常Amazon書評・レビュー:工学部・水柿助教授の日常より
4344000455
No.18:
(4pt)

ほんわかした気持ちになれる

他の森博嗣作品に比べると劇的な展開はありませんが、日々少しずつ読む分にはちょうど良い作品です。
若干地の文が鬱陶しいと思わないと言うと嘘になりますが、そこは人それぞれなのかなと思います。
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4344000455
No.17:
(4pt)

外見がきれい

古本とは思えぬほど外見がきれいです。
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No.16:
(5pt)

愉快

こんなに読んでいて笑みがこぼれる作品は久々ですね。
森博嗣氏に見えている素敵な世界。
ユーモアに溢れ、圧倒的に自由な思考。
楽しい読書時間でした。
工学部・水柿助教授の日常Amazon書評・レビュー:工学部・水柿助教授の日常より
4344000455
No.15:
(5pt)

好きです

最近はエッセイなど、小説以外の執筆が多いが、こんな作品も森博嗣以外には書くことはできないんではないか。ファンからはとても楽しい作品として支持されると思う。
工学部・水柿助教授の日常Amazon書評・レビュー:工学部・水柿助教授の日常より
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