(短編集)

スカイ・イクリプス



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新装版-スカイ・イクリプス-Sky Eclipse (中公文庫 も 25-20)

2023年03月23日 新装版-スカイ・イクリプス-Sky Eclipse (中公文庫 も 25-20)

空には言葉がない。言葉は地上のためのものだからー整備工のササクラはクサナギ機のエンジンを調整し、情報部のカイは墜落事故の会見を準備する。そして彼女は病院へカンナミを訪ねるが。子供たちの飛ぶ空を見上げ、地上で暮らす大人たちの八つの物語。シリーズ最初で最後の短編集。(「BOOK」データベースより)




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スカイ・イクリプスの総合評価:9.27/10点レビュー 30件。Cランク


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同じ空を飛び、同じ夢を見たようだ

完結した『スカイ・クロラ』シリーズでは語られなかったエピソードを描いた短編集。

「ジャイロスコープ」はクサナギが既にエースパイロットから会社の宣伝塔になった頃の話だ。
飛行機乗りとして空を飛ぶことが楽しくてしょうがないクサナギに逢える一編だ。それはパイロットとして最高の技術を持つクサナギと整備士としてより速く、性能の良い機体を作り上げることを突き詰めるササクラ2人だけの心の交流の物語だ。それはお互い飛行技術と整備技術と畑は違えど戦闘機散香という共通のアイテムを通じて分かち合える最高レベルでの相通ずるもの分かち合う対話だ。
そして何よりも本作はクサナギからのササクラへのプレゼントであることが解る。
整備士はパイロットが安全に飛べるために機体の整備に余念がないが、ササクラは整備士でありながら飛行機の性能を上げることにもまた貪欲だ。それは整備士としてはある意味冒険である。飛行機が平常通りに安全に飛ぶように整備するのが要求されるのに対し、自分が整備した飛行機が自分の腕と知識でどこまで速く飛べるか手を加えることは失敗するかもしれない実験を伴うからだ。
しかしクサナギはそれをササクラに許し、そして通常ならば遠く離れた地での空中戦でしかササクラの改造の成果が解らないが、PR撮影のために飛行場近くでその成果を披露できる機会を存分に利用して彼女の飛行技術を全て駆使してまでササクラに自身の整備した散香の飛行具合を披露するのだ。初めて自分が仕上げた機体が最高の技術を持つパイロットによって最高の飛行をする様子を見られたササクラの感慨はいかほどだっただろうか。
またPR撮影のために営業スマイルとはいえ、笑顔を見せられるクサナギが新鮮だ。その後どんどん絶望へと沈み、営業スマイルすら見せなくなる彼女の生末を知っているだけに、その笑顔が眩しく感じる。

次の「ナイン・ライブス」はクサナギの許を去り、後に大敵となるティーチャの物語だ。しかし物語と云っても特段ストーリーがあるわけではない。彼が赤ん坊を認知し、扶養手当が認められるところが語られる。そして彼にはモナミという同棲している女性がいるが、もちろんそれまでのシリーズを読んだ者ならその赤ん坊が彼とモナミとの間にできた子でないことは判っている。そう、ここではティーチャとクサナギとの間に生まれた子がどのように育てられたかが判るのだ。
そして最後彼が長じてまで空を飛ぶ理由が語られる。彼は単に命の取り合いをしたい訳ではない。ただ空で戯れたい、自由に空を飛んで遊びたいから飛ぶのだ。そこに命のやり取りが介在しているだけなのだ。そして遊びに行くからこそ死んでもしょうがないかと思えるのだ。なぜなら存分に楽しませてくれたのだから。

「ワニング・ムーン」は空中戦で被弾し、海上へ不時着したパイロットのエピソード。
正直よく判らない物語だ。海のミステリに連なる作品なのか。

「スピッツ・ファイア」は軍人たち御用達のフーコの店での一幕か。
女性はクサナギであることは判るが、男性は誰だろうか?カンナミ・ユーヒチかクリタ・ジンロウか。
とにかくこの2人はフーコの店の前に座っている老人から神の話を聞いて、なぜか基地への道中に神に追いかけられているかのような錯覚を覚える。それはいつもは上空で重力から解放された彼らが地上で飛行機ほどではないが、スピードの出る乗り物に乗っているときに感じる重力の重みなのかもしれない。

「ハート・ドレイン」はクサナギを会社の宣伝塔に仕立て上げたカイが初めてクサナギと邂逅する話だ。
最年少で軍の情報部の階段を上る上昇志向の強いカイの物語。彼女がクサナギと出会ったきっかけの物語だが、出世街道を上るカイの第一歩の物語だ。

「アース・ボーン」はある意味『スカイ・クロラ』シリーズの影の主役かもしれないフーコのエピソードだ。
歴代のパイロットと浮名を流したフーコ。
彼女の新たな門出に乾杯。

シリーズ第1作の謎が解かれるのが「ドール・グローリィ」。
本作はこれまで曖昧になっていたことのほとんどを補完する作品だと云えるだろう。
この言葉でこれまでモヤモヤしていたことが全て判明する。
しかしこのことで再び疑問が生じる。
2つの噂が証明され、そして新たな2つの疑問が生まれた短編だった。

その2つの疑問のうちの1つの回答が得られるのが最後の短編「スカイ・アッシュ」だ。
明確に書かれていないが、クサナギ・スイトの退院後のその後を描いた作品だ。


『スカイ・クロラ』本編では語られなかったエピソードを集めた短編集。その中にはシリーズの内容を補完する物もあれば、他愛のない日常を切り取ったスナップ写真のような作品もある。

そう各編で語られるのは起承転結のない日常風景だ。いわば日記のようなものだ。
しかし登場人物たちの日常を描くことでシリーズには書かれなかった部分が徐々に明らかになってくる。そしてそれまで曖昧なままで閉じられていたシリーズの謎がほとんど解かれることになる、重要な短編集ではある。

一方で飛行機乗りしか判らないようなリアルな描写もある。

例えば空を飛ぶとき、重力から解放されている彼らは少し酩酊状態にある。従って地上に降りて重力を感じるようになると現実感が起こり、そしてもし仲間が亡くなっていたりすると重い失望感に襲われていく。

またパイロットは地上ではケンカしないと述べる者もいるが、これは嘘だ。血気盛んなパイロットは映画でも殴り合いのケンカを繰り広げているではないか。永遠の若さと命を持つキルドレだからこその心情だろう。彼はその永遠の子供であることに絶望しており、唯一死ねる場所、空での交戦を楽しんでいる。それは彼ら彼女らにとってケンカではなく、ゲームであり、ダンスなのだ。
そう命の取り合いや争いをしている感覚はない。ただ単純に戯れているだけだ。
そしてその結果命を落とそうが悔いはない。いや寧ろ死ねるからこそ空を飛ぶことを愛するのだ。

従って空では自分たちが行っている空中戦が命の取り合いだと彼らは思っていない。しかし地上でリアルに人を撃ち殺すと自分が殺人を犯したと暗鬱になる。人を殺すという意味では同じなのに空と地上とでは全く異なる。
それは空では戦闘機という機体を介しての殺人であるのに対し、地上での殺人は生命そのものと相対するからだろう。これはキルドレだけでなく、飛行機乗り全てに共通する感覚なのかもしれない。

あと興味深かったのが整備士ササクラの心情が垣間見れたことだ。パイロットから絶大な信頼を受ける腕を持った整備士のササクラもまた影の主役と云える人物だろう。

彼だけがエース・パイロットのクサナギの散香を整備することができることを知らされる。またそれは自分が整備した機体が戻ってくる確率が高いことを意味する。
丹念に整備した戦闘機が必ずしも無事に生還するかは解らない。どれだけ手を加えても戻ってこなかったら無になるからこそ帰還の確率が高いエース・パイロットの機体の整備や改造は実に遣り甲斐がある仕事であることが解る。

しかしPR撮影に臨むクサナギに眼帯を付けた方が宣伝効果が高いだろうと思ったササクラはエヴァンゲリオンの綾波レイのファンなのだろうか?

さて最初私は本書を『スカイ・クロラ』シリーズを補完する短編集だと書いたが、読み続けるにつれて感じたのは森氏が発見したお話ではないだろうかということだ。

シリーズは完結したが彼の中でクサナギ・スイト、ササクラ、ティーチャ、カンナミ・ユーヒチらは生きており、彼らの語られなかった物語を発見したのだ。そしてそれをここに綴ったのではないだろうか。

正直、中には書かれなくてもよかった話もある。

ただ後半はシリーズの後日譚だ。フーコのその後。成長したクサナギ・スイトの異父妹ミズキのその後。そしてクサナギのその後の物語。

率直に云えば本編を補完するにはこの最後の3編だけがあればいいのではないか。いや「ドール・グローリィ」と「スカイ・アッシュ」2編だけで本編の登場人物たちの謎は氷解する。

森氏が代表作だと意識している『スカイ・クロラ』シリーズだと述べていることは既に知られている。つまりシリーズを補完する2編以外の、それぞれの登場人物の生活の点描や本編で一行、一文だけ書かれた何気ないエピソードについて膨らませて書いたのは作者自身が抱いたこの世界から離れがたい名残惜しさだからではないだろうか。

最後の短編「スカイ・アッシュ」で再会したクサナギとフーコがお互い呟く。
夢みたいだ、夢のようだという言葉はこのシリーズそのものについて作者が抱いている感慨ではないか。

飛行機好きの趣味を思う存分、自分の美意識の中で書き、そして最後まで書けたこと自体に対する思いがまさに「夢のよう」であること。

そして森氏の多くのシリーズ作品では他作品へのリンクが見られるがこの『スカイ・クロラ』シリーズは永遠の子供キルドレという設定ゆえか、全く独立したシリーズである。つまりこのシリーズの物語そのものが作者が見た夢そのものであったのではないか。

独特の浮遊感と力の抜けた、敢えて足さない文章で浮世離れした感のある登場人物たちで織り成されたこのシリーズそのものが常に夢見心地だったように思う。

本書の表紙の色は真っ黒だ。それは星一つない夜空を示しているかのようだ。
夜の訪れは一日の終わりを指す。夢のようなシリーズだっただけにその終わりは夜空が相応しいだろう。

読者も作者もそして登場人物たちも同じ空を飛び、同じ夢を見たようなシリーズだった。

▼以下、ネタバレ感想

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No.29:
(5pt)

僕とは誰か? シリーズ全体考察

スカイ・クロラシリーズ全てを読むと浮かんでくるのが「“僕“とは誰か?」という疑問。
ネット上にはいろいろ考察が上がっているが、自分なりの解釈を。

以下ネタバレ注意。

<時系列/一人称は誰か>
① ナ・バ・テア(僕=クサナギ)
② ダウン・ツ・ヘブン(僕=クサナギ)
③ フラッタ・リンツ・フライ(僕=クリタ)
④ クレィドゥ・ザ・スカイ(僕=クサナギベースにカンナミが混ざる)
⑤ スカイ・クロラ(僕=カンナミ)
⑥ スカイ・イクリプス

<クサナギ/カンナミの人格>
・クサナギ=カンナミ。カンナミはクサナギの中に生まれた別人格。
・カンナミはキルドレの特性を背景に、少しずつクサナギの中に生まれ始めていた(ダウン・ツ・ヘブン)。
・カンナミの人格がクサナギの中で大きく占めていった(クレイドゥ・ザ・スカイ)。
・クサナギがクリタを殺害したことにより、カンナミの人格がクサナギの中で確立した(クレィドウ・エピローグ)。
・カンナミの人格が主人格のクサナギを抹消。カンナミが主人格となる(スカイ・クロラ)。
・治療を経てカンナミは消え(灰になり)、クサナギだけの人格に戻る(スカイ・イクリプス/スカイ・アッシュ)。
・二重人格の間、クサナギは自分の中の別人格であるカンナミを認識している。
・二重人格の間、カンナミは元々の主人格であるクサナギを認識していない。

<周りの対応>
・スカイ・クロラでは、ササクラとトキノは、クサナギが二重人格であることを知らされており、ある程度使い分けて対応している。(お抱え整備士と同室のパイロットという立場から、事前に通達があったと推測)
・基地の他の人々は、クサナギ二重人格説は噂で聞いた程度である。そのため基本カンナミの存在は認識しておらず、クサナギとして接している。(カンナミ自身は、カンナミの時にクサナギと呼ばれても、脳内でカンナミに自動変換しているため齟齬は生まれない)
・基地の外の人(フーコたち)は、クサナギが二重人格であることを知らない/気づいていない。

<全体の解釈>
記憶があいまいになる、名前が覚えられない、時間経過の認識が甘いといったキルドレの特性も加わり、スカイ・クロラで書かれている全ての事柄が実際に起きたこととは限らない、というのが大前提にあるかと思われる。更に言うと、自分が感じていること、思っていることの全てを他者に伝えることは不可能であるため、書かれていることの全てが客観的事実と一致するとは限らない。(と、ここまで言うと小説とはいったい…という話にもなってしまうが、森氏はそういう考え方がベースにあると、一ファンの自分は考えている)
つまり「一人の人間の中で人格が入れ替わること」と「実際に起きたかどうか不確かなこと」が同時に描かれているので、一見つじつまが合わないような箇所が出てきている。

森博嗣の作品では、“多重(二重)人格者の世界”が多く描かれている。本編も例外ではなかったと思われる。むしろ一人の人間に複数の人格が宿る背景や経過を表現するために、このスカイ・クロラシリーズを書いたのではないかとすら思える。

ダウン・ツ・ヘブンで、クサナギがササクラにハイタッチをした瞬間、クサナギはヘブン(大人の世界)へ、ダウンした(落ちた)。つまりここから、クサナギは精神的な面で大人になることを選んだことになる。そこからクサナギの中で、子供(=キルドレ)であり続けることの整合性が取れなくなり、カンナミという子供のままの別人格が、大人のクサナギの中に生まれた。
何故カンナミが男性だったかというと、クサナギが妊娠・出産という子供にとっては不必要な経験をしたことが背景にある。男の子のカンナミは、“子供”というモチーフに最適であった。……と、推測。

スカイ・クロラシリーズは、森博嗣作品の中で一番好きな作品です。何回も読み込み、ネットの考察も読みあさり、この解釈にいたりしました。読者のモヤモヤが晴れるきっかけのひとつになれば幸い!
スカイ・イクリプスAmazon書評・レビュー:スカイ・イクリプスより
4120039447
No.28:
(5pt)

面白いです。

シリーズ全編通して繋がっていく伏線と、繋がらないミステリーな部分が完結まで早く読みたいと、読む速度とページをめくる速度を上げていきます。 好きな作者さんという事もありますが、一度はアクロバット飛行のレシプロに乗ってみたいと思うはずです。
スカイ・イクリプスAmazon書評・レビュー:スカイ・イクリプスより
4120039447
No.27:
(5pt)

スカイクロラシリーズの解答集※ネタバレ注意

このレビュー、凄いネタバレが含まれてますので読む際には要注意

これは言ってみればスカイクロラシリーズの後日談ですね
というか事実上の解答集
これは最高のネタバレというか、まあスカイクロラシリーズのミステリの答えそのものです
これを読めば謎が全部解けるでしょう

というかスカイクロラシリーズって難解なミステリーとされてますけど
ぶっちゃけ
「スカイクロラは全部自分がカンナミと思い込んだクサナギの妄想(夢)である」
この1点さえ抑えていれば実は全然難しくないですよ
この1点さえ分かればあとはスラスラ分かります
そんな難しい作品じゃないですよ

とまあミステリ関連はここまでにしといて
このスカイ・イクリプスは
それまでの登場人物達を書いた短編集なのだがかなりお気に入り
僕はやっぱりクサナギとササクラのコンビ好きだなー(笑)
扶養手当を申請して夜早くに帰りたいのに遅くなって子供に会えないティーチャもなんだか可笑しくて可愛い(笑)
あーやっぱり普通のオッさんなんだなー
スカイ・イクリプスAmazon書評・レビュー:スカイ・イクリプスより
4120039447
No.26:
(5pt)

最後の2行が

三人称で書かれた地の文は、本当にあったできごとであると解釈していいのでしょうか。
そうすると本編の各巻それぞれの小さなエピソードが、クサナギのどっち側で起こっていることか線引できる。(気がする)
この本が出たあとでの、私の一番の謎は(謎のままでいいのですが)、カンナミが初めて出現したときにクサナギに語った彼の見る夢。
なぜ、この時点でこの夢を見ることができる?
やっぱり、このスカイ・イクリプスの最後の2行で良いなと思う。
スカイ・イクリプスAmazon書評・レビュー:スカイ・イクリプスより
4120039447
No.25:
(5pt)

買えて良かった。

田舎だとなかなか揃わないのでポチりました。買えて良かったです。
スカイ・イクリプスAmazon書評・レビュー:スカイ・イクリプスより
4120039447



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