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血の葬送曲



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【この小説が収録されている参考書籍】
血の葬送曲 (角川文庫)

血の葬送曲の評価: 8.00/10点 レビュー 1件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点8.00pt

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全1件 1~1 1/1ページ
No.1:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

戦争の傷痕と恐怖政治。血の凍る恐怖小説である

イギリスの二人の合作者によるデビュー作。第二次大戦から6年後、スターリンによる恐怖政治時代のレニングラードを舞台に、いつ粛正の対象になるかという不安をかかえながらも難事件の解明に邁進する刑事の苦悩に満ちた捜査を描いた歴史警察ミステリーである。
吹雪のレニングラード郊外の線路上に整然と並べられた5人の惨殺死体が発見された。遺体はすべて顔の皮膚をはぎ取られ、歯を砕かれ、喉にガラス器具が差し込まれていたのだが、それぞれに異なる衣装を着せられていた。あまりにも奇怪な状況に、事件を担当する人民警察のロッセル警部補は頭を悩ませたのだが、病理医の話から身元解明の手がかりをつかんだ。かすかな手がかりをもとに身元を判明させてきたロッセルは、被害者の間にありえない共通点を発見し驚愕する。さらに、被害者の一人がスターリンの恐怖政治の手先・国家保安省の職員だったこともあって、捜査を担当する人民警察官たちには陰に陽に厳しい圧力がかけられたのだった。
レニングラード包囲戦の傷痕も癒えていない街、いつ、だれが逮捕・追放されるかも分からない密告社会という重苦しい時代に、それでも捜査を続けようとする主人公・ロッセル警部補だが、自身もかつて国家保安省に逮捕・拷問されて左手の指を失い、将来を嘱望されていたバイオリンの道を絶たれたという経歴の持ち主であり、作品全体が異常な恐怖感に包まれている。それは、最後に事件の動機や犯人が判明しても解消されることはない。
それでも、捜査プロセス、事件の謎解き、伏線の張り方と回収、キャラクター設定が巧みで第一級の警察ミステリーだと言える。
「チャイルド44」、「ゴーリキー・パーク」などが楽しめた方、北欧警察ミステリーのファンの方にはオススメする。

iisan
927253Y1

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