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墜ちていく僕たち



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墜ちていく僕たちの評価: 1.00/10点 レビュー 1件。 Fランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点1.00pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(1pt)

これを商業ベースで出したのが凄い

これは奇妙なインスタントラーメンに纏わる奇妙な男女のお話である。

表題作はモラトリアムな生活を送っている大学生相沢愛樹とその先輩小林が相沢の部屋にあったインスタントラーメンを食べることで突如女性に変身してしまう話。

次の「舞い上がる俺たち」は表題作が表ならば裏に当たる話。同人マンガを描いている水星とそれを手伝っている桃木の女性2人がこれまた水星の戸棚の奥にあったインスタントラーメンを食べることで今度は男に成り代わってしまう。

「どうしようもない私たち」の語り手はなんと死者だ。

続く「どうしたの、君たち」は写真を趣味にする孤独な大学生が主人公。

最後の「そこはかとなく怪しい人たち」の主人公は小説家。

冒頭にも書いたように連作短編集のような体裁を持った短編集だが、共通しているのは食べると性別が入れ替わるという不思議な効用のあるインスタントラーメンというアイテムだけだ。
ただだからといって男女のジェンダーの在り様とかそもそも男とは?女とは?といった大上段に構えたような性差論が繰り広げられるわけではなく、全て当事者の一人称叙述で森氏独特のくだらない独り言のような話し方で物語の顛末が語られる。そう、云うなればVシリーズの香具山紫子の独り言が全5編に亘って繰り広げられるとでも云った方が解りやすいだろうか。

1編目は大学生の男2人。

2編目は同人マンガ誌を発行している女性2人。

3編目は会社員の男女2人。

4編目は隣の大学生の日常を観察する大学生。

5編目はヴィジュアル系バンドに熱を挙げる女性小説家。

正直なんだかよく解らないと云うのが率直な感想だ。

なんだかよく解らないと云うのは結末はあるもののそこにオチが特段あるわけではない。

本書はヤマ無し、オチ無し、意味無しの三拍子揃った「やおい本」なのだ。

全編に共通しているのは彼ら彼女らがあるインスタントラーメンを食べると性別が変わることだ。

また一応各話には繋がりがあり、例えば3編目に登場する小さな出版社に勤める塚本がチェックしている原稿は2話目の「舞い上がる俺たち」そのものであり、4話目の主人公細田が執着する大学生は1話目の主人公相沢愛樹で、表題作で小林先輩が中絶したその後が描かれている。

しかしただそれだけだ。ただただ思いつくままに筆を走らせて思いのままにダラダラと文章を連ねてみただけの作品である。

その中で一つ気になったのは「どうしようもない私たち」の最後の一行だ。これは全国の和子さんに失礼だろう。謝罪すべきだ。

とこのように大学助教授という閉鎖的な社会での職業柄か、どうも森氏の作品には世間的な一般常識を踏まえない、道徳観に欠ける部分が見られて思わず眉を潜めてしまう。
他の作品では飲酒運転を平気で作中人物がするなど、今ならば校閲の時点で修正が求められるであろう表現が多々ある。

そして本書の内容はまさにそれが悪い方向に出ているのではないだろうか。
とにかく思いつくまま書いてみました。但しヤマもオチも意味もありません。付いてこられる人だけ付いてきて下さいと云わんばかりの内容だ。

これをまた商業ベースで出した集英社もまたスゴイ。ということはそれを買った私もまたスゴイということか。

タイトル同様、墜ちきるところまで墜ちたのが本書なのか。ここまで墜ちれば、後は浮上するのみである。次作以降に期待しよう。


▼以下、ネタバレ感想

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Tetchy
WHOKS60S

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