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魔女 エリカ&パトリック事件簿



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魔女 エリカ&パトリック事件簿の評価: 8.00/10点 レビュー 1件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点8.00pt

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全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(8pt)

異なるものへの恐怖は時代も文化も超越し、暴力へと変化する

本国スウェーデンを始め北欧では大人気の「エリカ&パトリック事件簿」シリーズの第10作(表4解説)。30年前と同じ状況で発生した幼女殺害事件を巡る警察ミステリーであり、異端の者、弱者に対する暴力、恐怖を嫌悪に変換せずにはいられない人間の醜さと悲しさを描いた社会派ミステリーでもある。
フィエルバッカ郊外の農場で、その家の4歳の少女・ネーアが行方不明になり、警察、地元住民の捜索により死体で発見されたのだが、そこは30年前に同じ農場の4歳の娘・ステラが惨殺死体で発見された場所だった。ステラ事件では、ステラのベビーシッターを頼まれていた当時13歳の少女二人が取り調べられ、当初は犯行を自白したのだが後に否認、未成年だったこともあり逮捕されることはなかった。二人の少女のうちマリーはハリウッド女優として成功し、新たな映画撮影のためにフィエルバッカに戻って来たばかりだった。もう一人の少女・ヘレンは父親の友人だった年上の軍人と結婚し、地元で園芸店を営んでいた。ネーアとステラ、二つの事件の類似性に悩まされながらパトリックたちは30年前の事件も掘り起こして捜査を進めたのだが真相解明は遅々として進まなかった。そんな中、シリア難民の犯行だと断言するものたちが現われ、難民収容所が放火される事件が発生し、捜査はさらに混迷した。
幼女殺害事件の犯人探しが本筋だが、現在の事件だけでなく、30年前の事件の解明まで必要になりストーリーはどんどん複雑になる。それに加えて、外国人排斥、親子の断絶、学校でのいじめ、17世紀の魔女狩りも重要なテーマになっており、上下巻1000ページを超える大作なのだが、登場人物のキャラクターが立っていることと「人物関係図」が添付されていることで、さほど苦労することなくストーリーを追うことが出来る。
格差や差別化が激しくなり分断が広がる一方の社会に対する著者の怒りの熱量がひしひしと伝わる熱い物語だが、ミステリーとして、エンターテイメントとしての完成度が高く、読書の楽しみが損なわれることはない。
シリーズファンはもちろん、北欧ミステリーに限らない幅広いジャンルの現代ミステリーファンにオススメしたい。

iisan
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