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探偵伯爵と僕



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探偵伯爵と僕の評価: 3.00/10点 レビュー 1件。 Cランク
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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
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No.1:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(3pt)

この本を子供が面白かったと云った時、私はどんな顔をしたらいいのか?

本書は子供向けのミステリ叢書として講談社によって編まれたミステリーランドシリーズの中の1作である。しかしその内容は子供向けと云うにはヘビーなものだ。

物語は僕こと馬場新太少年が夏休みに遭遇した探偵伯爵と共に子供の失踪事件を追い、解決するひと夏の思い出だ。

探偵伯爵ことアールは夏にも関わらず長袖の背広を着てネクタイをした、髭を生やした男性である。まあ現在はクールビズといってYシャツにノーネクタイでジャケット無しで仕事に行くサラリーマンも多いが、一昔前のサラリーマンはみんなこんな風だったからさほど珍しいものでもない。

彼はある事件を追って少年の町に来ていた。それは東京で起きた子供たちばかりを狙った無差別殺人事件であることが判明する。
ジャンケンにちなんだ名前の少年、石田、平手、千代木の3人を殺した犯人がこの町に来ているのを知って訪れたのだった。

彼はアール探偵社の社長だったが、この事件を追うためにその座を辞してこの町に来ていた。その理由は後程判明する。

物語は馬場新太の手記、ワープロの練習を兼ねた事件記録めいた日記、いや素人小説のような体裁で語られる。そこには語彙が豊かでない少年の聞き間違いや勘違いなどが散りばめられている。

テレビに出てくるような悪人は現実社会には存在しない。なぜなら明らさまに怪しいと疑われるからだ。

またどうして正義の味方よりも悪人の方が年寄りなのか。普通は年寄りが若者を叱るのだから逆ではないか。

などなど、聞けばなるほどという子供ながらの着眼点に満ちた独り言が散りばめられている。

私が一番感心したのは伯爵が少年に云う情報交換という言葉のおかしさだ。
交換ならば手元から無くなるはずだが、情報は無くならないから交換にならない。情報共有が正しい言葉だと云う件。思わずなるほどと思った。

子供の手記によるいささか寓話めいた探偵物語は例えば探偵伯爵の宿敵に怪盗男爵がいるなどといったガジェットも散りばめられているが、冒頭に述べたように内容は案外重い。

いやはや何とも暗鬱な物語だ。正直これを少年少女に読ませ、理解させることには躊躇を覚える。
そしてこの本を読んで面白かったと子供が感想を述べた時に親はどんな顔をしたらよいのか。

こんな暗鬱とさせられる子供向けミステリの解説をしているのはなんとアンガールズ田中なのは驚きだ。しかも感じている内容は同じなのだが、解説を引き受けた手前か心地いい余韻に浸れたと書いているのには無理を感じた。
決して心地いいものではない、本書は。

森氏は子供向けのミステリでさえ我々に戸惑いを与える。それは読者と云う立場だけでなく、子を持つ親としての立場としてもだ。
これはさすがにやり過ぎなのでは。

本書に限らずこのミステリーランド叢書は子供に読ませるには眉を顰めてしまうものも多い。出版元はもっと内容を吟味して子供向け作品を刊行してほしいものだ。

▼以下、ネタバレ感想

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Tetchy
WHOKS60S

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