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バラカ



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【この小説が収録されている参考書籍】
バラカ
バラカ 上 (集英社文庫)
バラカ 下 (集英社文庫)

バラカの評価: 8.00/10点 レビュー 1件。 Cランク
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No.1:
(8pt)

あり得たかもしれない、震災後の日本

東日本大震災、津波、原発事故で影響を受けた日本人と日本社会のダークサイドを描いた、桐野夏生の「震災履歴」。あれだけの被害を出しながら誰も責任を取らず、被爆も津波被害もなかったことにして、オリンピックや復興特需に狂奔する社会への怒りの告発でもある。
40代を迎えて独身の木下沙羅は、大学の同級生・田島優子と一緒にドバイの幼児密売マーケットに出かけて東洋系の女の子「バラカ」を購入し、「光」と名付けたが、養女は一向に沙羅に懐かなかった。沙羅の母親の死を契機に、かつて田島優子の恋人だった同級生の川島雄祐と結婚することになった沙羅は、「光」を優子に預けて川島の転勤先である宮城県名取市に移住し、津波で命を落とすことになった。
「光」ではなく「バラカ」と呼んで可愛がっていた優子だが、震災の日、突然訪ねてきた川島にバラカを連れ去られてしまった。数日後、被災地で遺棄された犬猫保護活動に従事していた「爺さん決死隊」がバラカを発見し、身元不明の少女として、決死隊のメンバー・豊田老人が育てることになった。
震災から8年後、小学生になった豊田薔薇香は豊田老人とともに、決死隊のメンバーだった村上老人の農園を訪ね、地元の学校に通いながら穏やかな日々を過ごしていたのだが、甲状腺ガンの手術を受けたバラカを反原発の象徴として、あるいは原発被害は無くなっていることの象徴として利用しようとする、さまざまな大人たち、さらにバラカの行方を追い続けている実の父親、いつでもバラカを第一に考え、保護してくれる豊田老人など、バラカの周辺では敵味方が入り乱れて激しい争いが繰り広げられる・・・。
原発事故の詳細が公開されず、その影響についても曖昧なまま、何ごとも無かったように再稼働を進める社会に対し警鐘を鳴らす作品であるが、社会派サスペンスとしても十分に楽しめるエンターテイメント作品でもある。

iisan
927253Y1

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