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一角獣殺人事件



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【この小説が収録されている参考書籍】
一角獣殺人事件 世界探偵小説全集(4)

一角獣殺人事件の評価: 4.00/10点 レビュー 1件。 Dランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.00pt

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全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(4pt)

あらゆる意味で意表を突かれた

本書の紹介には「殺された被害者には一角獣の角で刺されたとしか思えない不思議な傷痕があった」と強調されており、それが題名と相俟って、伝説の獣による殺人というカー得意のオカルト趣味が横溢する作品だと思ったら、これがとんでもない間違いでなんと怪盗物だ。
パリを賑わせている神出鬼没の怪盗フラマンドを捕まえるべく、「島の城」に集まった面々。その最中に上に書いたような傷痕を残した奇妙な死体が衆人環視の中、起こるという物。確かに事件は不可能趣味溢れているが、これがメインというよりも変装の名人フラマンドは果たして誰なのか、そしてフラマンドの宿敵であるパリ警視庁警部ガスケも変装の名人で、それは誰なのかと怪盗探し、犯人探しに加え、探偵探しまで盛り込んだ内容になる。

ところでフランスが舞台となると、やはり怪盗が付き物なのか、本作では神出鬼没のフラマンドなる怪盗が登場する。勿論これはモーリス・ルブランの『怪盗ルパン』による影響が30年代当時、かなり強かったのではないだろうか―というよりもルパンシリーズは世紀を超えてなお世代を問わずに親しまれているのだが―。
その証拠に「島の城」城主のダンドリューが各人の枕元に一夜の友として置いている書物の中に当のルブランの『怪盗紳士アルセーヌ・ルパン』が添えられているのだから、カーも堂々と意識していると謳っているのだ。

しかしそんな趣向満載の設定ながら登場人物が多すぎるのと、犯人・怪盗・探偵探しそれぞれがごちゃまぜになって、整理がつかずに物語が流れ、唐突に終わったような感じがしてしまった。特に最後HM卿の口から延々と開陳される事件のあらましはなんとも複雑であり、ちょっと造りすぎではないかと思われる。

しかしケン・ブレイクが出るシリーズはなぜこうもドタバタになるのだろう。
本書はシリーズ初期の作品であるが、この頃カーはケン・ブレイクを情報員であることを利用して、物語を複雑化する不幸な男としてミステリの味付けにしようと思っていたのだろう。

今回思ったのはやはり作品紹介というのは読み手の先入観を否が応にも刷り込んでしまうことだ。上にも述べたが、紹介は一角獣という実在しない怪物をモチーフにした事を前面に押し出し、一見カーの最たる特徴であるオカルト趣味を纏ったものだと思わせるが、蓋を開けてみればフランスを賑わす怪盗を捕らえる事が主眼の、HM卿の国際犯罪に携わる情報部の長という諜報活動の一面が色濃く反映された作品である。
確かに原題も“The Unicorn Murders”と一角獣と名を冠しているが、やはりこの紹介は間違いだろう。例えるならば、パッケージツアーで伊勢海老料理をメインに謳っておきながらその実、伊勢海老は添え物程度で鍋料理がメインだったような感じと云えば解るだろうか。
読者の作品評価に直結するので各出版社はもっと紹介文に配慮して欲しい。

まあ、感想を云えば、出来は残念といいたいところだが、文中、本格ミステリの謎に対する推理についてHM卿がなかなかに含蓄溢れる言葉を述べているのでそれを抜き出して終わりとしよう。

「人間が仮説をひねくり回しておるのは、その人物が推理しているというわけでは決してない。その人物だったらどうやるか、という事を披瀝しておるだけなのだ。しかし、そこから、その人物の性格がよく掴めるからな。」


▼以下、ネタバレ感想

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