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無罪 INNOCENT
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【この小説が収録されている参考書籍】
無罪 INNOCENT
無罪 INNOCENT 上 (文春文庫)
無罪 INNOCENT 下 (文春文庫)

無罪 INNOCENTの評価: 8.00/10点 レビュー 2件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点8.00pt
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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(7pt)
【ネタバレかも!?】 (1件の連絡あり)[]  ネタバレを表示する

21年という年月で変わった者と変わらなかった者

トゥローの作品は一貫して架空の都市キンドル郡を舞台にリーガル・サスペンス作品を紡いできた。従ってシリーズの登場人物たちはそれぞれの作品に顔を出し、関連性があった。
しかし本書のように再び同じ主人公が危難に陥る作品は初めてだ。本書はトゥローのデビュー作『推定無罪』の正真正銘の続編である。

21年前のサビッチが危難に陥ったスキャンダラスな事件は愛人の死を巡っての裁判でその時、サビッチは一度地に落ちたが、21年後は首席判事となり、最高裁判官の候補にまで上りつめている。

そしてこの21年後の今彼が直面したのは妻の死。しかしそれは検死の結果、自殺と判定されたが、過去の事件にあまりにも似通った状況からかつて敵として戦った検事側のトミー・モルトが再び相見えることになる。

しかしサビッチにとって最も致命的なのは元調査官アンナとの不倫関係。またもや21年前と同様の状況に陥っているのだ。
つまり前作と本作は表裏一体の体を成しているのだ。

首席判事まで上り詰め、最高裁の判事候補になろうとする男がなぜこうも女性問題で身を滅ぼそうとするのか。しかも21年前と違い、彼は60歳。21年前の39歳ならば、まああり得る話だが、もはや還暦の域に達した男が陥るスキャンダルではないだろう。サビッチはとことん女性にだらしないダメ男ぶりを今回も発揮する。

一方のアンナは34歳になりながら、バツイチの独身女性。男性遍歴は豊富だが、これまで長く続いたことはなく、22歳で結婚し、72日間の結婚生活を過ごしたに過ぎない。なぜか衝動的に落ちてはならぬ恋に落ちてしまう女性なのだ。
このアンナも社会的に高い地位を持ちながら、なぜ色恋沙汰にはだらしないのか。それはアンナ自身が次のように述懐する。

恋とは至高のものなのだ、愛が絡むとたしなみも分別も全て振り払うことが出来る、と。

好きになったら止められない、それがアンナという女性の本質らしい。

いやアンナを受け入れたラスティ・サビッチもまた衝動的に行動する人物だと云えるだろう。

男の女の恋情の機微。親と子が同じ一人の女性を愛する。偶然が招いたとはいえ、それがまた男と女の色恋沙汰の滑稽なところだ。
ロー・スクールを卒業して法律に携わる高潔な職業に就く者たちでも、こと恋愛に限ってはただの男と女に過ぎない。
いや寧ろ人を裁くという重圧とそれに掛かる膨大な資料と証言を相手に裁判に向けて下調べをしなければならない過酷な職業による我々の想像以上のストレスによってそれを発散するために愚かだと思いながらも愛欲に溺れ、浮世の辛さを忘れたがっているのかもしれない。
本書の面白さはミステリの妙味よりもそんなどうしようもない衝動に駆られる高等階級の人間たちのおかしさにあるのだろう。

また本書はトミーとサビッチという2人の男が歩んできた人生の光と影の物語と云えるだろう。
ロースクールの同級生でありながら、常にサビッチの後塵を拝してきたトミーはその風貌も相まって自信の無さが特徴で、逆にそれを長所に検事局のトップまで登り詰めた来た男だ。21年前、満を持して起訴に持ち込んだサビッチを、法廷の魔術師と称される弁護士サンディ・スターンによってことごとく反証され、打ち砕かれてからは特に用心深くなり、本書においても意気揚々の部下ジム・ブランドとは対照的に常に消極的な立場をとる。
しかし起訴してからは彼はそれまで携わってきた公判の中でもベストのパフォーマンスを出す。常に2番手に甘んじていた屈辱を晴らさんが如く。

このトミー・モルトを単純にコンプレックスの塊のような男とみなしてはならないだろう。
誰もが上昇志向を持っている法曹界というエリート中のエリートが集う業界で燻らせていた自尊心を回復するための、いわば己との戦いなのだ。私はこのトミーの心情に本書の妙味を感じた。

かつての雪辱を晴らさんとする男と男の矜持。そしていくつになっても愛を求める男と女の情念。
一つの事件を巡ってトゥローはそれらを訥々と綴っていく。

そしてトゥローの小説を読むと法廷は最上の劇場だと思い知らされる。
検事側が優位に立ったと思えば、翌日は弁護側が攻勢に出る。一つ一つの言葉に複数の意味を持たせ、一挙手一投足に百の言葉以上の含意を持たせる。

さらに双方の戦術によって無罪と有罪の天秤は激しく傾く。
特に今回は死者となったサビッチの妻バーバラの存在感がものすごく濃厚なのである。“死せる孔明、生ける仲達を走らす”とばかりにバーバラが仕組んだ数々の時限装置に被告人であるサビッチはもとより、弁護士、検事、判事らが奔走させられる。

人はそれぞれ秘密を持つ。それは家族であっても同じだ。
そして事件が起き、裁判という場が開かれ、四方八方から捜査のメスが入っても決して知られてはならない秘密は暴かれることはない。なぜならもはや裁判が真相を証明して正義を見せる場ではなく、一番納得のいくストーリーを仕上げて正義と見せる場となっているからだ。だから物事は常に歪められて解釈される。
ラスティ・サビッチ、バーバラ・サビッチ、ナット・サビッチ、アンナ・ヴォスティック、トミー・モルト、ジム・ブランド、サンディ・スターン。彼ら彼女らが知ったことは決して真実ではない。
彼ら彼女らは何を知り、また知らずに生きていくのか。そして今後知る機会があるのか。恐らくそれぞれが墓場で持っていかねばならないことだろう。だがそれでも我々はいくつになっても愚かなことをしてしまう。そしてそれこそが人生なのだ。


▼以下、ネタバレ感想

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