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プラムアイランド



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プラムアイランドの評価: 8.00/10点 レビュー 1件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点8.00pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(8pt)

エンタテインメントと本格ミステリの小説作法の違い

ニューヨーク州の北東に浮かぶプラムアイランド。そこは動物疫病研究所の島、つまり細菌研究の島だった。折りしもそのプラムアイランドで働く研究所員夫婦がノーフォークの自宅で殺害される事件が発生する。細菌兵器の持ち出しが真っ先に疑われ、明日にも人類滅亡の危機が訪れるかもしれなかった。捜査で負った傷の療養でノーフォークに滞在していたニューヨーク市警殺人課の刑事ジョン・コーリーはこの夫婦と親しかったこともあり、地元警察署のマックスから捜査の協力を依頼されるのだった…。

デミルの筆致は今回も絶好調で、その勢いはいささかも衰えも見せない。皮肉屋ジョン・コーリーの斜に構えた態度も『将軍の娘』のブレナーを髣髴とさせる好漢である。
パートナーのベス・ペンローズは真面目を絵に描いたような刑事で女性的魅力に欠けていた。どうせジョンのペースに乗せられてラヴ・シーンの1つや2つ演じることになるのだろうと思っていたがこの予想は外れ、ラヴ・アフェアは無く、代わりに途中で登場する地元の歴史協会の会長を務めるエマがジョンの相手となる。

このエマの造詣が素晴らしい。歴史協会の会長がスレンダー美人でしかも恋多き女だったという設定は正に意表を突かれた。このエマの登場で物語に活力が与えられ、彩りが加えられたように思う。

さて、筆致は申し分なく、物語の展開もスピーディーかつ起伏に富んでおり、しかもハリケーンの最中のボート・チェイスシーンもあり、アクションシーンも迫力があり、正に云うところなし、と云いたい所だが実は自分の中ではどうも納得しきれないものがある。
細菌兵器を作り出しているのではないかと噂される研究所プラムアイランドというモチーフを設け、そこに勤める研究所員の殺害で大量殺害できる細菌の国外流出を示唆し、FBI、CIAの介入による妨害もありながら、それらが物語の前半で解決し、後半の早々で実はキャプテン・キッドの宝にあるのだという事件の真相を明かすあたり、デミルの小説作法に疑問がある。私ならば最後まで細菌の流出疑惑を持たせつつ、最後の犯人との対決で実は狙っていたのはキャプテン・キッドの宝なのだと明かすだろう。そっちの方が物語の緊張感も持続させ、最後のあっと驚く真相というインパクトも強いのだと思うのだ。しかしデミルはそうせず、隠れた真相を明かし、そこから犯人を追い詰める手法を取る。あくまでミステリ小説ではなくエンタテインメント小説の設定で物語を進めるのだ。これは好みの問題だといえばそれまでだが、やはり後者ではあの展開に不満が残る(ネタバレに詳述)。

とはいえ、読書中は至福の時間を過ごさせてくれた。上の不満はデミルだからこその高い要求をしてしまう結果なのだ。



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