チャーム・スクール



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初公開日(参考)1995年12月
分類

長編小説

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チャーム・スクール (上) (文春文庫)

1995年12月31日 チャーム・スクール (上) (文春文庫)

モスクワ効外、行方不明の米兵三百人が監禁されると囁かれる謎の施設。救出か抹殺か──軍・CIA共同の隠密作戦が展開された! (「BOOK」データベースより)




書評・レビュー点数毎のグラフです平均点10.00pt

チャーム・スクールの総合評価:8.00/10点レビュー 5件。Aランク


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(10pt)

ロシアの恐ろしさを備えた人生讃歌

タイトルの意味は「花嫁修業学校」。しかしこの穏やかなタイトルとは裏腹に内容は骨太の大傑作。ロシアという閉鎖的な大空間においてありとあらゆる人々の人生が錯綜し、壮大なる絵画を描く。

発端はロシアを旅行中のアメリカ人青年がふとしたことから迷い込んだ森林の中に建設された「チャーム・スクール」からの脱走兵との邂逅から始まる。冒頭のここら辺の文体は牧歌的だがこの青年がやがて大使館にこの存在の一報を入れたその瞬間から物凄い緊張感を纏って進行する。
「チャーム・スクール」―それはベトナム戦争などで捕虜となったアメリカ兵をインストラクターとし、アメリカ人としての教育をロシア人に施し、アメリカへスパイとして潜入させるための学校。やがては世界各地の民族に対しても同様の学校を作り、ロシア人で世界を支配しようと画策する。
この物語はこの「チャーム・スクール」を設定し、そしてこれを一介のアメリカ人青年から大使館へ電話させたという構成をとったことでほぼ80%完成したといってもいいだろう。

通常の作家なら通俗的に超人的な能力を持つ凄腕のスパイを配し、ハリウッド映画ばりにアクションシーンをふんだんに盛り込んで銃撃シーン、格闘シーン、爆発シーンを連続させて「チャーム・スクール」に捕らえられているアメリカ人捕虜の救出、黒幕の抹殺、そして施設の壊滅を派手派手しく描く所だが、やはりデミルはデミルである。おいそれとそう簡単にはそういった手法を採らない。
まずは大使館や外交官といった特権階級の人間でさえ、ロシアでは外出するのも捕虜として捉えられる事と紙一重である事をこの電話に対しての主人公二人の活動を通じて詳細に緊張感をもって描く。この作品は一貫してそういった緊張感が張り詰めている。
ロシア、そしてロシア人というのは資本主義社会では到底考えられない自分勝手な哲学、主義が横行し、憚らないのだと読者の胸に刻み込むように描かれる―しかし、アメリカ人作家の手によるロシアの描写であるから情報としては一面的である事を忘れてはならない。過剰に書いてあるだろう事は推測できるから全てを鵜呑みにしてはいけないだろう―。
そういった背景を緻密な描写を丹念に重ねながら、チャーム・スクールの調査、侵入の困難さを少しでも触れれば切れそうな張り詰めた糸のような緊張感の下、確かな筆致で描く。

しかし、ここで私はここでかなり不安だった。外出さえもがこれほど困難なロシアの中でしかもチャーム・スクールを難攻不落の要塞の如く描いて物語が発展するのかと。チャーム・スクールにどうやって潜入するのか?捕虜たちをどう救出するのか?しかも上巻の最後ではこの主人公二人はロシアから強制帰国を命じられ、ロシアを離れようとするのだ。

まず前者の私の問いに対して、デミルは全く私の想像を超えた設定を持ち込む。それは主人公二人をロシア側が誘拐し、しかもチャーム・スクールにてインストラクターに仕立てようとすることだった。これには全く以って脱帽。しかもこの一種アクロバティックなプロットが上巻の彼らの行動、ストーリー展開の中で無理なく納得させられるようになっているのだから、見事としか云いようが無い。
さらに作者はここから読者を新たな世界へ導く。戦争捕虜というものが―特にロシアにおける―、どのような仕打ちを受けるのか、これを淡々と冷酷に詳述する。その後、主人公二人はチャーム・スクールの内状を人々の出会いを交え、知っていく。実は物語としてもっとも面白く感じたのはここだった。特にホリスがチャーム・スクールで再会するかつての戦友、彼がもう何処が本統の居場所なのかわからなくなったよと述懐する場面、またベトナム戦争で撃墜された時に捕虜として捕らえられていた副パイロットの心情を彼らによって教えられ、ホリスが長年抱えていたしこりを氷解させる場面はこの作品の中でのベストシーンだ。
物語はその後ホリスの、ロシアで長年一緒に勤務した悪友セスの潜入作戦を経て、脱出劇と壊滅劇が繰り広げられる。ここで明かされる前述の後者の問いの答えは非常にショッキングなもので、後味は悪い。特にチャーム・スクールに好まざるべくいるアメリカ人捕虜たちのストーリーが語られた後となっては。

デミルは登場人物一人一人に哲学をしっかりと設定する。そして彼らがその己の規範に従い、時には呪縛を感じながらも行動する。一人一人が脈打つ実在の人間のようだ。
この小説は単なるエスピオナージュ、スパイ小説ではない。人生讃歌である。誰一人として単なる主人公の引き立て役の駒で終わっていない。そういっても過言ではないだろう。特に最後に杓子定規な正義が成されなかった点。ここに人生を生きることの難しさとデミルのアイロニーを感じた。
一人でも多くの人がこの作品を読むことを期待する。

Tetchy
WHOKS60S
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

No.4:
(5pt)

デミルはすごい。

タイトルからは想像もできないショッキングな内容と息をも吐がせぬデミルのストーリー運びで一気に読了しました。
チャーム・スクール (下) (文春文庫)Amazon書評・レビュー:チャーム・スクール (下) (文春文庫)より
4167309564
No.3:
(4pt)

デミルの面目躍如、非情なる国際政治を描いた謀略小説

ロシア旅行中の青年があるきっかけで奇妙な出会いをし、それがやがて国家的謀略に発展し・・・お話。
ここで扱われている事件というか謀略は近年の日本でも起こっていたことで、決して他人事ではないと思いました。戦争のどさくさに紛れてあれこれ起こることは何処の地域や時代に関係なく起こり得るのだなと思いました。その国家間の大義やイデオロギーだけで人生を台無しにされる老若男女の悲惨なこと。これも一種の戦争小説のひとつなのだなとつくづく感じました。
それにしても著者デミルのロシアに対する感情というか描き方が凄く冷酷非情でロシア系で読んだ方はさぞやご立腹されるのではないか、それくらい嫌な奴ら、嫌な国として描かれています。これが書かれた80年代はまだ冷戦が終わりつつある頃だったらしことが反映されているのでしょうか(アメリカも悪く書かれれている部分もありますが)。
最後につかわれる化学薬品はちょっと驚きました。読んで衝撃を受けた方もいるのでは。
無情なる国際謀略小説の佳作。デミルの最高傑作ではないと思いますが、読んで損はないでしょう。
チャーム・スクール (上) (文春文庫)Amazon書評・レビュー:チャーム・スクール (上) (文春文庫)より
4167309556
No.2:
(1pt)

観光ガイド、ときどきドンパチ、たまにセックス

観光案内書のようだという感想を持ったのだが、「アップ・カントリー」の評でも
まさしくそのような表現が用いられているらしい。いまはやりの情報小説の走り
なのかもしれない。プロットは強引かつ凡庸で、本人の経歴が生かせなかったのか
文章に迫真性がない。文庫本上下超大作を通読するのはかなり大変。「将軍の娘」
の軽口文体などは是非原書でも読みたいものだと思わせた(でも翻訳がない本しか
原語では読まないですけど)ものだがそういうのもない。つまり退屈ということ。
この人は作家としての核になるものが弱すぎると思う。
 

チャーム・スクール (上) (文春文庫)Amazon書評・レビュー:チャーム・スクール (上) (文春文庫)より
4167309556
No.1:
(5pt)

共産主義社会の恐怖を浮き彫りにしたサスペンスの傑作

このジャンルの作品で、旧ソビエトを舞台にし、その 独裁社会の実態を見事に描いた作品としてE・トーポ リ著「赤の広場」があるが、「チャームスクール」はそ れに匹敵する内容となっている。米国人を誘拐、長期 間教育してスパイに仕立て上げこれを米国に送り込むと いう荒唐無稽な筋立てだけれども、某国の日本人拉致疑惑が取り沙汰される昨今、俄かに現実味を帯びてきた。 このスパイ養成スクールをめぐるサスペンスにからめて 中年男性主人公と若き女性主人公の恋物語が進行し、ス トーリーテーラーとしてのデミルの才能が遺憾なく発揮 されている。また、珍しくドンパチアクション場面もふ んだんに盛り込まれ、まずは退屈しない内容だが反面リアリティの幾分か削がれる憾み無きにしもあらずと言っ たところか。何にしてもこの作品、「将軍の娘」と並んで 私の強くお薦めする傑作である。
チャーム・スクール (上) (文春文庫)Amazon書評・レビュー:チャーム・スクール (上) (文春文庫)より
4167309556



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