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Tetchy さんのレビュー一覧

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レビュー数694

全694件 601~620 31/35ページ

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No.94:
(7pt)

痛々しくも予想通りでした。

読み始めてから200ページ辺りまでは前六作までに強いられた状況理解の困難さが全くなく、加速する物語に狂喜していたが、それ以降中だるみを憶え、そのまま終末を迎えたような感じだ。
犯人は予想外ではあるが真相は半ばで自らが仮説した通り。そのせいで物語に失速感を感じたのかもしれない。
人前では現実を直視しない素封家として振舞っていた彼女が実は常に過酷な現実に対峙せざるを得なかったために起こった憎悪が招いた悲劇。嗚呼、痛々しい。
ドルの向こう側 (ハヤカワ・ミステリ文庫 8-10)
ロス・マクドナルドドルの向こう側 についてのレビュー
No.93:
(7pt)

小道具の使い方に唸ります。

メインの被害者となるチャーリー・ハットンの、周囲の人々に与える嫌悪感がレンデルにしては描き込みが足りず、薄味だったように思われる。
今回感心したのは、キングズマーカム署に備え付けられたエレヴェーターの使い方。この小道具をコミカルに、そして有意義に活用している手際は見事。

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死を望まれた男 (創元推理文庫)
No.92:
(7pt)

再読が必要かと。

実家、列車内と、凡そ読書するには劣悪な環境の中、また父親の危篤とそれによる心労とで、最早、読書とは呼べない、書かれた活字だけを追うことも屡だったそんな中、頭に入っていないと思いながら最後で明かされる真相がピタピタと頭の中で当て嵌まっていくというその作者の手腕にただひたすら平伏。
今回は本当に作者に対して申し訳ないと思った。
ただ題名は、その内容とあまり合致していないのでは?
人の死に行く道 (ハヤカワ・ミステリ文庫 8-6)
ロス・マクドナルド人の死に行く道 についてのレビュー
No.91:
(7pt)

映画ほど派手ではない。

P.D.ジェイムズにしては全く異色の、子供の生まれない未来の地球を舞台にした物語。何故子供が生まれないかの謎を解明するとか、その設定でしか成立し得ない事件の解明というようなシチュエーション型ミステリではなく、あくまで世界を設定した上で繰り広げられるヒューマン・ドラマを描いている。
迎える結末はこういった設定で容易に予想されるものであるが、ジェイムズが敢えてこのような母性に満ちた物語を紡いだことに興味を覚える。
人類の子供たち (ハヤカワ・ミステリ文庫)
No.90:
(7pt)

キオスクミステリですな。

御手洗シリーズと違って一般大衆を購読ターゲットにしているせいか、吉敷シリーズは読みやすさを重視した文体を採用しており、平板な印象を受ける。
今回の死体受け渡しのトリックは判ったがやはり時刻表のトリックはパズル遊びをしているきらいがあり、のめり込めなかった。
水準はクリアしている。しかし物足りない。

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出雲伝説7/8の殺人 (光文社文庫)
島田荘司出雲伝説7/8の殺人 についてのレビュー
No.89:
(7pt)

睡魔を吹き飛ばす面白さ

押し寄せる睡魔に半ば勝ち、半ば負けながらの読書だったため、ほとんどストーリーを把握しないまま読み進んでいったにも拘らず、最後の章でバタバタ、と不明だったピースが嵌め込まれ、全体像が浮かび上がる所が凄い。
今回は終わってみれば実はサイコ・サスペンスでロス・マクドナルドの心理学への興趣が色濃く表れている。
また、最後の章の盲目の母の何気ない一幕で、無力だと思われていた存在が実は絶大なる支配力を持っていたという畏怖を表す所もまた印象深い。
別れの顔 (ハヤカワ・ミステリ文庫 8-5)
ロス・マクドナルド別れの顔 についてのレビュー
No.88:
(7pt)

ウェクスフォードは他者からはこう映るのね。

ウェクスフォードを外側から描く、ウェクスフォード物の異色作でどちらかと云えばノン・シリーズに近い。しかし、ウェクスフォードが登場人物の目にどのように映っているのかが垣間見れて面白かった。これほど影響力の強い人物だとは思わなかった。
主人公の牧師、アーチェリーをして「あの男は神の権化」とまで云わしめるのは過剰なる賛辞だと思うが。結局、「事実」はなんら変わらなかった。ただ「真実」が無機質な人間2人を変えた。
レンデル物では珍しい、爽やかな読後感だ。
死が二人を別つまで ウェクスフォード警部シリーズ (創元推理文庫)
ルース・レンデル死が二人を別つまで についてのレビュー
No.87:
(7pt)

もう少し!

浅い、と思った。
ブラッドショーの苦悩、トム・マギーの苦渋、ドロシー・マギーの狂気、そのどれもが響かなかった。
最後の4ページで一気呵成に暴かれる真相に唖然とさせられたせいで、まだ頭の中が整理されていないのかもしれない。だが結末で憶えた戦慄は『象牙色の嘲笑』の方が上。
今回はドロシー・マギーの失踪に始まった人物相関が完全に遊離してしまったのが残念。マクドナルドは、ロイ・ブラッドショーをテリー・レノックスにしたかったのかもしれない。
さむけ (ハヤカワ・ミステリ文庫 8-4)
ロス・マクドナルドさむけ についてのレビュー
No.86:
(7pt)

被害者は何を見て嘲笑う?

今回も彼は完膚なきまでに質問する。読んでいるこちらが当惑するほどに、個人の領域に立入る。そのあまりある執拗さは、終いには犯人が「なぜきみはおれを苦しめるのだ」と身震いさせられるくらいまでにもなる。
だがしかし、そこまで行いながらも彼の影は見えない。犯人は最後、足枷のように影を引き摺るのに、彼には影すら見えない。「質問者」である以上に「傍観者」である所以だ。
真相は戦慄を憶えた。しかし、未だに謎なのは、被害者は何を「嘲笑」っていたのだろうか?
象牙色の嘲笑〔新訳版〕(ハヤカワ・ミステリ文庫)
ロス・マクドナルド象牙色の嘲笑 についてのレビュー
No.85: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

あっちの方がよかった

日本推理小説史上に於いて名作と冠される本書は、しかし、上のような評価に納まった。迷路、隠し洞窟といった道具立ても胸踊らすほどではなかった。
『11枚のとらんぷ』よりは落ちる。そう、ショートショートを内包した、贅沢な一品、『11枚のとらんぷ』。この作品と比べるからこそ、七ツ星なんだろう。

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乱れからくり【新装版】 (創元推理文庫)
泡坂妻夫乱れからくり についてのレビュー
No.84:
(7pt)

ロマンティシズムある佳作

古き良き時代の冒険活劇を匂わせ、また主人公を活発で美しい女性に設定したことで、その万能さもあざとく映らず、快い。それは自分に女性崇拝の精神が宿っていることに起因するのかもしれないが…。
採点は微妙だ。元来ならば五ツ星クラスだが、新訳版であったがための読みやすさ、さらに上記にある理由、それと二世紀を隔てて各国から信じ難い遺言を便りに再開するという展開が私の胸を打った。そういった理由で七ツ星とさせていただく。
綱渡りのドロテ (創元推理文庫)
モーリス・ルブラン綱渡りのドロテ についてのレビュー
No.83:
(7pt)

邦題がイケてません。

タイトルは全然意味を成してないよ。原題『屠殺場に向かう狼』の方が最後に明かされる謎を髣髴させる点で断然勝っている。

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運命のチェスボード ウェクスフォード警部シリーズ 創元推理文庫
ルース・レンデル運命のチェスボード についてのレビュー
No.82:
(7pt)

連続殺人鬼物として異色なのだが。

連続殺人鬼の登場をメインの殺人事件の単なる小道具として扱う辺り、やはり大作家の構成力は只ならぬものがあるなと感心したが、終わってみれば犯人は予想外だったけど、動機としては単純なもの。いや寧ろ深くまで語られなかったため、抽象的であり浅薄だ。
今回、読んでいて気付いたのはアダム・ダルグリッシュという存在を作者は暗鬱な日常性から解放する導き手に想定しているのではないかということ。悲劇が繙かれた後、関係者それぞれに変化が扉を叩いた。
策謀と欲望〈上〉 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
P・D・ジェイムズ策謀と欲望 についてのレビュー
No.81:
(7pt)

この胸に残るのは何なのか。

歪んだ愛情が織成す悲劇、いや正直な気持ちを押し殺したゆえの反動と云った方が正解か。
現象はあまりにも単純。2人の男と1人の女の死。犯人はしかも1人。しかし、その1人を炙り出すための炎は関係者各々の魂を苦く焦がし、また探偵自身も自らを焦がす。だが、あくまで彼は傍観者の立場を貫く。だから慮る事もせず、また望むのであれば自害の手助けをもする。
現時点では7点だが、我が胸に徐々に立ち上る感慨は治まりそうにない。
ウィチャリー家の女 (ハヤカワ・ミステリ文庫 8-1)
ロス・マクドナルドウィチャリー家の女 についてのレビュー
No.80:
(7pt)

ちょっと仮説が足りない。

一般読者向けを意識した島田初のトラヴェル・ミステリという事で、『占星術殺人事件』から始まる御手洗シリ-ズとは趣を変えて、現実味を過分に加えた、比較的地味なシリーズ、所謂吉敷シリーズであるが、千鶴子の列車での存在を幽霊として仕立て上げるような、幻想性を加えることも忘れない所が面白い。

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寝台特急「はやぶさ」1/60秒の壁 (光文社文庫)
島田荘司寝台特急「はやぶさ」1/60秒の壁 についてのレビュー
No.79:
(7pt)

地味だが嫌いではない。

『眩暈』、『アトポス』、そして『異邦の騎士』と、所謂島田流「本格ミステリ」が御伽噺めいた幻想性を前面に打ち出しているのに対し、この吉敷シリーズは市井の犯罪を描く贅肉を削ぎ落とした「本格推理小説」。
この軽さがタイミング的に合っていて一服の清涼剤になった。

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確率2/2の死 (光文社文庫)
島田荘司確率2/2の死 についてのレビュー
No.78:
(7pt)

女の狂気は怖い

冒頭、登場人物表にも載っていない人物の失踪が案外しつこく語られていること自体に「?」マークが頭に浮かんでいたのだが、最終的にこれほど致命的に機能してくるとは。久々に「あっ」となっちゃいました。
今回は珍しく男の狂気じゃなく、女の狂える愛。故にいつもなら狂気がしんしんと降り積もっていくのに、男が正気に戻りかけた途端、突然の大破局が訪れた。
そう、フローラよ、貴女は結局、幸運の女神だったのか?
石の微笑 (角川文庫)
ルース・レンデル石の微笑 についてのレビュー
No.77:
(7pt)

失恋男にこの話はツラい!

おいおい、どうしてこうなるの?なぜこの作家はハッピーエンドがこうも嫌いなのだろうか?たまには素直に物語を収束させてもいいんじゃないの?
しかし、レオノーラはひどい!最低の悪女だな。
ガイは、つい最近までの俺を見てるようでとても痛ましかった。だからこそガイにはハッピーエンドを迎えて欲しかったのに。
しかし、レンデルは冗長すぎるぞ!丹念に心の動きを積み重ねていこうとしているのは判るがくどくど意気地の無い愚痴に付き合わされるのにはまいったぞ!
求婚する男 (角川文庫)
ルース・レンデル求婚する男 についてのレビュー
No.76:
(7pt)

こういうレンデルもいい!

いやいや、ルース・レンデルがこんな小説を書くとは、ねぇ。
2つの物語のうち、一方は振られ男のうじうじした日常の根暗な生活が淡々と綴られるのはいつものレンデル調なのだが、もう一方はスパイごっこに興じる少年たちの、云わば青春物語だなんて!!これがもう、おいらの少年心をくすぐるから、ジョンの話が鬱陶しくて、却ってそれが俺にとっては仇になった。
そして、2つの物語がハッピーエンドなのもまたレンデルらしくなく珍しい。
死を誘う暗号 (角川文庫)
ルース・レンデル死を誘う暗号 についてのレビュー
No.75:
(7pt)

精神病院が舞台なのに明るい。

ここ続けて読んできた『鬼女の鱗』、『びいどろの筆』、『蔭桔梗』といった時代物、もしくは職人の世界を描いた恋愛物と、侘び・寂びを感じさせる日本情緒豊かな作品に親しんできたため、この作品は現代本格物ということで、どこか別の人が書いたような違和感を感じたが、やはり随所に泡坂らしさを覗かせ、小さいながらも驚きを提供してくれた。
精神病院を舞台にしたにも拘らず、重く暗くならないのは主人公海方のキャラクター性と、泡坂の筆の軽さゆえか。
毒薬の輪舞 (講談社文庫)
泡坂妻夫毒薬の輪舞 についてのレビュー