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たこやき さんのレビュー一覧
たこやきさんのページへレビュー数93件
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道警シリーズが割と好きでずっと読んできましたが、権力との直接対決ではないので、物足りなさを感じる方もいるようですが、色々な問題が盛り込まれていて、私はそれなりに楽しめました。
冤罪の問題は小説だけじゃなく現実でも新聞をあれこれ賑わしていて、真摯に謝罪してもらいたいと思う中島の気持ちは当然だと思います。間違ったことをした時には潔く謝罪するほうがよほど信頼を回復する早道だと思うのに権力を持つ人ほど、どうにかしてそれから逃れようとするのはどうしてなんでしょうね。 そんな指導者達を見て、子ども達が正しい事を学べるとは到底思えません。責任逃れ、責任転嫁・・・まずは指導すべき立場の人たちが変らなければ根本的には何も良くならないのではと切実に思います。 当たり前の事ができない大人ばかりに、未来をまかせてしまっているのでは・・・と言う危機感をとても強く感じる作品でした。 |
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率直に言うと、とても暗く重い物語です。
派手な連続殺人でもなんでもなく、ましてや殺人事件そのものも非常に稀?な国であるアイスランド。 北欧であることは知っていましたが、ほかの4か国とは離れて海の中にポツンとあるのですが、アイスランドのイメージと言えば原子力や火力の力に頼らない自然エネルギーの国、人権意識の高い国と言うイメージなのですが、こんなに雨ばかり降る国だというのは読んで初めて知りました。解説にもあったように快晴の日が珍しいゆえに、たまに快晴の日があるとそれを理由に会社が休みになるというところはなんともユニークです。 湿地の上に建てられた半地下のアパートで一人の老人が殺されます。典型的な物取りの犯行かと思われたものの残されていたメッセージから、少しずつ真相がわかってきます。 被害者の立場からはなかなか言い出せない女性の悲劇。取り調べや裁判そのものがセカンドレイプであるのはどこの国でもそう違いがないのではないでしょうか? 人権先進国である北欧でも例外ではないのだと改めて感じました。日本でも不当に刑が軽いと感じるのは私だけではないのではないかと思います。 もうひとつ北欧などのサスペンスを読んで感じることの一つに警察の在り様の違いです。家族の崩壊は日本でもありがちな話ですが、娘が麻薬常習者であったり、息子が犯罪者であったりしてもそのことが警察官としての地位を脅かさないあたりは日本とは大きく違いますね。 組織や家族を重視する日本は、まだまだ遅れているのだなと思いました。 結末もあまり救いがなくとても暗い話ですが、文章は簡潔でとても上手い思いました。 どうにもならない娘との関係は今後どうなるのかとても気になるところです。 |
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楽しみにしていた特捜部Qの最新作。
今回はローセが選んできた23年前の失踪事件を追う物語です。 相変わらず超個性的な3人組は健在で、しかもカールのトラウマとなっているアマー島の事件にも新しい証拠が出てきて、せっかくモーナと上手くいきかけているのに事件から離れることができません。 カール自身が言っているように読んでいても全くわからないアサドの過去は謎が深まるばかり。 失踪事件は、実際にあった事実をもとに国家的犯罪ともいえる選民主義を実にうまくフィクションに取り入れています。とんでもなく酷い話なのですが、現実にはデンマークでも極右政党が支持されたりしていて、作者が伝えたい事を多くの人に感じ取ってもらいたいと思わずにはいられません。 日本は島国であったり長かった鎖国時代のなごりもあってヨーロッパほど移民の問題は切実ではないものの昨今の政治家の発言や、あからさまなヘイトスピーチがニュースになったりと他人事とは思えません。 世界的にも景気が悪くなるとこんな風にどこもが殺伐としてくるのでしょうか。 より良い社会のためには過去の反省をおざなりにしてはいけないのにと思ってしまいます。 転んでもただでは起きない脇役たちも健在で、シリーズでは10作の予定とありましたが、続きが出るのが待ち遠しいです。 |
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過去に自分をどん底に突き落とした男を、永遠に出ることのできない刑務所に送り込んだものの、法律家として犯してはならない事をしてしまったC・Jは罪悪感にさいなまれながらも、初めて心を許すことができるようになったドミニクと安定した生活を送っていたのですが、パトロール警察官が殺されたところから再び悪夢が始まります。
違法なやり方で車を止め捕まえた猟奇殺人の犯人でしたが、それを知っていた犯人が次々と殺されていきます。汚職警官として麻薬とも関わりがあったことから、捜査する同僚達は地元のギャングや組織をマークするのですが、C・Jは、今刑務所にいる犯人の死刑を覆させないため、猟奇殺人の真犯人のしわざではないかと疑い始めます。 同じように良心の呵責に耐えられない弁護士のルビオは遠くでひっそり暮らしていたのですが、葛藤の末、現在のキューピットの弁護士に宣誓供述書を送り、再審が開始されてしまいます。 正義とは何だろうと考えさせられました。C・Jの苦悩は痛々しいし、当事者ですから当たり前なのですが、それでもやはりルビオの方に共感してしまいます。一度嘘をついてしまうと、またそれがばれないように嘘に嘘を重ねていくことになってしまいます。 私自身がそれぞれの立場だったらどうするだろうと改めて考えてしまいました。 |
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完結編?と思われる『報復 それから』が出版されていたのでもう一度最初から読んでみました。
とてつもなく怖い話です。主人公のC・Jはマイアミで重大犯罪の検察官をしていて、そこで1年近く続く女性の猟奇殺人事件を担当しているのですが、たまたまパトロール中に止められた車のトランクから10人目の犠牲者の死体が出てきて、連続殺人犯として捕まります。初めての罪状認否の法廷で自分の無実を訴える容疑者の声を聞いて、C・Jの悪夢が再び始まります。 12年前ニューヨークにいた頃、誰ともわからない覆面をかぶった男に凌辱・暴行され癒えることのない傷を負わされていたのですが、その時の犯人がその容疑者だったからです。 状況証拠はあるものの決定的な証拠がないままなんとか過去の事件で訴追しようとするのですが、殺人事件以外は時効?があるのかどんなに頑張っても過去の事件で有罪にすることができないのです。 どこの国でもそうだろうと思いますが、裁判において被告との利益相反がある場合は当然その役目からおりなければならないのですが、C・Jはそれを隠したまま犯人を死刑にするべく奔走しますが、逮捕された経緯が正当性のあるものではなかったことから、それも隠蔽してしまったことでどんどん窮地に陥っていきます。 それにしても追い詰められた女性の心理描写がピリピリ伝わってきます。 レイプと言うのは日本でもそうですが、思いのほか量刑が軽い気がします。被害者の心の傷が永遠になくならないということを考えても、セカンドレイプと言われる裁判のことを考えても、もう少し女性の気持ちを考慮していくべきなんじゃないかと思ってしまいます。 しかし、彼女の心の傷はともかくも事実を捻じ曲げることが本当に正しいことなのかどうか、弁護士のルビオの葛藤にもとても共感できます。読者とC・Jには真犯人が別にいるのではないかという疑問が出てくるのですが、物語の結末がどうなるのかと一気に読んでしまいました。 |
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1作目の『オーロラの向こう側』に続いてレベッカのシリーズ2作目です。
1作目は特に感じたのですが、翻訳の仕方のせいかもしれませんが、1人称だか3人称だかわかりづらい文章でいまひとつ感情移入ができず、またキリスト教にありがちな閉鎖的な田舎の物語とあって、不完全燃焼のまま読了しました。 2作目は心の傷の癒えないレベッカは直接の関係はないものの、人物描写が丁寧になり閉鎖的な社会で生きる人々の苦悩が非常に身近なものに感じられました。 北欧と言うとどうしても非常にリベラルなイメージを持ってしまうのですが、世界中どこの社会でも同じような葛藤が存在するのだと改めて思いました。キリスト教の世界だけでなく障害を持つ子どもたちの親やDVの問題、ひずみはいつも弱者へとしわ寄せが行ってしまうと言う悪循環。 事件は解決するものの救いのない結末は辛いものがあります。 出産休暇中のアンナ・マリア警部の日常が非常にリアルで働くお母さん達は非常に共感できるのではないでしょうか。 主人公のレベッカは踏んだり蹴ったりですが、まだシリーズが続くようなのでこれからどんな風に立ち直っていくのか、変化していくのかも気になるところです。 |
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ハリーボッシュの物語にいまいちなじめなかったので、どんな話だろうと思っていましたが、こちらの方はなかなか読みごたえのあるミステリーでした。報酬がそれなりに高額であるがゆえにリストラされてしまう新聞記者のジャック・マカヴォイが主人公です。
犯人はネット世界を自在にあやつれるある種の天才で、犯人側の一人称が何章かごとに出てくるので読者には早いうちに犯人がわかってしまうのですが、それでも少しずつ犯人に近づいていく様子は非常に面白いです。サブキャラとしてFBIの捜査官であるレイチェルが唐突に出てくるものの、前作を読んでいなくても全く違和感なく読み進められます。 サイコな犯人を追いつめていく内容もさることながら、何よりもアメリカにおける新聞業界の苦境がけっこうリアルに伝わってきます。日本のような販売店からの宅配制度のないアメリカでは紙媒体の後退は相当深刻なものだと感じられます。経営がなりたたずグローバル企業に買収されることで本当のジャーナリズムから遠ざかってしまうと言う悪循環。 権力に都合のいい情報だけがテレビや新聞で大量に流されると言うのは日本も全く同じ状況で、物語のなかで『究極のジャーナリズムは大統領を引きずりおろす事』と言うようなことが書かれていましたが、グーグルやマイクロソフト、アップルなどがこの犯人にように、国に協力して他人のプライバシーを提供するような時代に、そんなことは現実には起こりえないのではないかと思えます。 シリーズではないのでしょうが、ジャーナリストであるマカヴォイが殺人犯ではなく巨悪の権力に対抗してくれるような続きがあればいいなと思いました。 |
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10歳にも満たない男の子が自分の弟や里親の子どもを殺してしまうと言うショッキングな事件。
しかし男の子は自分のした事を全く覚えておらず、バークの仲間や精神科医にゆだねられ守られて、虐待の被害者でもあると言うことがわかってくる。 それにしてもフィクションだとわかっていても目を背けたくなるほどの凄まじいほどの虐待の描写。 しかし、日本の10倍以上はあると言われる虐待件数を考えた時、あながち嘘ではないのではないかと思える。また虐待された子どもを守るため実際に弁護士をしている作者の事を考えると、どれだけ奔走してもいっこうに減っていかない現実に作者の願望が含まれているのではと思えてしまう。 虐待された子どもがやがて怪物へと変っていく連鎖はとぎれることなく悪循環となって続いていくことの現実を作者は誰よりも実感しているのではないだろうか。 同じように子どもの虐待をテーマにした天童荒太氏の『永遠の仔』も凄まじいものがあったが、結末にはまだいくらか救いがあったような気がする。しかしバークの物語には救いがない。ルークと同じようなバーク自身の救い難い子ども時代を考えると、そう言った悪人を狩り続けることでしか生きられない悲哀を感じてしまう。それでも兄弟と呼ぶ信頼できる仲間達が存在することで、なんとか自分を保っているのではないだろうか。 日本でも最近は頻繁に虐待死のニュースを見るが、少子化を憂えているくせに福祉を切り捨てようとする政治家達や世間の風潮を見ていると、そう遠くない将来アメリカと同じような現実がやってくるのではないかと思えてならない。 |
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シリーズを順に読んでくると独立した物語と言うよりはかなり続き物の雰囲気が漂います。
劇画的なところは相変わらずですが、ついつい読んでしまうと言うよな中毒的な作品かもしれません。 まっとうな方法でなくアウトローな存在が悪を葬ると言うのは非常にアメリカ的と言うか、司法機関や国そのものを全く信頼できないと言ったあたりは、案外現実のものではないかとさえ思えます。 あらゆることがお金でしか解決できないような現実は、今の世界を反映しているとしか思えなくなります。 アメリカの子どもの5人に1人が精神疾患と言うようなニュースを見ていたりすると、ヴァクスの作品が多くの人たちに受け入れられているのもわかるような気がしました。 |
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現実にも何度も起こっている学校での銃の乱射事件を題材に、違った視点で描かれたミステリーです。
犯人として捕まってしまった保安官の息子。主人公で保安官補のレイニーと似たような学校での事件を追いかけているFBIプロファイラーのクインシーは、調べていくうちに別の真犯人の存在を考え始めます。 現実の世界では別の犯人などはあまりありえないのですが、そこに至る過程や、心に傷を持つメインキャストの心理描写が実に巧みで、特に子ども時代に虐待を受けていたレイニーが、自分自身を信じることができなかったり、自己評価が異常に低かったりと言うあたりはとても上手く描かれているように思います。 事件そのものとは別に登場人物の人間関係にかなり重点がおかれていて、レイニーとクインシーが今後どうなっていくのか気になるところです。 |
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非合法?の私立探偵バークのシリーズの1作目ですが、読み終えて非常に劇画的なイメージを持ちました。
『シティーハンター』のアメリカ版小説と言うか、必殺仕事人?的と言うか。本人も何度も刑務所に入っていて探偵ものとしては異色の経歴ですが、彼の兄弟達(仲間ですが)も個性的です。あれだけのメンバーが揃っていれば何でもありかなとは思いますが、事件の内容はアメリカの暗部を映し出しているようで、公的な力では裁ききれない悪人をやっつけると言う痛快感があります。 バーク自身も両親のわからない施設育ちと言うアウトローな存在なのですが、ちょっと現実離れしすぎてると思うところはあるものの、先を読みたくなるのは間違いないです。 |
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設定としては似たような物語や映画がありますが、それにしても考えさせられる話でした。
冤罪なのに死刑の執行か、と言うあまりにも理不尽な内容なのですがテキサスと言う土地柄を考えても現実にあったのではないかとさえ思えます。しかし似たような自白の強要と言うのは日本でも当たり前のようになっていてあまり人事ではないとさえ思えました。 世界的にも批判されている死刑制度ですが日本ではいっこうに聞く耳を持たず、アメリカと違って執行日も何も知らされないシステムゆえに意識の違いがアメリカとではかなり違うような気がしました。 知らされていない事が制度への鈍感さに繋がっているのではないかと。 牧師の元を訪れる真犯人は確かにろくでもない人間であり擁護できる存在ではありませんが、それでも彼が語る言葉を聞いていると、犯罪者を生み出すシステムが見えてきて厳罰を与えることが犯罪の抑止になるとは思えません。 某政治家は最近立て続けに執行しているようですが、人権感覚の希薄な日本でももう少しまともな議論ができないものなのかと考えずにはいられませんでした。 |
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淡々とした人物描写から始まる第一部。
登場人物はけっこう多く断片的な描写ばかりなのですが、意外とすんなり入ってきます。 そして中盤以降のエジプトで全員が揃い、そしてナイル遊覧の客船の中で殺人事件が起こるのですが、人物描写やれぞれの人物の葛藤が巧みに描かれます。 実を言うと割と早い段階で犯人もわかってしまいましたし、それに付随する他の出来事も前半の伏線でだいたいわかってしまったのですがそれでもやはり面白かったですし、切ない結末は秀逸でした。 また時代の違いも色々と感じさせられました。今の中東情勢を考えると当時のヨーロッパの富裕層には優雅な観光地だったのだなあと(今でも一部はそうかもしれませんが)。 人間の欲望や優越感、嫉妬といった感情ははかりしれないものだと感じると共に、貧乏暇なしの私自身が案外平和にいられるのは、あまり多くを持っていないからかも・・・と少しだけ自分を慰めてみました。 長いお話ですがお薦めです! |
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何十年か前の高校生の頃むさぼるように読んでいたクリスティーでしたが、現代ものを読んでいるうちにポワロの芝居がかったところに飽きて全く読まなくなってしまっていましたが、内容を忘れてしまっているので久しぶりに手にとってみました。
今改めて読むと100年近く前の作品でありながらなんと斬新なミステリーだろうと思わずにはいられません。結末に対しての賛否論があったと言うことですが、現在のようにミステリーも多様化し色んなスタイルで書かれていることを考えると、クリスティーと言う偉大な作家がどれほど柔軟な発想を持っていたかよくわかります。 ちなみに私は犯人もすっかり忘れていたので、最後まで読んで2回も楽しませてもらいました。 最近のミステリーはカテゴリーも色々だし、背景やリアリティー、犯人が最初からわかっているものとさまざまですが、読みながら犯人は誰だろうと、登場人物とともに犯人探しができる良作ばかりではないかと思います。 科学捜査全盛の今と違って推理がメインとなるのですが、ポワロと言うキャラクターと彼に都合よく進展していくところに飽きて唐突に読まなくなってしまっていたのですが、これを機会にまた手にとってみたいと思います。 |
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エドガー賞を『容疑者Xの献身』に勝った作品と言うことで、期待度も高く読みました。
順番としてはシリーズの5作目だそうですが、人物描写は巧みで緊迫感もあり非常に面白かったと思います。 西洋の作品を読んでいると、警察の組織の違いとかがわかって面白いと同時に違和感もありますね。日本なら速攻で誘拐事件となり一気に大掛かりな捜査になるだろうと言うような始まりなのですが、イギリスでは違うのでしょうね。最初はなかなか進展もなく警部の苛立ちがそのまま伝わってきます。容疑者が浮上したあたりからは読むのをやめることができなくなりました。 惜しむらくはできることなら1作目から順番に出版して欲しかったなと。これだけ読んでもキャフェリー警部の過去やなんかはある程度わかるのですが、フリー・マーリーやウォーキングマンとの関係が少し唐突過ぎて分かりづらい。1,2作目は出版されているそうですが、3,4を飛ばしての『喪失』なので、できれば出そろった時にもう一度読んでみたいと思います。 シリーズ物は、主人公がどんな変化をしていくのかと言うのも楽しみの一つだと思うので。 |
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私立探偵ヴィクの8作目。もうすぐ40歳と言う時にトラブルに巻き込まれ、トカゲの尻尾と思ったら毒蛇だったと言うようないつものパターンですが、相変わらず猪突猛進、意固地で妥協をしらないゆえにまたもや周りも含めて危険の中に飛び込んでゆくのです。
良心的な警察官や恋人であるコンラッドは慰めにはなってくれるものの、突っ走っていく彼女にだんだんついて行けなくなってきます。彼女の言葉を信じようとしない2人ですが、ここは小説ですから男性と女性の違いを際立たせるために書かれているのであって、まっとうな警察官ならあそこまで敵対しないだろうしもう少し優秀だろうとは思うものの、現実には世の中の些細なことすべてに感じる理不尽さは、ものすごく伝わってきます。 それはヴィクが誰かとの会話の中でいつも言い返す「女の子じゃなくて・・・・」と言う言葉に象徴されているような気がします。決して悪気があって言っているのではないにしろ、大半の男性はやはり女性を対等の存在だと認めていないのではないか?と言う悶々とした気持ちが伝わってきます。 これはアメリカだけではなく日本でも同じで、あれこれと法律ができても現実が程遠いのは誰もが知っていることです。 若くもないし、後先考えずに動く彼女にハラハラもしますがこれからも活躍してもらいたいですね。 |
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順を追ってヴィクの物語を読んできましたが、時代から考えると団塊世代なんでしょうか、ウーマンリブとか学生運動をやってた世代の人で女性ならきっとはまってしまう主人公だと思います。
些細なことから始まる話が、いつも最後には巨悪に一矢を報いると言う意味では爽快な物語ですが、今回は少し中途半端な形で終ってしまったのではないかなあと。 しかしあまりにも突っ張りすぎと言うか、引かなさすぎと言うかそこがまた彼女の魅力なんでしょうけど、かなり意固地で感情的な性格だなと感じます。 自由の国と言いながら、アメリカと言う国はとても保守的であり男尊女卑の考え方もある意味日本より徹底しているのではないかとさえ思えます。 それでもヴィクと言うキャラクターが生まれるあたり、逆にバイタリティもすごくあって日本ではあまり登場しないような存在でもあり、勧善懲悪とまではいかないかもしれませんが読後はやはりスカっとします。 それと脇役の存在がとてもいいですね。 |
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白と灰色しか思い浮かばないようなイギリス本土から北にあるシェトランド諸島。人工2万人ほどで島中が顔見知りで、なんでもすぐ噂になり秘密を持てないような、そんな島で殺人事件が起こる。同じ島ではないものの、この諸島の出身であるペレス警部が捜査にあたるのだが、8年前に起こった少女の失踪事件と重ね合わせて1人の老人が疑われる。
狭く閉ざされた島での生き辛さのようなものがとても強く伝わってきます。一度偏見にさらされると孤立し孤独から抜け出せなくなり、しかも狭い島であるがゆえにそこから逃げ出す事もできないと言う、田舎ではありがちな話が4人の人間の視点で語られます。 真相がわかってしまえばそれほど複雑なものではないのですが、最後まで犯人は全くわかりませんでした。人々の鬱屈した思いなどが丁寧に描かれていてとても良かったです。 同じ島国である日本人の感覚とは共通するものがあるのではと感じました。 |
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冒頭からの凄まじい暴力描写。この手の話は好みが分かれるところだとは思いますが、タイトルにマッチした追う者、追われる者の執念のようなものを感じました。
フィクションでありながら、これはこのままメキシコの現実であり、大河ドラマのような重みのある30年間の物語です。 これでもか・・・と言わんばかりの権力・暴力・欲望。 人間の愚かさはとどまるところを知らないのかとさえ思えます。 そしてアメリカやメキシコにとどまらず、何よりも国家そのものが犯罪者なのではないかと。 ギャング、マフィアとの癒着や汚職は、現実世界で実際に起こっていることでもあるし、それにからむ中南米に対するアメリカの立ち位置についても書かれていることそのままなのではないかと思います。 読み応えがありましたが、読んだ後相当疲れました。 |
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何というか、すごいお話でした。
大統領はブッシュをイメージして書かれたのかと思いますが、相当極悪人の扱いでしたね。 9・11につていはスルーでしたが、それ以外の部分については現実との違いをあまり感じることがありませんでした。 多くの文献や取材をされたのだと思いますが、いつの時代になっても戦争がなくならない事実は作者が描いている通りなのではないかと思いました。 3つの国で同時に進行していく緊迫感のある話で、理系にはうとい私は専門用語がわかりづらいところもありましたが、知性や技術が人類を滅ぼすのでなく人格の問題だとヘイズマンが語る言葉に、まさにそれにつきるのではと思いました。 |
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