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absinthe さんのレビュー一覧
absintheさんのページへレビュー数20件
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映画を先に見てしまい、あらすじは解っていました。それでも楽しいと言えるぐらいよい本だと思います。上中下の3巻からなって長大な気がしますが、字が大きくて行も少ないので、普通なら上下巻位のボリュームでしょう。一気に読んでしまいました。ローマの名所が次々に現れる観光ミステリー風ですが、ストーリーはスピード感のあるサスペンスで、息をつく暇もありません。何せ強力な爆発物が仕掛けられていて、主人公には時間が無いのです。主人公は必死に知恵を絞り、敵の次の手を推理します。主人公のラングドンはダヴィンチコードで有名な美術史の教授です。次の手を推理するのに教会の彫刻にまつわる歴史や史上の文献を紐解いていきます。
アクションやミステリーでもありますが、面白いのは教会の彫刻や歴史上の文献からいろいろ推理を見蔵競る場面です。科学と宗教の現在の対立についての議論も本書の価値を高めている気がします。特に新味のある切り口とも深いとも思いませんが。本書の進行方向と主張や議論がうまく溶け合っています。 シグマフォースシリーズなど、本書の影響を受けたのは言うまでもなく、こういった歴史×陰謀×サスペンスの新たな風を起こしました。有名になったのはダヴィンチコードの方が先ですが、書かれたのはこの天使と悪魔が先だったようです。 歴史×陰謀×サスペンスというと、クライブカッスラーのダークピットのような冒険者的なイメージでしたが、新たな風を吹き込んだ重要な位置にある気がします。 タイタニックを引き揚げろ クライブカッスラー 1976年 古代ローマ船の航跡をたどれ クライブカッスラー 1988年 インカの黄金を追え クライブカッスラー 1994年 コロンブスの呪縛を解け クライブカッスラー 2000年 天使と悪魔 ダンブラウン 2000年 ★本作はこういう流れの中で書かれた ダヴィンチコード ダンブラウン 2003年 ウバールの悪魔 ジェームズロリンズ 2004年 マギの聖骨 ジェームズロリンズ 2005年 ---- ところで、映画を先に見たのですがずいぶん前のことで細かいことは忘れていました。 なんとなくですが、映画で見たのとストーリーが違っている気がします。小説の方がメッセージは鮮明に感じた気がします。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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SASプリンスマルコシリーズを知らない方は、こちらを参考にどうぞ。
http://osudame.com/novel/N22646 本作でマルコはシルバーマンというロンドンの要人がモスクワに行くまでの間の警護を依頼されます。今回はボディーガードとなるわけですが、国際的なテロリストに命を狙われているためCIA、KGB、MI6までが手を組んで皆で一人を守ろうとするのです。こういった展開ではお約束ですが、異なるスパイ組織は当然のことながら仲良くはできません。足の引っ張り合いが起こります。しかも中には裏切り者もいてテロリストに情報を流しいる疑いも持たれます。頭脳明晰で数億ドルの商談をまとめまくる敏腕ビジネスマンのシルバーマンですが、女の扱いはへたくそで、一人のじゃじゃ馬に振り回され、マスクワ行きを遅らせているのはそれだけが理由という情けない状態にあります。 本作はある意味シリーズの中では異色でマルコはあまり動きまわりません。格闘や銃による対決はあるのですがとても控えめです。今回は敵の攻めを防ぎきるのが仕事ですから。 種馬マルコは今回も下半身が暴走します。シルバーマンが寝ている部屋のソファーで女子大生とXX……、しかもその同じ晩にシルバーマンが寝ている横でその愛人とXX……。仕掛けてくるのは相手なのだからしょうがないのですが、少し拙僧がないマルコです。 ★パメラ・ライス ニコラス・シルバーマンの愛人 座ったまま、パメラは、マルコを見つめながらストッキングに手の爪を這わせていた。自分の引き起こしている気まずい状態には気づいていないようだった。獣のような目をマルコに向けたまま、彼の魂を剥ぐかのように、長い髪を前に垂らしたまま手の動きを続けた。スーツのベストも前が開き、そこから、小さな胸がのぞいていた。マルコは、いかつい手、勝気で無愛想な物腰といった、男性的な雰囲気をところどころに感じさせるこの女性に、それでも不思議な魅力を感じていた。 ★ジーナ・サベット レバノン女 シルバーマンの愛人 女子大生 大柄で、褐色の肌をした、いかにも、地中海育ちといった女だった。それほど美しいとは言えないが、肉感的な丸顔、奇妙な形をした大きな黒のフェルトの帽子。黒いスカートは、歩くたびに、下腹部が覗けるほど、深く割れている。その上、女中のような手をしている。 つまらない作品に分類しようとしましたが、ラストでうーんとなり評価が変わりました。使い振るされた手でだいたい読めてしまうのですがジーンとします。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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ソ連のミサイルの秘密を知る、かつてノーベル物理学賞まで受賞した老科学者を西側へ脱出させるお話です。
その為に、マルコは何とかベルリンの壁を突破しなければならなくなります。今回も、敵も味方も多くの人が死にます。 SASプリンスマルコのベルリンの壁脱出作戦のはじまりはじまり…… ラスト、明かされる老科学者が話したソ連の秘密とは? SASプリンスマルコシリーズを知らない方は、こちらを参考にどうぞ。 http://osudame.com/novel/N22646 地元マフィアの地下室で繰り広げられる隠微なパーティーの描写が妖しさ全開です。例によって、XXもするし、痛そうな拷問シーン、アクションもあってケレン味たっぷり。本作も面白いですよ。ラストの銃撃戦は凄まじく、車が穴だらけの蜂の巣状態になる様が目に浮かぶような迫力です。 本作には、シリーズで長くマルコとお付き合いするクリサンテムとアドラー伯爵夫人が登場します。 本作に登場する美女 ★サマンタ・アドラー ドイツ女 武器商人 美女ですが峰不二子のような存在で、贅沢に目の無い女です。本作に限らずシリーズに何度か登場していて、そのたびにマルコの味方だったり敵だったりします。本作では敵でしょうか味方でしょうか?男性はこういう悪い美女というのが堪らなく魅力的に見えたりします。 ★ソルヴェイグ・メリカ フィンランド女 東ドイツに滞在している女子陸上強化コーチ ブルーの目をした健康そうな若いブロンド美人。マルコは、ウールのセーターに細部までくっきり浮き彫りにされた素晴らしい彼女の胸を、見つめないでいることができなかった。ソルヴェイグは、男性化した伝統的な陸上選手とはまるきり似ても似つかなかった。シュナップスが頬を薔薇色に染め、目の中には、きらきらと星が踊っていた。 健康美あふれる陸上選手だそうです。美と健康の女神。 ……異性のアスリートにあこがれ、胸をときめかせた経験は誰だって一度ならずあると思います。きっと健康な子孫を残したい生物の本能に基づくのでしょう…… 【ロンドン五輪出場】世界各国の美人アスリート30人の画像まとめ http://matome.naver.jp/odai/2134396633034928501 ベルリンの壁を誤解して東ドイツと西ドイツの境界線だったと思っている人が、若い人には割といるのですね。(スパイものが好きな人に、そんな人はいないでしょうが。)ベルリンは東ドイツのど真ん中にあって、ベルリンの東側と西側がそれぞれ東ベルリン、西ベルリンと呼ばれており、西ベルリンは西側諸国の飛び地でまさに陸の孤島となっているのですね。その西ベルリンをぐるっと囲むように建てられているのがベルリンの壁なのです。本作の題名、チェックポイントチャーリーはベルリンの壁を通り抜ける検問所の一つです。 検問所を徒歩で通過しようとする緊張のシーンがダブるので、最近「寒い国から帰ってきたスパイ」を再読したついでにこちらも再読しました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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刑事コロンボは、倒叙物ミステリーのテレビドラマとしては、恐らく最も有名なものでしょう。コロンボシリーズを知らない人はまず居ないと思うのですが、若い人と話していると古畑任三郎は知っているけど、それって何ですか?という人もいてびっくりしたこともあって、念のためここに紹介しておきます。
刑事コロンボシリーズは犯人側の視点から描写されます。犯人側は例外なく地位も名誉もある知的エリートばかりで、パリッとした高級スーツを着こなして普段は高級住宅に住み、常に颯爽としてカッコイイのですが、そこに汚いヨレヨレのコートを着た頭ボサボサの刑事が乗り込んでいくという、そのギャップで楽しませる一話完結型のドラマです。このギャップが面白くておかしくて、ドラマの最大の魅力でした。つまりはエリートの代表たる犯人を庶民の代表コロンボが懲らしめるのです。 コロンボの身なりの不味さは特筆もので、本書ではないですが教会に乗り込んで修道女に浮浪者と間違われ「施しはこちらへどうそ」と連れて行かれそうになって、小声で「私は刑事です。」といいながら手帳を見せ、「あらまぁ、変装していらっしゃったのですね?さすが本職のプロはすごいですわ。私には全く見抜けませんでした。」と誤ったほめられ方をしているシーンが印象に残っています。( ←逆転の構図のエピソードだったと思います。) 悲しいかな小学校の頃、absitnheはテレビをあまり見せてもらえなかったため、ドラマのノベライズを図書館から借りて読んでいました。読書好きになれたのはそれが良かったのかもしれないのですが。本作はその中でも一番好きだった作品です。本作はコロンボの持ち味である本来の倒叙物からさらに一ひねりされていて、あっと驚く仕掛けがされています。 個人的には★10個の作品ですが、思い出補正も相当にかかっているだろうし、そもそも小説のサイトにテレビドラマのノベライズを紹介していいものか・・・ということでこのくらいに。 |
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SAS プリンスマルコのシリーズです。
シリーズの解説はこちらを参考に・・・ http://osudame.com/novel/N22646 本作は人質救出作戦です。ソマリアでアメリカの外交官一家が誘拐されました。犯人側の要求はアメリカ外交関係者の全面撤収ですが、本国の大統領の決断は「一切の譲歩を禁ず」という非情なものでした。そんな中、CIAは犯人との交渉役にプリンスマルコを選ぼうとします。そのときプリンスマルコはリーツェン城(自宅)で恋人のアレクサンドラと週末を過ごしていました。交渉期限が目前に迫る中、CIA本部からプリンスマルコに依頼の電話がかかります。緊迫の一瞬。 受話器を取るマルコ「もしもし、こちらプリンスマルコ」 電話の最中にも恋人といちゃつくマルコ。彼女に覆いかぶさって、中を行きつ戻りつしながら、官能の陶酔に身を任せ話半分で依頼を聞きます。たまらずにアレクサンドラが叫びます「イッヒ・コンメ」。 CIA政策部副部長「私の話を聞いているのかね!マルコ」 プリンスマルコ「ソマリアへ行けばいいんでしょ?」 どんな境遇でもやる気満々なマルコ、怒涛のハイテンションの中での活躍、はじまり始まり…… 本作に登場する美女紹介 ★フッシャ ソマリア人女性 現地レストラン経営者でイタリア人と黒人のミックス 流れるような青い、長いチュニックをぴっちりと着込み、銀と金のブレスレットの金属的な音をたてながら進んできた。 ポニーテイルにして纏めた、ふくらませていない、金の思いヘアピンで留められた髪が、信じられないほど反り返った腰のわれ目まで落ちていた。 女王然とした物腰で、たおやかで同時に官能的な、自分の美しさと磁力に自身のある態度。 本書に登場するソマリアは社会主義体制が強力で、当時強大だったソビエト連邦の事実上の支配下にありました。当時はまだ、東アフリカ大旱魃も国家が三つに分裂したあの内戦もまだ起きていません。そんなわけで、本作のご当地ではCIAはKGBに大きな後れをとっています。 モガジシオ(ソマリアの首都)に着くやいなや、誘拐の黒幕はソマリア政府そのものかもしれない、あらゆる部屋が盗聴されていると警告されます。そうだとすると、敵はソマリア全国民!なんという絶望的な状況でしょう。現地警察の対応ものらりくらり、まったく要領を得ません。 最後の最後までスリルとサスペンス、バイオレンスの連続。死人もいっぱい出るし、××もいっぱい。 なぜ今回の誘拐が仕組まれたのか、最後に謎が明かされます。 底抜けの痛快アクションでもなく、最後は少し物悲しい・・・・ でもとっても面白いですよ!凄いですよ本作も。 |
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SAS プリンスマルコのシリーズです。
シリーズの解説はこちらを参考に・・・ ====本書ではなくて、SAS プリンスマルコシリーズの解説です==== 著者はフランスの作家でルポライターでもあるジェラール・ド・ヴィリエ。 主人公はソン・ナルテス・セルニシーム=プリンス・マルコ・リンゲ。王族に因んでプリンスマルコと呼ばれています。むさくるしいマッチョと違って小奇麗でオシャレな優男風のところがあります。SAS は、殿下という意味だそうでマルコはオーストリア出身の神聖ローマ帝国皇帝の末裔という設定で、城を改築する費用を工面するために危険な任務を引き受けるCIAの手先です。プリンスマルコは昔堅気で義理堅く、8カ国語を操る語学の達人で頭脳明晰でプレイボーイでちょっと悪、そして登場する女性たちにモテまくるのです。 ここまで女を思い通りに動かせたらabsintheも人生違ってたろうな・・・と考えたりもします。 著者は世界の(あくまで当時の)情勢に詳しいようです。どこまで事実かは知りませんが小説にはかなりのリアリティと説得力が感じられます。200巻にも及ぶのか?という長いシリーズなのですが、どの小説も異なる地域が舞台となって、そういったところがインディジョーンズや007を彷彿とさせます。 国家への忠誠心から動くスパイ等と違って自分のために行動していますから、プリンスマルコは普通に危険を怖がります。そういったところがジェイソンボーン等と違って人間味を感じさせ、本作の魅力になっています。危険なカーチェイスを切り抜けた後、「危なかった。死ぬところだった・・・」とハンドルに突っ伏してしばらく呆然としていたり、そういうことは最近の冷静なエージェントはあまりやりません。 時代は小説が書かれたころと同じ1970年代です。この手の最新の世界情勢をふんだんに盛り込んだ小説の例に倣って、本作でも時代に取り残された感があります。 当時ならば世界中が舞台であるというだけで大きな魅力にもなったのでしょうが、今時のスパイ物は1週間でも3か国ぐらいまわるのが普通なので、そういう意味でも時代を感じます。最近のエージェントは全ての行動をそれこそ分刻みで無駄なく行動するのに対し、本作はどことなくのんびり時間が進み、主人公にどこかゆとりを感じさせています。 ところで、さすがはフランス作家というべきか著者は男性読者のツボは心得ているようで、そういう意味でのサービスは満載です。 敵の女工作員をホテルのエレベータで裸にしたうえで、 「協力者になれ、さもないとドアを開けるぞ」(--メ)と脅し、 「そんな事はやめて、恥ずかしい」と懇願されても、 「三つ数える・・・」と非情に迫り、最後には 「何でもあなたの言うことを聞きます。」(#^^#)といわせてしまいます。 場面が目に浮かぶようでしょう?どの作品もこんな調子なのです。さすがは人気作家なだけあって、読者が何を読みたいか知り尽くしているようです。武器を物色している緊迫した場面でさえ、ドンペリニョンを見つけると「あの美人を口説くのに使えそうだ」などと考えていたり・・・ 読者がピコピコハンマーを手にしていたら「頭の中はそれだけかい」と、10ページに一回は主人公の頭を叩いていることでしょう。 ハードボイルドの主人公は、武器には並々ならぬこだわりを見せるのが普通です。もし、フォーサイス等の登場人物だったら手入れのために銃を分解して組み立てるのに2-3ページ使っているところでしょうが、プリンスマルコは武器にほとんどこだわりを見せません。それどころか自宅(オーストリアの古城)に置きっぱなしで携帯すらしていない場合が多く、そういう意味でハードボイルドにあるまじき性格といえます。ためらわずに使うのは男の武器♂ばかりという始末……。しかもこっちは乱れ射ち。(*/ω\*) まぁ、イマドキの若い読者には向かないかもしれませんね。absintheは創元の文庫をもっているのですが、古い本で字も小さくそういった意味でも読みにくくなっています。 女性の描写はあからさまに胸やお尻の大きさや肌の張り具合や顔の皺の様子とか、もう作者が女性をどういう目で見ているか知れてしまうというもので、感性豊かな女性の読者を引き付けるにはやや難があるといえましょう。個人的な主観ではどの作品も★9~10でも良いのですが、さすがに今ならもっと良書があるんじゃないでしょうか。 こういう良質?シリーズが、だれの目にもつかないまま埋もれてしまうのはさびしいと思っています。だから手元に残っている分だけでも再読して記録として残しますね。 ====シリーズ解説ここまで==== 本書は、本国で出版されたシリーズでの第一作にあたります。 シリーズ全体のお色気やバイオレンスは、本作に限って控えめです。 |
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20年前に読んだ作品なのに、印象がまったく消えません。
主人公のキャラクターも立っているのですが、悪人の親玉がすごいのです。 この大悪人は、非情で冷酷で病的なまでに完璧主義で、部下に厳しい一面を見せながら、弱い善人には優しい面も持っている・・・のですが、矛盾して見えるそれら性格が本作の中でまったく不自然さを感じさせない纏まりを見せています。神父や盲目の女性などもそれぞれに魅力的な個性と役割があり、こういった人物たちが、息遣いが聞こえてくるほどリアルに描写されるのです。まったく凄い作家がいたものです。 absinthe は同作家では「鷲は舞い降りた」をベストと思いますが、本作の方を同作家のベストに推す方の方が多いようです。この完成度の作品であればそれも納得できます。 読み終わって、ああ楽しかったという作品ではないです。読み終わった後、極度の緊張からやっと解放されたときの安堵感が楽しみたい方はご一読をどうぞ。 ---- 映像化はされているらしいのですが、absintheは未見です。 |
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片田舎の小さな町に、恐ろしいけど非現実的なお話をする酔っ払いの爺さんがいます。
どこかとんでもなく夢想的でとても本当とは思えないお話なのですが、そのお爺さんは本気で何かに脅えているようでもあります。 たまたまの?車両故障でその町で一夜を過ごすことになるのですが・・・・・というお話です。 いや、これは何かの勘違いで何も怖いものは無いんだ、ただの思い過ごしだ。明日になればみんな笑い話さ。そうにきまってる。 といいながら、少しずつ、少しずつ、恐怖の存在が明かされていきます。 怖いというより、薄気味悪いお話です。 ラブクラフト節炸裂です。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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本作はノンフィクションなので、どうしてもフィクションのミステリーを望む方には不向きです。
アンティキテラというのは島の名前で、その島のそばの海で昔の歯車が発見されたところから全てが始まります。 2000年近くも前に作られたというこの謎の歯車。誰が何の目的で作ったのでしょう? もしも鉄の歯車であったらとっくに海水に溶けていたはずが、歯車が青銅であったがために遺物として残ることができたという歴史の偶然、 潜水夫が歯車を見つけるまで、見つけた歯車がいかに博物館に渡ったか、そしてアマチュア学者たちが博物館の許可を取り付け解析に取り掛かる・・・ どのエピソードも驚きに満ちています。 また、歯車の意味を確かめるため、起こりうる天文現象との対応を推理していくのですが、これはミステリーに十分通じるところがあります。 本書は、考古学的に遺物を調査するという範囲にとどまらず、解き明かそうとした人物たちの半生にも目を向けます。 歴史事実の裏に隠されたドラマがまたすごいのです。 発見者として名を残したいというエゴ、意地の張り合い、そういった熱い人間の思いが伝わってくるのです。 そういったところをあまさずに書いたところはすごいと思います。 私的に難を上げると、むしろドラマにスポットを当てすぎた嫌いがあります。 |
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本書はシリーズものの1冊ですが、ここまで骨にこだわったシリーズは珍しいと思います。
主人公は骨を調べるエキスパートです。その設定が生かされるので、骨から重要な事実が明かされていきます。 シリーズ全編が骨にからむミステリーで、日本語タイトルもほとんどが「・・・の骨」で統一されています。 シリーズ全部を読んだわけではないのですが、私が読んだ中では一番面白い作品でした。 とても面白い小説ですし、意外性もあります。また、ミステリーとしても正統派のように思います。 大げさなアクションはなく、はじめは淡々と進んで行きながら、後半はぐいぐいと引き込まれます。 キャラクターの個性も立っていて飽きさせません。 主人公は教授でもあるのですが、学識もあるし、仕事にも拘りがあって、大学教授によくありがちな愛嬌のある欠点もあります。 教授の個性や癖が物語の方向ともうまくつながっていて、よく考えて書かれているなぁと思いました。 骨を調べる方法論を学生たちに解説しながら作業を進めていく場面は、クスリと笑わせながら楽しい蘊蓄もくどくなら無い程度に披露されます。 実に読みどころが多い作品です。 本作のタネはわりと解りやすいかもしれません。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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面白かった。
肉親が東欧出身ということがたまたまあって、周辺の地理が個人的に身近なものであったため、大変に興味を持ちまたその歴史も面白かったです。 主人公とそれが追う人物と、その人物が追う人物の3つの時系列になって、やや複雑な構成です。どうしてこんな構成の小説にしたのか?それは単に複雑にしたかっただけという指摘があるのですが著者の意図はもっと深いと思われます。東欧のソ連支配時代「前」と「後」と「解放後」の3時代を地理を移動させずつ全部書きたかったのです。 謎や種明かしの印象は、「お粗末」という指摘にうなずけるところもあるのですが、私はとにかくこの周辺の動乱の時代に、生活している人々が何を見て何を感じてきたか知りたくてしょうがなかったので、ただただ感心して最後まで楽しめました。オチは私にはすでに関心が無かったので、オチの粗末さには(他人の評価を見るまで)気付きもしませんでした。 小説にオチは大切ですが。個人的な小説の舞台との距離がそれを上回ることもあるのだなと思いました。 オススメはしません。私の高評価は、単に私の個人的理由です。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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良い意味で、期待と違っていました。
宣伝から受ける印象では、なんだか懲りすぎのトリックで内容が無いミステリーか、もっと軽い小説をイメージしていましたが・・・ 売れっ子であるというだけで、東野圭吾さんを食わず嫌いしていました。もっと早くから読んでいるべきでした。 ドラマとして面白いです。最後まで飽きさせず、人物も一貫してポリシーを持っていて、犯人も探偵も頭脳明晰。 事件は意外にもシンプルで懲りすぎた設定はありません。 しかも最後にはさらにどんでん返し・・・・ しかもホロっとさせて感動もさせます。 評判がいいのには、わけがあったのですね。 東野圭吾さんの他の作品も買い込んできました。読むのが楽しみです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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*最悪の読後感* というランキングをもつ某サイトで、いつも上位にいる作品です。(最上位でも不思議はありません。)
怖いもの見たさで買ってしまいましたが・・・ 噂に違わぬ迫力です。 本書は、amazon では酷評の嵐ですね。それも頷けます。 それぞれ指摘はまっとうで、反論の余地もありません。 粘膜シリーズ(飴村)や筒井康孝のグロ系小説は、ユーモアや笑いによってオブラートにくるまれていましたが、本書はそういった救いがありません。 本書の怖さは、スプラッターとは違います。人間の心の闇の恐ろしさです。 主人公が残酷な場面を見せられ続ける話なのですが、主人公は可哀そうになって、そういうことは止めてほしいと思っていながら、どこか続きを見たいと期待しているのです。 読者の心理と主人公の心理が上手に結びあわされてしまうので、自分の醜さをこれでもかと見せつけられます。 本書のテーマは、読者の心の闇なのです。 愛する女性が犯されているのを見て性的に興奮してしまうというような、本来は人間に有るまじき不条理で醜悪だけれども心の奥底に巣くってどうしようもなく、そして取り除くことができない心理を描いたもので、外面的には虐待趣味の変態が書くのと紙一重なので、読むには注意が必要です。 映像化作品もみたのですが、そちらは完全にオブラートにくるまれて怖さが薄まってしまいました。 「気持ち悪くて吐いたじゃないか、金返せ」という言葉は作者にとって賛辞でしかありません。 |
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私的には好きでたまらない設定なのですが、この作品、好き嫌いは二分しそうです。
最後まで、ほとんど何も解明されないからです。 どうやら3部作の第一部だったらしい。本当の評価が与えられるのは、3部を全部通してからでしょうね。 ラブクラフトの小説で、「宇宙からの色」とか「異次元の色彩」と呼ばれている作品があって、大好きなのですが、それを彷彿とさせる作品です。 排気ガスや工場廃棄物に汚染された我々の世界のほうが身近に見え、健康的で無害にしか見えない大自然のほうが底なしの恐怖の対象として書かれている設定がおもしろいです。(読んでいてナウシカの世界を思い出しました。) |
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インディ―ジョーンズの現代版
歴史事実や科学知識のうんちくも盛りだくさんですが、それよりもアクションにかなり比重が置かれています。 意外な事実、謎とき、裏切りもてんこ盛り。 そういうのが好きな人には堪らないと思います。 人気があるそうですが、よく解る気がします。 シグマフォースシリーズとして、この後同じ主人公で延々と続きますが、これとユダの覚醒が一番面白かったです。 その後は、回を追うごとにテンションがさがっていってしまいますので、これは必読です。 ---- シグマフォースシリーズについて シグマフォースというのは、実在組織(DARPA)の架空の下部組織シグマの特殊工作員たちのことです。 アメリカ合衆国の脅威にあたる危険な物質、装置、その他もろもろを収奪または破壊して国家を危険から守ることを任務にしています。デルタフォースは有名な対テロ専門の組織ですが、シグマフォースは戦闘力の他に科学力も必要とされ、数学で総和を意味するシグマにちなんで名づけられています。隊長のグレイソンピアースをはじめ、すべての隊員は専門の科学知識を持ちかつ戦闘のプロフェッショナルとして訓練されています。そういった隊員が、歴史に埋もれた危険な物質、装置を探しつつ敵を倒していきます。歴史冒険トレジャーハンターの要素とスパイアクションをミックスさせた、大胆で大味で迫力満点の冒険ストーリーです。 シリーズのどの物語も歴史上の謎と関連しています。謎の中から危険な物質・装置が発見されていく様はインディジョーンズの様でもあり、陰謀組織との奪い合いの様子はジェームスボンドの様でもあります。 シリーズを通して、危険な陰謀組織ギルドが影をちらつかせます。(常にギルドが敵というわけではなく、正面の敵とギルドが交互に現れる感じです。) ▼以下、ネタバレ感想 |
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面白かったです。
実は、犯人とトリックは、なぜか私の脳みそでも解ってしまったのですが、それはこの作品の価値を下げることにはなりませんでした。 同じネタをどこかの漫画がパクッたそうですが、それも解る気がします。 複雑な伏線が、最後にピタッとはまる快感を、これほど味わわせてくれる作品は少ないです。 ネタバレは書かないことにします。 |
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文句なく、シグマフォースシリーズで一番面白いです。このシリーズの愛読者なことも手伝って、激甘の評価点となってしまいました。
未知の病原体、喰人族、マルコポーロ、人質、反撃、アクションもこれでもか、これでもかとてんこ盛り そこへもってきて科学知識のうんちくもたっぷり。こういうのが好きな人には堪らない逸品でしょう。 作者は惜しみなく新しいアイデアを盛り込んで、緊張感いっぱいの冒頭部分から物語の終わりまで、読者を飽きさせません。 この巻がおもしろすぎるのがいけないのか、作者が本作でネタを使いきってしまったからか、シリーズの面白さはこの巻の後は下降線をたどっていきます。 以下2巻がシリーズ最高峰で双璧でしょうね。 ユダの覚醒(シリーズ3) マギの聖骨(シリーズ1) ▼以下、ネタバレ感想 |
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