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absinthe さんのレビュー一覧

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レビュー数36

全36件 1~20 1/2ページ
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No.36:
(8pt)

天使と悪魔の感想

映画を先に見てしまい、あらすじは解っていました。それでも楽しいと言えるぐらいよい本だと思います。上中下の3巻からなって長大な気がしますが、字が大きくて行も少ないので、普通なら上下巻位のボリュームでしょう。一気に読んでしまいました。ローマの名所が次々に現れる観光ミステリー風ですが、ストーリーはスピード感のあるサスペンスで、息をつく暇もありません。何せ強力な爆発物が仕掛けられていて、主人公には時間が無いのです。主人公は必死に知恵を絞り、敵の次の手を推理します。主人公のラングドンはダヴィンチコードで有名な美術史の教授です。次の手を推理するのに教会の彫刻にまつわる歴史や史上の文献を紐解いていきます。
アクションやミステリーでもありますが、面白いのは教会の彫刻や歴史上の文献からいろいろ推理を見蔵競る場面です。科学と宗教の現在の対立についての議論も本書の価値を高めている気がします。特に新味のある切り口とも深いとも思いませんが。本書の進行方向と主張や議論がうまく溶け合っています。
シグマフォースシリーズなど、本書の影響を受けたのは言うまでもなく、こういった歴史×陰謀×サスペンスの新たな風を起こしました。有名になったのはダヴィンチコードの方が先ですが、書かれたのはこの天使と悪魔が先だったようです。

歴史×陰謀×サスペンスというと、クライブカッスラーのダークピットのような冒険者的なイメージでしたが、新たな風を吹き込んだ重要な位置にある気がします。

タイタニックを引き揚げろ クライブカッスラー 1976年
古代ローマ船の航跡をたどれ クライブカッスラー 1988年
インカの黄金を追え クライブカッスラー 1994年
コロンブスの呪縛を解け クライブカッスラー 2000年
天使と悪魔 ダンブラウン 2000年 ★本作はこういう流れの中で書かれた
ダヴィンチコード ダンブラウン 2003年
ウバールの悪魔 ジェームズロリンズ 2004年
マギの聖骨 ジェームズロリンズ 2005年

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ところで、映画を先に見たのですがずいぶん前のことで細かいことは忘れていました。
なんとなくですが、映画で見たのとストーリーが違っている気がします。小説の方がメッセージは鮮明に感じた気がします。

▼以下、ネタバレ感想
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天使と悪魔 (上) (角川文庫)
ダン・ブラウン天使と悪魔 についてのレビュー
No.35: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

SAS/ロンドンスパイ連合作戦の感想

SASプリンスマルコシリーズを知らない方は、こちらを参考にどうぞ。
http://osudame.com/novel/N22646

本作でマルコはシルバーマンというロンドンの要人がモスクワに行くまでの間の警護を依頼されます。今回はボディーガードとなるわけですが、国際的なテロリストに命を狙われているためCIA、KGB、MI6までが手を組んで皆で一人を守ろうとするのです。こういった展開ではお約束ですが、異なるスパイ組織は当然のことながら仲良くはできません。足の引っ張り合いが起こります。しかも中には裏切り者もいてテロリストに情報を流しいる疑いも持たれます。頭脳明晰で数億ドルの商談をまとめまくる敏腕ビジネスマンのシルバーマンですが、女の扱いはへたくそで、一人のじゃじゃ馬に振り回され、マスクワ行きを遅らせているのはそれだけが理由という情けない状態にあります。
本作はある意味シリーズの中では異色でマルコはあまり動きまわりません。格闘や銃による対決はあるのですがとても控えめです。今回は敵の攻めを防ぎきるのが仕事ですから。

種馬マルコは今回も下半身が暴走します。シルバーマンが寝ている部屋のソファーで女子大生とXX……、しかもその同じ晩にシルバーマンが寝ている横でその愛人とXX……。仕掛けてくるのは相手なのだからしょうがないのですが、少し拙僧がないマルコです。

★パメラ・ライス ニコラス・シルバーマンの愛人
 座ったまま、パメラは、マルコを見つめながらストッキングに手の爪を這わせていた。自分の引き起こしている気まずい状態には気づいていないようだった。獣のような目をマルコに向けたまま、彼の魂を剥ぐかのように、長い髪を前に垂らしたまま手の動きを続けた。スーツのベストも前が開き、そこから、小さな胸がのぞいていた。マルコは、いかつい手、勝気で無愛想な物腰といった、男性的な雰囲気をところどころに感じさせるこの女性に、それでも不思議な魅力を感じていた。
 
★ジーナ・サベット レバノン女 シルバーマンの愛人 女子大生
 大柄で、褐色の肌をした、いかにも、地中海育ちといった女だった。それほど美しいとは言えないが、肉感的な丸顔、奇妙な形をした大きな黒のフェルトの帽子。黒いスカートは、歩くたびに、下腹部が覗けるほど、深く割れている。その上、女中のような手をしている。

つまらない作品に分類しようとしましたが、ラストでうーんとなり評価が変わりました。使い振るされた手でだいたい読めてしまうのですがジーンとします。


▼以下、ネタバレ感想
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SAS/ロンドンスパイ連合作戦 (1980年) (創元推理文庫―プリンス・マルコ・シリーズ)
No.34:
(7pt)

デセプション・ポイントの感想

歴史×ミステリーが好きだと言っておきながら、ダンブラウンは初めて読みました。「天使と悪魔」や「ダヴィンチコード」は既に映画で見てしまったのでそれ以外と思って探していたら、テーマも好みに合いそうな本作をこのサイトで見つけました。ダンブラウンは、もっと歴史蘊蓄を語るのが大好きといった思い込みをしていましたが、本作は期待とは違っていました。それでも科学空想+政治陰謀といったabsintheの大好きなジャンルでした。

本作は、NASAが北極で科学上の大発見をしたけれども実は発見は捏造で、それは誰が何のために仕組んだのか?という流れで進みます。発見が捏造であるというのはネタバレではありません。冒頭の4ページで読者にばらされています。タイトル自体がデセプション(欺き)ですしね。
NASAの存続を標榜する現職大統領とNASAの分割民営化を訴える上院議員の対立と、捏造を隠ぺいしようとする組織と暴こうとする主人公たちの対立が見ものになっています。最後には実は黒幕が……という大どんでん返しがあって仰天します。(absintheは、すっかり騙されました。少しズルイとは思いましたが。)そしてラストにもう一回ぎゃふんとさせられサービス満点です。
まったく想像で根拠なしに、ダンブラウンという作家はもっと繊細で緻密なのかと思ってましたが、ケレン味たっぷり豪快で大胆な作風で、アクションも冒険ものに引けを取らないくらい面白かったです。ダンブラウンは、むしろジェームズロリンズやクライブカッスラーに近いのですね。

absintheは大満足ですが、アクションより緻密な話が好きな人に向いていません。
悪の陰謀組織と暴こうとする正義の人という単純な勧善懲悪はかろうじて避けています。しかし、賄賂の話や陰謀に加担する人々の描写はやっぱり紋切り型の感がぬぐえません。
政治駆け引きに関する会話は、全体的に底が浅い印象を受けました。NASAをめぐっての討論でテンチがいう「NASAを全廃か存続かの2択で答えなさい」という問いかけは幼稚で、トンデモ論者に典型的によくあるパターンです。「お前、先生が死ねって言ったら死ぬのかよ。」みたいなレベルであまり知性が感じられません。こんな挑発に簡単に乗ってしまうセクストンも情けなく、NASAの諸問題を討論の時にはじめて考えたようにしか見えないのです。ある程度単純化しないとスピード感が損なわれるので致し方ないのですが、良くも悪くも底の深さよりスピードを優先した作品となっています。
発見が捏造であることは既に読者に明かされているので、小説の冒頭から捏造が暴かれるまではだいたい先が読めてしまいます。途中で急展開してから俄然面白くなってきて退屈だったことなど忘れてしまいますが、それ以前に止めてしまう人もいるかもしれないと思うと残念です。

absinthは読み終わるまで知らなかったのですが、本作も映画化されていたようで、確かに映画化しやすい話だなぁとは思いました。absintheはまだ未見です。


▼以下、ネタバレ感想
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デセプション・ポイント〈上〉 (角川文庫)
ダン・ブラウンデセプション・ポイント についてのレビュー
No.33: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

SAS/ラオス黄金の三角地帯の感想

SASプリンスマルコシリーズを知らない方は、こちらを参考にどうぞ。
http://osudame.com/novel/N22646

プリンスマルコはCIAの協力者ですが、今回の相手はCIA内部です。世界の阿片の半分を生産すると言われるメコン川流域で麻薬組織と対決しますが、CIA内部に敵がいるのです。(ネタバレではないです、冒頭で読者に明かされます。)
本作のマルコは、アクション控えめで足を棒にして証拠集めに奔走する探偵のような存在です。当時、1970年代のアジアがどんなだったか垣間見ることができます。今回の相手となるCIAの責任者チ・ヴィラールは私欲で動く悪人とは異なり、国家への忠誠心から嫌々ながら麻薬仕事に協力しているのです。対決には哀愁が伴います。調査の依頼人デヴィッド・ワイズは本作以外にも登場するCIAの大物で、ワイズの息子は同じ調査で命を落としています。マルコは1ドルで彼の依頼を引き受けました。
任務の合間に協力者の少女のために結婚式の真似事までしてその両親を安心させようとするマルコ。目の前で死んだほとんど見ず知らずの協力者の亡骸にそっと花を手向けるマルコ。あそこも堅いが義理にも堅い男なのです。
酔っ払いがシャンパンを開け損なってコルクを壊してしまうと「こうやって開けるんだ!」とばかりにボトルの首を吹っ飛ばすマルコ……さすがはフランス作家。

マルコシリーズでは登場する女性が大事です。以下を参考にどうぞ。

★ウボル タイ人少女 
 娘は小さな胸の線をくっきり見せる黒いシャツブラウスを着、少年のような腰、信じられないほどほっそりした胴回りで、人形を思わせた。分厚い唇、小さな鼻、非常に細い目、それらが官能的であると同時に、おびえたような感じにもしていた。
 服を脱がしにかかると、シャツブラウスと黒ズボンの他には、黒いレースのごく小さなパンティしかつけていなかった。マルコはその見事な体に見とれた。小さな、引き締まった乳房、弓型に反った尻、肌はサテンのようにつやつやしている。

★シンシア バーの女主人
 最初、女神カリピュグスさえねたみそうな腰部へと続く、非の打ちどころのない、むしろ逞しいまでの曲線を描く長い脚が見えたきりだった。それらが、どぎつい緑色のパンタロンにぴったり包まれている。次いで、カウンター越しに体を伸ばして氷のかけらを取っていたその若い女は、体をまっすぐにしてドアの方を向いた。
 ひどく長いまつげに陰影をつけられた、いかにも純真そうな青い大きな目に、マルコはショックを受けないわけにはいかなかった。


SAS/ラオス黄金の三角地帯 (創元推理文庫 197-35 プリンス・マルコ・シリーズ)
No.32:
(7pt)

寒い星から帰ってこないスパイ

本書「アフリカの爆弾」に収録されている作品です。
題名だけはジョン・ル・カレの名作のパロディですが、内容は全く関係ありません。
ある会社員が、上司に簡単な仕事を頼まれて寒い星へ出かけなけらばならなくなるのですが、主人公はスパイにあこがれており、上司の指示をすべてスパイ活動をして来いという暗示と解釈し、頓珍漢な冒険が始まります。
ただのうっかり者の勘違い小説とも読めるし、スパイ小説にありがちな、大事なことは明示的に話さずすべて暗示して匂わせるという手法を皮肉った小説とも読めるのですが。
文学部唯野教授で記号論、解釈学、現象学を見事に論じた筒井康隆です。もっと深いでしょう。テクストに対する読みと深読みもテーマです。

アフリカの爆弾 (角川文庫 緑 305-2)
筒井康隆アフリカの爆弾 についてのレビュー
No.31: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

SAS/チェックポイント・チャーリーの感想

ソ連のミサイルの秘密を知る、かつてノーベル物理学賞まで受賞した老科学者を西側へ脱出させるお話です。
その為に、マルコは何とかベルリンの壁を突破しなければならなくなります。今回も、敵も味方も多くの人が死にます。
SASプリンスマルコのベルリンの壁脱出作戦のはじまりはじまり……
ラスト、明かされる老科学者が話したソ連の秘密とは?

SASプリンスマルコシリーズを知らない方は、こちらを参考にどうぞ。
http://osudame.com/novel/N22646

地元マフィアの地下室で繰り広げられる隠微なパーティーの描写が妖しさ全開です。例によって、XXもするし、痛そうな拷問シーン、アクションもあってケレン味たっぷり。本作も面白いですよ。ラストの銃撃戦は凄まじく、車が穴だらけの蜂の巣状態になる様が目に浮かぶような迫力です。
本作には、シリーズで長くマルコとお付き合いするクリサンテムとアドラー伯爵夫人が登場します。

本作に登場する美女
★サマンタ・アドラー ドイツ女 武器商人
 美女ですが峰不二子のような存在で、贅沢に目の無い女です。本作に限らずシリーズに何度か登場していて、そのたびにマルコの味方だったり敵だったりします。本作では敵でしょうか味方でしょうか?男性はこういう悪い美女というのが堪らなく魅力的に見えたりします。

★ソルヴェイグ・メリカ フィンランド女 東ドイツに滞在している女子陸上強化コーチ
 ブルーの目をした健康そうな若いブロンド美人。マルコは、ウールのセーターに細部までくっきり浮き彫りにされた素晴らしい彼女の胸を、見つめないでいることができなかった。ソルヴェイグは、男性化した伝統的な陸上選手とはまるきり似ても似つかなかった。シュナップスが頬を薔薇色に染め、目の中には、きらきらと星が踊っていた。

健康美あふれる陸上選手だそうです。美と健康の女神。
……異性のアスリートにあこがれ、胸をときめかせた経験は誰だって一度ならずあると思います。きっと健康な子孫を残したい生物の本能に基づくのでしょう……
【ロンドン五輪出場】世界各国の美人アスリート30人の画像まとめ http://matome.naver.jp/odai/2134396633034928501

ベルリンの壁を誤解して東ドイツと西ドイツの境界線だったと思っている人が、若い人には割といるのですね。(スパイものが好きな人に、そんな人はいないでしょうが。)ベルリンは東ドイツのど真ん中にあって、ベルリンの東側と西側がそれぞれ東ベルリン、西ベルリンと呼ばれており、西ベルリンは西側諸国の飛び地でまさに陸の孤島となっているのですね。その西ベルリンをぐるっと囲むように建てられているのがベルリンの壁なのです。本作の題名、チェックポイントチャーリーはベルリンの壁を通り抜ける検問所の一つです。
検問所を徒歩で通過しようとする緊張のシーンがダブるので、最近「寒い国から帰ってきたスパイ」を再読したついでにこちらも再読しました。


▼以下、ネタバレ感想
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SAS/チェックポイント・チャーリー (1982年) (創元推理文庫―プリンス・マルコ・シリーズ〈41〉)
No.30:
(7pt)

寒い国から帰ってきたスパイの感想

この作品には、(というかルカレの作品には)美女をはべらせスポーツカーを飛ばし、銃弾を交わしながら悪の大物を追いつめるようなスパイは登場しません。悲しいかな、偏狭で融通のきかない巨大な官僚機構の歯車にすぎないと書かれています。そういった設定は大変にリアルに感じられました。作品には現地スパイへの送金方法、敵の目のくらまし方など多くのスパイ小説なら書かれないような要素が紹介されます。もちろんフィクションなのでしょうが、登場人物にのみにスポットを当てる作品と異なり組織そのものがリアルに描かれるところが面白いのです。
本作は動きに乏しく、走ったり跳んだり格闘したりというのはごくわずかで、大半が会話で成り立っています。嘘か真実か腹を探り合いながらの激しい頭脳戦が見どころになっています。会話の進行はマトリョーシカを開けるようであり、嘘を開けて中を見ると中にもまた嘘があります。チェスとして例えるよりむしろ、ブラフ全開のポーカーでしょう。しかも大胆なイカサマポーカーで、カードが配られる前から仕掛けが始まっているのです。そしてゲームは話者の意図が明らかになるにつれ、さらに緊張感を増していきます。会話だけでこれほどの緊張感を保てるのは凄いものがあり、幾多のスパイものの中にあって決して避けては通れない作品であることは確かです。雨後の筍生え出した凡百のスパイ小説とは異なって、独特の位置を確立したことは確かで価値の高い作品であることは誰もが認めることでしょう。しかし、absinthはこの作品を好きなのかと聞かれると答えるのは難しいです。やはり作品のトーンが重苦しく、わくわくしながら再読できる作品ではないからです。
衝撃のどんでん返しはありますが、これは良くあるように読者をビックリさせようと意図するものではありません。何も信じることは許されない、スパイには確かなものは何もないのだと思い知らせるために用意されています。それにしてもなんというニヒリズムでしょう。任務のためには名誉も外聞も捨てわざわざ恥をさらし、冷徹に貫いてきた作戦の成否が、主人公にわずかばかりに残された最後の人間性によって暗転するのですから。
社会主義は、その崇高な目的のためには個人の犠牲が必要なのだと教えています。そういう恐ろしい教義を民衆に強制する悪の社会主義を倒すためにこそ、正義の民主国家のスパイ組織があるのであって、そしてその崇高な目的のためにはやはり個人の犠牲が必要なのだ……というどうしようもない矛盾。犠牲をやめさせるためには犠牲が必要なのだという矛盾。それが本書のテーマです。こういうテーマを選んだら、ルンルン気分で楽しく読める作品にはなりえないでしょう。
absintheは荒唐無稽と言われても、もう少し華のある作品が好きです。

寒い国から帰ってきたスパイ (ハヤカワ文庫 NV 174)
No.29:
(7pt)

死者のメッセージの感想

刑事コロンボについて
http://osudame.com/novel/N3745

刑事コロンボのシリーズはどれも好きなのですが、その中で本作は「さらば提督」と並んで、absintheが一番好きなお話です。
コロンボが劇中で、いきなり講演をさせられてしまう場面があります。コロンボが刑事としてその人間観について演説するのですが、そのシーンがすごく印象に残ります。
「私は人間が大好きなんですよ。それが凶悪な犯人であったとしても、必ずどこか尊敬できるところがあるんですよ……」
小説やドラマというのは、こういうところが読みどころなのかと感心したものです。淀川長治さんが語った、どんな駄目な映画にも必ず一つ以上勉強になるところがあるんですよを思い出しました。
思い出補正などが明らかにかかっていて、個人的には★10なのですが、良質ミステリーは今では星の数ほどあり、オススメとしてはここで止めておきます。

刑事コロンボ 死者のメッセージ (二見文庫―ザ・ミステリコレクション)
No.28: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

さらば提督の感想

刑事コロンボは、倒叙物ミステリーのテレビドラマとしては、恐らく最も有名なものでしょう。コロンボシリーズを知らない人はまず居ないと思うのですが、若い人と話していると古畑任三郎は知っているけど、それって何ですか?という人もいてびっくりしたこともあって、念のためここに紹介しておきます。
刑事コロンボシリーズは犯人側の視点から描写されます。犯人側は例外なく地位も名誉もある知的エリートばかりで、パリッとした高級スーツを着こなして普段は高級住宅に住み、常に颯爽としてカッコイイのですが、そこに汚いヨレヨレのコートを着た頭ボサボサの刑事が乗り込んでいくという、そのギャップで楽しませる一話完結型のドラマです。このギャップが面白くておかしくて、ドラマの最大の魅力でした。つまりはエリートの代表たる犯人を庶民の代表コロンボが懲らしめるのです。
コロンボの身なりの不味さは特筆もので、本書ではないですが教会に乗り込んで修道女に浮浪者と間違われ「施しはこちらへどうそ」と連れて行かれそうになって、小声で「私は刑事です。」といいながら手帳を見せ、「あらまぁ、変装していらっしゃったのですね?さすが本職のプロはすごいですわ。私には全く見抜けませんでした。」と誤ったほめられ方をしているシーンが印象に残っています。( ←逆転の構図のエピソードだったと思います。)
悲しいかな小学校の頃、absitnheはテレビをあまり見せてもらえなかったため、ドラマのノベライズを図書館から借りて読んでいました。読書好きになれたのはそれが良かったのかもしれないのですが。本作はその中でも一番好きだった作品です。本作はコロンボの持ち味である本来の倒叙物からさらに一ひねりされていて、あっと驚く仕掛けがされています。
個人的には★10個の作品ですが、思い出補正も相当にかかっているだろうし、そもそも小説のサイトにテレビドラマのノベライズを紹介していいものか・・・ということでこのくらいに。

刑事コロンボ さらば提督 (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)
リチャード・レヴィンソンさらば提督 についてのレビュー
No.27: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

SAS/ソマリア人質奪回作戦の感想

SAS プリンスマルコのシリーズです。
シリーズの解説はこちらを参考に・・・
http://osudame.com/novel/N22646

本作は人質救出作戦です。ソマリアでアメリカの外交官一家が誘拐されました。犯人側の要求はアメリカ外交関係者の全面撤収ですが、本国の大統領の決断は「一切の譲歩を禁ず」という非情なものでした。そんな中、CIAは犯人との交渉役にプリンスマルコを選ぼうとします。そのときプリンスマルコはリーツェン城(自宅)で恋人のアレクサンドラと週末を過ごしていました。交渉期限が目前に迫る中、CIA本部からプリンスマルコに依頼の電話がかかります。緊迫の一瞬。
受話器を取るマルコ「もしもし、こちらプリンスマルコ」
電話の最中にも恋人といちゃつくマルコ。彼女に覆いかぶさって、中を行きつ戻りつしながら、官能の陶酔に身を任せ話半分で依頼を聞きます。たまらずにアレクサンドラが叫びます「イッヒ・コンメ」。
CIA政策部副部長「私の話を聞いているのかね!マルコ」
プリンスマルコ「ソマリアへ行けばいいんでしょ?」

どんな境遇でもやる気満々なマルコ、怒涛のハイテンションの中での活躍、はじまり始まり……

本作に登場する美女紹介
★フッシャ  ソマリア人女性 現地レストラン経営者でイタリア人と黒人のミックス
 流れるような青い、長いチュニックをぴっちりと着込み、銀と金のブレスレットの金属的な音をたてながら進んできた。
 ポニーテイルにして纏めた、ふくらませていない、金の思いヘアピンで留められた髪が、信じられないほど反り返った腰のわれ目まで落ちていた。
 女王然とした物腰で、たおやかで同時に官能的な、自分の美しさと磁力に自身のある態度。

本書に登場するソマリアは社会主義体制が強力で、当時強大だったソビエト連邦の事実上の支配下にありました。当時はまだ、東アフリカ大旱魃も国家が三つに分裂したあの内戦もまだ起きていません。そんなわけで、本作のご当地ではCIAはKGBに大きな後れをとっています。
モガジシオ(ソマリアの首都)に着くやいなや、誘拐の黒幕はソマリア政府そのものかもしれない、あらゆる部屋が盗聴されていると警告されます。そうだとすると、敵はソマリア全国民!なんという絶望的な状況でしょう。現地警察の対応ものらりくらり、まったく要領を得ません。

最後の最後までスリルとサスペンス、バイオレンスの連続。死人もいっぱい出るし、××もいっぱい。
なぜ今回の誘拐が仕組まれたのか、最後に謎が明かされます。
底抜けの痛快アクションでもなく、最後は少し物悲しい・・・・
でもとっても面白いですよ!凄いですよ本作も。

SAS/ソマリア人質奪回作戦 (創元推理文庫 197-4 プリンス・マルコ・シリーズ)
No.26: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

SAS/イスタンブール潜水艦消失の感想

SAS プリンスマルコのシリーズです。
シリーズの解説はこちらを参考に・・・

====本書ではなくて、SAS プリンスマルコシリーズの解説です====
著者はフランスの作家でルポライターでもあるジェラール・ド・ヴィリエ。
主人公はソン・ナルテス・セルニシーム=プリンス・マルコ・リンゲ。王族に因んでプリンスマルコと呼ばれています。むさくるしいマッチョと違って小奇麗でオシャレな優男風のところがあります。SAS は、殿下という意味だそうでマルコはオーストリア出身の神聖ローマ帝国皇帝の末裔という設定で、城を改築する費用を工面するために危険な任務を引き受けるCIAの手先です。プリンスマルコは昔堅気で義理堅く、8カ国語を操る語学の達人で頭脳明晰でプレイボーイでちょっと悪、そして登場する女性たちにモテまくるのです。
ここまで女を思い通りに動かせたらabsintheも人生違ってたろうな・・・と考えたりもします。

著者は世界の(あくまで当時の)情勢に詳しいようです。どこまで事実かは知りませんが小説にはかなりのリアリティと説得力が感じられます。200巻にも及ぶのか?という長いシリーズなのですが、どの小説も異なる地域が舞台となって、そういったところがインディジョーンズや007を彷彿とさせます。
国家への忠誠心から動くスパイ等と違って自分のために行動していますから、プリンスマルコは普通に危険を怖がります。そういったところがジェイソンボーン等と違って人間味を感じさせ、本作の魅力になっています。危険なカーチェイスを切り抜けた後、「危なかった。死ぬところだった・・・」とハンドルに突っ伏してしばらく呆然としていたり、そういうことは最近の冷静なエージェントはあまりやりません。
時代は小説が書かれたころと同じ1970年代です。この手の最新の世界情勢をふんだんに盛り込んだ小説の例に倣って、本作でも時代に取り残された感があります。
当時ならば世界中が舞台であるというだけで大きな魅力にもなったのでしょうが、今時のスパイ物は1週間でも3か国ぐらいまわるのが普通なので、そういう意味でも時代を感じます。最近のエージェントは全ての行動をそれこそ分刻みで無駄なく行動するのに対し、本作はどことなくのんびり時間が進み、主人公にどこかゆとりを感じさせています。
ところで、さすがはフランス作家というべきか著者は男性読者のツボは心得ているようで、そういう意味でのサービスは満載です。
敵の女工作員をホテルのエレベータで裸にしたうえで、
「協力者になれ、さもないとドアを開けるぞ」(--メ)と脅し、
「そんな事はやめて、恥ずかしい」と懇願されても、
「三つ数える・・・」と非情に迫り、最後には
「何でもあなたの言うことを聞きます。」(#^^#)といわせてしまいます。
場面が目に浮かぶようでしょう?どの作品もこんな調子なのです。さすがは人気作家なだけあって、読者が何を読みたいか知り尽くしているようです。武器を物色している緊迫した場面でさえ、ドンペリニョンを見つけると「あの美人を口説くのに使えそうだ」などと考えていたり・・・
読者がピコピコハンマーを手にしていたら「頭の中はそれだけかい」と、10ページに一回は主人公の頭を叩いていることでしょう。

ハードボイルドの主人公は、武器には並々ならぬこだわりを見せるのが普通です。もし、フォーサイス等の登場人物だったら手入れのために銃を分解して組み立てるのに2-3ページ使っているところでしょうが、プリンスマルコは武器にほとんどこだわりを見せません。それどころか自宅(オーストリアの古城)に置きっぱなしで携帯すらしていない場合が多く、そういう意味でハードボイルドにあるまじき性格といえます。ためらわずに使うのは男の武器♂ばかりという始末……。しかもこっちは乱れ射ち。(*/ω\*)

まぁ、イマドキの若い読者には向かないかもしれませんね。absintheは創元の文庫をもっているのですが、古い本で字も小さくそういった意味でも読みにくくなっています。
女性の描写はあからさまに胸やお尻の大きさや肌の張り具合や顔の皺の様子とか、もう作者が女性をどういう目で見ているか知れてしまうというもので、感性豊かな女性の読者を引き付けるにはやや難があるといえましょう。個人的な主観ではどの作品も★9~10でも良いのですが、さすがに今ならもっと良書があるんじゃないでしょうか。

こういう良質?シリーズが、だれの目にもつかないまま埋もれてしまうのはさびしいと思っています。だから手元に残っている分だけでも再読して記録として残しますね。
====シリーズ解説ここまで====

本書は、本国で出版されたシリーズでの第一作にあたります。
シリーズ全体のお色気やバイオレンスは、本作に限って控えめです。

SAS/イスタンブール潜水艦消失 (創元推理文庫 197-2 プリンス・マルコ・シリーズ)
No.25:
(8pt)

死にゆく者への祈りの感想

20年前に読んだ作品なのに、印象がまったく消えません。
主人公のキャラクターも立っているのですが、悪人の親玉がすごいのです。
この大悪人は、非情で冷酷で病的なまでに完璧主義で、部下に厳しい一面を見せながら、弱い善人には優しい面も持っている・・・のですが、矛盾して見えるそれら性格が本作の中でまったく不自然さを感じさせない纏まりを見せています。神父や盲目の女性などもそれぞれに魅力的な個性と役割があり、こういった人物たちが、息遣いが聞こえてくるほどリアルに描写されるのです。まったく凄い作家がいたものです。
absinthe は同作家では「鷲は舞い降りた」をベストと思いますが、本作の方を同作家のベストに推す方の方が多いようです。この完成度の作品であればそれも納得できます。

読み終わって、ああ楽しかったという作品ではないです。読み終わった後、極度の緊張からやっと解放されたときの安堵感が楽しみたい方はご一読をどうぞ。

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映像化はされているらしいのですが、absintheは未見です。

死にゆく者への祈り (ハヤカワ文庫 NV 266)
ジャック・ヒギンズ死にゆく者への祈り についてのレビュー
No.24: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

SAS/セーシェル沖暗礁地帯の感想

SAS プリンスマルコのシリーズです。
シリーズの解説はこちらを参考に・・・
http://osudame.com/novel/N22646

創元文庫の扉から引用すると・・・
-------------------------
>>イスラエルが買い入れた「ヒロシマ」型原爆30個分の酸化ウラニウムを積んだ貨物船がインド洋で沈んだ。積み荷を追う各国の特務機関。CIAの特命を受けマルコはセーシェル諸島に。
-------------------------
言いたいことはわかるのですが、創元文庫は方針を誤っています。プリンスマルコシリーズを手にとってレジに向かう人は、上記のようなことを知りたいのではないです。
どういう女が登場するのか。そこがもっと重要です。要チェックポイントは以下を参考にしてください。

★イリヤ・イナリ フィンランド女 ルポライター
 アーモンド形の目をしており、錆色のアイシャドウをつけていた。彼女は見るからに、その道の経験は深いようだった。顔には皺が全くなく18歳くらいにも見えた。胸はかたく張りつめ、たるんではいなかった。二本の長い焼けた足の肌理のこまかい肌の下では筋肉の動きが良く見て取れた。仕草にも自信が満ちている。ただの性的魅力という以上のものが、彼女からは伝わってくるのだ。彼女の腰つきを見ていると、どんなお堅い人物でもいい加減おかしな気分にさせられるに違いない。

★ロンダ オーストラリア女 チャーター船の船員
 薔薇色がかったランニングから、こぼれ落ちそうな胸は、尻同様、この世のものとは思えなかった。縮れた赤毛が、角ばった顔を枠どっており、その顔は少々長すぎて、おまけに大きな近眼の眼鏡を掛けているときた。残念だ。こんな女神みたいな体の上に、こんな顔がのっているとは。

カーアクションあり、お色気あり、それから海中を探検するシーンもあって飽きません。
それからちょっとグロい拷問シーンもあります。


▼以下、ネタバレ感想
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SAS/セーシェル沖暗礁地帯 (創元推理文庫 197-1 プリンス・マルコ・シリーズ)
No.23: 4人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

追撃の森の感想

Jディーバーは初めて読んだのですが、やはり多作の人気作家だけあって人物の描写はうまいです。
ぼんやり読んでいてもどのセリフが誰の言葉かすぐ分かるくらい上手にかき分けています。だから読むのに苦痛は無く、スラスラすすんでいきます。
ストーリーは大まかに言って、2人の女が森の中を逃げ回って2人の凶悪犯人が追いかけるというもので、全体の7~8割が題名どおりの森の中の追撃です。
逃げる方も追う方も相手を目くらましするためにトリックを掛けて欺きます。この知恵比べも面白いのですが、さらに面白いのは人物の描写です。
逃げる二人も追う二人もそれぞれが異なるタイプの凸凹コンビで、追跡劇だけでなくコンビの中の対立も起こって、単調になりそうな話を2転3転させて全く飽きさせません。
どの人物も魅力たっぷり、読者は逃げる方も追う方も知らず知らずに応援していることでしょう。おしまいにはドンデン返しもあるのですが、それより面白いのは連続して起こる小さなどんでん返しの方です。劇場で見せるような大掛かりなマジックではなくて、器用な手品師がテーブルで見せる鮮やかな連続技みたいな逸品です。

逃げる主人公ブリンは、頭が良く強い女なのに生き方が不器用で、私生活はへたくそと言っていいでしょう。もどかしくて応援したくなってしまいます。
追いかける極悪人ハートのセリフも大好きです。測るのは2回。切るのは1回。
完璧主義者が一人いると、話が引き締まりますね。


ところで、人物がせっかくリアルで魅力的だったのに、ストーリーが強引に人物を引っ張りまわしたため、全体でリアリティが壊れてしまっています。
どんでん返しの後には、それなら解るというところも出てくる半面、逆に余計に不自然なところもちらほらと。


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追撃の森 (文春文庫)
ジェフリー・ディーヴァー追撃の森 についてのレビュー
No.22:
(7pt)

クトゥルフの呼び声

これをラヴクラフト代表作に挙げる人も多いと思われます。
他の小説よりもスケールが大きく、また本当にラヴクラフトらしい作品でもあります。



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ラヴクラフト全集 (2) (創元推理文庫 (523‐2))
No.21: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

ループの感想

面白い。
びっくりしました。「リング」「らせん」という2作品の続編なのですが、前2作とまったくことなる作風なのに深い関係があるという。この手があったかとうならざるえません。作風は完全に前2作と異なっています。
これまでが、ホラー風、ミステリー風、と続いてきたのに本作はSFでした。
(★それでもSFとしては破たんしています。登場するコンピュータが能力強すぎです。しかし、それはこの作品の魅力と無関係です。)
しかもテンポもアイデアもよくて、冒険ものに移行しつつ最後には意外な展開もみせてくれます。
前2作は恐怖から逃れることが目的であったのに対して、本作では主人公の進行方向に自らの目標が見えるのが良いです。
それでいて、最後にまた意外な展開まであります。
ケレン味たっぷり、アイデアたっぷり、いいんじゃないでしょうか。
リングやらせんは好きになれなかったけれど、ループを読んだことが無いという人で、SFが好きな人は、騙されたと思って読んでみては?
本小説は、面白い遊園地を与えてくれて、詳細は遊んでたしかめてね、と言われて遊びまくって十分に満喫してきた気分になれました。

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他のレビューを見てやはりと思ったのですが・・・・
どうも「リング」や「らせん」の世界観が好きな人は、どうも本作を低評価にするようです。まぁしょうがないとは思います。続きとして読みたい方は避けた方がいいでしょうね。
良くも悪くも、前二作の世界観は完全に壊され、しかも無かったことにされています。


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ループ (角川ホラー文庫)
鈴木光司ループ についてのレビュー
No.20:
(8pt)

エーリッヒ・ツァンの音楽

主人公は、ヨーロッパのオーゼイユという街でヴィオールを弾く老人と出会います。
老人の部屋にはなにやら恐ろしい秘密が隠されているようですが・・・というお話です。
短いので通勤時間内に読めてしまいます。
でも、密度が濃くて面白い話でした。

老人の雰囲気、怪しげな部屋の雰囲気、そしてラストの衝撃、どれも面白いです。




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ラヴクラフト全集 (2) (創元推理文庫 (523‐2))
No.19:
(8pt)

インスマウスの影

片田舎の小さな町に、恐ろしいけど非現実的なお話をする酔っ払いの爺さんがいます。
どこかとんでもなく夢想的でとても本当とは思えないお話なのですが、そのお爺さんは本気で何かに脅えているようでもあります。
たまたまの?車両故障でその町で一夜を過ごすことになるのですが・・・・・というお話です。

いや、これは何かの勘違いで何も怖いものは無いんだ、ただの思い過ごしだ。明日になればみんな笑い話さ。そうにきまってる。
といいながら、少しずつ、少しずつ、恐怖の存在が明かされていきます。

怖いというより、薄気味悪いお話です。
ラブクラフト節炸裂です。


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ラヴクラフト全集 (1) (創元推理文庫 (523‐1))
No.18:
(7pt)

THE ROSWELL 封印された異星人の遺言 タイラー・ロックの冒険3の感想

タイラーロックシリーズと、シグマフォースシリーズはどちらも大好きで、いつも発売日に入手しています。
今回も純粋に面白かったです。また、後半ホロっとさせられもしました。
タイラーロックシリーズは、なんとなくシグマフォースシリーズの2番煎じのように脳内整理されていましたが、なかなかどうして面白くなってきました。
少なくとも全3作の中では一番です。
著者は技術オタクのようで、最先端のテクノロジーに造詣が深いようです。毎回、新しい技術(しかもだいたいが実在のテクノロジー)がてんこ盛りで飽きさせません。

クライマックスはとてもよかった。こういう小説にありがちで、クライマックスで二手に分かれて、カットバックでそれぞれのアクションがあるけれどどちらの見せ場も良かった。
期待以上でした。満足です。こういう作家が、日本にも現れるといいのだけれども。



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THE ROSWELL 封印された異星人の遺言 下 タイラー・ロックの冒険3 (竹書房文庫)
No.17:
(7pt)

特殊防諜班 連続誘拐の感想

いまならジェームズロリンズや、クライブカッスラーが書きそうな娯楽作品を、こんな時代に日本で書いていた人がいたとは。しかも、現代の感覚で読んでも面白い。
娯楽作品として、現実離れはしていても、荒唐無稽に振り切る寸前でうまく止めており、そのバランス感覚が面白いです。
著者が空手の高段位者ということもあって、格闘シーンもかっこいいです。

少し時代を感じさせるなぁと思うのは一点、携帯電話さえあれば済むところで登場人物がいつも電話ボックスに駆け込むところ。それもまたおもしろいですが。

特殊防諜班 連続誘拐 (講談社文庫)
今野敏特殊防諜班 連続誘拐 についてのレビュー


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