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absinthe さんのレビュー一覧
absintheさんのページへ書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点6.34pt |
レビュー数79件
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映画を先に見てしまい、あらすじは解っていました。それでも楽しいと言えるぐらいよい本だと思います。上中下の3巻からなって長大な気がしますが、字が大きくて行も少ないので、普通なら上下巻位のボリュームでしょう。一気に読んでしまいました。ローマの名所が次々に現れる観光ミステリー風ですが、ストーリーはスピード感のあるサスペンスで、息をつく暇もありません。何せ強力な爆発物が仕掛けられていて、主人公には時間が無いのです。主人公は必死に知恵を絞り、敵の次の手を推理します。主人公のラングドンはダヴィンチコードで有名な美術史の教授です。次の手を推理するのに教会の彫刻にまつわる歴史や史上の文献を紐解いていきます。
アクションやミステリーでもありますが、面白いのは教会の彫刻や歴史上の文献からいろいろ推理を見蔵競る場面です。科学と宗教の現在の対立についての議論も本書の価値を高めている気がします。特に新味のある切り口とも深いとも思いませんが。本書の進行方向と主張や議論がうまく溶け合っています。 シグマフォースシリーズなど、本書の影響を受けたのは言うまでもなく、こういった歴史×陰謀×サスペンスの新たな風を起こしました。有名になったのはダヴィンチコードの方が先ですが、書かれたのはこの天使と悪魔が先だったようです。 歴史×陰謀×サスペンスというと、クライブカッスラーのダークピットのような冒険者的なイメージでしたが、新たな風を吹き込んだ重要な位置にある気がします。 タイタニックを引き揚げろ クライブカッスラー 1976年 古代ローマ船の航跡をたどれ クライブカッスラー 1988年 インカの黄金を追え クライブカッスラー 1994年 コロンブスの呪縛を解け クライブカッスラー 2000年 天使と悪魔 ダンブラウン 2000年 ★本作はこういう流れの中で書かれた ダヴィンチコード ダンブラウン 2003年 ウバールの悪魔 ジェームズロリンズ 2004年 マギの聖骨 ジェームズロリンズ 2005年 ---- ところで、映画を先に見たのですがずいぶん前のことで細かいことは忘れていました。 なんとなくですが、映画で見たのとストーリーが違っている気がします。小説の方がメッセージは鮮明に感じた気がします。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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absintheには面白かったです。印象では★9くらいでしょうか。
スピード感とスリルは満点なのですが、アメリカ人が戦争を描くとどうしてもこうなってしまうという、良くも悪くもお手本のようになっています。 北朝鮮が、いきなり米国軍艦を日本海の公海上で拿捕して、半島まで曳航してしまいます。時間が限られる中、空母戦闘群による絶望的な救出作戦が始まります。戦闘場面はかなりの迫力で、こういうのが好きな人ならそれだけでも読む価値ありだと思います。政治的思惑よりもより、戦闘場面の迫力に重きを置いた作品です。戦闘機はバンバン撃ち落とされるし、SEALSや海兵隊も登場して地上戦まで起こるサービスぶりです。1990年代の作品なので、F14トムキャットやA6イントルーダーが健在で、そういった航空機が敵と戦うので好きな人には堪らない逸品になるでしょう。absintheは、キースダグラスを読むのは初めてでした。古本屋で一揃いセットになっているのを衝動買いしてしまいましたが、幸運な拾いものでした。 とても楽しい本作にも難はあります。やたらと登場人物が多いのに違いが書き分けられていないのも感情移入を阻害しています。一人の人物を追いかけるのが好きな人には向いていないでしょうね。(absintheにも少し苦痛でした。)主人公は戦闘機パイロットで、500ページの中で最初の200ページは主人公でした。しかし続く200ページで場面が地上戦になってからほとんど出てこなくなり、クライマックスの地上、空中の乱戦にもう一度登場しますが、せっかく親しみを持ち始めた人物がこうやって隠されると、そこで続きを読む手が止まってしまうのですよね。人物に深みはありません。殺すとはどういうことか悩み始めたり、自分の腕が信頼できなくなってパイロットを辞めようかとまで思う人物まで現れますが、一過性の堰熱のように治ってしまいます。これは、スピードとスリルを楽しむためのものであって、戦争とは何か深く考えさせようとしたものではないのでしょうね。 民主党嫌いの作者が書いた共和党万歳のプロバガンダとも言えそうなのりで、吐くほどではないと思いますが戦争賛美に嫌悪感情を持つ人は閲覧注意ともいえます。軍事用語が苦手な人は避けた方がいいでしょう。巻末に用語辞典がついていますが、これを見なければ意味がわからない人では外国語を読むのと変わりません。全編軍事用語ばかりなのに文中の解説は最小限です。 最後の方で北朝鮮の本当の思惑が明かされます。後で明かされることですが、作戦は最初にアメリカが考えていたよりもずっと危険な賭けだったのです。北朝鮮にとって、勝てるはずの無いはずだったアメリカを敵に回した挑発行為。その思惑は何だったのか?それが唯一のミステリー要素でしょうか。 |
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SASプリンスマルコシリーズを知らない方は、こちらを参考にどうぞ。
http://osudame.com/novel/N22646 本作でマルコはシルバーマンというロンドンの要人がモスクワに行くまでの間の警護を依頼されます。今回はボディーガードとなるわけですが、国際的なテロリストに命を狙われているためCIA、KGB、MI6までが手を組んで皆で一人を守ろうとするのです。こういった展開ではお約束ですが、異なるスパイ組織は当然のことながら仲良くはできません。足の引っ張り合いが起こります。しかも中には裏切り者もいてテロリストに情報を流しいる疑いも持たれます。頭脳明晰で数億ドルの商談をまとめまくる敏腕ビジネスマンのシルバーマンですが、女の扱いはへたくそで、一人のじゃじゃ馬に振り回され、マスクワ行きを遅らせているのはそれだけが理由という情けない状態にあります。 本作はある意味シリーズの中では異色でマルコはあまり動きまわりません。格闘や銃による対決はあるのですがとても控えめです。今回は敵の攻めを防ぎきるのが仕事ですから。 種馬マルコは今回も下半身が暴走します。シルバーマンが寝ている部屋のソファーで女子大生とXX……、しかもその同じ晩にシルバーマンが寝ている横でその愛人とXX……。仕掛けてくるのは相手なのだからしょうがないのですが、少し拙僧がないマルコです。 ★パメラ・ライス ニコラス・シルバーマンの愛人 座ったまま、パメラは、マルコを見つめながらストッキングに手の爪を這わせていた。自分の引き起こしている気まずい状態には気づいていないようだった。獣のような目をマルコに向けたまま、彼の魂を剥ぐかのように、長い髪を前に垂らしたまま手の動きを続けた。スーツのベストも前が開き、そこから、小さな胸がのぞいていた。マルコは、いかつい手、勝気で無愛想な物腰といった、男性的な雰囲気をところどころに感じさせるこの女性に、それでも不思議な魅力を感じていた。 ★ジーナ・サベット レバノン女 シルバーマンの愛人 女子大生 大柄で、褐色の肌をした、いかにも、地中海育ちといった女だった。それほど美しいとは言えないが、肉感的な丸顔、奇妙な形をした大きな黒のフェルトの帽子。黒いスカートは、歩くたびに、下腹部が覗けるほど、深く割れている。その上、女中のような手をしている。 つまらない作品に分類しようとしましたが、ラストでうーんとなり評価が変わりました。使い振るされた手でだいたい読めてしまうのですがジーンとします。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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元CIA職員が正義の泥棒になったという感じです。主人公のロビンはロビンフッドにでも因んだのでしょうか?
巻き上げたお金はこっそり貧しい人たちに……という設定がちょっと古めかしいというか、時代を一回りしてかえって新鮮というか、評価は簡単ではありません。 私が何度か旅行したモルドヴァが出てくるので、それだけを理由に買って読んでみたのですが、思わぬ拾いものだった気もします。 アクションは面白いです。盗みに入るシーン、誰かに見つかってごまかすシーンなどは読みごたえがありました。また、マフィアとかかわりになり、困難な盗みを強制されてしまうのですが、そういった設定も面白かったです。ラストはハリウッド的爽快な終わり方でころも好感が持てます。流行りの今風の小説らしく、場面転換は早く次々と新しい舞台に移ります。でも、各国の描写は何だか平たいです。これだとどこの国を描写してもあまり変わらないかもしれません。 こういった所謂冒険ものは新しい主人公像を求めています。女に対して優しいか、潔癖か、だらしないか、風貌は優男かマッチョか、その他欠点は、特殊能力は……、考え付く限りの組み合わせが試されていて、新しい人物像がなかなか生み出せないのが現状です。特にハードボイルドタッチの場合は寡黙な男が多いので、どうしてもどこかの小説とキャラクタが被ることになります。義賊という設定はそれほど斬新とはいえませんが、最近は確かにそういうのが少なかったようにも思います。なんだか同じ主人公の今後の活躍には期待してみたいです。主人公像は、Jディーヴァーの追撃の森に出てきたハートを思い浮かべました。(本作の主人公ロビンの方がずっと純朴でかつ女に弱いですが。) 現在はよほど変わった特徴を持たせないとなかなか記憶に残りにくいのです。どこぞの映画では足の代わりに機関銃をつけた女なども登場して、そこまでしなければ新味が出せないのか!と驚いたのを覚えています。作家も苦労することでしょうねぇ。 義賊となったロビンモナークの今後の活躍に期待します。 |
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歴史×ミステリーが好きだと言っておきながら、ダンブラウンは初めて読みました。「天使と悪魔」や「ダヴィンチコード」は既に映画で見てしまったのでそれ以外と思って探していたら、テーマも好みに合いそうな本作をこのサイトで見つけました。ダンブラウンは、もっと歴史蘊蓄を語るのが大好きといった思い込みをしていましたが、本作は期待とは違っていました。それでも科学空想+政治陰謀といったabsintheの大好きなジャンルでした。
本作は、NASAが北極で科学上の大発見をしたけれども実は発見は捏造で、それは誰が何のために仕組んだのか?という流れで進みます。発見が捏造であるというのはネタバレではありません。冒頭の4ページで読者にばらされています。タイトル自体がデセプション(欺き)ですしね。 NASAの存続を標榜する現職大統領とNASAの分割民営化を訴える上院議員の対立と、捏造を隠ぺいしようとする組織と暴こうとする主人公たちの対立が見ものになっています。最後には実は黒幕が……という大どんでん返しがあって仰天します。(absintheは、すっかり騙されました。少しズルイとは思いましたが。)そしてラストにもう一回ぎゃふんとさせられサービス満点です。 まったく想像で根拠なしに、ダンブラウンという作家はもっと繊細で緻密なのかと思ってましたが、ケレン味たっぷり豪快で大胆な作風で、アクションも冒険ものに引けを取らないくらい面白かったです。ダンブラウンは、むしろジェームズロリンズやクライブカッスラーに近いのですね。 absintheは大満足ですが、アクションより緻密な話が好きな人に向いていません。 悪の陰謀組織と暴こうとする正義の人という単純な勧善懲悪はかろうじて避けています。しかし、賄賂の話や陰謀に加担する人々の描写はやっぱり紋切り型の感がぬぐえません。 政治駆け引きに関する会話は、全体的に底が浅い印象を受けました。NASAをめぐっての討論でテンチがいう「NASAを全廃か存続かの2択で答えなさい」という問いかけは幼稚で、トンデモ論者に典型的によくあるパターンです。「お前、先生が死ねって言ったら死ぬのかよ。」みたいなレベルであまり知性が感じられません。こんな挑発に簡単に乗ってしまうセクストンも情けなく、NASAの諸問題を討論の時にはじめて考えたようにしか見えないのです。ある程度単純化しないとスピード感が損なわれるので致し方ないのですが、良くも悪くも底の深さよりスピードを優先した作品となっています。 発見が捏造であることは既に読者に明かされているので、小説の冒頭から捏造が暴かれるまではだいたい先が読めてしまいます。途中で急展開してから俄然面白くなってきて退屈だったことなど忘れてしまいますが、それ以前に止めてしまう人もいるかもしれないと思うと残念です。 absinthは読み終わるまで知らなかったのですが、本作も映画化されていたようで、確かに映画化しやすい話だなぁとは思いました。absintheはまだ未見です。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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どんな小説なのか表題からわからず、そういう意味でこういうナンセンスな表題はそれだけで面白いです。書店でチラリと見かけてどんな内容だろうと想像しながら手には取らず前を横切っていて、想像だけたくましくしていた本です。
ストーリーは要約すると、大人しかった海洋生物たちが人類に対してまるで悪意を持ったかのように攻撃を始めるのですが、人類はなにが起こったのか理解できず、科学者を集めて究明と解決に乗り出すというものです。人類による環境破壊を攻撃と解釈した何者かがいるのかもしれません。ところで人類は情けなくも足並みがそろわず、国家間や役所間の壁に阻まれなかなか手を合わせることができません。その間にも次の災厄が……。といった話です。災厄の場面は、読みごたえがありました。 環境問題あり、深海の謎の知性とのコンタクト有り、アイデアてんこ盛りです。しかも後半はアクションもあり、クライマックスには戦闘まで起こります。上中下の長大なストーリーですが最後までほぼ楽しく読めます。 海洋生物の描写にはこだわりがあったようです。人類への攻撃に加担する様々な海洋生物は、その特徴や能力が生かされるのですが、へぇそんな生物もいるんだぁと本小説で初めて知った事実も多く、勉強にはなりました。 同著者の作風は全般にそうですが、将来にも交わることのない様々な人物が現れては消えていきます。誰が主要人物なのか解らないうちは、新たな人物が登場するたびにまたかぁと思って手が止まってしまうのですよね。上巻が特に苦痛でした。でも上巻さえ抜けてしまえばあとで挫折することは無いと思います。 全体は、明らかに詰め込みすぎで、テーマをそれぞれ別の小説にしたらそれぞれ良作になった予感もします。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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SASプリンスマルコシリーズを知らない方は、こちらを参考にどうぞ。
http://osudame.com/novel/N22646 プリンスマルコはCIAの協力者ですが、今回の相手はCIA内部です。世界の阿片の半分を生産すると言われるメコン川流域で麻薬組織と対決しますが、CIA内部に敵がいるのです。(ネタバレではないです、冒頭で読者に明かされます。) 本作のマルコは、アクション控えめで足を棒にして証拠集めに奔走する探偵のような存在です。当時、1970年代のアジアがどんなだったか垣間見ることができます。今回の相手となるCIAの責任者チ・ヴィラールは私欲で動く悪人とは異なり、国家への忠誠心から嫌々ながら麻薬仕事に協力しているのです。対決には哀愁が伴います。調査の依頼人デヴィッド・ワイズは本作以外にも登場するCIAの大物で、ワイズの息子は同じ調査で命を落としています。マルコは1ドルで彼の依頼を引き受けました。 任務の合間に協力者の少女のために結婚式の真似事までしてその両親を安心させようとするマルコ。目の前で死んだほとんど見ず知らずの協力者の亡骸にそっと花を手向けるマルコ。あそこも堅いが義理にも堅い男なのです。 酔っ払いがシャンパンを開け損なってコルクを壊してしまうと「こうやって開けるんだ!」とばかりにボトルの首を吹っ飛ばすマルコ……さすがはフランス作家。 マルコシリーズでは登場する女性が大事です。以下を参考にどうぞ。 ★ウボル タイ人少女 娘は小さな胸の線をくっきり見せる黒いシャツブラウスを着、少年のような腰、信じられないほどほっそりした胴回りで、人形を思わせた。分厚い唇、小さな鼻、非常に細い目、それらが官能的であると同時に、おびえたような感じにもしていた。 服を脱がしにかかると、シャツブラウスと黒ズボンの他には、黒いレースのごく小さなパンティしかつけていなかった。マルコはその見事な体に見とれた。小さな、引き締まった乳房、弓型に反った尻、肌はサテンのようにつやつやしている。 ★シンシア バーの女主人 最初、女神カリピュグスさえねたみそうな腰部へと続く、非の打ちどころのない、むしろ逞しいまでの曲線を描く長い脚が見えたきりだった。それらが、どぎつい緑色のパンタロンにぴったり包まれている。次いで、カウンター越しに体を伸ばして氷のかけらを取っていたその若い女は、体をまっすぐにしてドアの方を向いた。 ひどく長いまつげに陰影をつけられた、いかにも純真そうな青い大きな目に、マルコはショックを受けないわけにはいかなかった。 |
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本書「アフリカの爆弾」に収録されている作品です。
題名だけはジョン・ル・カレの名作のパロディですが、内容は全く関係ありません。 ある会社員が、上司に簡単な仕事を頼まれて寒い星へ出かけなけらばならなくなるのですが、主人公はスパイにあこがれており、上司の指示をすべてスパイ活動をして来いという暗示と解釈し、頓珍漢な冒険が始まります。 ただのうっかり者の勘違い小説とも読めるし、スパイ小説にありがちな、大事なことは明示的に話さずすべて暗示して匂わせるという手法を皮肉った小説とも読めるのですが。 文学部唯野教授で記号論、解釈学、現象学を見事に論じた筒井康隆です。もっと深いでしょう。テクストに対する読みと深読みもテーマです。 |
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ソ連のミサイルの秘密を知る、かつてノーベル物理学賞まで受賞した老科学者を西側へ脱出させるお話です。
その為に、マルコは何とかベルリンの壁を突破しなければならなくなります。今回も、敵も味方も多くの人が死にます。 SASプリンスマルコのベルリンの壁脱出作戦のはじまりはじまり…… ラスト、明かされる老科学者が話したソ連の秘密とは? SASプリンスマルコシリーズを知らない方は、こちらを参考にどうぞ。 http://osudame.com/novel/N22646 地元マフィアの地下室で繰り広げられる隠微なパーティーの描写が妖しさ全開です。例によって、XXもするし、痛そうな拷問シーン、アクションもあってケレン味たっぷり。本作も面白いですよ。ラストの銃撃戦は凄まじく、車が穴だらけの蜂の巣状態になる様が目に浮かぶような迫力です。 本作には、シリーズで長くマルコとお付き合いするクリサンテムとアドラー伯爵夫人が登場します。 本作に登場する美女 ★サマンタ・アドラー ドイツ女 武器商人 美女ですが峰不二子のような存在で、贅沢に目の無い女です。本作に限らずシリーズに何度か登場していて、そのたびにマルコの味方だったり敵だったりします。本作では敵でしょうか味方でしょうか?男性はこういう悪い美女というのが堪らなく魅力的に見えたりします。 ★ソルヴェイグ・メリカ フィンランド女 東ドイツに滞在している女子陸上強化コーチ ブルーの目をした健康そうな若いブロンド美人。マルコは、ウールのセーターに細部までくっきり浮き彫りにされた素晴らしい彼女の胸を、見つめないでいることができなかった。ソルヴェイグは、男性化した伝統的な陸上選手とはまるきり似ても似つかなかった。シュナップスが頬を薔薇色に染め、目の中には、きらきらと星が踊っていた。 健康美あふれる陸上選手だそうです。美と健康の女神。 ……異性のアスリートにあこがれ、胸をときめかせた経験は誰だって一度ならずあると思います。きっと健康な子孫を残したい生物の本能に基づくのでしょう…… 【ロンドン五輪出場】世界各国の美人アスリート30人の画像まとめ http://matome.naver.jp/odai/2134396633034928501 ベルリンの壁を誤解して東ドイツと西ドイツの境界線だったと思っている人が、若い人には割といるのですね。(スパイものが好きな人に、そんな人はいないでしょうが。)ベルリンは東ドイツのど真ん中にあって、ベルリンの東側と西側がそれぞれ東ベルリン、西ベルリンと呼ばれており、西ベルリンは西側諸国の飛び地でまさに陸の孤島となっているのですね。その西ベルリンをぐるっと囲むように建てられているのがベルリンの壁なのです。本作の題名、チェックポイントチャーリーはベルリンの壁を通り抜ける検問所の一つです。 検問所を徒歩で通過しようとする緊張のシーンがダブるので、最近「寒い国から帰ってきたスパイ」を再読したついでにこちらも再読しました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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本作は前作と違って、うんちくと事件推理の関係が改善されて好感が持てました。
歴史的背景のうんちくが妥当かどうかはよくわからないのですが、面白かったです。 |
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本作は読者を楽しませるためのどんでん返しで最後まで楽しく読めます。映画にもなった有名作品ですが、アクションは控えめなほうだと思います。
absintheは、本書より先に映像作品を見てしまったので結末は知っていました……がそれでも興味の大半が失われるようなことは無かったです。 要塞からの脱出もハラハラの連続で最後まで飽きがこない作品です。 タイプとしてはabsintheの大好きなタイプの作品ですが、absintheは主人公がストーリーを引っ張っていく話が好きで、ストーリーが登場人物を引っ張りまわす話ではありません。本作は残念ながら後者に感じられました。 主人公の意図があまりに読者に隠されていると、主人公を応援するのが難しくなってしまいます。 |
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この作品には、(というかルカレの作品には)美女をはべらせスポーツカーを飛ばし、銃弾を交わしながら悪の大物を追いつめるようなスパイは登場しません。悲しいかな、偏狭で融通のきかない巨大な官僚機構の歯車にすぎないと書かれています。そういった設定は大変にリアルに感じられました。作品には現地スパイへの送金方法、敵の目のくらまし方など多くのスパイ小説なら書かれないような要素が紹介されます。もちろんフィクションなのでしょうが、登場人物にのみにスポットを当てる作品と異なり組織そのものがリアルに描かれるところが面白いのです。
本作は動きに乏しく、走ったり跳んだり格闘したりというのはごくわずかで、大半が会話で成り立っています。嘘か真実か腹を探り合いながらの激しい頭脳戦が見どころになっています。会話の進行はマトリョーシカを開けるようであり、嘘を開けて中を見ると中にもまた嘘があります。チェスとして例えるよりむしろ、ブラフ全開のポーカーでしょう。しかも大胆なイカサマポーカーで、カードが配られる前から仕掛けが始まっているのです。そしてゲームは話者の意図が明らかになるにつれ、さらに緊張感を増していきます。会話だけでこれほどの緊張感を保てるのは凄いものがあり、幾多のスパイものの中にあって決して避けては通れない作品であることは確かです。雨後の筍生え出した凡百のスパイ小説とは異なって、独特の位置を確立したことは確かで価値の高い作品であることは誰もが認めることでしょう。しかし、absinthはこの作品を好きなのかと聞かれると答えるのは難しいです。やはり作品のトーンが重苦しく、わくわくしながら再読できる作品ではないからです。 衝撃のどんでん返しはありますが、これは良くあるように読者をビックリさせようと意図するものではありません。何も信じることは許されない、スパイには確かなものは何もないのだと思い知らせるために用意されています。それにしてもなんというニヒリズムでしょう。任務のためには名誉も外聞も捨てわざわざ恥をさらし、冷徹に貫いてきた作戦の成否が、主人公にわずかばかりに残された最後の人間性によって暗転するのですから。 社会主義は、その崇高な目的のためには個人の犠牲が必要なのだと教えています。そういう恐ろしい教義を民衆に強制する悪の社会主義を倒すためにこそ、正義の民主国家のスパイ組織があるのであって、そしてその崇高な目的のためにはやはり個人の犠牲が必要なのだ……というどうしようもない矛盾。犠牲をやめさせるためには犠牲が必要なのだという矛盾。それが本書のテーマです。こういうテーマを選んだら、ルンルン気分で楽しく読める作品にはなりえないでしょう。 absintheは荒唐無稽と言われても、もう少し華のある作品が好きです。 |
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刑事コロンボについて
http://osudame.com/novel/N3745 刑事コロンボのシリーズはどれも好きなのですが、その中で本作は「さらば提督」と並んで、absintheが一番好きなお話です。 コロンボが劇中で、いきなり講演をさせられてしまう場面があります。コロンボが刑事としてその人間観について演説するのですが、そのシーンがすごく印象に残ります。 「私は人間が大好きなんですよ。それが凶悪な犯人であったとしても、必ずどこか尊敬できるところがあるんですよ……」 小説やドラマというのは、こういうところが読みどころなのかと感心したものです。淀川長治さんが語った、どんな駄目な映画にも必ず一つ以上勉強になるところがあるんですよを思い出しました。 思い出補正などが明らかにかかっていて、個人的には★10なのですが、良質ミステリーは今では星の数ほどあり、オススメとしてはここで止めておきます。 |
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刑事コロンボは、倒叙物ミステリーのテレビドラマとしては、恐らく最も有名なものでしょう。コロンボシリーズを知らない人はまず居ないと思うのですが、若い人と話していると古畑任三郎は知っているけど、それって何ですか?という人もいてびっくりしたこともあって、念のためここに紹介しておきます。
刑事コロンボシリーズは犯人側の視点から描写されます。犯人側は例外なく地位も名誉もある知的エリートばかりで、パリッとした高級スーツを着こなして普段は高級住宅に住み、常に颯爽としてカッコイイのですが、そこに汚いヨレヨレのコートを着た頭ボサボサの刑事が乗り込んでいくという、そのギャップで楽しませる一話完結型のドラマです。このギャップが面白くておかしくて、ドラマの最大の魅力でした。つまりはエリートの代表たる犯人を庶民の代表コロンボが懲らしめるのです。 コロンボの身なりの不味さは特筆もので、本書ではないですが教会に乗り込んで修道女に浮浪者と間違われ「施しはこちらへどうそ」と連れて行かれそうになって、小声で「私は刑事です。」といいながら手帳を見せ、「あらまぁ、変装していらっしゃったのですね?さすが本職のプロはすごいですわ。私には全く見抜けませんでした。」と誤ったほめられ方をしているシーンが印象に残っています。( ←逆転の構図のエピソードだったと思います。) 悲しいかな小学校の頃、absitnheはテレビをあまり見せてもらえなかったため、ドラマのノベライズを図書館から借りて読んでいました。読書好きになれたのはそれが良かったのかもしれないのですが。本作はその中でも一番好きだった作品です。本作はコロンボの持ち味である本来の倒叙物からさらに一ひねりされていて、あっと驚く仕掛けがされています。 個人的には★10個の作品ですが、思い出補正も相当にかかっているだろうし、そもそも小説のサイトにテレビドラマのノベライズを紹介していいものか・・・ということでこのくらいに。 |
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本書は、「新生 上下巻」、「真実」「覚醒 上下巻」の5冊からなる超長編の真ん中の1冊です。
誕生したクリストファーは少しずつ超能力を発揮し始めます。ある日、人類は未知の天体が地球に接近してくることに気付きます。天体はぶつかるのでしょうか? 落ちてくる天体にニガヨモギと名付けるセンスはどうかと思いますが、本書は名前の由来をカルビンとホッブスの登場キャラクターに因んでつけたと説明して、ネタバレ回避を狙っています。この後、前作を上回る天変地異と災厄が人類をこれでもかと苦しめます。まるで黙示録のように…… absinthe は全5巻でこの巻だけが好きです。でも、この1冊だけ読んでもさっぱり解らないでしょうね。 人類を襲う大災害の描写がとても面白くて緊張感が続きます。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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本書は、「新生 上下巻」、「真実」「覚醒 上下巻」の5冊からなる超長編の最初の2冊です。
キリストの遺骸を包んだとされるトリノの聖骸布を科学的に調査するところから始まります。 本書が書かれたのは、年代測定をした結果聖骸布は偽物であると判定された後で、小説内でも科学者たちは偽物であると判定しますが、その結果に疑いを持つ一人の科学者が極秘に聖骸布から取り出した細胞の培養を始めてしまいます。その結果誕生したのはだれでしょう……? まぁ題名から想像はつくでしょうけど。名前はクリストファーと名付けられます。 荒唐無稽な設定に見えますが、小説の設定が現在の科学と矛盾する場合には、登場する科学者がちゃんと疑問を呈して放置されないので描写がとても説得力を持っています。 嘆きの壁の様子や、普段目にすることのないユダヤ教の礼拝の様子なども丁寧に書かれて面白いです。また、科学者が聖骸布を観測するところなどは埃を持ち込んで結果を台無しにしないように最大限気をつけている様子も描写されて緊迫感もあります。 |
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14世紀の修道院が舞台の歴史ミステリーです。説明するまでもない有名作品で、古いですが映画化もされていますね。
体裁は少々複雑で、主人公はバスカヴィルのウィリアムと見習修道士メルクのアドソの二人なのですが、ラテン語で書かれたアドソの手記を「私」が現代に訳したものという形で書かれています。修道院で連続殺人事件が起こり、二人が解決していくというミステリー作品です。 歴史ものが嫌いな人には苦痛もあるかもしれません。当時の宗教論争や修道会や教会の名前がこれでもかと出てきます。しかしながら、テーマの求心力がとても強いので細部を読み飛ばしてもついていけなくなることはまずありません。amazonのレビューを見ると、バチカンと教会の関係、当時の歴史的勢力図など頭に入って無いと読めないかのように解説する人もいますが、それほどではありません。ちなみにabsintheはそういった解説に書かれていた内容は全然知りませんでした。 そういう意味で、知識をひけらかしたいという動機見え見えな、うんちくを列挙してばかりで内容の無い凡百の小説とはずいぶん異なっています。 登場人物が多くて覚えるのも大変ですが、読みにくい感じはせず最後まで一気に読めました。「罪と罰」や「星を継ぐもの」と並んでミステリーでは私の生涯ベストに入ります。 著者のウンベルト・エーコは記号論の大家で哲学者です。哲学の中で重大なテーマに、テキストとは何かという論争があります。ウンベルトエーコの生涯の研究テーマだったようで、本書でもその問いかけが随所に見られています。 この哲学上の問題を知っているとより楽しく読めるのです。テーマは哲学ネタや神学論争ばかりでもなく、知識の迷宮と化した現代の大学の在り方や学問の在り方への批判なども見られ、読めば読むほどその奥深さに驚かされます。教会の様子が現代社会の暗喩にもなっているのです。 ここまで読むと、教養の押し売り小説のようにも見えてしまうのですが、押し付けがましくはありません。ページをめくるたびに、厚みのある教養と知識が読者に襲いかかってきますが、若手の教師にありそうな「ここに板書した範囲は来週までに暗記して来い!」みたいなのりはなく、優しい老教授が「覚えられるだけ覚えてきなさい。あまり無理せんでな。」といってくれるような印象です。師弟の師にあたるウィリアムの設定が、人間として丸くなっているからだと思います。彼は若いころは熱血漢だったのに理想に燃えすぎることや偏狭さがどれだけ恐ろしいかを知って、考えを改めてきた者として書かれています。異端審問の恐ろしさを語る彼のセリフにそれが現れています。 absintheが何度か再読した少ない小説のひとつです。私の脳力では残念ながら魅力をうまく紹介しきれません。私に読み切れなかった奥深いテーマがまだまだたくさん眠っていそうです。absintheは偶然に、本書を読む少し前に筒井康隆の「文学部唯野教授」を読んでいたので記号論のテーマにピンときました。記号論やテクストとは何か?というテーマをご存じない方は、「文学部唯野教授」を先に読んでおくことをお勧めします。こちらも楽に読めて勉強になる作品です。他に「ウンベルトエーコの読みと深読み」「ウンベルトエーコの文体練習」など読んでおくとさらに楽しさ倍増と思います。 また、同著者ウンベルトエーコの「フーコーの振り子」もまた楽しい作品で、こちらも記号論といいますか、言及と解釈の問題を扱っています。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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もし、みなさんが探偵ものの小説を買ったとして、朝起きた探偵がうっかり寝過して遠くの駅まで行ってしまい、ついでだからとそこら辺を1日散歩して、帰ってきたかと思ったら事件と何の関係もないうんちくを披露し初めて、(しかもそれが小説の8割を占め)そうこうしているうちに被害者の遺族が犯人を追いつめて殺してしまい、探偵は犯人の顔も名前も知らないで終了……だったら、どういう読後感を持つでしょう。
私の感想はそんな感じでしたが・・・それでも良ければご一読をどうぞ。 まぁ、高田祟史さんの作品では、語られるうんちくが事件と何の関係もないことは有名だったし、その病的なまでの蘊蓄へのこだわりは個性と魅力でもあったのは確かです。でも本作はちょっと度が過ぎるのではないでしょうか。 |
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カーアクションありサスペンスありそして何よりもスピード感があります。
そして歴史に埋もれたミステリーあり、登場人物の過去にも謎が多く、読み進めてびっくりの展開もてんこ盛り。 ケネディーやマリリンモンローの隠された秘密が明かされ、登場人物も謎の遺物をめぐる陰謀にはまっていきます・・・・・ タイプから言えば、absinthe の断然好きなタイプ。ならば大満足か?というと・・・何だか不満も多い作品です。 緻密な設定が好きな人にはあまり好かれない作品でしょう。登場人物がマフィアの首領の関係者だったりと設定がちょっと荒唐無稽です。 冒険ものやサスペンスを読みなれた人にお勧めできるか?というと、それにしては底抜け切れずアクションはこじんまりとしています。 もちろん、同じ著者が他にも作品を書いたなら、absintheは断然読んでみたいと思います。 次回作に期待といったところでしょうか。 |
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