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absinthe さんのレビュー一覧

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レビュー数8

全8件 1~8 1/1ページ

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No.8: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(3pt)

永遠の0の感想

この特攻というテーマは大変に重く、これを選んだ点は大変な決断だったろうと思い、まずご苦労様と言いたいです。
どう書いても批判は必至のテーマともなれば、全力で下調べに取材を行ったに違いありませんし、そういった意気込みは伝わってはくるのですが、作品に生かしきれなかったようです。
世間の評は賛否両論のようで、反響の大きさをうかがわせますが、なぜ反響が大きいのか不思議に思いました。批判の多くはなぜか小説ではなく著者の政治姿勢に向いています。
本作を読んで戦争賛美だと解釈する人は、ちょっと読解力に難があるかまたは全部を読んでない人でしょう。
まぁ、これだけ心に響かない作品だとこれが右翼思想だろうと左翼思想だろうと、もうどっちだろうとかまわないと思いました。

absintheは、以下では小説としての問題だけ書いてみます。
小説としては、全くつまらないものだと思いました。

小説として駄目な点は、戦闘の体験者としての視点に全く臨場感が無いことです。
著者の書きたかった本来のストーリーは「戦争体験者の話を取材する、戦争を知らない若者の話」だったはずが、「戦争を知らない第三者に取材する、戦争を知らない若者の話」のような内容になっています。戦争体験者を登場させたなら、読者は「戦場で見たこと」を期待するでしょうに、当の経験者に「戦場で聞いたこと」と「戦後に調べた事」ばかりを語らせています。
戦場の体験談と称して戦後の読書体験ばかり語っているのですが、そうまでしてわざわざ記述された読書体験、ここで何人が死んで、何隻が沈んで・・と延々と書かれるあたりも、少し戦記物を読んだ経験のある人なら知っていることばかりです。しかも、戦争の始まりから終わりまでを無理にカヴァーしようとしたため、それぞれの戦闘の印象もますます薄められてしまっています。

パイロットの描写するゼロ戦が、外からみた目線でしかリアリティを感じないのも気になります。飛行甲板に立って着艦を見届ける話、飛行場から飛び立つ飛行隊を見送る話には少しリアリティがあって情景も浮かぶのに、操縦席に座った話になるととたんに情景が浮かばなくなっています。着艦が難しいというエピソードを一生懸命述べるのですが、飛行甲板からゼロ戦を見た目線にこだわってばかりで、操縦席からの目線を語りません。パイロットは操縦席に座り風防を通して戦場を見たはずなのですが、地図上を進む戦闘機を駒として見下すように語ります。
absintheは、大戦中の戦闘機パイロットの戦記を読んだことがあります。日英米独の書籍(の和訳)を最低1冊は読んでいるのですが、操縦者が書いただけあって操縦席の情景はさすがに臨場感があったのを覚えています。本作は小説で、ドラマチックにするためなら多少の創作が許される立場にありながら、淡々と描写された戦記に劣っているのです。これではわざわざ小説にした意味もわかりません。パイロットの目線ならもっと他に書くことがあったはずです。本書には、操縦席の居心地、操縦席の臭い、操縦席の寒さ、操縦桿やペダルの重さ、エンジンの騒音や振動、肩にかかる荷重といった、体験者ならではの話がありません。主人公の青年が取材したのはただの自称パイロットだというオチなのでは?と余計に勘繰ってしまいました。
坂井三郎さんの敵飛行場の宙返りのエピソードを始めとしてノンフィクション戦記の引用が多いのですが、それぞれのネタ元の著作では体験者が主観で描写しているエピソードを本作ではせっせと伝聞に置き換えて「これは聞いた話だが」と語ってしまうので、当然のことならがネタ元よりもずっと臨場感の乏しいものになっています。小説というメディアは聞いただけの話を見た話のように嘘をつくのが許されるメディアだったと思うのですが、本書ではわざわざ見た話を聞いた話に翻案しているのです。
どうしても集めたネタを列挙しただけような印象がぬぐい切れず、登場人物の語りに最後まで命がこもりませんでした。

逆に情景がリアルに感じられたのは、少佐と下士官が碁を打つあたりを描写した整備兵の話だったり、戦後の航空ショーで日米のパイロットが互いの勇気を讃えあった話など、戦闘とは関係ない話ばかりです。せっかく苦労して集めてきた素材を著者の中で消化できなかったようです。百田さんは、もう少し想像力をもって戦闘の様子を描写してほしかったですね。

映像作品はまだ見てないのです。でも主人公が操縦席に座っているシーンをコマーシャルで見ました。期待はしてないのですが、こっちはマシかもしれません。


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永遠の0 (講談社文庫)
百田尚樹永遠の0 についてのレビュー
No.7:
(3pt)

ラヴクラフトファンなのに、この7巻はオススメできないです

ラヴクラフトのファンなのに、7巻はオススメにできないです。

あくまで私の予想ですが、(amazonにも似たことが書いてあります。)
この創元文庫の全集は年代順などで整理しないで、まず面白い作品から先に使ってしまったので、7巻にこういう作品が残ったのでしょう。
未発表とか書簡とかそういうのばかりです。
ラヴクラフトにお墓までついていきたいというほどのファンでなければ本巻は不要と思います。

ラヴクラフト全集7 (創元推理文庫)
No.6:
(3pt)

第三の扉の感想

古代エジプトの王墓を暴くのですが、王墓がなぜかかなり離れたところにあり、それは何故だ?と謎に迫っていく作品です。

独特で不思議な作品です。
歴史×ミステリー×トレジャーハンター物が大好きな私ですが、この手の類型は確かに無かったような気がします。
現実味のレベルが箇所ごとにまちまちで、ある観点からはとても詳細でリアルなのに他の部分では妙に幻想的というか・・・
たとえて言うと、前半では本格的な検視官もののミステリーかと思わせて、後半で幽霊が登場して主人公と対話するような。
または顔だけゴルゴ13で首から下がのび太くんとか。
このちぐはぐ感が個人的に好みに合わなかったのですが、ひょっとするとこれが新しい小説の個性ということかもしれず、何だか思わぬ拾いものをしたかのような気もして、
むげに否定してはいけない気もするのですが。

ネタバレの無い感想は難しいですね。


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第三の扉 (マグノリアブックス)
リンカーン・チャイルド第三の扉 についてのレビュー
No.5:
(3pt)

神の球体の感想

期待通りの作品でしたが、期待を超えるものではありませんでした。
突然現れた神の啓示は本物か、それとも誰かのトリックか?という疑問がストーリーを引っ張るのですが、
キリスト教に造詣が深く無いと、これがどうしてそこまで大事なことかピンとこないのですよね。


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神の球体〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)
レイモンド・クーリー神の球体 についてのレビュー
No.4:
(3pt)

ミッドウェイの感想

absintheにとって、世界の海戦史でも最も興味があるのはミッドウェイ海戦でした。
戦い自体が劇的で勝敗もはっきりしています。必ずしも日本が負けるべくして負けたわけではなく、日本にも十分に勝機はあったのですが準備のミスや小さな判断ミスにより大敗北をしてしまいます。
日本が負けてしまったのは残念なのですが、米軍の命をかけた奮闘もあり、敵ながらあっぱれな戦いを見せています。
そして太平洋での米軍との戦闘で、ほぼこれによってその後の日本連合艦隊の運命が決定づけられたため、ターニングポイントと呼ばれることすらあります。

本著作ですが(森村誠一さんの著作全般に言えることですが)どうも人間関係に偶然の出会いが多すぎて、またかよ・・・と本を放り出したくなることがたびたびありました。
淡々と叙述しても十分に劇的な戦いなので、さらに盛り上げようと凝った仕掛けをする必要は無かったように思います。
ミッドウェー海戦の概要を全く知らない読者には面白いかもしれませんが、余計なドラマで作り物感が強められてしまいました。



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ミッドウェイ (講談社文庫)
森村誠一ミッドウェイ 血と海の伝説 についてのレビュー
No.3:
(3pt)

パラドックス13の感想

東野圭吾さんにはこのテーマは向いてなかったのでしょう。
途中の道徳談義はわざわざくどくど書くことかな?と思わせるし、レベルも中学校の学級会みたいです。一部、読むのが苦痛でした。

世界設定や謎がダメなのではなくて、未曾有の天災に見舞われた人物のリアクションのリアリティのなさが問題かもしれません。
東野圭吾さんには期待しているので、今後も他の作品を読もうと思います。

ラストは少しホロとさせてよかったです。


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パラドックス13 (講談社文庫)
東野圭吾パラドックス13 についてのレビュー
No.2:
(3pt)

リングの感想

どこがおもしろいのか、全く解りませんでした。
評判がよかったので、買ってしまいましたが、後悔しました。

主人公にのしかかる、時間に追われる恐ろしさやプレッシャーに負けそうで戦い続ける心理は良く書けていたと思いますが。
肝心のホラー要素がどうにも怖くなくて・・・残念
やっぱり、コマーシャルなどで断片的な映像をちらちら見ているうちに、誤った期待を心のどこかに生んでしまったのかもしれませんね。
まったく何も知らずに購入していたら、案外おもしろかったのかもしれません。


リング (角川ホラー文庫)
鈴木光司リング についてのレビュー
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(3pt)

どうして評価されるのかよくわからない

一般に評価の堅い作品で、評論家までが絶賛しているようです。
でも、粗ばかりが目立ちます。私の理解力が低すぎるのでしょうか?
同じ出来事が、第一章、第二章、第三章でまったく異なる見え方をします。そういう視点もありなのかと、勉強させられもするし、面白い見どころはたくさんあります。
続きが速く読みたい、という読ませ方や退屈させない語り口はそれなりに秀逸だったと思います。

でも、ミステリでは登場人物間の嘘は宿命としても、共感させたいと思ったら、心理描写で読者には嘘をついてはいけないと思うのです。
ここまで重要な事実を、作品の終了間際まで隠していたら、嘘ついたのと同じでしょう。アレックスは主人公と並ぶ重要な登場人物ですから、心理描写にここまでの嘘があったら何を読めばいいのでしょう?

作家はそれまでの定石を壊して新しい定石を世に問うのが仕事ですから、定石破りを非難するのはもちろん筋違いですが、本作ではそれが裏目に出て人物への共感を損なわせた気がしてなりません。
一度そう思ってしまうと、臓腑をえぐるような悲しい過去もグロテスクな情景も空回りに見えてしまうのですよ。残念。
情景はグロテスクで、良くも悪くもしばらく忘れられない作品です。強く記憶に残る作品としては、上位でしょうね。


でも、筆力はある様に思います。同じ作家の他の作品は読んでみたいと思います。

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その女アレックス (文春文庫)
ピエール・ルメートルその女アレックス についてのレビュー