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りーり さんのレビュー一覧
りーりさんのページへレビュー数424件
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ヤクザの下っ端二人組、潰れかけの自動車部品店親子、新興宗教・教祖の孫娘。 接点のない彼らを結び付けるある誘拐計画、ある金貸しの死と宝籤。 意外な結果を見せる誘拐エンターテインメント。 全体的にスケール不足、誘拐ミステリーとしても群像劇にしても過去の偉大なる作品にすごく見劣りする。 誘拐を焦点に見た時はやはり警察との対峙が陳腐に感じる。 警察の欺き方や人質の扱いにしろ極道らしさが一切感じられない。 そうなると半素人で構成された「大誘拐」を想起させ、あの作品ほどの壮大な膨らみは見られない。 様々な人が繋がる群像劇の要素もあるが、あまりスポットを当てられない人が多々いる。 一番気になったのはインタールードの使い方。 意味合いとしては単に幕間。 今までインタールードというと本筋とは関係ないような視点から物語に切り込んだり、神の視点から過去や未来の記述をとったり非常に技巧の強い要素として見てたのだが本作のそれは単に未来のことを前倒しで記述している所謂倒叙である。 この構成がよく分からない。 全く想像し得ない意外な展開を先に描写させておいて、その後の過程を強く惹き付けるような使い方なら分かるが・・・。 |
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「宮峯は私のヒーローになってくれる?」
その日から僕は寄河景のヒーローになり、常に彼女の味方でいることを誓う。 彼女の愛がいくら猟奇的でも、暴走する願望が殺人に発展しても僕は彼女の隣にいる。 これは僕と彼女の、僕が化物と化した彼女を殺すまでの物語。 粗筋とプロローグを読めばこの物語の行く末が破滅的な方向へ進んでいくことは想像に難くない。 2人の奇妙な愛の形は自殺教唆ゲーム『青い蝶』をもってより歪なものになっていく。 そして歪から生まれた、さらなる歪が悲劇的な結末を迎えさせている。 評判通りラストの仕掛けが面白いのに加え、男女2人をメインにした構成により男と女の読者それぞれ違った解釈、見解が披露され考察も中々楽しい。 |
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見出し通り吸血鬼VSサーカス団の攻防を描いた作品。 舞台は同作者のネフィリムと同じである。 とにかく捻りなく超人的な能力を持った吸血鬼とそれぞれアクロバティックな特技を持ったサーカス団員とのガチンコ対決が繰り広げられる。 想像以上に闘っているのでアクション8割、ホラー2割といった感じ。 そこに小林氏らしい裏切りと邪悪な結末が乗るのですがまぁファンでもない限り今作は厳しいかも。 |
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円く切り取られた過去の記憶。 五つの赤い影。 サーカス小屋の子供。 兄の死をきっかけに思い出す幼少の記憶。 3人の兄の旧友たち。 「ね、遊んでよ」と輪に入ってきたもう一人・・・。 囁きシリーズの第三作。 緋色では魔女、暗闇では双子という存在が幻想的に怪しく描かれているが今作は非常に現実的なお話である。 兄が何者かに殺されてしまうことから物語は始まり、それを兄の予備校の講師だった占部とともに調査していく。 幼少の記憶をたどり、15年前のサーカスが訪れた間に何かが起こり、自分はそれを傍観していたことに気付く。 この過去の記憶がノスタルジックで黄昏という表現がぴったし当て嵌まっている。 幼かった故に欠けていたパーツが揃ったときに驚愕の真相が浮かび上がってきた。 |
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大学の課題の為、山奥の別荘に逗留中の悠木拓也は近くに住む双子の兄弟と知り合う。 どこか浮世離れしてミステリアスなその少年達。 「あっちゃん」と呼ばれる誰もが口を閉ざすもう一人の存在。 遺体の一部が切り取られる殺人は何を意味するのか、そして事件の究明に呼応する過去からの囁き。 囁きシリーズの2作目ですがシリーズ通して関連性はないです。 むしろこの作品は「殺人鬼」の方に繋がる作品らしい。 内容はミステリ要素を兼ねた幻想的なホラーで館や探偵は登場せず、淡々と事件が起こりそれに巻き込まれていく。 しかし悠木拓也には微かに聴こえるのだ、遠い過去からの囁きが。 特にシンボル的な要素が無い囁きシリーズですが、シリーズ通して「過去」の記憶が重要な意味を持っている。 その隠された記憶が暴かれた時の静謐な狂気を味わって欲しい。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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いきもの係の事務担当田丸弘子が誘拐された!? 残された手掛かりの動物園のチケットから導かれる象のはな子、そしてラオスの密輸グループ。 死神と呼ばれる刑事から偽造パスポートを受け取りいざラオスへ! 警視庁いきもの係シリーズ第6弾、蜂の話以来の長編。 今回のお話はちょっと他作品のネタが多いです。 特に真相部分において過去作品がほぼ必読レベルなのでご注意を。 あとオマケで作者がリアル象に乗っかています。 |
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目が覚めるとそこは孤島。 何者かに襲われた十津川警部は絶海の孤島に連れてこられていた。 そこには一年前の事件現場を忠実に再現した建物の数々、そしてその事件の法廷証人7人。 何者かが仕掛けた「私設法廷」、事件の再検証をしているうちに見えてくる証人たちの嘘と秘密。 あの事件はもしかして冤罪だったのではないか? 十津川の疑念を裏付けるように新たな殺人が始まった・・・。 面白いね。 40年前の作品ともなると古い表現や時代錯誤な描写も懐かしいを超えて興味深いになるんだなと。 序盤から主人公警視庁の十津川警部が何者かに誘拐され孤島に幽閉されてしまう。 そこには事件のセットと事件の証人が集められ、事件の再考証を求められるのだがこの流れが非常にスピーディである。 証言の矛盾を突き止めるどっしりとした法廷場面が始まったかと思えば、新たな殺人が同時に発生する緊迫した展開に移り変わっていく。 大々的な仕掛けや登場人物の言動や心情はリアリティをかなり犠牲にしているが、それを引き換えに最後まで先を読ませない壮大なサスペンスに仕上がっている。 |
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第56回メフィスト賞。 大学を中退してバイト先にしか居場所のない主人公とちょっとおかしな新人女子高生がコンビニにまつわる事件の謎を解いていく。 やがて焦点は過去に起こった連続盗難事件とそれに起因したある従業員の死についての真相に向かってゆく・・・。 コンビニです。 私はコンビニバイトの経験はないので判断しにくいですがおそらく現実のコンビニバイトの環境を克明に反映している作品。 トリックにもコンビニの内面の部分が存分に使われており、この作者が敢えてこの舞台で物語を書きたかったのだというのが伝わってくる。 色物ぞろいのメフィスト賞の中ではインパクト不足な気がしますが軽く読めるので〇 この作品以降は作品のなかった作者ですがなんと今年8月に再びコンビニを舞台にしたミステリーを上梓するとのこと。 コンビニなしでは書けないのか!? ▼以下、ネタバレ感想 |
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倍返しではなく自分の為。 復讐をモットーにする女子高生「小峰りな」、どんな些細なこともやり返さないと気が済まない。ハンムラビ法典ってのがあるみたい、目には目を歯には歯をって奴、でも私の悲しい気持ちや周りの気持ちも考えたら同じことをやり返すのじゃ足りないと思う。 そんな私は、ある日刺された。 復讐女子高生が夜道で刺される所から物語は始まる。 6歳の時に事故に見せかけて同級生を骨折に追いやって以来、復讐をモットーにして生きてきた彼女にとって最大の復讐劇の開幕の予感である。 犯人が残した謎の言葉「ラメルノエリキサ」を手掛かりに復讐心のもと奔走する主人公、家族や友人たちも巻き込み未成年の心の拠り所に迫る青春小説の一面も覗かせる。 色々と物騒な内容だが本作は小説としてはかなり軽い、「小峰みな」は自分の心の平穏の為に復讐を行うが、中身は案外女子高生。 夜道での犯人捜しは足が震えるし、涙も出そうになる。 復讐が生きがいなのではなく、復讐して心の清算をしないと生きてゆけないというのが正しいだろう。 そんな彼女がどう事件と向き合い、折り合いをつけるのかが本作の肝になる部分である。 斬新かつ、読んでいて過去に類のない作品なのは保証する。 |
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碆霊様を祀る強羅地方の村には時代の異なる4つの怪談が伝わる。「海原の首」「物見の幻」「竹林の魔」「蛇道の怪」、村を訪れた刀城言耶たちの前に怪談をなぞった連続殺人事件が起こるが、、、。 村の秘密を暴こうとした異端民俗学者、村の合併話、素性の分らぬ蓬莱の存在、現場に残された笹船、広げに広げた風呂敷から言耶の導き出す一つの真相とは・・・。 2年ぶりに読みました言耶シリーズ。 時が経つのって早い。 結構なボリュームで最初に4つの怪談話が展開される。 謎に満ちた怪談話の至る所に怪しい点があり、どうまとめるのこの話状態だ。 やがて現在の村を訪れた言耶の前に遺体に笹船を添えた連続殺人が起こる。 伏線も長ければ、解決も長い、久しく言耶のガッツリ一人多重解決が見れる。 正直真相は肩透かしものだったが、600P越えで重厚なホラーを観れたと思えば満足。 |
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「白骨鬼」 江戸川乱歩の未発表作品がある文芸誌に掲載される。 江戸川乱歩と萩原朔太郎の2人の作家が探偵役を努めるその作品にはある秘密が隠されていて・・・。 作中作と現実パート、そしてミステリの遊び心光る技巧派作品。 がっつり作中作を取り込み、しかも江戸川乱歩の文体の寄せる徹底ぶり。 現実パートに仕組まれた仕掛けに驚嘆。 |
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「妹になにがあったか知っている。 同じことが起きようとしている。」 不吉なメールで故郷に帰ってきた僕。 25年前、確かに妹のアニーには何かが起こってて、その正体は分からないまま死んでいった。 忌々しいあの夜の記憶、あの夜の出来事からアニーは変わってしまった、まるで別人のように。 二度と戻ってこないとは思っていた故郷。 僕の前任の教師は自分の息子を殺したのち、自殺を遂げた。 「息子じゃない」という血文字を残して。 生粋のキングファンであるC・J・チューダーの長編二作目。 匿名のメールによって過去の記憶の封印を解いた主人公が自身の妹の謎に迫っていくストーリー。 この主人公のジョー・ソーンが中々の曲者でギャンブル好きで借金まみれ、アルコール中毒の兆しも見える中年男。 しかし謎の正義感を発揮したり、皮肉を以て巨悪に立ち向かう姿勢も見せてくれる。 この主人公の人格の形成と事件への執念の理由が過去の事件を通して見えてくるのが面白い。 殺し屋まがいの女や経歴詐称の同僚、そして町会議員の旧友、信用ならない奴らとの駆け引きでハードでな展開が繰り広げられる。 一体だれがジョーを呼び起こしたのか、25年前の事件の裏の真相とは。 キング氏のモダンホラーとミステリーが融合した秀作。 三作目の長編も発表済みというしそちらも楽しみだ。 |
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1986年、まだ少年だった僕たちは月並みな日々を送っていた。 友人達とやんちゃもしたし、喧嘩もした。 甘酸っぱい恋に憧れることもあった。 大人たちの難しい話は無視したし、友達の体に付いた痣の意味もまだ分からなかったけど、それなりに平穏な日々を送っていたはずだった、あの時までは。 事件の始まりはいつだったのか、僕が移動遊園地で凄惨な事故を目撃した時なのか、友達の兄貴が溺死した時? それともチョークの落書きで伝言を始めた時? 2016年、42歳になった僕に投げられた言葉。 誰もが間違っていたし、誰もが秘密を抱えていたあの事件の真相を明らかにする時が来たのか。 「あの事件の真犯人を知っている。」 スティーヴン・キング推薦という強力な後ろ盾を以て日本でも刊行された本作。 スタンドバイミーを彷彿とさせるようなティーンエージャーを中心とした物語。 彼らは年相応に未熟であって、それ故に事件の大きさも方向性も変わってゆく。 点と点が結ばれて隠された線を探偵役が見つけ出すようなかっこいい物語ではない。 色々な事件が起き、過去でも未来でも、殺人も起きたしそうじゃない事件も起きていた。 それらのほとんど線は2016年に回収される。 振り返れば些細なことだが当時の未熟な少年たちと大人たちの蟠りの前では有耶無耶になった。 <本物の友達じゃないから。子供のころから知っているっていうだけ。> そう、確かに彼らは親友ではなかった。 秘密を共有するには身分が違い過ぎた。 ただ近所に住んでいるだけでは明かせない事実あった。 もし彼らが強固な絆で結ばれた親友同士で合ったら事件はこんなにも複雑に残酷にはならなかったのかもしれない。 でも小学生時代の友人関係なんてそんなもんだと思う。 複雑な人間関係、身分違いの個性的な人物たちを多彩に書き分け最終ページに恐るべき秘密を隠してみせた本作。 キング氏のサスペンスな作風が好きなら一読の価値ありです。 |
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十数年ぶりに故郷の村へ帰ってきた井邑陽介。 旧友との再会を喜ぶ一方で憧れだった霧絵という少女の死を知る。 そして村を最近賑わす殺人事件、全身の骨が折られたその死体は人間の為せる業だったのか・・・。 幽霊の出現、黒装束の巫女、かつて村にあった神社信仰、この村で何かが起ころうとしている、、、陽介たちの前に突如現れた那々木悠志郎の下す推理は。 めでたくシリーズ化になりました怪異収集家・那々木悠志郎による第二作。 焦点は人間の呼び起こした異形は人間で対処できること。 幽霊や怪異が明確に顕現しているこの世界でそれらに帰っていただくには正しい知識で立ち向かう、その為に必要なのが過去に何があったのかという怪異譚なのだと。 本作はあくまでホラーである、少なくともロジックを以て結末を推理するような小説ではない。 しかし伏線によって結ばれるラストの展開にはどんでん返しホラーの受け売りに恥じない満足感を得られるだろう。 |
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11歳の僕は唐突に親元から引き離されある施設に預けられた。 異国の地で異国の同級生との共同生活を行う、そこでは<実習>という名の推理合戦の課題が課される。 スパイの養成施設? 特別な才能の持ち主? 僕たちは一体何の為に集められたのか。 新入生の登場に揺れる級友、学校に潜む“何か ”が目覚めようとしていた・・・。
10年以上振りに再文庫化され手に入りやすくなりました。 でも反復するような旧題の方が素敵かな。 物語は11歳の主人公が突然異国の土地の施設に飛ばされることから始まる。 自身の存在理由、施設の目的をクラスメイトと推理するも分からないまま時は過ぎていく、しかし新入生の登場を機に事態は一変、ホラーなのか或いはファンタジーなのか現実なのか空想なのか終盤に至るまで輪郭さえも掴めさせないようなアクロバットなストーリーになっている。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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「警視庁いきもの係」シリーズ第5弾。 「タカを愛した容疑者」「アロワナを愛した容疑者」「ランを愛した容疑者」の3篇。 哺乳類から魚類、鳥類、昆虫ときて今回は初めての植物。 そして何より「福家警部補シリーズ」から福家警部補のクロスオーバー、須藤さんと知り合いだったんですね! 今回の話の後日談が福家警部補の新作に入るらしいし楽しみだー! |
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不可思議な現象の起こる街、ピアノコンサートが行われる動物園。 犯人はどんなトリックで犯行を行ったのか? 超絶技巧の殺し方! 芸術探偵シリーズの第五弾。 ハウダニットに傾倒した技巧派ミステリになっている。 世界で一つだけとタイトルにあるようにそのトリックは中々奇天烈、衒学と蘊蓄に耐えられるなら読む価値あり。 |
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『 警告! 自分の記憶は数十分しかもたない。 思い出せるのは事故があった時より以前の事だけ。 』 どうやら私は新しい記憶を留めていくことが出来ないらしい。 手元にあるこのノートだけが私の過去を知れる記憶媒体のようだ。 『今、自分は殺人鬼と戦っている。』 自身の記憶が数十分しかもたない主人公と他人の記憶を意のままに改竄できる超能力者、2人の記憶破断者の対決を描くストーリー。 主人公側が絶対的に不利なのだが改竄できる記憶を持ち合わせてないという唯一の武器を手に立ち向かう。 この主人公かなりの切れ者でリセットされる記憶に対しての適応能力が半端ない。 殺人鬼側も傲慢な利己的な部分が表立つが能力を使用した狡猾な策略は抜け目が無い。 特殊設定を用いた知略サスペンスから小林泰三らしいブラックなオチは鮮やか。 |
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