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りーり さんのレビュー一覧

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レビュー数109

全109件 1~20 1/6ページ

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No.109: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

セコい殺人を本格ミステリへ!!


 落ち目のミステリー作家・神岡は別荘に訪れた愛人を突発的に殺してしまう。
原稿をもらいに別荘に来ていた担当編集の里子はその突発的な殺人を本格ミステリ作家にあるまじきセコい殺人だと糾弾する。
斯くして平凡な死体を曰く付きの殺人現場に飾り立て、ミステリ作家らしい殺人事件に仕立てることになってしまった。
不謹慎な遊び心は思いもよらない結末へ!!

 何の変哲もない死体を密室に入れ、見立て殺人らしい装飾を施し、本格ミステリらしく探偵を呼び寄せる。ストーリーとしては死体を弄ぶような不謹慎な内容だが、そもそも全体を通してギャグテイストで話は進むのであまり気にならない。そしてラストは霞流一さんらしく大破局。
フライプレイ!: 監棺館殺人事件 (ミステリー・リーグ)
霞流一フライプレイ! 監棺館殺人事件 についてのレビュー
No.108: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

コボちゃんよりののちゃん派


「おれの殺人を言葉で止めてみろ」
太陽新聞社に送られてきた一通の手紙。それは連続殺人犯からの告発文だった。紙面を通しての犯人との会話に世間は賑わい、報道は利権を含み過熱する。殺人犯ながら倫理、道徳、悪、正義を説く犯人の真の目的とは・・・。

主人公が結構おじさんなんですよね。だから玉木宏がキャストで若すぎだろおいおいと思ったんですけど玉木宏現在42歳でしたね。若すぎるって!!
今作の舞台は新聞社です。自分はもう何年も購読はしてないな。犯人と記者の紙面を通したぶつかり合いにメディアは加速し、世間は熱狂します。殺人犯はあくまで知識人であり頭脳戦のような一面も覗かせます。ただの殺人ではありません態々討論にもちこんでるのですから。


だから殺せなかった (創元推理文庫)
一本木透だから殺せなかった についてのレビュー
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(6pt)

さようなら、地球


 トップアイドルを目指した少女は夢半ばにして倒れた。人としての彼女は終わった。しかし偶像としての彼女は終わらなかった。自分を意識してくれる物がいる限り彼女は止まらない。グチュグチュになる、億の年が流れる。最期のアイドルである彼女の到達した「アイドル」とは。

もはやぶっ飛びすぎてSFというよりファンタジー。百合テックグロテスクサバイバルファンタジーマシマシって感じ。アイドルだったりソシャゲだったり声優だったりサブカル色が強い。それもそのはずもともと表題作は同人二次創作である。そうしたポップな要素の中に肉体が貪られるようなバイオレンスが共存してるのが面白い。小林泰三や平山夢明とかが好きならオススメ。そして彼らにはない味わいがある。
最後にして最初のアイドル (ハヤカワ文庫JA)
草野原々最後にして最初のアイドル についてのレビュー
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(6pt)

「お返し」の旅

 
 野中杏、十七歳、結婚詐欺師に育てられた子供、騙された女性・ユキエと500万を持って逃避行中。
人を騙して得た金で育った私の下に騙された女が現れた。今まで育ててくれた詐欺師の叔父には感謝している、それでも目の前の女に「お返し」がしたいと思った。この旅は報復?それとも罪滅ぼし?年齢、価値観も違う凸凹の私達が目指すは幻の百合!!

 結婚詐欺師を育ての親に持つ女子高生・野中杏とその詐欺師に騙された30代女性ユキエの二人が500万円を持って夏の旅路をスタートするところから物語は始まります。常識に囚われないイケイケな杏、それに押し切られる形で巻き込まれた引っ込み思案のキヨエ、年齢は勿論価値観も正反対の二人は時に補い合い、時に衝突しながら無計画な道を進んでいきます。女性心理を中心に描いているがきっと男性でも共感できる部分がたくさんある。そして旅の終焉には吹っ切れた爽やかさが感じれることでしょう。

ペーパー・リリイ
佐原ひかりペーパー・リリイ についてのレビュー
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(6pt)

百舌鳥魔先生のアトリエの感想


 妻が習い事を始めた。近所の前衛芸術家に弟子入りしたというのだ。
翌日、理解を示さない私の前に出された夕飯は数切れの刺身だった。ペットの熱帯魚の水槽の中では骨と内臓が剥き出しになった姿で魚が泳いでいる・・・

 小林泰三氏の短編集。年代がバラバラでかつ描き下ろしが二点。ホラーあり、バイオレンスあり、SFあり、書き口もかなり違う。
百舌鳥魔先生のアトリエ (角川ホラー文庫)
小林泰三百舌鳥魔先生のアトリエ についてのレビュー
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(6pt)

未来からの脱出の感想


森に囲まれた施設で何不自由ない生活を送っていた老人サブロウは自分の過去に関する記憶が残っていないことに気付く。周りの老人たちも同じような状況であることを知ったサブロウは偶然にも自身の日記帳に脱出を促す何者かのメッセージを見つける。この施設が監獄である疑いを持ったサブロウは仲間を集め脱出を試みるが森の先にあった光景は想像を絶するものだった・・・。

 長編として小林泰三氏の遺作となった作品。車椅子生活を送る老人たちが施設からの脱出を図るスリラー小説だ。そして本作はSF小説である。主人公のサブロウは20世紀生まれで100歳を迎えているのだが記憶の片隅には21世紀の記憶どころか22世紀の残像が残る。タイトルは「未来からの脱出」、本当の戦いは森を抜けた光景を見た後に始まる。
未来からの脱出 (角川ホラー文庫)
小林泰三未来からの脱出 についてのレビュー
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(6pt)

最後のページをめくるまでの感想


「最後のページをめくるまで」 そのタイトル通り最期まで油断ならないような作品集だ。どんでん返しのようなラスト数行でひっくり返るような緻密な伏線回収は無いが終盤にさしかかるとともに裏の真実が1ページずつめくれてくような展開は良かった。
最後のページをめくるまで (双葉文庫)
水生大海最後のページをめくるまで についてのレビュー
No.102:
(6pt)

失われた過去と未来の犯罪の感想


突如訪れた「大忘却」によって人類は新たな情報の記憶能力を失った。 覚えてられるのはごく最近の出来事である短期記憶と体に染み付いた手続き記憶だけ・・・。 遠くない未来、人間の記憶は体に埋め込む機械型のメモリーに委ねられた。 ここに一つのメモリーがある。 体は事故で失ってもう無い。 生きた人間にこのメモリーを挿し込めれば。 これは未来の犯罪の物語。

 小林泰三氏の「記憶」をテーマにしたSF作品。
第一部にて人類が記憶能力を失った様子をパニック小説のように描いている。あくまで失ったのは「大忘却」以降の記憶能力で機械の操作などの手続き記憶やそれまでの人生での記憶は保持されていた。実際過去の記憶を完全に失っても言葉は話せるんだから本当に不思議である。ほとんどの人類が行動しては忘れてを繰り返す中、少しづつであるがこの驚異に立ち向かうものがいた。やがて人類は外部に取り付けたメモリーに記憶を蓄積することによって従来の生活を取り戻していく。
第二部から物語が始まったと言って良い。メモリーという擬似的記憶装置にて新たな復活を遂げた人類とそれに併発する未来の犯罪の物語だ。今まで肉体に付従してきた記憶という概念が完全に肉体から切り離されたのである。しかしメモリー=命といって良いのになぜそんなに剥き出しで取外し可能なのだろう?普通誰にも見せなくないでしょ。
小林氏らしいブラックなオチの付くSF、気に入ったら記憶破断者もおすすめだ。





失われた過去と未来の犯罪 (角川文庫)
小林泰三失われた過去と未来の犯罪 についてのレビュー
No.101: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

二年四組 交換日記 腐ったリンゴはくさらないの感想


 伯東高校二年四組、意図的に問題児ばかりで構成された35人のクラス。クラスのボスである委員長は親交を深めるために交換日記を開始する、強制的に。最初の書き手の企みでクラスメイトの本名は隠され、異名で呼びあうことになった!斯くして問題児の35人による波乱に満ちた4月が匿名で語られる・・・。

 お嬢様から政治家の息子、脳筋に不良にハッカー、そして不登校児に人間を半分辞めてる者。癖の強い登場人物の本名を埋めていくパズル小説です。名前を推理していくことと事件の真相は特に符号しないのでパズルを意識的に解かなくてもストーリーは読めるのだが非常に理解しにくくなる。畢竟、名前はある程度埋めていかなくてはならないのだが35人の穴埋めは中々に骨が折れるので気軽には読みにくい作品だ。
 
二年四組 交換日記 腐ったリンゴはくさらない (集英社スーパーダッシュ文庫)
No.100:
(6pt)

上石神井さよならレボリューションの感想


 成績不振の写真部・設楽とイケメン天才そして変態の岡江。誰も知らない二人だけの裏取引、それはフェティシズムの高い写真を撮り集めること!!

樋口真由シリーズ以来の長沢樹さん。ちょっとおバカな高校生たちのゆるーい青春ミステリです。
上石神井さよならレボリューション
No.99:
(6pt)

ほねがらみの感想


 怪異蒐集が趣味の「私」に届いたいくつかの怪異譚。作者も年代も媒体もバラバラな話に見られる奇妙な符合、それを知った時「私」に襲い掛かる「何か」。
あなたがこれを読んだとき、———物語は拡散し、私達はこの恐怖体験を共有できる———

カクヨムからスタートした芦花公園さんのデビュー作。創作なのか現実なのか分からない恐怖体験の数々、「私」と共にこの作品を読み解いていくうちにまるで一緒に呪いに巻き込まれていくような感覚が味わえる。
ほねがらみ (幻冬舎文庫 ろ 1-1)
芦花公園ほねがらみ についてのレビュー
No.98: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

闇市

 
 炭鉱夫から灯台守へ転身するその間、旧友に誘われ物理が訪れたのは赤迷路と呼ばれる闇市。戦後の復興の中で人々が飢えを凌ぐための手段として発達してきた裏マーケット、混沌としたその街で“赫衣”と呼ばれる怪人が人々を襲うのだという。細道で行われる一連の事件、犯人はいかにして衆人の目をかいくぐり逃げ果せたのか。

 物理波矢多シリーズの3作目。時系列は前作と前前作の間にあたる。今作は闇市という場を舞台に当時の商売とGHQと朝鮮人との微妙な関係に触れ殺人事件を描く。当時の価値観や世相をもっての動機、歴史ミステリとしてまた一段と味が出てきた。
赫衣の闇
三津田信三赫衣の闇 についてのレビュー
No.97:
(6pt)

社会人編


 現行“匠千暁シリーズ”の最新刊。安槻大学卒業後の彼ら特に変わりなく。

短編集ではあるけども中々ボリューミーで長編間の繋ぎ感はあまりなかったですね。事件の本筋とは関係ないような事柄が事件の事象の核心をついてくるような構成が面白い。
悪魔を憐れむ (幻冬舎文庫)
西澤保彦悪魔を憐れむ についてのレビュー
No.96: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

アルタラ

 「お前は記録世界の住人だ」
男子高校生・堅書直実は未来からやってきた自分にそう告げられる。この世界は現実世界を正確に複写した記録世界なのだと言うのだ。未来の恋人・瑠璃を救うために記録の書き換えに奔走し始める二人。未来の自分という最強の教科書を手に入れた堅書直実は内気な自分を変えてゆく、しかし記録の改竄の代償は確実に二人に迫っていた・・・。

 一応映画の原作本とはなってますが映画の方が先にあるんですね。知らずに買っちゃった。 SF×恋愛青春ということで本作はあくまで記録世界のお話、現実に対して精巧に作られたコピーの世界の物語。現実が先にあるのだから、いくら記録を後から変えても意味ないんじゃないの?と当然の疑問が残りますがそこは野﨑まどらしいオシャンティーな動機があるのですよ。
 個性的なキャラのテイスティング、仮想世界の中での恋愛というテーマ、そして終盤のひっくり返しと概ね満足な出来ですが、未来の技術を扱ったシーンや後半のアクション部分は素直に表現不足、ここら辺は映像化で一気に解決する所だから映画を見ていると全然感想は変わってくるとは思います。



HELLO WORLD (集英社文庫)
野﨑まどHELLO WORLD についてのレビュー
No.95:
(6pt)

身代わり


 身代わりの代わりは身代わり。
安槻大の牢名主ボアン先輩こと辺見祐輔を中心に行われるいつもの飲み会。そこにあの三人がいないことを除いていつもの風景だったが飲み会の帰り道でメンバーの一人が腹を刺されて死を遂げる。また別の場所では小説「身代わり」を残した女子高生が何者かに殺害されていた。その女子高生の傍には警官の遺体もあったが二人の死亡推定時刻は4時間の開きがあって・・・。
無関係の事件は一体どのように収束していくのか、すべてのパーツが出切ったとき、あのコンビが復活。

 「依存」よりそこそこ長い時間をかけて復活しました匠千暁シリーズ、現時点で最後の長編ですね。今回は男から見た女、そしてその逆、西澤保彦氏によく見られるジェンダー理論が散りばめられた中で犯人は一体どんな心情で犯行に及んだのでしょうか。確実に言えるのは一般人が人を殺すなど真面な心理状態には無いということですね、ましてやそれが恋愛が絡むものなら猶更。
 









身代わり
西澤保彦身代わり についてのレビュー
No.94: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

スコッチ・ゲームの感想


「 酒の瓶を持って河原へ向かう男を尾行していた。」二つの事件で同じアリバイを主張する重要参考人の謎、高校時代のタカチが辿った悲運。二年後、タクチが述べる真相とは・・・。

シリーズ5作品目。タカチの高校時代の話ですね。今までの酩酊推理合戦から一転、青春小説のような苦みのあるストーリーに仕上がってます。
スコッチ・ゲーム (幻冬舎文庫)
西澤保彦スコッチ・ゲーム についてのレビュー
No.93: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

忌木のマジナイ 作家・那々木悠志郎、最初の事件の感想


 那々木悠志郎に指名され担当編集になった久瀬古都美は彼が初めて邂逅した怪異についての原稿を受け取る。その原稿は呪いの木の下に写真を埋めることによって呼び出される「崩れ顔の女」を小学生の篠宮悟と作家・那々木悠志郎が追っていく物語だった。読み進めるうちに久瀬の周りにも現れる崩れ顔の女・・・。担当編集に指名され、この原稿を渡された真意とは・・・?

 那々木悠志郎シリーズ第三弾、先生が初めて遭遇した怪異の原稿という作中作とそれを読み進める担当編集者の二つのパートで物語は進んでいく。やがて現実世界に原稿の中の怪異の影が見え始めるという不可思議な展開、怪異の道理を知れば現象の正体も見破れる。今回も秀逸  なホラーミステリでした。
忌木のマジナイ 作家・那々木悠志郎、最初の事件 (角川ホラー文庫)
No.92:
(6pt)

仔羊たちの聖夜の感想


タックとタカチが初めて会った去年のクリスマスイブ、ボアン先輩に振り回されるまま行われたプレゼント交換、一人の女性が身を投げたその日から一年後に再び身を投げたのは僕らの友人だった。

 クリスマスイブの日に起こった3つの身投げの真相を今回はタカチメインで探求していく。前作は酒を交えたかなり軽いミステリーだったのに対して、本作は家族関係の醜さをタカチの過去にも触れながら解き進める非常に重いミステリーになっている。ボアン先輩とウサコには常に笑っていてほしいものである。時候を意識したけどクリスマスに読むような本じゃなかったね、甘いケーキでも相殺できないくらいビターな結末なので。
仔羊たちの聖夜(イヴ) (幻冬舎文庫)
西澤保彦仔羊たちの聖夜 についてのレビュー
No.91:
(6pt)

全てはメルカトルが中心

 メルカトル鮎シリーズの短編集。
傲岸不遜の銘探偵参る。今回のメルも凄かった!!性格の傲慢さに加え、世界がメルの為に動いていく。事件が起きるから探偵が来るんじゃない、探偵が居るから事件が起きるんだ。そして、それが銘探偵ともなると超飛躍し、事件も犯人も手掛かりも全ては探偵が事件を解決するために存在する。全てはメルが招いている。


メルカトル悪人狩り (講談社文庫)
麻耶雄嵩メルカトル悪人狩り についてのレビュー
No.90: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

メルカトルかく語りきの感想


 メルカトル鮎シリーズの短編集。 犯人当てに興じた作品としながら、犯人をぼかしたまま終わるアンチミステリーである。 突拍子もない帰結がなんとも楽しい。 美袋君が毎度の如く危険な目に当っているのだが、美袋君は探偵役以上に強い存在なので安心安心。 むしろアンチミステリーよろしく、探偵役の方が危険なポジションにいることが多いのだ。
メルカトルかく語りき (講談社文庫)
麻耶雄嵩メルカトルかく語りき についてのレビュー