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りーり さんのレビュー一覧
りーりさんのページへレビュー数163件
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タンポポを遺体に添える連続殺人が発生した。それはある事件の模倣、正確にはタンポポではなく菊だったが一人の探偵によって終結した物語。それに気づいた一人の刑事は執拗に探偵の過去を付け狙う。 少女は祈りを捧げていた。自身の行った罪に向き合い、どのような罰が自分に相応しいかを考えていた。小学生にて連続爆破事件を引き起こした彼女を警察に促したのはあの探偵だった。 探偵の右腕は不死身だった。その生命力を生かして幾つもの難事件を力を持って解決してきた。彼に生きる意味を与えたのは紛れもなく彼女だった。 この作品に探偵はいない。だが誰もが彼女のことを思っていた。佐藤誠に引導を渡した“月島凪”という名探偵を。 舞台を遠海市にする一連のシリーズだ。連続殺人犯・佐藤誠を警察に突きつけた名探偵・月島凪に触れる。だが探偵自身が出てくることは無い。ドン・キホーテのドゥルシネーアのように思われるだけの存在なのだ。 推理あり、サスペンスあり、バトルありの超絶エンターテイメントだ。舞台を同じくする作品群なのにどうしてこうも多種多様な面白みを出せるのか。最期の展開にはどきりとする。次は絶海の孤島で会いましょう。 |
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友人とゲイパレードを見に来ていた菱屋修介に突如その轟音は響いた。空から無数の天使が舞い降り終末の喇叭を吹いている。地面は大きく揺れ、高層ビルは軒並み倒れた。どこからともなく炎に包まれた巨石が降ってきて、裂けた大地から人の顔を持った飛蝗が這い出てきた。人々の悲鳴が聞こえる。眼の前で友人は体を分断された。 「月へ行こう」 菱屋修介はそっと目を閉じる。現実から逃れたいときはいつもこうしてきた。幼少の時から積み上げてきた妄想の世界は自由自在だった。月世界の男が話す世界の理、神々との対抗。それは「言葉」の争奪戦だった。 SFといわれると困ってしまう作品だ。なにせ人と神のガチンコ対決なのだ。創世記のバベルの塔に着想を得ていて、神々が人類から言葉を奪ったのは神々でもコントロールの出来ない人類の発明故と語られる。言葉の普及を神は恐れている。そして打倒神における最重要武器が「ニホンゴ」だというのだ。 破茶滅茶な粗筋からは想像できない冒険譚。菱屋修介が再び目を開けたとき、目の前に広がるのは神々の残虐なのか否か。 |
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月ノ森医院の御曹司・雪麻呂はその権力を笠に着る傍若無人な初等生である。同級生二人を招き自慢するものは医院の地下施設、死体を実験用に保存する惨憺たる光景だった。そして、もう一つのおぞましい光景。それは雪麻呂の世話人である富蔵という者、彼の頭は蜥蜴であった。 粘膜シリーズ第二弾。角川ホラー文庫の上梓ながら推理作家協会賞を受賞した異色作である。年代は特に明言されていないが前作同様に戦時中のようだ。そして爬虫人という頭がトカゲの生物が受け入れられている。この奇天烈な設定をさも当たり前に展開するのも前作同様だ。 とにかく繋がりの見えない事象の連続で第二章を終えて、どのように風呂敷を畳むのか心配になってしまうぐらいだった。そしてラストの一撃、もうミステリー調とはかけ離れた作風過ぎてフェアとかアンフェアとかの領域を超えている。 |
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中学生の冬野ネガは同級生殺害を認めるものの、動機については黙秘した。一見自殺とも思える現場で頑なに少女は殺人を主張する。 十二月六日、冬の廃墟での夜、彼女たちに何があったのか。子供の貧困問題をテーマに少女たちの希望と破滅を描いた社会派小説。 創作の世界ぐらい希望を持ちたいと思うんですけどね。タイトル通りの内容です。 貧しい中学生の主張する希望のない未来を生きる価値。それに対して健全に子供時代を過ごしてきた大人たちに説き伏せるようなアンサーは出ない。きっと日々読書に時間を費やせるような読者自身も冬野ネガにかける言葉は見つからないだろう。そして冬野ネガすら至らなかった裏の真相、それぞれの当事者しか分からない複雑な思惑がラストにミステリーへと昇華した。 |
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「あたしの家は鬼畜の家でした。」 夫を殺し、娘を殺し、金の為に数多の犯罪を繰り返した母親。しかし、その母親の最期は唯一溺愛していた息子との心中でした。 生き残りの末娘が語る壮絶な家庭環境。母は自分から死を選ぶような人間じゃないとの証言。「鬼畜」を死に至らしめた衝撃の正体が明らかになる・・・。 著者のデビュー作品ですね。東大卒の元弁護士なんて聞いたらどんな理屈っぽいミステリを出してくるんだと身構えちゃいそうですが、この作者はかなりミステリのエンターテイメント性を重視してくれる。消人屋敷なんてもうごりごりの館物だし。また一人お気に入りの作家が増えました。 |
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〇〇してはいけない!!海沿いの街を舞台に起こるいくつかの事件。テキストで語られなかった真相は最後の写真を以て明かされる!? 流石は道尾さん。複数の解釈を写真を用いて一つに収縮させるストーリングはお見事。 |
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音更風゛はとあるミステリー作家一家のメイド。ある日、一族の中で殺人の計画が立てられていることを盗み聞いてしまう。その計画を立てているのはミステリープランナーなる男・豺!! 音更風゛は一族内の殺人を未然に阻止するためにその男に偽装殺人の計画を持ちかけるが・・・。 犯罪を防ぐべく犯人には殺しの成功を偽装し被害者には身代わりの死体を用意する。そして本当に必要なのか?本格ミステリのお約束の伏線も用意した。誰も死なない殺人計画、第一夜にて崩壊!? ミステリには伏線は付き物だがそれは作者が読者へ向けての都合だ。しかし本作は伏線を作中の人物が用意してくれてるのだ、なにせ全ての計画は予め決まっているのだから。ってわざわざ計画がばれるような伏線を用意する必要ないじゃん!!とメイドはツッコむがどうやらミステリープランナーとして本格ミステリのお約束は守って計画は練らないといけないらしい。そんな特殊設定の館殺人に加えて、メイドの音更風゛が強烈なキャラをしている。ミステリフリークスとしてかなりの推理能力を携えてるのだが謎の好奇心で計画をかき乱してしまう。名前もどこかふざけている。点々は決して誤字ではないのだ。 コメディタッチで描かれる「本格ミステリ」を計画した「本格ミステリ」。 |
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隔絶した世界は強固な繋がりへ。独創的な着眼点と圧倒される着地点、距離・時間・愛・倫理を現実から大きくジャンプした先に見える世界。伴名練さんのSF短編集、文句なしの傑作集だったな。 |
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人気漫画家である陣内龍二は妻・里美の交通事故死に悲観し作中のヒロインを勢いで殺してしまう。罵詈と誹謗ばかりのファンレターにまじり妻の死を予言していた手紙を見つける。その予言の主を探るうちに迫る殺意、一連の予言は本物なのか似非なのか最終章読者へ告げる真相とは...。 漫画家である陣内と漫画の熱狂的なファン・三橋との2視点で展開される。予言能力は本物なのか否か、物語の行方は思いもよらない方向に進んでいきます。Fragile、こわれものというタイトルが一体何を意味するのか、浦賀和宏氏やはり裏の裏をかいてくる。 |
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「リクを殺した罪でお父さんを訴える。」
中学生・向井光一の愛犬リクの死因は明らかに人の手による虐待だった。疑いの目を実の父に向けた光一は民事裁判によってリクの無念を晴らそうとする。そして始まる裁判、淡白すぎる父の行動に関係者一同は困惑するが息子の光一はなにかを見つめている。判決の日、法廷をひっくり返す大きな爆弾が投げられた。 子供が実父を訴えるという衝撃的なテーマであるが、検事や弁護士が跋扈する法廷ミステリーのような固苦しさはなく、子供が如何に裁判を進めていくかということを周りの協力とともにコミカルに描いている。しかし裁判の開幕から一変、父の読めない行動と少年の隠された真意によって法廷は大きく揺らぎだす。裁判について平易に書かれていて読みやすく、ミステリーとして予想外なところに帰着した優秀作。 |
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公園の池で発見された少年の溺死体。悪童3人組によるイジメの結果と疑われるが影の薄い少年の事件は未解決のまま時が過ぎた。それから10年後、少年の幼なじみを名乗る男が3人の前に現れる。事件の真相を暴こうとする者と隠そうとする者の攻防、三角形の悲劇の始まり。 冒頭で度肝を抜かれる。この「デルタの悲劇」は作家・浦賀和宏の遺作であり、不慮の事故で命を落とした息子の代わりに母親が上梓したのだという。無論この作品の発表段階では現実の浦賀氏はご存命であるから、この作品は浦賀氏が生前に自身を故人として扱い遺作という形をとったフィクションの物語である。この作品から2年後に本当に亡くなってしまうのだから何とも不思議な感覚である。 そのようなわけでこの作品は浦賀氏が悪童3人を追い、真実の究明のために残したデルタの悲劇という作中作品である。トリックてんこもり、超絶技巧、最後の一行を作者とともに忘れることはないだろう。 |
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満州の地の最高学府、建国大学を出自としながら敗戦のショックにより地方を放浪する物理波矢多。九州にて炭鉱夫になる道を選んだ彼の前に現れた合里光範。自身と重なる部分の多い合里を中心に物理は炭鉱内での交友を深めていく。しかし鉱山内での爆破事故を契機に炭鉱夫たちは恐怖に見舞われる。事故と同時に行われた密室殺人、そこには炭鉱関係者のおそれる黒い狐のお面の人物がいたという・・・。 元々刀城言耶シリーズの一作として考案されたということで事件解決への流れは非常に似ている。終盤の三転四転する推理のインパクトは抜群です。そして終戦の時代背景と炭鉱という社会をミステリー内に取り入れた歴史ミステリとしても非常に興味深い内容になっている。どうやらシリーズとしては各地を漂泊する物理がその場所での風土とともに不可思議な事件を解決していくというものらしい。また面白い探偵を見つけてしまった。さぁ次は灯台だ。 |
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1945年、東京。空襲下で恩師から受けた遺言。「18年後に・・・」 プラス18。18年後、遺言を守った僕がそこで見たものは時間を超えたとしか思えないあり得ない光景で・・・。 プラス・ゼロからマイナス・ゼロへタイムマシンを扱ったSF小説の大傑作。 これが半世紀前の作品か。ミステリーではないが意外な展開はインパクト抜群、1970年から描いた戦後はあまりにリアル、そこにタイムトラベルというSFが加わるのだから溜まったもんじゃない。 |
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「絶世の美青年」と称するに相応しい美貌を持った男・片山敏彦。老若男女関わらず虜にしてしまう彼の魅力は幼少の頃より彼の人生を歪ませていった。“普通になりたい”、嫉妬、羨望、好奇、怨嗟、あらゆる注目の目に慣れ、人並みの生活を求める彼の元に黒髪の女の無視することのできない視線がべっとりと貼り付く。
異端の祝祭に続き、佐々木心霊事務所の二人によるカルトホラー作品であり前作はほぼ必読。 その類稀なる美貌による世間からの特別視により人生を達観している片山敏彦。そんな彼の元にかつてない黒髪女の視線が突き刺さります。おおよそ人間の所業とは思えない現象に佐々木事務所の扉を叩きます。心霊に強く、美貌にも興味を示さない佐々木るみさんは今回の相談にうってつけなわけです。同じ頃、小学生の七菜香の周りではハルコさんという都市伝説が流行っているようです。教会に通う七菜香から話を聞いた青山は事務所にその話を持ち帰りますが、そこで都市伝説と黒髪の女の視線の奇妙な符号が見つかります。物語は片山につきまとう視線の正体と都市伝説の発端に焦点が当てられ進んでゆきます。 さてさて一体誰がどんな思いで呪いをばらまいてるのでしょうか、まともな人間の仕業ではないようですが。あまり心霊とか呪いとか非現実なものばかり見ていると、、、。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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両親を亡くした12歳の少年が祖母と越してきた家にはどこか見覚えがある。いや家だけではない、その街並みさえも。幼少期から見る影におおわれた悪夢はこの土地の恐ろしいさを警告しているよような気がする。初めて訪れたはずのその土地で近隣の老人が告げる。 「ぼうず、おかえり・・・・。」 ホラーとミステリの破綻なき融合を成し遂げた刀城言耶シリーズを生んだ三津田信三氏が手掛ける家ホラー。家という閉鎖空間でひたひたと迫りくる怪異の怖さ、過去に起こったとある事件と森の祠の謎、未成熟な少年目線の冒険譚、と見どころ多し。刀城言耶シリーズが好きなら楽しめるとは思うが茶目っ気が少ない分下位互換のように私は感じた。 |
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日本脳外科医の第一人者・堂上に届いたのは、妻が田沢湖で遺体で発見されたという知らせ。彼女は15年前のある事件の真相を追って同窓会に参加していた。15年前に殺されたある男とその事件の容疑者、そして壊された家族、妻の死の動機は一体どこにあるのか。過去の事件に口を閉ざす関係者は次々と殺されていく、残された手掛かりは妻が最期に残した手紙、そこに宛てられたタンちゃん呼ばれた人物・・・。 1983年刊行の田沢湖殺人事件の改題および徳間文庫からの復刊ですね。死の湖畔三部作ということでこの後に二作出るようですが内容的な繋がりはなかったはず。新本格以前の作品であり、携帯電話は無し、時刻表有りといった80年代の雰囲気満載の作品ですがトリックについては中町信さんらしい現代に匹敵するインパクト強めなものになってます。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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