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りーり さんのレビュー一覧
りーりさんのページへレビュー数424件
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「リクを殺した罪でお父さんを訴える。」
中学生・向井光一の愛犬リクの死因は明らかに人の手による虐待だった。疑いの目を実の父に向けた光一は民事裁判によってリクの無念を晴らそうとする。そして始まる裁判、淡白すぎる父の行動に関係者一同は困惑するが息子の光一はなにかを見つめている。判決の日、法廷をひっくり返す大きな爆弾が投げられた。 子供が実父を訴えるという衝撃的なテーマであるが、検事や弁護士が跋扈する法廷ミステリーのような固苦しさはなく、子供が如何に裁判を進めていくかということを周りの協力とともにコミカルに描いている。しかし裁判の開幕から一変、父の読めない行動と少年の隠された真意によって法廷は大きく揺らぎだす。裁判について平易に書かれていて読みやすく、ミステリーとして予想外なところに帰着した優秀作。 |
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急遽決めた奥只見への温泉旅行、それが悲劇の幕開けだった。 ホテルのロビーで見かけた彼女、それは2度と会いたくない因縁の女性だった。何か裏のある彼女、他人から恨みを買いそうな怪しげな雰囲気、嫌な予感が確信へと変わっていったときに不思議なことが起きた。スキーバスが転落事故を起こし多数の死傷者が発生、その中には死者として彼女も含まれていた。死因は絞殺だった。
改題前は奥只見温泉郷殺人事件。正直なところ温泉旅行も奥只見もあまり関係がない、改題はいつものように〇〇の殺意となった。プロローグにて「私」は誰かの仏壇の前で自殺した故人の日記帳を読んでいる。ここから事件を回想するように舞台は奥只見での殺人事件にシフトする。以降すべての章の最初に日記帳の一部が挿入され、本作は事件の犯人とともに日記帳の書き主が誰かという点がポイントになっていく。中町信氏らしいトリッキーな趣向が面白いが悲痛と呼ぶには強引すぎる展開だった。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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井上夢人の色々あって世に出なかった短編を十編収めている。年代は90年代前半で統一されているが掲載雑誌がバラバラで純文学のようなキレイな作品もあればパズルをテーマにしたもの、近未来SFものなど様々な趣向が見られる。かなり短めの短編ばかりなので手軽に読めるのでファン方なら読んでみても良いだろう。 |
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貫井徳郎氏の短編集八編。特にコンセプトは無さそうですが、貫井さんらしい男女問わない巧みな心理描写とそこから導かれる裏の真相が楽しい。一編一編は短く非常に読みやすいライトな構成、どんでん返しの謳い文句はやや過剰か。 |
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真夏に雪が降ったあの事件の生き残り“如月烏有”。 彼は事件に関するすべての記憶を失い元の日常に帰りつつあった。 しかし、ある女性と絵との出会いによって彼の記憶の奥底に眠っているものが呼び起こされる。 気付くと烏有は灯油とライターを持って燃え盛る寺院を前に立ち尽くしていた。 導かれるままに放火を続ける烏有、だが現場には覚えのない死体が毎回転がっているのだった・・・。
夏と冬の奏鳴曲の主人公が記憶を失った状態で再び登場。炎を前に呼び起こされる謎の記憶、なにかを見透かしているようなタキシード姿の探偵、かつての恋人に似ている前衛画家、謎が謎を呼び烏有くんの正体はまた闇の中へ。続編というよりかはまた何か伏線を張られたような釈然としない話だった。特に続編出てないけど。 |
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ある女教師が自室で死んでいた。睡眠薬入りのチョコレート、世間を騒がす通り魔、匿名の通報、純真な彼女が抱える裏の顔、果たして彼女は殺されたのか? 断片的な手掛かりと想像を駆使して広がる素人探偵たちの推理の結末は・・・。
女性教師の死をその生徒や同僚といった素人探偵が推理していく推理合戦ものなのですが何か決め手にかける。その欠け落ちたパーツの意味と作者の仕掛けた企みに困惑することは間違いなし。 |
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伯東高校二年四組、意図的に問題児ばかりで構成された35人のクラス。クラスのボスである委員長は親交を深めるために交換日記を開始する、強制的に。最初の書き手の企みでクラスメイトの本名は隠され、異名で呼びあうことになった!斯くして問題児の35人による波乱に満ちた4月が匿名で語られる・・・。 お嬢様から政治家の息子、脳筋に不良にハッカー、そして不登校児に人間を半分辞めてる者。癖の強い登場人物の本名を埋めていくパズル小説です。名前を推理していくことと事件の真相は特に符号しないのでパズルを意識的に解かなくてもストーリーは読めるのだが非常に理解しにくくなる。畢竟、名前はある程度埋めていかなくてはならないのだが35人の穴埋めは中々に骨が折れるので気軽には読みにくい作品だ。 |
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成績不振の写真部・設楽とイケメン天才そして変態の岡江。誰も知らない二人だけの裏取引、それはフェティシズムの高い写真を撮り集めること!! 樋口真由シリーズ以来の長沢樹さん。ちょっとおバカな高校生たちのゆるーい青春ミステリです。 |
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公園の池で発見された少年の溺死体。悪童3人組によるイジメの結果と疑われるが影の薄い少年の事件は未解決のまま時が過ぎた。それから10年後、少年の幼なじみを名乗る男が3人の前に現れる。事件の真相を暴こうとする者と隠そうとする者の攻防、三角形の悲劇の始まり。 冒頭で度肝を抜かれる。この「デルタの悲劇」は作家・浦賀和宏の遺作であり、不慮の事故で命を落とした息子の代わりに母親が上梓したのだという。無論この作品の発表段階では現実の浦賀氏はご存命であるから、この作品は浦賀氏が生前に自身を故人として扱い遺作という形をとったフィクションの物語である。この作品から2年後に本当に亡くなってしまうのだから何とも不思議な感覚である。 そのようなわけでこの作品は浦賀氏が悪童3人を追い、真実の究明のために残したデルタの悲劇という作中作品である。トリックてんこもり、超絶技巧、最後の一行を作者とともに忘れることはないだろう。 |
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怪異蒐集が趣味の「私」に届いたいくつかの怪異譚。作者も年代も媒体もバラバラな話に見られる奇妙な符合、それを知った時「私」に襲い掛かる「何か」。 あなたがこれを読んだとき、———物語は拡散し、私達はこの恐怖体験を共有できる——— カクヨムからスタートした芦花公園さんのデビュー作。創作なのか現実なのか分からない恐怖体験の数々、「私」と共にこの作品を読み解いていくうちにまるで一緒に呪いに巻き込まれていくような感覚が味わえる。 |
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炭鉱夫から灯台守へ転身するその間、旧友に誘われ物理が訪れたのは赤迷路と呼ばれる闇市。戦後の復興の中で人々が飢えを凌ぐための手段として発達してきた裏マーケット、混沌としたその街で“赫衣”と呼ばれる怪人が人々を襲うのだという。細道で行われる一連の事件、犯人はいかにして衆人の目をかいくぐり逃げ果せたのか。 物理波矢多シリーズの3作目。時系列は前作と前前作の間にあたる。今作は闇市という場を舞台に当時の商売とGHQと朝鮮人との微妙な関係に触れ殺人事件を描く。当時の価値観や世相をもっての動機、歴史ミステリとしてまた一段と味が出てきた。 |
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炭鉱での殺人事件から幾年、物理波矢多は灯台守になっていた。海上の安全を守る要として、気の抜けない僻地での仕事に就くことで国への貢献を果たそうとする。新たな赴任先へ向かう途中の海岸で白いもやのようなものを見るが、案内の水先人は口をつぐむ。20年前の言い伝えに込められた灯台守の真相は・・・?
物理波矢多シリーズの2作目。前作で炭鉱夫の道を諦めた物理、勉学の末に新たに就いた職は灯台守でした。海沿いという僻地かつ拘束時間の長い仕事として奥方に嫌がられるような一方で海運の安全を守る誇り高い仕事でもありました。前回が炭鉱の蘊蓄で飾られたのと同様に今作は灯台の歴史に触れていく。そして海にちらつく白い影の謎、その正体は20年前のある灯台守の伝承にまで遡っていく。ミステリーというよりかはオカルト要素の強い物語でしたね。 |
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満州の地の最高学府、建国大学を出自としながら敗戦のショックにより地方を放浪する物理波矢多。九州にて炭鉱夫になる道を選んだ彼の前に現れた合里光範。自身と重なる部分の多い合里を中心に物理は炭鉱内での交友を深めていく。しかし鉱山内での爆破事故を契機に炭鉱夫たちは恐怖に見舞われる。事故と同時に行われた密室殺人、そこには炭鉱関係者のおそれる黒い狐のお面の人物がいたという・・・。 元々刀城言耶シリーズの一作として考案されたということで事件解決への流れは非常に似ている。終盤の三転四転する推理のインパクトは抜群です。そして終戦の時代背景と炭鉱という社会をミステリー内に取り入れた歴史ミステリとしても非常に興味深い内容になっている。どうやらシリーズとしては各地を漂泊する物理がその場所での風土とともに不可思議な事件を解決していくというものらしい。また面白い探偵を見つけてしまった。さぁ次は灯台だ。 |
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毒の仕込まれたチョコレート製品を食べてしまった夫妻。夫は一命を取り止めるも夫人は死亡、しかもそのチョコレートは夫妻とは違う人物に贈られた代物だった。迷宮入り寸前警察が助けを求めたのは「犯罪研究会」の面々、斯くして風変わりな面々の推理合戦が始まった。 推理合戦ものの祖という古典中の古典。推理合戦といえば「ミステリーアリーナ」や「聯愁殺」など素人探偵たちが独自勝手に推理を披露しながら真相に進んでいく形式。本作は素人探偵ながら警察以上の捜査能力や人脈を見せつけ、迷宮入り寸前の事件のはずなのに新事実が出てくる出てくる。登場人物は被害者も含め貴人が多く、端々にお硬い感じが見られる。 |
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1945年、東京。空襲下で恩師から受けた遺言。「18年後に・・・」 プラス18。18年後、遺言を守った僕がそこで見たものは時間を超えたとしか思えないあり得ない光景で・・・。 プラス・ゼロからマイナス・ゼロへタイムマシンを扱ったSF小説の大傑作。 これが半世紀前の作品か。ミステリーではないが意外な展開はインパクト抜群、1970年から描いた戦後はあまりにリアル、そこにタイムトラベルというSFが加わるのだから溜まったもんじゃない。 |
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この不自然な屋敷は一体何なんだ。窓は嵌め殺しがほとんで開放感はなく、唯一開閉できる窓は西側に面したウォークインクローゼットの中とは。あまりに無骨な屋敷の中で起きた密室殺人。その遺体もまた屋敷と同じように理に適っていないことだらけだった。事件から数年後、屋敷に招かれた客人の中に蜘蛛手の姿が・・・。
蜘蛛手探偵シリーズ。 シリーズよろしく建築にスポットを当てたミステリー。もう序盤から分かるぞ、絶対屋敷に秘密あるだろう。その大仕掛から導かれる結末は感嘆か或いは呆気か。令和の時代、タイトルに込められた「エンデンジャード(絶滅危惧)」の真意とは!? ▼以下、ネタバレ感想 |
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※この短編集はすべて叙述トリックが含められています。 似鳥ック炸裂!!叙述と分かっていても騙される快感を是非。 |
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【ネタバレかも!?】
(1件の連絡あり)[?]
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