■スポンサードリンク


悪意の手記



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
【この小説が収録されている参考書籍】
悪意の手記

悪意の手記の評価: 4.00/5点 レビュー 28件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.00pt


■スポンサードリンク


Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全28件 21~28 2/2ページ
<<12
No.8:
(4pt)

善と悪・・

主人公は15歳の時に大病を患った。
死の恐怖と戦うにつれ、次第に社会や人間を憎むようになる。
内容は、主人公の手記の形をとる。

病気は一時回復し、退院する。
その後、衝動的にではあるが、友人(K)を殺害してしまう。

主人公は、Kを殺してしまった贖罪と自分への嫌悪を頂きながら大学生となる。
大学では、友人や恋人と呼べる者も出来るが、
自身としては自らの破滅を望みつつ自殺する勇気もなく惰性的な日々を送る。

最終的に、おそらく彼自身も意外な行動をとることとなる。
作者自身が書いているように、善と悪というテーマを元に、
殺人を犯してしまった若者の心の内を描いている。
悪意の手記Amazon書評・レビュー:悪意の手記より
4104588032
No.7:
(5pt)

再生

中村文則「悪意の手記」を読了。重いテーマをしっかりと描こうとする意図がしっかりしている良作。人を殺すことはなぜいけないのか、そしてその罪は贖罪されるのか、罪を犯した人間は赦されるのか、赦されないのか、どのようにしたらよいのか。生きるとはどういうことなのか。このテーマに真摯に向かった作者の姿勢がうかがえる。テーマがテーマだけに、読者に重くのしかかってくる。その重さを噛締めながら、物語の世界に読者は入っていく。物語の最後に作者は再生の一歩を記している。それがこの物語の救いになっている。
悪意の手記Amazon書評・レビュー:悪意の手記より
4104588032
No.6:
(5pt)

とても27歳とは思えない深み

中村作品を読むのははじめてだけれども、
親友のK、というアルファベットは
は夏目漱石の「こころ」を彷彿とさせ、
全体に漂う雰囲気は太宰治を彷彿とさせた。
今までのシリーズや、中村氏の他作品をみていて
芥川龍之介作品を意識しているのはわかったけれど、
自分としては太宰治の雰囲気に近く、言ってしまえば
明治文学の現代版、という感じがする。

目を背けたくなるような話の連続なので、
読む人は読むというタイプの作品だと思う。

とくに「手記1」の闘病患者の心の有り様を
まるで自分が体験したかのように引き込まれる。
全く普通の人間が多感な時期に突然、
生死をさまよう体験をにしたら、
きっとこのような思考になるのではないか、むしろ
自然な精神崩壊っぷりだと思った。

不条理な暴力的体験をした人は、共感する部分は
多いのではないかと思う。
思考世界の場面は宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」を彷彿させ、
実際にキリスト教の思念も盛り込まれ、
それは「手記2」にも生きてくるエピソードになっている。

アニメや漫画に例えると、
エヴァンゲリオンや「ヒミズ」に近い感じがするので、
好きな人にはお勧めしたい1冊ですが
ちょっと勇気がいるジャンルです。
もしカバーが書店でよく見かける漫画家コラボなんかでイラストが
描かれていたら、手に取る若年層は多くなるのでは、
とか考えましたが、自分は太宰作品が読みきれない人にとっては
短い方に入る話だと思いますが、
ちょっと大変かもと思います。

他の方のレビューのように、言われてみればラストは
手記1・2に比較すると、きれいにまとまりすぎている感は
あるけれども
このような重いテーマを、無駄な言葉を一切無く、
読み手にとってはわかりやすい現代の小説として
描いた作者の頭の中はどうなっているのだろう、と
凡人の自分には思えました。
読後、
今より充実していて
今より本に夢中で、
たくさんのことを考えていた頃の自分が
蘇ってくるような余韻に浸りました。

とにかく、若い作者が、
夏目漱石や太宰治にまるで、
素手で喧嘩を売るように挑んだ、
荒々しくもみずみずしい印象と
勇気や才能に賞賛以外の言葉が見つからない。
中村氏に拍手を贈りたいです。
悪意の手記Amazon書評・レビュー:悪意の手記より
4104588032
No.5:
(3pt)

「罪」は赦されるのか?

中村文則の小説を何作か読んでいるのだが、
とりあえず、最後を「うまくまとめる」のは
やめたほうがいいと思う。
この小説も「あること」が起こって最後になるのだが、
それは、完全に作者の都合で、つじつまはあっているが、
「ご都合主義」と言われても仕方ない、
まあ、結末に悩んだのかもしれないが、

それから、中村は現実に殺人を犯したひとについて
どう、考えているのだろう?
この小説のなかで、殺人を犯したひとが、
朝日を見て「美しい」と思うのは、
おかしい、というニュアンスが書かれているのだが、
それは「真実」だろうか?

現実の社会では殺人事件というのは毎日のようにあり、
殺人事件を犯し、刑期を終え、出所してきたひともいる。
そういうひとたちは、「日常」という幸福を感じては、
決していけないのだろうか?
もし、殺人を犯したなら、死ぬべきだ、
この小説は、多少の幅の広さを持ちながら、
そう、結論付けているとしか思えない。

だとするなら、ぼくはその考えに反対する。

殺人といっても、故意の殺人から、
未必の故意、それから、過失致死まである。
「ひとを殺した」とひとくくりにできないのが、
現実であり、この物語ひとつをその「回答」とすることはできない。

それから、キリスト教と「罪」の関係が出てくるが、
あまりにも浅くて、
とても深い理解に基づいた記述とは思えない。

各キャラクターの個性が浅いのは、
「手記」という全体の構成から、
ある程度は首肯されると思う。

あと、文学で、「発狂」という表現をやめてくれないだろうか?
これは、中村以外の作家にも言いたいのだが、
もし「発狂」を「統合失調症の発症」と言いたいなら、
それは、あまりにも現実を知らないし、
差別的な意識が表れている。
現実には、統合失調症の治療を受けながら、
仕事をしているひとだって、たくさんいる。
(いま、障害者雇用ではたらいているひとはたくさんいるのだ)。
中村に限らず、「発狂」という一言で終わらせるのでなく、
ただしい、精神障害の知識を身に着けて、
それで、「狂気」というものを書いてもらいたい。
「発狂」という言葉の使い方に関して、
日本文学はこの半世紀まったく進歩していない。
悪意の手記Amazon書評・レビュー:悪意の手記より
4104588032
No.4:
(5pt)

結局

自分の苦悩に値しない生き方をしていくことは、自分の身を滅ぼしていくことになるということでなのでしょうか。

この本からはそれを学びました。
悪意の手記Amazon書評・レビュー:悪意の手記より
4104588032
No.3:
(5pt)

中村文則の中で

 デビュー作、銃の次に読んだ作品。
 銃も甘さの残るできばえであったが、それを凌駕する面白さであった。
 これも面白かったのだが、もう一押し足りない。
 序盤はよかったのだが、第二の手記もまだいいが、第三の手記の展開はどうだろう。
 いくらなんでも、少しベタすぎやしないですか? もう少し煮詰めた書いてもよかったと思う。
 いわゆる、罪の解放をテーマにすえた作品だと思うが、掘り下げが足りない。文学の価値は答えを明示するのではなく、問いを発するものだと僕は思う。
 その点で別に問題はないのかもしえないけれど、さてさて……
悪意の手記Amazon書評・レビュー:悪意の手記より
4104588032
No.2:
(4pt)

相変わらずの深層心理ワールド、深くて重いなあ。

とにかくここまで独自のテイストを持ち、自身のスタイルを確立している、20代の作家というのは、私からしてみれば天才としか思えないです。

 物語はとにかく、いつもの中村作同様、とにかく暗くて湿っぽい。大病を患った主人公がある殺人を起こし、そのことについての自信の精神の変遷を、そこそこの出来事で話をつなげながら、描いているというものです。

 正直、「遮光」「土の中の子供」など、過去の中村作がいまひとつ面白くなかったと言う人にはお勧めできません。

 今では珍しい純文学に限りなく近い、ミステリー小説だと思います。
悪意の手記Amazon書評・レビュー:悪意の手記より
4104588032
No.1:
(3pt)

今ひとつ深みがたりない

所謂動機なき殺人を扱ったもので、流行ものといえばそれまでだが、なかなかうまく纏めてある。一人称で語られる「手記」という体裁をとっている。主人公の「私」は、「異邦人」のムルソーと「罪と罰」のラスコル二コフの両方の要素を併せ持っている。病気によって世界観が崩壊し、そこから生ずる虚無と絶望が人を殺人に向かわせるという設定だが、今ひとつ説得力に欠けるし、心理の掘り下げが浅いという気がする。展開もややご都合主義の面がなきにしもあらずである。最後も、ややセンチに流れて、「キレイ」なってしまっている感じがある。人がもって生まれた「業」のようなものを、もうすこし凄みをもって描ければよいと思うが。だが、20代でこれだけのものを書ける才能はたいしたものだと思う。この人の他の作品も読んでみたくなった。
悪意の手記Amazon書評・レビュー:悪意の手記より
4104588032

スポンサードリンク

  



<<12
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!