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終戦のローレライ
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【この小説が収録されている参考書籍】
終戦のローレライの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.43pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全187件 121~140 7/10ページ
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えー、ページ数が多いです。読むのに少し疲れます。しかし、良作であることには変わりありません。戦闘シーンは、それほど多くないですが密度が濃く、なかなか楽しませてくれます。椰子の実の歌が聞きたくなる小説です。映画の予告編がよい出来なので、ぜひ一度見ることをおすすめします。 | ||||
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まず「長い」と言おう。それもそのはず、映画等のジャンルでは割愛されざるを得ない脇役的人物ひとりひとりの背景・思いが切々と書き連ねられている。その分読者にも負担はあるが、敵・味方のどちらにも感情移入してしまう分、勧善懲悪ではない、純粋な命のやり取りにこそ相応しい悲哀を疑似体験する。人間ドラマが濃い。軍人でありつつ人間であるからこそ人の生き死にを直視することへのやりきれなさ。敵艦を破壊する度に、「何故」と問い続けられる人間兵器となったヒロインの姿がいじましい。2005年度に映画化されるという事を耳にしたので読んでみた。読み終わった後は、映画館でもう一度ローレライの乗組員ぶるのも悪くない。 | ||||
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『亡国のイージス』が楽しめたので続けて手にとった。やはり頁を繰る手が止められず千頁程を2日で読みきってしまった。F・フォーサイスばりに、実際の史実のアイテムを織り交ぜながら展開する裏物語。本書もやはり『亡国』同様に饒舌で、マンガチックで、荒唐無稽。「ヤマト」「ガンダム」おまけに「最終兵器彼女」…。「君は誰の為に闘うのか?」という空耳が聞こえてきそうで恐かった(笑)。はっきりいって、アニメ世代より上の年代にはキツいノリかも。浅倉大佐の口を借りて語られる「国家を切腹」云々のケジメ論や極限体験談も、石原莞爾をベースに、渡辺清『砕かれた神』と大岡昇平を足して思い切り稀釈した感じで「あーあ、やっちゃったかな?」と一瞬不安に(映画では浅倉役は堤真一。汗)。最終章を借りて開陳される「戦後総括」に至っては、今やある種の紋切り型と評するしかなく、思わず苦笑いするしかない(参考文献はJ・ダワー『敗北を抱きしめて』か?まさか、小林よしりんの『個と公論』では?)。にも関わらず、引き込まれ楽しめてしまうのは、結局、私自身が体で戦争を知らないからなんだろうなと逆説的に納得。つまり単純にドンパチ物として面白いのだ!特にお気に入りは、主題を象徴する藤村の「椰子の実」と、ローレライ・システムの「コロセウム」が何ともレトロでドイツっぽいところ(もしかしておもちゃの「お絵かき先生」がヒント?)。それとカバー(あの魚眼の視線は…)。あと、ソナーについてパッシブ/アクティブの2種類の違いを知ってるとお徳かも。尚、主要登場人物の中で米内海軍大臣は開戦前は首相も勤めた実在の人物。 | ||||
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第二巻。ついに『あるべき終戦の形』をもたらすとされる特殊兵器ローレライの正体が明らかにされます。そこには読者の想像を遥かに超える重い過去があり、そしてユダヤ人を大量虐殺したナチスの真実があります。フリッツ・エブナーの語る過去に、涙を流さずにはいられませんでした。 そして主人公・折笠征人は『死ぬ理由』を求めもがき続けます。何もわからないまま死んでたまるか。その想いは、果たして届くのか。 必死に生き抜く男たちを乗せた伊507の行く末から、もう目が離せません。来月発売の三・四巻。果たしてどのような結末を迎えるのか、非常に楽しみです。 | ||||
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ハッキリ言って、最終章は蛇足に感じた。ここまでかたる必要はあるのか?と考える場面も。でもそれを差し引いても、☆5つじゃ足りない。それぐらい、完璧な大作だった。 | ||||
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全四冊構成のうち、唯一薄い第一巻。しかしながら、中身は非常に奥深いです。神風特攻、一億玉砕が叫ばれていたころの日本。負け方を知らなかった日本の中で、密かに行われていた終戦工作。特殊兵器『ローレライ』を用いて、無条件降伏を避けようとする日本。そしてその船『伊507』の中で必死に生き抜く主人公たち。「国のために死ぬのは構わない。だが、何もわからないまま死んでいくのは嫌だ」この本は読者にそう語りかけてきます。特攻して死んでいく人々の気持ちなど到底理解できない現代人に、彼らの気持ちを伝えてきます。この国に、あるべき終戦の形をもたらすと言われる『ローレライ』。壮大な物語の幕開けとなる、第一巻です! | ||||
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この数週間で、福井晴敏氏の著作「川の深さは」「Twelve Y.O.」「亡国のイージス」そしてこの「終戦のローレライ」を一気に読破したが、上記四作の中では、「終戦の…」がずば抜けて面白かった。というより、非常に長い作品なので、その間「ローレライワールド」へどっぷりと浸かりこんでしまい、読了後も登場人物へ感情移入してしまって、非常に困った(笑)。恐らく多くの男性読者にとって、ヒロインのパウラ・エブナーは永遠の恋人であろう。本書のストーリー、テーマは、他の方々が触れているので割愛するが、綿密な考証、緻密な伏線の張り方は、明らかに世界のトップレベルライターを凌ぐ。福井晴敏氏は、押しも押されぬ、現代世界のトップミステリーライターの一人であろう。私の場合は、寝食も忘れて読み耽ったが、恐らく私のようにハマリ込んでしまう人は多勢いるだろう。文句なしにオススメの作品である。ただし、難を言うと、福井晴敏氏の作品はどれも、キーとなるキャラクターが、20歳前後の若者で、そのキャラが超人的な活躍を見せて物語が進んでいくが、やはりこれは現実離れして無理があるだろう。氏がまだ若いということから無理からぬことかもしれないが、30代以上の大人が読むと、相当な違和感が伴うことは否めない。また、緻密な考証の割には、ストーリーの展開が、どうしても男同士の友情と、若い男女の愛情によって進んでいってしまうところなどは、浪花節の体質が抜けきれていないのだろう。このへんが、「ガンダム」作家たる所以だろうか。この二つの欠点を克服した時、30代以上の読者も安心して読める、名実ともにトップの作家になるのではないだろうか。だが、これらの欠点に目をつぶっても、この作品は文句なしに面白い。素晴らしいの一語である。 | ||||
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「ガンダム」を聞くと、それを知らない者にとってはマニアックな響きであり、一歩ひいてしまう。現にわたしがそうだ。この著者は確かにそのノベライズ等も書いているようだが、この話は全然別物にである。物語の根底にガンダムがあるという、一部のガンダムファンもいるが、これから手に取る人で、ガンダムという言葉を聞いただけで敬遠してしまう人もいるので「終戦のローレライ」はあくまで独立した物語として、よさを伝えて言ってほしい。私も、もしこの話を読む前に「ガンダムが根底にある」などと聞かされていたら確実にこの本は手にする事がなく、この感動を見逃してしまっていただろうから・・・。 | ||||
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特にここで作品内容についてどうこう語る気にはなれない。この小説を読んで感じたのは、「終戦のローレライ」が持つエンターテイメントの根底に、「機動戦士ガンダム」が見え隠れしていた事。あの伝説的アニメがエンターテイメントになりえた要素が、この「終戦のローレライ」にある。著者が「機動戦士ガンダム」を原体験し、そこから得たアイデアが歴史を舞台に花開いた感じを受けました。登場人物一人一人が綿密に描かれ、誰一人端役として描かれない。序章が少し長く気がだれてきますが、その序章が複線となりその後の展開にどんどん引き込まれていきます。こんな分厚い本本当に読めるのか不安だったけど、気が付いたら読めてしまっていました。私を含めて戦争を知らない世代に読んで欲しい戦争冒険小説です。 | ||||
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圧倒的な筆力に感服しました。今までは、集中して読みきる自信がなかったので、後回しにしていました。しかし今回意を決して購入。上下巻を通して、じっくり味わいました。 まず、キャラクターがいい。やはり若い真っ直ぐな主人公というのには、感情移入しやすいです。秘密兵器のキャラクターも、彩りとして大変いい。いわくあるフリッツという存在なんて、ガンダムにおけるシャアではないですか。福井もガンダム・シリーズの「ターン・A」を書いているので、ガンダムの世界と福井の世界が相互にいい影響を与え合った感じです。無論、敵役や脇役もいい。 次に、リアリティーと創造性のバランスがいいのです。南方の人食い伝説、マッチ箱の新兵器など、太平洋戦争ものの恐怖のツボを押さえています。そこへ、大局を見る俯瞰的な思弁がそれぞれの立場で語られる。米軍の秘密攻撃作戦とシーゴースト+超兵器ローレライは、さすがのオリジナリティー。 天才肌の艦長と信じられない命中率の雷撃・砲撃で、バッタバッタと敵をなぎ倒すところは、痛快です。ときどき絶体絶命のピンチが訪れるタイミングも、言うことなし。この迫力シーンは、アニメでないと表現できないかもしれませんよ。 最後に、敵艦を沈めるたびにその中にいる大勢の乗組員の死を生々しく描くところが、単なる戦記物とは一線を画す所です。作中の「戦争は悲惨だなどというバカでもわかる教訓」の一節に、強く共感しました。「繰り返してはいけない」と十年一日どころか七十年も念仏のように無責任に唱えながら、今日この体たらくをさらす日本の現状です。その日本人の一人として、そんな空々しい言葉を安易に口になどできないはず。血の涙で恥じる気持ちと、悩み続ける覚悟を抱きながら、読み終えました。 それはそれとして、エンタテイメントとしても申し分ありません。 | ||||
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上下2段、1000ページを超える大作でありながら、一気に読ませる本です。極上のエンターテイメントであり、感涙の人間ドラマであり、第2次世界大戦の意義を問う歴史書であり、現代を生きる僕たちに重く深い問いを投げつける警世の書でもあります。特殊兵器「ローレライ」を搭載した潜水戦艦「シーゴースト」。日本軍に託され「イ507」と改名した一隻の潜水艦を巡り、敗戦間近の日本をさらに揺るがす陰謀が進んで・・・ハリウッド的な、映像が目の前に浮かぶような迫力ある戦闘の描写(「ユーボート」や「レッドオクトーバーを追え」など、潜水艦映画を彷彿とさせます)。一人一人が生き生きと躍動するようなどうしようもなく魅力的な登場人物の数々。エンターテイメント作品として、文句なく楽しめます。ただし、この作品はそこに留まりません。明日の「あるべき日本の姿」を夢見て冷静に狂う者、押しつけられた大儀に殉じ思考停止のまま命を落とす者、ただ餓えを満たすために他者の血肉をすする者。次代を生きる者に微かな希望を託し、自らが盾となり命を散らす者。。。僕たちが生まれるはるか前、既に風化し、歴史となりつつある太平洋戦争を生きる人々の生き様が、「人は何のために、何を為すために生きるのか?」という、本質的な問いかけを、50年以上経った今を生きる我々読者に突きつけてきます。自分の国にプライドを持てず、漂流する椰子の実である僕たちがたどり着くのはどこなのか。その答えは自分たち一人一人が自ら考え、求めていくしかないようです。大げさでなく人生が変わる。日本人なら誰しもが読むべき本です。 | ||||
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第二次大戦末、日本敗北までの約1ヶ月、歴史の表舞台に上がる事のなかった多くの人々・事柄の中であったかもしれないひとつの道。「死して護国の鬼になる」をよしとする国情の時節、友の為、愛する者の為に戦った潜水艦乗り達の物語。重くなりがちなテーマを持ちながら読み進める事を止めさせない力強いエンターテイメント性は圧巻。是非、多くの人に読んで欲しい!! | ||||
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久しぶりに「大作」を読み終えた充実感と、物語が終わってしまう寂寥感を感じました。あらすじは他の評者の方が書いているので、読後の注目点を2点ほど。作品の完成度は、『亡国のイージス』の方が上であると思うが、ことスケールでは、終戦の~ほうが、はるかに上だ。ほぼ主人公の同期や物語の構造が、デヴュー作から一貫して同じな福井作品にあっても、その広がり射程距離共に申し分なく、別格の風格を与えている。同じテーマばかりなのに、すごい筆力ですね。それは、この時代の近代日本が、まだ戦争を忘れていない時代だという背景もあろう。一つは、悪役?というか、《伊507》の思想に対抗する帝国海軍将校朝倉良橘大佐軍令部一課長の純粋な哲学です。この余りに妖しく美しく純粋な「悪」の思想に、ふるえました。地球を守るためにアクシズを地球に落とそうとしたシャア・アズナブル大佐や紀里谷和明監督『キャシャーン』の悪の総帥ブライ(唐沢寿明)らの悪役の哲学・理由が美しく純粋であるほど、物語の構造は輝きまします。物質消費文化至上主義の真っ只中で生きる現代日本人の我々には、朝倉大佐の絶望は、痛いほどわかります。作者自身も、507の乗組員も朝倉大佐の絶望による「国家の切腹」は、否定し切れていません。実際には、陳腐なヒューマニズムよりも、朝倉大佐の純粋さの方が、もしかしたら正しいのではという妖しい思いもよぎります。富樫義博『幽遊白書』なんかも、陳腐な正義感の主人公よりも、人間に絶望した悪役の方が、ゾクゾクするほどかっこよかった。この作品の時代設定は、1945年(昭和20年)8月近辺を描いている、いわゆる戦記ものになるであろう。陳腐な歴史IFものではなく、現代アメリカンウェイオブライフの消費文化への懐疑と同時にその背景にある圧倒的な軍事・資本の力や近代日本の持つ組織の致命的欠陥など、前提が非常に深刻かつリアルである。最近山崎豊子『不毛地帯』、瀬島龍三『大東亜戦争の実相』、司馬遼太郎『坂の上の雲』や小林よしのり『戦争論』、『亡国のイージス』等など、この時代の話を集中的に読んでいたので、イメージがすごく湧きやすかったのも、作品の背景を深読みできて面白かった。それと、なんでかは読めばわかるが、浦沢直樹さんの『Monster』も強く思い出された。 | ||||
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福井晴敏の書く物語にはパターンがある。テーマ、登場人物の設定、ストーリーの展開。『終戦のローレライ』も、そうした福井作品に共通のパターンが踏襲された物語だが、それでもワンパターンとしらけさせられる事が無いばかりか、深く感動させられてしまった。福井晴敏の作品はハズす事なく傑作ぞろいだが、中でもこの作品は名作と呼べるだろう。読者は『椰子の実』の歌を聴くたびに、この物語を思い起こすに違いない。 | ||||
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福井晴敏の書く物語にはパターンがある。 テーマ、登場人物の設定、ストーリーの展開。 『終戦のローレライ』も、そうした福井作品に共通のパターンが踏襲された物語だが、 それでもワンパターンとしらけさせられる事が無いばかりか、深く感動させられてしまった。 福井晴敏の作品はハズす事なく傑作ぞろいだが、中でもこの作品は名作と呼べるだろう。 読者は『椰子の実』の歌を聴くたびに、この物語を思い起こすに違いない。 | ||||
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「国や社会はおかしくなっている。でも、もう流れを止める事ができない」。太平洋戦争末期、多くの人がそう感じていた事だろう。しかし、運命に抗う者達がいた。彼らを結びつけるのは、1隻の潜水艦と秘密兵器ローレライ。刻々と変わる状況に翻弄され、様々な思惑を抱えつつ戦いに臨む人々。繰り広げられるのは一級のエンターテイメント。しかしながら、メッセージ性も強い。後に続く世代へ向けて語られる言葉は、戦争から59年経った今日その重みを増している気がする。難点を挙げるならば頁数の多さだが、本書に魅力を感じる人ならば最後まで読み通す事ができるだろう。 | ||||
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大著である。昨今のエンタテイメント作品はそのディテールの細かさから分量が多くなる傾向があるがこの作品もご多分に漏れず、長い。しかし1968年生まれの作者福井氏にとりSFに近い60年前の潜水艦戦を、かくも臨場感に溢れ描写できる筆力に世の賞賛は惜しまれないであろう。汗をかかない悪役(浅倉大佐・フリッツ少尉)やぴったりとした戦闘服を身に纏った少女(エヴァンゲリオンの世界?)・超能(感応)力といった極めて現代的な意匠を散りばめながら尚、戦後世代が見上げる日本と日本人についての考察の強靭さに流動食のようなエンタテイメントになれた読者は必ずやたじろぐであろう。しかし歯ごたえのある思索の記述をしっかりと読みこなすことにより自らの立つ地平を再確認させられる書である。心ある映画化を今は望むばかりだ。 | ||||
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福井氏が東宝と映画公開を前提にプロジェクトを組んだ小説でしたね、確か。つまり、そのまま映像化が可能なほどのディテールがあるわけです。潜水艦内部構造の細かさ、当時の国際情勢の正確な知識には脱帽します。その意味で、イデオロギー関係なく読める客観的な作品ですね。それから、前作の「亡国のイージス」でも強烈な臨場感に驚いた記憶がありますが、本作はそれ以上です。文字を追いかけるだけで情景が浮かび上がります。内容面も満足の一言。ナチスドイツが降伏し、原爆が広島、長崎に投下される中で、正式の軍令から外れても人間、軍人としての大義を貫く不器用な潜水艦員の情熱に胸が熱くなりました。絹見艦長、折笠上等兵、フリッツ、パウラ・エブナーといった出生の異なるメンツが心をひとつにして行く人間味溢れる展開にも涙しました。長尺な作品にも関わらず、これほど下巻への期待感を残す上巻は初めてです。誇張無しで賞賛出来る傑作です。 | ||||
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第二次大戦末期、連合国から“シーゴースト”と恐れられた謎の巨大潜水艦。そこに搭載されていた乗員さえ正体を知らない謎のシステム「ローレライ」。日本海軍はその潜水艦を入手して『伊507』と名付け、海戦のどさくさに投棄されたローレライ・システムを回収するために改めて出撃させるが、集まってきた軍人達は皆半端者ぞろいで……と書くと、良くあるトンデモ海洋戦記物にも見える。だがそうなっていないのは、『伊507』に関わる人々が皆何らかの“闇”を抱えているからだろう。華々しく豪快な『伊507』の戦闘と、自らの中の闇に苦しむ人々、このふたつが交互に描かれ、影響を与えながらひとつの結末へと向かっていく。これがこの物語をただの架空戦記にとどまらない、息詰まるような人間ドラマに仕上げている。惜しむらくは、物語の流れから完全にはずれた上に、いきなり説教くさい響きが漂う終章がやや蛇足気味に見えることであろうか。だがそれを差し引いても、決して損はしない面白さを持つ作品だと言えるだろう。 | ||||
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福井晴敏作品3作目です。読むたびにだんだんと文章量が増えていきますが(川の深さは→亡国のイージス→本作)、上下2段組1000ページの量で読むのに流石に時間がかかりましたが、きっちりと読めます。きっとテーマがはっきりしているからでしょう。当書は『このミス2004年国内作品第2位』の作品です。舞台は第2次世界大戦下、連合国に降伏した独から密かに秘密兵器〝ローレライ〟が日本の手に渡る。浅倉大佐は〝あるべき日本の終戦の形・戦後の日本の姿〟を求めて〝国家の切腹を断行〟する。例によって壮大なスケールの内容ですが話が雑にならずにむしろ本当の史実であったかのような錯覚を覚えさせられるほどの迫力です。ただ、内容的には60年前を舞台にしながらバブル後の不況=日本にとって2度目の敗戦 を意識して書かれている事は読み進めると見えてくる様な気がします。世界における日本とは何か?国家とは何か?というスケールの大きいテーマをアイデア満載・人間の感情の〝ヒダ〟まで描ききる内容には感服しました。それにしても主人公達、とてもかっこいいです! 来年の映画化、とても楽しみになりました。 | ||||
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