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冬のオペラ
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冬のオペラの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.84pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全17件 1~17 1/1ページ
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「名」探偵、巫弓彦と筆記者である姫宮あゆみの物語。 この物語を言いかえるならば、「素敵」である。 ミステリの体裁をとってはいるものの、 描かれる人の哀しさは読者の胸をうちます。 目新しいトリックはないけど、発想の変化が巧いと思ました。 | ||||
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2011年4〜5月、NHKで視聴者参加型推理クイズ番組「探偵Xからの挑戦状!Season3」が放送されましたが、第2話「ビスケット」の出題者が著者であり、本作品の続編と言う設定でした。 著者の作品は「日常の謎」を扱うことで有名になった【空飛ぶ馬】や【夜の蝉】は既読でしたが、本作品は知らなかったので、読んでみることとしました。 本シリーズは、「探偵は存在であり意志である」と言う哲学により名探偵を自称する巫(かんなぎ)弓彦を主人公とする連作ミステリ。 本書には、2つの短篇と1つの中編が収録されています。 短篇の【三角の水】と【蘭と韋駄天】は「日常の謎」を題材としており、中編の【冬のオペラ】はダイイング・メッセージがテーマの殺人事件の謎、と言うのが大まかな特徴です。 読み始めてすぐに感じたのが、文章の巧みさ。 直木賞作家に、文章がうまいなどと言っても誉め言葉にはならないでしょうが、単なる「謎解き」ではなく、「物語」として綺麗にまとまっています。 ワトソン役を自ら買って出た二十歳の女性、姫宮あゆみの一人称で描かれる本シリーズは、明るくユーモアにも富んだ彼女によって、エキセントリックな探偵を小気味良く読者に橋渡しすることに成功しています。 作中のトリックは奇抜さや斬新さはあまり感じませんでしたが、物語全体としてみた場合、無理なく溶け込んでおり、ストーリーテリングの妙を感じさせます。 巧みな小説を読んだな、と言う充足感を持って書を閉じることの出来る作品だと思いました。 | ||||
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妙な探偵を生み出したものだ。 現代において名探偵として生きるには、こうでもしないと成立しない。 著者の本格に対する愛を強く感じる。 このような探偵像は一歩間違えば、滑稽にもなる。 しかし、真摯な姿勢に心を打たれる。 哀しい3つの事件 ヒロインの存在が温もりとなる | ||||
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高校を卒業した私、こと姫宮あゆみが勤めだした不動産屋の2階に、自称名探偵、巫(かんなぎ)弓彦が引っ越してきた。名探偵として、難事件の依頼しか受け付けないことをポリシーとする巫に興味を持ったあゆみは、ワトソンよろしく事件の記録者を買って出た…。 一目(一度聞いただけ)で真実が見えてしまう名探偵「巫弓彦」とワトソン役「姫宮あゆみ」が活躍する連作中編集。3篇からなるが、最初の2編は巫の能力の一端を明らかにするような導入的作品で、「冬のオペラ」がメインディッシュ。 文字通りオペラ仕立てだが、中身はダイイング・メッセージと奇妙な犯行現場の謎解きを中心とする本格派。最後の最後までダイイングメッセージの解は伏せられるが、探偵の一言が、虚空に消え行くヴァイオリンの音のように余韻を残す鮮やかな幕切れ。同時にタイトルの意味に気づかされる。 著者特有のぞくりとする人の悪意、妄執も作品に陰影と哀切を与えている。 なお、円紫さんと私シリーズとの類似性を嫌ってか、その後続編が出ていないようだが、もう少し読んでみたい気がするものの、上述のような3篇の構成からすると、これで読みきりと考えた方が良さそうである。 | ||||
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ある時、自分のことを「名探偵」と気づいた巫弓彦と、 彼の記録者に立候補した物書き志望の姫宮あゆみの物語。 ▼「三角の水」 証拠隠滅を謀った企業スパイが行った放火方法とは? トリックは自体は、化学的知識に基づく単純なもの。 本作においては、謎解き興味より、二人が奇妙なコンビを組むに至る経緯や、 いかにも現代的で卑小な人物たちと、超然として自らの道を歩む巫との対比の 構図が読みどころです。 世知辛く散文的な今の時代に、「名探偵」という孤独な 生き方を貫く悲哀と覚悟を、淡々と軽妙に描いていきます。 ▼「蘭と韋駄天」 上野のニコライ堂周辺を舞台に、足疾鬼の 仏舎利盗難になぞらえられる蘭盗難事件。 〈アリバイ崩し〉がテーマ。 被害者も犯人も俗物で、醜い虚栄心の応酬を繰り広げていく展開に苦笑。 彼女たちの友人で、本件の依頼者でもある椿雪子は「冬のオペラ」にも登場します。 ▼「冬のオペラ」 冬の京都の大学。 2階にある研究室で、教授が殺害された。 窓からはザイルが垂らされ、地上には被害者の衣類がばら撒かれていた。 犯人は、ザイルを使って部屋に出入りしたのか? 実質的に密室状況であった犯行現場が生じた背景には、 「蘭と韋駄天」と同様、足疾鬼の影が……。 レッドへリングを適度に泳がしながら、結末で巫がダイイング・メッセージの 意味を告げる、その一点に向かって物語を収斂していく様は、哀しくも美しいです。 | ||||
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円紫師匠と《私》シリーズから読んでいるので、私にとっての初めての北村薫流”探偵”。個人的には「行動であり結果」でもあり「存在であり意思」でも結局起こる事象にはあまり大差ないと思うのだが。 さておき。 相変わらず伏線や小ネタが多すぎてちょっと田中潤司の解説がないときつかった。文章が難解なのではなく、文章の意図するところが難解なのかな。 内容も今冬ぴったりの作品。 | ||||
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北村氏お得意の、無垢で感受性豊かな女の子と探偵(指南役)という組み合わせのお話。・・・失礼、探偵ではなく「名」探偵であった。その名は巫弓彦。突出した才能を有する人がしばしばそうであるように、名探偵・巫先生も不遇の人である。その悲哀が「わたし」(あゆみ)というフィルターを通ることによって増幅される。何ともいえないおかしみがあればこその悲哀である。生計を立てるためビアガーデンでモロキューを運び、コンビニや新聞配達のバイトをし、玄海鮨で出前を手伝う名探偵。何せ「名探偵にふさわしい事件」しか手がけないのだ。本業のみで生活が成り立つわけがない。しかしひとたび難事件に遭遇すれば並外れた鋭い推理を働かせ、「わたし」から全幅の信頼を得る。その姿は、下界と天上界を行き来するかのようである。 本書には彼らが関わる3つの事件が描かれている。断っておくが、胸躍る冒険譚ではない。そこにあるのは、「わたし」に無垢の反対側にある人の心の動きを知らしめる事件であり、痛みを伴う物語である。ことに表題作。2月の京都を舞台にした、それこそ底冷えするような悲しみに包まれた物語だ。 | ||||
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北村薫作品を読むのは2作目です。 初めて読んだ「ターン」とは、若干毛色が違いますが、名探偵「巫(かんなぎ)弓彦」と言う強烈なキャラクターが登場します。 3つの短編が収録されていますが、2作目と3作目は併せて完結という感じです。 前奏曲、間奏曲として謡曲「舎利」の一説が挿入されています。 巫弓彦が自らを、「韋駄天」に例えているからなのでしょう。 仏舎利から歯を盗んだ俊足の「足疾鬼」を捕らえたのが、それを上回る俊足「韋駄天」だったことによるのですが、状況を聞くだけで犯人が分かり瞬く間に解決してしまう巫弓彦は正に「韋駄天」である訳です。 3作目は、やるせない結末ですが、後味が悪くならないのは名探偵「巫弓彦」が新聞配達やビヤガーデンのウェイター等をしながら生活の糧を得ていると言うキャラクター設定によるところが大きいですね。 巫弓彦の次作が出ればまだ是非読んでみたいと思います。 | ||||
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女性としていろいろ考えさせられる内容。 推理とかサスペンスというまえに、 文学といいたい。やるせなくつらい女性心理が よく描けてます。 | ||||
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この本の色をもし表すなら、其れは間違いなく「原色」であると私は思う。 私はいくつか北村薫の作品を読んでいるが、其のどれとも似通わない、新しい匂いの作品であると言えよう。 でも、読みやすいということ、其れであっても「本格」だといえること、キャラの素晴らしい個性など、良い面での北村薫らしさは失われていない。 北村薫が好きな方も、はじめての方も、楽しんで読める作品だと思う。 | ||||
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最初はユーモラスな作品なのかと思っていました。 しかし、読んでいくうちに哀しく寂しくなってきました。 北村薫って、ちょっと残酷ですよね。 自分の心が他人より醜いことに気づいていないヒトへの一刺し、そして、哀しい運命から懸命に逃れようとするヒトへの哀悼... いずれも、この作品では声を荒げることなく、静かに描写されています。 それだけに、心に色々と積もっていくような気が。そして、探偵が雪の中を背中を丸めて歩いていく姿がそこに重なります。 でも、ヒロインの素直な明るさが、ポツンと心に灯りをともしてくれるのです... | ||||
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昔北村薫のデビュー作を読み、うまくはできているが好みではないと遠ざかっていた私。久しぶりにこの本を手に取り、この人の世界好きだと思ってしまいました。巫探偵の事件もっと読みたいです。この探偵のある一言心に染み渡りました。私も気づけているのかな・・・ | ||||
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北村薫氏の作品は「スキップ」を読んでから、 ほとんど全て読みましたが、探偵物ではこれが 一番好きです。探偵の巫弓彦の「名探偵」と しての生き方が胸にぐっときました。 探偵・巫弓彦に惹かれていく主人公もとても 透明感のある「北村印」の女性です。 内容は、探偵・巫弓彦にふさわしい、胸をつくような せつない物語です。 他のかたも書かれていますが、シリーズ化されなかった のが本当に残念です。 | ||||
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最初にこの三つの物語を手にしたのは、ハードカバーだった。そして、また読みたいと思って書架に手を伸ばす前に、文庫版発売の報せを知った。毎回読み返すたびに、この類まれな探偵の存在にエールを送り、悲しい結末を「今回は違うんじゃないかな」と期待しながら読み進めずにはいられない。文庫版の解説は珍しい人が書いているので、これまた驚いた。 | ||||
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何度も読み返している作家のひとりです。胸にズキリとくる探偵巫弓彦の方が好み。こちらがシリーズ化されなかったのが残念でなりません。短編三作品が収録されていますが、タイトルにもなっている『冬のオペラ』が一番素敵です。殺人事件であるのに殺伐としていなく、優しくそして泣けてくるような話の運びは、さすが北村薫という感じです。ミステリという分野に足を踏み入れていない方は北村薫から入るのがベストでしょう。 | ||||
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巫弓彦シリーズがこの一冊で(今のところ)終わっていることが、最後まで読んでなんとなく分かった気がした。最初の一編二編は最後の中編「冬のオペラ」の伏線-といって悪ければ序章なのである。この「冬のオペラ」は謎解きもなかなか本格的なのだが、著者の人を見る目がやさしいのだ。だからこそ、内容自体はこんなにも残酷である。しかし北村薫はホントに若い女性の「つぶやき」を書くのが上手い。職人芸ですね。 | ||||
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推理小説のと言うのは不思議なモノで、探偵がというものが暗黙の了解の上でなりたってしまいます。事件が起こり、そこに居合わせた(または、依頼を受けた)探偵が調査をして、推理して、事件の謎を解き明かす。それは、ひとつの当たり前の流れであり、おもしろさでもあるわけですが、果たしてこの日常生活で起こる事件に実際に「探偵」という人が現れたなら、何も違和感を感じずに受け入れることができるでしょうか。 「どんな事件もあっと言う間に解決してしまう。」なんて都合のいいことはありえません。小説の中の探偵は実際にありえそうなことであって、実は非現実的なのです。 しかし、著者はこの小説の中で見事に日常の中に「探偵」を表現しました。それも、とびきり腕のいい。 ぜひ、一度身近に「探偵」を感じてみて下さい。 | ||||
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