■スポンサードリンク
神曲法廷
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
神曲法廷の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.88pt |
■スポンサードリンク
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全6件 1~6 1/1ページ
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
タイトルの通りに、ダンテの『神曲』を通底音として構成された推理小説。事件において明かされるトリック自体は実は単純で、したがって真相が明らかになったところで特に驚くようなものでもないし、そもそも物語のどこかに作者が「読者への挑戦」というページを差し挟むことができるほどは持ち札をすべて明らかにする語り口でもない。それゆえ「本格推理」という表現は決して適切ではないし、まして解説において笠井潔が述べるように「後期クイーン問題」への回答がなされているかというと、それは的外れでしかない。端的に言えば「探偵は神の立場に立つことが許されるのか」というのが「後期クイーン問題」の核心なのだが、しかしそれはつまるところ「作者は神の立場に立つことが許されるのか」という問いへと即座に回収されるはずだ。そしてその問いに対しては「当然許される」としか答えられない。なぜなら許されないわけがないから。もう少し突っ込んでいうなら「許す許さないの問題ではない」となるだろう。であるからには「後期クイーン問題」そのものが空論なのだから、回答が無意味なのは明らかだ。ただ単に「後期クイーン問題」の「一体何が問題なのか」を笠井がまったく理解していないだけである。 ところで本署に戻ると、結末に近づくにつれて「おいおい、あの事件の真相が語られてないぞ」と思いつつ読み進めていくこちらの思惑を最後の最後でとんでもないやり方で裏切ってしまう終わり方には驚愕というよりも――物語の内容に即した意味を多分に込めた上での――絶望を感じずにはいられない。この終わり方は(賞賛の意味で)卑怯だ。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
ダンテの神曲の挿し絵と東京地裁のエントランスホールの天井をよ~く見比べてみて下さい。すると・・・山田正紀氏のメフィストフェレスの如き笑い声が・・・ | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
解説で笠井潔氏が指摘しているように、本作最大の標的は「後期クイーン的問題」。 本作では、作中に「神」というメタレベルの情報を担う存在が仮構され、その「神」が、 間違いなく真である手がかりを佐伯に見せ、事件について推理させる形式が採られる ことで、一種のロジカル・タイピングとなっている、と諸岡卓真氏は指摘しています。 すなわち、 〈推理する者(佐伯)とその推理を保証する者(「神」)を分離した上で、推理を 保証する者からは推理の能力を剥奪する。偽の手がかり問題を回避しつつ、 銘探偵のアポリアを避けるための構図〉が見られるというわけです。 それにしても、“神の正義”が完遂される 本作の結末は何とも皮肉でやりきれません。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
凄いトリックに、文庫版で約650ページ、質・量ともに申し分なし。読み応え、読み終わった後の満足感も言うことなし。様々なジャンルの小説を発表しつづけている山田正紀の、ミステリの代表作になるだろう大作です。 雰囲気作りのとてもうまい作者、本作ではダンテの神曲を下敷きにし(もちろん神曲を読んでいなくとも十分に楽しめます)、緊迫感のある異様な空気に包まれた世界とそこで起こる事件、神の声を聞いた男・探偵役の佐伯神一郎の姿を描き出していきます。などといろいろ書いてみても、この独特の世界・雰囲気は伝わらないでしょう。どうぞ読んで驚いてください。 山田正紀、すごい作家だと再確認させられました。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
神曲になぞらえた推理小説。山田正紀氏の多数の作品の中で、上位に入る作品と思います。SFを中心に読まれている方でも、この作家には、ジャンル分けなど不要と思いますが、あのSFの山田正紀氏の書いた推理小説ということでぜひ読んでください。間違いなく引き込まれるように読める作品です。全体を覆う重たい雰囲気、無智(無意識?)からくる悲しさ、奇妙な後味の読後などなど、どっぷりはまってみてください。続編があり「長靴をはいた犬」。絶対にこちらから読んでください。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
「ミステリオペラ」がめでたく高い評価を得られたことで、今まで一部の読者のみが知る存在だった山田正紀ミステリもようやく正しい評価を得られつつあるようで、喜ばしい。山田正紀は非常に多作であり、かつその小説のジャンルがあっという間に様々な方面へと軽々越境してしまうため、全体を把握するのはそう易しくない。とはいえ、作品単位で見れば、ほとんどの場合裏切られることはない希有な作家である。本作「神曲法廷」は、「女囮捜査官」から疾走し始めた山田ミステリ、最初の頂点とも言える傑作である。どうにも中身を説明できないので、まずは読んで頂くしかない。帯や裏表紙になんと書いてあろうとあまり気にしないことだ。そして読み始めてしばらくは、本当にこれが面白いミステリなのか?と疑いたくなるかも知れない。しかし・・・・・最後まで読んでいただければ、きっと・・・・。「長靴をはいた犬」がこの続編なので、間違ってもこちらより先に「長靴」を読んだりしないでください。一生後悔します。 | ||||
| ||||
|
■スポンサードリンク
|
|
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!