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セリヌンティウスの舟
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セリヌンティウスの舟の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点2.70pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全3件 1~3 1/1ページ
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登場人物がマンションの一室からほとんど動くことなく、いくつかの回想シーンを 除けば、友人の自殺の真相についてのディスカッションだけで成り立っている本作。 信頼がテーマということで、物語上のモチーフとなっているのは『走れメロス』なの ですが、過去の事件の真相を議論するという状況設定は『そして扉が閉ざされた』 を下敷きにしたと思われます。 事件当時、自殺に用いられた青酸カリの入った褐色瓶は、 蓋が閉められた状態でテーブルの上に転がっていました。 そうした些細な事実から「自殺する人間に蓋を閉める余裕があったのか?」、「自殺を 幇助した者がいたのではないのか?」、「そばに友人たちが寝ているのに、取り扱い 注意の青酸カリが入った瓶を、無造作に転がした状態にしておくのか?」など、様々な 疑問が生まれ、それらの疑問を検証するという形で、議論が重ねられていきます。 (個人的には、自殺者がうつ伏せで死んでいたことのホワイダニットが秀逸でした) 作者は、本作の登場人物を、お互いにまったく悪意を持たない善意だけの人間関係に 置くことで、現実ではまずあり得ない、ユニークな動機を描きたかったのだと思います。 しかし、そうした特異なメンタリティを共有する集団が行う議論なので、導き出される ロジックが一般的な良識や倫理からいちじるしく乖離したものとなっているのも事実。 本作では、悪意を捨象してミステリを書くという、異化効果を狙った意欲的な試みが行われたのだ と思いますが、論理に徹する余り、物語としての説得力が失われてしまったのがなんとも皮肉です。 | ||||
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登場人物がマンションの一室からほとんど動くことなく、いくつかの回想シーンを 除けば、友人の自殺の真相についてのディスカッションだけで成り立っている本作。 信頼がテーマということで、物語上のモチーフとなっているのは『走れメロス』なの ですが、過去の事件の真相を議論するという状況設定は『そして扉が閉ざされた』 を下敷きにしたと思われます。 事件当時、自殺に用いられた青酸カリの入った褐色瓶は、 蓋が閉められた状態でテーブルの上に転がっていました。 そうした些細な事実から「自殺する人間に蓋を閉める余裕があったのか?」、「自殺を 幇助した者がいたのではないのか?」、「そばに友人たちが寝ているのに、取り扱い 注意の青酸カリが入った瓶を、無造作に転がした状態にしておくのか?」など、様々な 疑問が生まれ、それらの疑問を検証するという形で、議論が重ねられていきます。 (個人的には、自殺者がうつ伏せで死んでいたことのホワイダニットが秀逸でした) 作者は、本作の登場人物を、お互いにまったく悪意を持たない善意だけの人間関係に 置くことで、現実ではまずあり得ない、ユニークな動機を描きたかったのだと思います。 しかし、そうした特異なメンタリティを共有する集団が行う議論なので、導き出される ロジックが一般的な良識や倫理からいちじるしく乖離したものとなっているのも事実。 本作では、悪意を捨象してミステリを書くという、異化効果を狙った意欲的な試みが行われたのだ と思いますが、論理に徹する余り、物語としての説得力が失われてしまったのがなんとも皮肉です。 | ||||
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間近に迫る死を、互いが互いを保障しあい乗り越えたことで築かれた絶対的な信頼。 作中では登場人物の行動原理も、登場人物間で交わされる議論も全てこの絶対的信頼が根底にある。 本書の評価は「絶対的な信頼」をどこまで許容できるかどうかで分かれるだろう。 絶対的な信頼などあり得ない。そう考えるなら登場人物には常に違和感と、お堅い優等生に向ける冷笑的な感情を抱き続けることになる。 逆に信頼の素晴らしさを知っている人、「絶対的な信頼」を許容できる人、あるいは「絶対的な信頼」が存在すると信じたい人には彼らの関係は崇高で揺ぎ無き美しさを持っていると感じるだろう。 そう言った意味で、読む人をかなり選ぶ作品である。 私は「絶対的信頼の存在を信じたい人」だが、謎の解明がやや強引な感じがしたので星3つ。 | ||||
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