アイルランドの薔薇



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初公開日(参考)2002年04月
分類

長編小説

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アイルランドの薔薇 (カッパ・ノベルス―カッパ・ワン)

2002年04月01日 アイルランドの薔薇 (カッパ・ノベルス―カッパ・ワン)

詩人・イェイツが薔薇にたとえたアイルランドの自由。その鍵を握る武装勢力NCFの副議長が、スライゴーの宿屋で、何者かに殺された!悲願のアイルランド和平実現を目前に控えた政治的な理由により、警察への通報はできない。外部犯の可能性も消えて、泊まり合わせた客は、NCFの手によった拘束された。誰が、なんのために―。日本人科学者・フジの推理が、一人ひとりの「嘘」と「真実」を暴いていく。「本格」の設定と、北アイルランド紛争という社会派テーマを融合させた、珠玉のポリティカル本格ミステリー。 (「BOOK」データベースより)




書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.20pt

アイルランドの薔薇の総合評価:7.40/10点レビュー 20件。Bランク


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全5件 1~5 1/1ページ
No.5:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

本格ミステリのコードに忠実でありながら妙に現実的

光文社が鮎川哲也氏を選者として一般公募した作品で編まれた本格ミステリ短編集『本格推理』シリーズの11巻で石持浅海氏は見事応募作品が選出され、デビューを飾った。そしてその一般公募者から選り抜かれた新人作家がKAPPA ONEというシリーズ叢書でデビューを飾る。その中の1人が石持氏で本書こそがその1冊であった。

そして氏が選んだ舞台はなんとアイルランド、しかも扱う題材はアイルランドの武装勢力NCFが殺し屋に依頼するある幹部の暗殺劇。このどうにもエスピオナージュ色濃い設定で本格ミステリを成立させるという異色な意欲作だ。

上に書いた物語のシチュエーションから本書が本格ミステリのいわゆる「嵐の山荘物」だと誰が想像するだろうか?
石持氏はこの本格ミステリの典型とも云える、警察が介入できず、しかも外部との連絡が絶たれた状況の密室状況を、あくまで現実的で起こりうるだろう状況で実現させるためにアイルランドの武装勢力NCFの一味が宿泊先で何者かに殺害され、警察への介入を許さないというこれまでにない特異なアイデアで設定した。

アイルランドはスライゴーにある有名な湖畔に立つペンション(本書ではB&B(ベッド・アンド・ブレックファスト)と呼ばれている)に集まったアメリカ人、日本人、アイルランド人、オーストラリア人ら観光客に交じって武装勢力NCFの幹部たちが集う。しかもNCFは和平反対派である幹部の一人を自然死に見せかけて暗殺するため、刺客を差し向けている。その中で起こるターゲットの殺人。しかしそれは当初NCFが望んだ形ではない明らかに殺人と思える不審死だったというもの。誰が幹部の一人を殺したのか、そして滞在客に紛れている刺客は一体誰かという2つの謎が読者に提供される。

また舞台がアイルランド、そして名のみこそ聞くがあまり馴染みのないIRA、NCFといった武装勢力を題材に扱っているため、その成り立ちや北アイルランドの今に至る歴史的背景が語られる。

話が横に逸れるが、私は本格ミステリ、社会派、ハードボイルド、冒険小説、スパイ小説にエスピオナージュといわゆるミステリ、エンタテインメントと称される小説のジャンルは広く読むのだが、ミステリ系のオフ会に参加した時は本格ミステリ、しかも新本格の作品からミステリに触れ、そればかりを読んでいる人が多いことに驚くことがしばしばある。またミステリ系感想サイトでもいわゆるハードボイルド系、プライヴェート・アイ小説、冒険小説にエスピオナージュの感想に対して、ミステリではないからそのようなサイトで感想を挙げること自体に違和感を覚える読者がいて、びっくりしたりもする。

私は本書を読むことで本格ミステリしか読まない方々が世界の情勢について触れ、また関連した小説に読書の範囲を広げる一助になるのではないかと思った。
が、逆にカタカナばかりの登場人物でなかなか読書にのめり込めなかったという感想があれば結局本書で試みたエスピオナージュの題材で本格ミステリを書くという斬新な試みが理解されない懸念もあるのだが。

そして舞台の特殊性に加えて本書には他の本格ミステリには見られない特異性がある。それは物語の状況が政治的に大事な交渉を控えていることから、NCFが納得のいく事件の解決しなければならないのだが、それは真犯人が違っていても構わないから論理的に誰もが納得のいく解答を見つけさえすればよいというものだ。

これは実は本格ミステリが抱えるある問題について作者が自覚的でもあることを示している。
謎が現場の手がかりをもとに論理的にきれいに解かれるのが本格ミステリであり、醍醐味であるが、それは一番納得のいく解答が示されただけで犯人による誤導であり、実は別の真相がある可能性がある問題だ。つまり後期クイーン作品によく見られる操りのトリックであり、真犯人がある特定の人物にたどり着くように故意に手がかりをばらまき、誤導する、もしくは実行犯を仕立てあげ、実際には手を下さずに目的を果たすといったものだ。

つまり本書では本格ミステリ作家がいつか直面するこの本格ミステリのジレンマをなんとデビュー作の時点ですでに取り入れているのだ。とても新人とは思えない達観した考えを持った作家である。

ただ石持作品に対して書評家の方々が口を揃えて述べている欠点として、登場人物の心情が理解できないという特徴があるのだが、それは私も本書を読んで感じたことだった。

特にそれが顕著なのは2人目の犠牲者としてペンションのコックであるフレッドが庇から転落して首の骨を折って即死してしまうのだが、そのすぐ後に探偵役のフジが陰鬱な雰囲気を紛らわせようと死んだコックの代わりに滞在客みんなで料理に興じるという場面だ。
目の前で人が亡くなっているのに、料理をしようという意欲が出るのだろうか?ましてや心的ショックから食欲など湧かないのではないだろうか?しかもみな嬉々として料理を楽しむのである。これにはさすがに違和感を覚えずにはいられなかった。

さてタイトルにある薔薇だが、それはイエイツが自身の詩でアイルランドの自由を薔薇の木に例えていることに由来する。つまり南北アイルランド統一が薔薇ならば和平交渉成立はその礎となるのだ。つまりアイルランドに薔薇を咲かせるために謎は解かれなければならないという意味だ。
この辺のセンスからも他の本格ミステリ作家とは違ったものを感じる。

本格ミステリのコードに淫するあまり、本格ミステリ作家の多くが特殊な因習や人里離れた奇怪な人物が主を務める館といった、日本と思しき「ここではないどこか」を構築し、その自ら作った箱庭の中で登場人物を駒のように動かし、パズラーという知的ゲームを披露するのに対し、石持氏は本格ミステリのコードをいかに現実レベルで成立させるか、我々が新聞で目にする事件や会社生活で目の当たりにする異常事態を巧みに題材にしてさもありなんとばかりに読者に腑に落ちさせてくれるのが実に特徴的だ。
逆になぜこのようなシチュエーションが今までありそうでなかったのかと思わされるぐらい、実に自然な状況なのだ。

また他の本格ミステリ作家が本格ミステリを知的ゲームの最高峰として心酔しているように創作しているのに対し、デビュー作の時点から論理的解決の万能性に懐疑的であることから他の本格ミステリ作家とは一歩引いた視座で本格ミステリを捉えているようにも思える。これこそ氏の本格ミステリ作家としての強みであろう。

当時KAPPA ONE1期生としてデビューしながら唯一『このミス』常連作家となっていることが本書を読むことで実に納得できる。
本格ミステリに新しい角度から光を当てた石持氏。次はどんなシチュエーションを見せてくれるのか、非常に楽しみだ。

Tetchy
WHOKS60S
No.4:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

面白かったけど主人公の完璧超人っぷりがハナにつきます

冒頭からアイルランドの南北問題を扱った社会派ミステリのような印象を受けますが、それはあくまで舞台設定を整えるためのようなもので、本質はクローズドサークル物の本格ミステリです。(クローズドサークルになる理由がちょっと変則型ですが)

全体的にデビュー作としては非常によく出来ていて面白かったと思います。
単に犯人を当てるだけのフーダニットでない作品で、終盤で次々明かされる真相は心地よかったです。

ただ、主人公の日本人のフジの不自然で無駄な完璧超人描写に正直うんざりします。
作者の自己投影臭がプンプンします。
まして他の登場人物がみんな外国人の作品で日本人が無双するとか正直読んでる方が恥ずかしいです。
基本的にはよく出来ていて面白い作品だと思うだけにホントここだけ惜しいです。


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マリオネットK
UIU36MHZ
No.3:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

アイルランドの薔薇の感想

少々変わったクローズドサークルミステリー。設定の問題か、キャラクターの問題か、あまり緊張感が無かったのが残念。相変わらず犯人はサッパリ分からなかったので、推理の過程を楽しむ事が出来ました。結構面白かったので、おススメします。ただ、フジはちょっと凄すぎるかな?

なおひろ
R1UV05YV
No.2:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

アイルランドの薔薇の感想

石持浅海さんのデビュー作。北アイルランド問題という社会派テーマを背景に、それを利用したクローズドサークルものという本格ミステリー。フジ以外の人物が全員外国人なので海外ミステリは取っ付きにくいという人の入門書としても読めるかもしれない。

水生
89I2I7TQ
No.1:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

アイルランドの薔薇の感想

石持浅海の長編デビュー作!アイルランドの宿屋で起こる連続殺人に日本人研究者が挑む!推理小説としての謎解きの楽しみを存分に味わえた傑作!

ジャム
RXFFIEA1
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

No.15:
(2pt)

ええ〜……っていう【ネタバレ】

ミステリー好きなら絶対ワクワクするだろう設定を考えるのが上手いのでつい読んでしまう。しかし、読み終えて面白い!と思った作品は一個もない
毎回毎回えーッこいつらサイコパスかよってレベルで登場人物の感情が読めない。なのに一丁前に恋愛脳でほんとに不気味
ついでに人の死に対してあまりに無頓着
それならそれで西澤保彦さんレベルの冷淡さならば読者に衝撃を与えられると思うがそんな深みもない
なんで人殺しが幸せになってんだよwなにがハートウォーミングな結末やねんw多分だけどこの作者って人の感情が理解できてないよね?ズレててなんか怖いんだよ
内容が薄くて早く読めるから暇つぶしにはおすすめです。
アイルランドの薔薇 (カッパ・ノベルス―カッパ・ワン)Amazon書評・レビュー:アイルランドの薔薇 (カッパ・ノベルス―カッパ・ワン)より
4334074650
No.14:
(4pt)

難しいテーマを上手く料理

北アイルランド紛争という社会派テーマを絡めた「嵐の山荘もの」。そのなりゆきが自然ですっと物語に入っていけます。
読む前は政治とか絡んでとっつきにくそうだなと思っていたのですが、これが読みやすい。謎も本格ミステリしてて、論理的でした。終わり方が大好きです。オススメ。
アイルランドの薔薇 (カッパ・ノベルス―カッパ・ワン)Amazon書評・レビュー:アイルランドの薔薇 (カッパ・ノベルス―カッパ・ワン)より
4334074650
No.13:
(3pt)

アイルランドの薔薇

南北アイルランドの統一を謳(うた)う武装勢力NCFの副議長が、スライゴーの宿屋で何者かに殺された! 宿泊客は8人――そこには正体不明の殺し屋が紛(まぎ)れ込んでいた。やはり犯人は殺し屋なのか? それとも……。宿泊客の一人、日本人科学者・フジの推理が、「隠されていた殺意」をあぶり出してゆく!
アイルランドの薔薇 (カッパ・ノベルス―カッパ・ワン)Amazon書評・レビュー:アイルランドの薔薇 (カッパ・ノベルス―カッパ・ワン)より
4334074650
No.12:
(5pt)

花開く石持浅海の世界

アイルランドや紛争問題等の背景をよく知らなくても、物語の世界に引き込まれます。テロリストが探偵役や殺し屋に振り回されたり、一途に女性を想う姿もあり面白いと思いました。
アイルランドの薔薇 (カッパ・ノベルス―カッパ・ワン)Amazon書評・レビュー:アイルランドの薔薇 (カッパ・ノベルス―カッパ・ワン)より
4334074650
No.11:
(4pt)

アイルランド問題をモチーフにしているが社会派じゃないよ

石持氏のデビュー作でいきなりアイルランドが舞台でIRAの内部紛争をモチーフにした力作だが、そこは石持氏のことであるので、社会派的な要素はかなり薄く、IRA内での組織構造がキーとなる変則クローズドサークル殺人もので、かなりその後の特徴である論理ゲーム性が早くも開花している作品。
その後の作品と比べるとややプロットがあっさりしている感はあるが、デビュー作としては非常に読みやすく、また展開もこなれていてさすがと思わせる作品である。
アイルランドの薔薇 (カッパ・ノベルス―カッパ・ワン)Amazon書評・レビュー:アイルランドの薔薇 (カッパ・ノベルス―カッパ・ワン)より
4334074650



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