■スポンサードリンク


総統の子ら



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!

総統の子らの評価: 4.71/5点 レビュー 14件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.71pt


■スポンサードリンク


Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全14件 1~14 1/1ページ
No.14:
(4pt)

皆川博子だからこそ書けた作品

長期休暇の醍醐味で、上・中・下を一気に読了。第二次世界大戦をヒトラーユーゲントの視点から描いた大作。
これは恐らくドイツ人が書くことはできない(出版できない)、当事者ではないからこそ書けた作品ではないかと思う。
映画『バビ・ヤール』を違う側面から考えることができるし『戦争は女の顔をしていない』の相手側の視点でもある。『ファイナルアカウント』も改めて観返したくなるし、『HHhH』も読みたくなる。第二次世界大戦のナチスや独ソ戦を考える上でもハブ的になりえる作品。
総統の子ら〈上〉 (集英社文庫)Amazon書評・レビュー:総統の子ら〈上〉 (集英社文庫)より
4087461076
No.13:
(5pt)

圧倒される

皆川博子さんの欧州が舞台の小説が好きで、絶版のこちらは中古で入手し読了しました。
文庫版は上・中・下と分かれていますが、それぞれ舞台が戦前〜以降と分かれています。

ナチスはユダヤ人迫害をした悪という程度の歴史認識しか持っていませんでしたが、本作はナチスのエリート養成機関での(同性愛的な青春を含む)話から始まり、ナチス内部の、ただ国の為にと戦った軍人達の物語として、特に下巻では自分の従来の認識とは全く違った視点から戦争と歴史を考えさせられました。舞台は異なりますが日本の戦争に重なる部分もあったのだろうと、思い巡らせました。

また戦争中の特に戦隊、武器戦闘の精密な描写には、よくこれ程まで当事者の如く細かく書けるなと本当に驚嘆です。巻末の参考資料の膨大な量にも圧倒されました…

改めて第二次世界大戦前後の世界の状況と、ドイツが戦後どのようにして今の経済大国になったのか、歴史を学びたいと思いました。やはり皆川先生の小説大好きです!
総統の子ら〈下〉 (集英社文庫)Amazon書評・レビュー:総統の子ら〈下〉 (集英社文庫)より
4087461092
No.12:
(5pt)

歴史は勝者によって作られる。

皆川博子さんの作品は大好きで、何作も読んでいますが、これぞ皆川作品!という小説だと思います。
私が知っている第二次世界大戦におけるドイツは、ナチスの悪行しかなく、ドイツの国民が何を信じ、どう生きたのか、までは知りませんでした。ホロコーストはナチの将校全員が知っていることだと思っていたけれど、ただひたすら総統に忠誠を誓ったSSやヒトラー・ユーゲントの若者たちは知らなかったんですね。そしてソ連兵やパルチザンのドイツ兵やドイツ人に対する残虐非道な行いは、あまりにも凄惨。確かにユダヤ人にした行為は酷いかもしれないけれど、彼らも同時に被害者でもあった...。
終章で皆川さん本人が投影されているであろう日本人の女性の作家に、老エルヴィンが語る言葉は非常に重く切ない。
これからも悪いのはナチス・ドイツだけであり続けるのでしょうか。
総統の子ら〈下〉 (集英社文庫)Amazon書評・レビュー:総統の子ら〈下〉 (集英社文庫)より
4087461092
No.11:
(5pt)

あの戦争の悪者とは

日本と並んで第二次大戦の悪者ドイツ。
SSやヒトラーユーゲントの若者を内部から描く。

故郷や友人達を守りたかっただけの若者はいかにして凶悪な犯罪者として裁かれたか。
勿論ユダヤ人にしたことなどは言い逃れできないが、血も涙もない人間のみが戦争をするのではないからこの問題は難しいのである。
同じく先の大戦の悪者である日本人としては思うところ多かろうと思う。

長いので途中ちょっとしんどいが、是非最後まで読んでほしい。
しかしドイツ人はこの本をどう読むのだろうか。
総統の子ら〈上〉 (集英社文庫)Amazon書評・レビュー:総統の子ら〈上〉 (集英社文庫)より
4087461076
No.10:
(4pt)

良品でした。

中・下は新品を買い求めました。
上巻は手に入らず中古を捜し求めました。
値段は定価の約2倍。
良品でしたが、表紙カバーが中・下と同じ第1刷でしたが、違いました。
総統の子ら〈上〉 (集英社文庫)Amazon書評・レビュー:総統の子ら〈上〉 (集英社文庫)より
4087461076
No.9:
(4pt)

ナチス・オタクにはぴったりだと思う

名前は知っていた。「死の泉」をいつかは読みたいと買い置きしていた。しかし、だから本書も推理モノかと思い込んで、薦められた事もあり、こちらを先に読み出した・・・。
 極私的な趣味だが、ナチスものは、制服がカッコいいということから手はじめに、美学を堪能したいわたしだが(もちろん、だからユダヤ人を差別するという方向はない)、ヒトラー・ユーゲントにも魅力を感じていた。エロスを感じるし、精神的なパワーも感じる。
 こんなわたしが、いきなりページをめくったら、最後までいっきに読んでしまった。わたしの趣味のままの世界だった。
 ナチスにはどうしても「ホモ=ソーシャル」の匂いが付きまとうが、この言葉は、わたしの解釈が未熟なのかもしれないが、真性のホモ(同性愛)集団という意味ではなく、女の一時的代替はアリというキズナ強き男世界、という風に受け取っているが、本書はその空気を強く漂わせている。
 物語の始まりの方で、ヘッセの「車輪の下」の名が挙げられているが、ギムナジウムにもまた似たような空気があり、(上)巻の終わりごろに来て、「車輪の下」の名が出たのは伏線だったのだと気づかせられた。
 今後どのような展開になるかはわからないが、わたしのナチス趣味の範疇にはホモの趣味は入っていないので、その方面の展開には期待していないが、ナチス趣味は味わいたいので(中)巻にも手にしてみようかと案じるところだ。
総統の子ら〈上〉 (集英社文庫)Amazon書評・レビュー:総統の子ら〈上〉 (集英社文庫)より
4087461076
No.8:
(5pt)

日本の作家が誰も手をつけなかったテーマを選んだことが偉い

ヒトラーユーゲントは名前だけは有名だが、実態は日本で知られていない。ナポラはさらに知られていない。著者はヒトラーを崇拝する少年たちを主人公にし、希望に満ちた始まりから挫折あるいは死までを詳細に描く。
 戦闘シーンもパルチザンによるリンチ殺害のシーンもあまりにリアルで胸が悪くなるほどだ。戦車の描写も類書にはないほど詳しい。失礼ながら女性にこんなに戦車を描けるのかと驚いてしまう。
 ヒトラーに対する恨み言ひとつ言わずに死んでいく少年たちが悲しい。こんな人たちこそ生きて欲しかった。
総統の子ら〈上〉 (集英社文庫)Amazon書評・レビュー:総統の子ら〈上〉 (集英社文庫)より
4087461076
No.7:
(5pt)

歴史は多元である

「歴史は多元である」というのは、大学時代の恩師の言葉だが、この本の感想は、まさにこの言葉がぴったり来る。
歴史というものは、当事者の立場や主義主張によって、これほどまでに異なる側面を見せるのだろうか。
今まで映画や小説でナチス・ドイツはホロコーストなどから、悪の権化のような描かれ方をして来たが、その裏にはこのように複雑な当時の欧州の情勢があったということを、私は全く知らなかった。
なぜ、ナチスはユダヤ人をああも迫害したのだろう・・・??
キリストを十字架に架けたから?
自らの祖国を持たない流浪の民だから?
その程度の認識しかなかった。
こうした誤った認識はもしかしたら、四方を海に囲まれ、一度も(鎌倉時代の元寇を別とすれば) 他国の侵略を受けたことのない日本人には、ごく標準的なものなのかもしれない。
本当の意味での他国の蹂躙を受けたことのない日本人には、イデオロギーや人種で数百年に渡って、血で血を洗う争いを繰り返して来た中で培われた当時の欧州の情勢は、想像を絶するものがある。
登場人物たちそれぞれの、憎悪や悲哀は、幾度も先を読むのを躊躇わせた。彼らの少年時代が光り輝くものであったがゆえに、その未来は哀しい。
確かに、ナチスは裁かれて当然の行いをした。
しかしでは戦勝国側に,一篇の罪もないのだろうか?
彼らは真の意味での、抑圧された民衆の解放者だったのだろうか・・・?
このことは欧州だけの問題ではなく、日本人として、私たち自身も避けては通れない問題である。
あの大戦で、日本は周辺諸国に多大な犠牲を強いた。そして自身も大きく傷ついた。
だが、そのことに戦後、私たち日本人は、本気で向き合って来ただろうか?
ドイツはベルリンの壁によって国を分断されていたから、否応なく戦後ナチスの不の遺産と正面きって向き合ってきたが、日本人は経済発展に目を逸らしてはいなかっただろうか・・・。
哀切としか表現できない物語であるがその中で、唯一の救いは、主人公の一人であるカールの言った、「部下の罪は自分の罪だ」という内容の発言。
あれほどの地獄を体験しながら尚、高らかにそう宣言できる彼の気高さは、涙なくしては読むことが出来ない。
彼には、ヘルマンという憧憬の対象と、エルウィンという真の戦友たる存在があったから、戦勝国側の不当な刑罰も甘んじて受け入れることが出来たのかもしれないが、その最期が清冽であればあるほど、歴史の不条理が際立つ。
総統の子ら〈下〉 (集英社文庫)Amazon書評・レビュー:総統の子ら〈下〉 (集英社文庫)より
4087461092
No.6:
(5pt)

動揺する心も、現代世界の問題もあわせて抱えた作品。

ボリュームはあるが、濃厚な展開を読みやすい文章で表しているので
しっかりと世界に引き込まれ登場人物に感情移入させられた。
理想像としての英雄に捧げられる忠誠が連鎖する、といった様な内面心理の様相から
戦後処理における所謂「勝者の裁き」という現実世界に癒着した問題まで
幅広く充実したテーマを読者に突きつけ、感情をゆさぶる。
緻密な調査に基づいていることは明らかなので、なおのこと
当時のドイツに生きている様な感覚を私たちに抱かせ
そして現代世界を新たな視点から睨みなおす必要性を感じさせるのだと思う。
(プロフィールから推測するに)著者も戦後を見つめてきたとすれば
さらに興味深さが増す物語である。
総統の子らAmazon書評・レビュー:総統の子らより
4087746674
No.5:
(5pt)

壮大な歴史絵巻

読後、しばらく絶句・・・。
ここに描かれているのはなんとも壮大な歴史絵巻です。
しかし、なんと酸鼻を極めた絵巻でしょう。
前半の煌めくような青春は、ヘルマンの落馬と同時に、
否応なく陰惨な歴史の中に巻き込まれて行きます。
戦争に正義はない。
ナチスも、ボリシェビキも、パルチザンも、
ドイツも、ソ連も、フランスも、米英も、
結局、同じ穴の狢。
でも、どの国にもやはり、青春の煌めきはあったはず。
なんともやりきれない想いです。
自分の周りが平和で良かったと心の底から思います。
と、同時にその平和は、過去の人々、現在の遠い国人々の犠牲で購われている
その事実から目を背けてはならないのだと、強く思います。
総統の子ら〈下〉 (集英社文庫)Amazon書評・レビュー:総統の子ら〈下〉 (集英社文庫)より
4087461092
No.4:
(5pt)

ドイツの悲劇三部作

皆川氏は「死の泉」では、ヒットラーの民族政策として連れられてきた子供達の悲劇を、「ジャムの真昼」ではフォルクス ドイッチェの悲劇を、そして今回の「総統の子ら」では、今まで迫害する側としてのみ語られてきたSSの悲劇を描いた。この作品は前二作と異なり、かなりハードで血と硝煙の臭いただようものとなっている。皆川氏の作品に共通する「耽美性」を期待すると裏切られたような気分になるかもしれない。しかし、読みごたえは十分で、主人公たちの悲劇が切ない程に伝わってくる。戦争では、正義は常に勝者にある。アメリカ兵やロシア兵がどれほどの残虐を尽くしても、それらは語られることなく、ドイツ軍や日本軍が永遠に悪とされる。「僕がいったい何をしたというのか」。この言葉を呑み込み、なすすべもなく運命に翻弄された、主人公の一人のために、そしてロシアの平原や収容所で死んでいった多くのドイツ兵のために、皆川氏はこの小説を書いたのだと思った。彼らの言葉や思いを、世の一人でも多くのひとに伝えるために。
総統の子らAmazon書評・レビュー:総統の子らより
4087746674
No.3:
(5pt)

あの時代のひとつの真実

~ この作品は、私の高校生の息子も含めて、男の子たちがなぜか惹かれるヒトラー・ユーゲントの真実に迫った小説です。私が本書を読もうと思ったのは著者のお父様である塩谷信男医学博士と親しかったからです。なぜこのようなテーマに挑戦されたのか、疑問に思いました。そして終章まで読んで、その疑問が氷解しました。~~ 私は、「空母零戦隊」(文春文庫)の著者、岩井勉氏の体験談に深い感銘を受けました。あの時代の、男の子たちは、日本もドイツも同じだったと思います。偏見を抜きにして読んでいただきたい本です。~
総統の子らAmazon書評・レビュー:総統の子らより
4087746674
No.2:
(4pt)

正直「死の泉」ほどは売れないと思いますが・・・

前に「死の泉」を読んだときはストーリーの面白さに一気に虜になったけど、この「総統の子ら」は600Pの厚さと戦記の部分の多さにミステリ好きの私はかなり苦労しました。でも読んでよかったです。あの時代ヨーロッパで何があったのか、「悪」や「正義」っていうことに関して考えさせられました。そうそう、映画「戦場のピアニスト」と視点が似てる気がします。この本はドイツ兵から見た第2次大戦が淡々とつづられています。あと・・・読むときは「死の泉」との繋がりを求めるのは辞めたほうがいいと思います。全然別物です。ジャンルもね!
総統の子らAmazon書評・レビュー:総統の子らより
4087746674
No.1:
(5pt)

多角的視点を得るために

ドイツ第三帝国のそのとき同時代人として中にいた人々の視点というものは、遠くはなれた日本の地から日本語というフィルターを通して得ることは大変困難です。結局一方的なヒトラーの糾弾の本か、ネオナチかぶれのカルト的な本か、一般の書店で良質な本と出合える機会は殆ど閉ざされています。皆川博子は本当に良く調べて1930年当時のドイツ人青少年の日々を描きこんでいるように思います。戦時下の描写がいささか事実の説明に終始しがちになるのは、扱うテーマの膨大さから仕方ないかもしれませんが、終章のレンバッハ氏の姿にジンと胸が熱くなりました。
総統の子らAmazon書評・レビュー:総統の子らより
4087746674

スポンサードリンク

  



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!