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(アンソロジー)
英国クリスマス幽霊譚傑作集
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英国クリスマス幽霊譚傑作集の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.00pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全8件 1~8 1/1ページ
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「死者の怪談」(1858年)に「ホテルに彼女宛ての電話が掛かってくることはなかった。」というくだりが出てきて、「ん?」となった。 原文を調べてみると、no one had called at the hotel to inquire for herだった。 call at(訪ねる)を「電話を掛ける」と訳したらしい。 たとえこの熟語を知らなくとも、1858年の作品に電話が出てくるはずのないことは、常識を働かせれば分かりそうなものだ。 古色を含めて楽しみたかった本だけに残念。 | ||||
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イギリスではクリスマスの時期には怪談がつきものなのだという。本書は、19世紀後半の13篇を収めたアンソロジー。 チャールズ・ディケンズ「クリスマス・ツリー」、ジェイムズ・ヘイン・フリスウェル「死者の怪談」、アメリア・B・エドワーズ「わが兄の幽霊譚」、ウィリアム・ウィルシュー・フェン「鋼の鏡、あるいは聖夜の夢」、イライザ・リン・リントン「海岸屋敷のクリスマス」、J・H・リデル夫人「胡桃邸の幽霊」、セオ・ギフト「メルローズ・スクエア二番地」、マーク・ラザフォード「謎の肖像画」、フランク・クーパー「幽霊廃船のクリスマス・イヴ」、エリザベス・バーゴイン・コーベット「残酷な冗談」、H・B・マリオット・ワトスン「真鍮の十字架」、ルイーザ・ボールドウィン「本物と偽物」。 ディケンズのもの以外は本邦初訳。あまり有名でない作家を選んだという。 怖いというよりは、雰囲気を楽しむべきだろう。それにしても、こんなにも奇怪なものごとであふれているとは。イギリスのクリスマスのイメージが一変する。 訳文には、かなり不満を感じた。 | ||||
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日本で怪談と言えば暑いお盆の頃が定番だが、イギリスでは伝統的に冬の炉辺の話だ。本書は、クリスマスを扱ったり、冬に舞台を設定したりしたものを中心に、19世紀の正統英国怪談13編を収めた選集である。しかも13編中12編が初訳というからうれしいではないか! 最後のガルブレイスの『青い部屋』は、不吉な部屋の因縁話にM.R.ジェイムズ風のオカルト文献を絡ませ、なかなか巧い。生没年も経歴も不詳というこの作家の、他の怪談をぜひ読みたくなった。 なので本来なら星五つ差し上げたいのだが、以下の理由で残念ながら星一つ減点する。 1―書名の「クリスマス」との関連が分からない作品も混じっている。エドワーズの『わが兄の幽霊譚』は9月のスイスが舞台だ。「クリスマスを扱った作品」なのか、「クリスマスを当て込んで発表された怪談」なのか、「単なる19世紀英国怪談」なのか、結局どこを読んでも夏来氏の基準が曖昧なままだった。 2―やや見劣りがする作品が若干。フリスウェルの『死者の怪談』はホフマン流の耽美的な話で、ヴィクトリア朝の自然主義的怪奇小説に比べると古色蒼然。リントンの『海岸屋敷のクリスマス・イヴ』は最初の数ページでネタがバレてしまい、後は何のひねりもない。これはちとひどい。 3―訳文に味わいが今一つ。夏来健次氏は、正確な翻訳を心掛けていることはよく分かるのだが(ちゃんと「楢材」と訳したり…)、あまりに几帳面な翻訳調で、日本語として話に乗りにくい。あちこちで、「ああ、ここは平井呈一先生ならこう訳したろうに…」と歯がゆくなってくる。夏来さん、もっと日本の小説や語り芸に親しんだ方がよろしいのでは? 助っ人の平戸懐古氏の訳文はさらにコチコチで読みづらかった。しかも、明らかに「コーンウォール」であるはずの地名が、最初「コーンウェル」とされていた。 | ||||
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毎年クリスマスの時期にはクリスマスに因んだ書籍を購入している。 だいたいは絵本か小説、レシピ本又はマンガ等。今年はすんごく変化球をと思い怪談ミステリーを……。 中々良い趣向でした。 | ||||
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昨年(2022年)暮れ、朝の民放ラジオでお馴染み 《羽田美智子のいってらっしゃい》で取り上げられた クリスマスツリーに纏わるあれこれに耳を傾けた。 毎年、店先に飾り付けられてるのをな~んとなく見やってた クリスマスツリー飾りの一つ一つにも れっきとした意味があるんですね? そんなにわか仕込みの知識ではありますが 本書の愉しみを倍加する助けになったなぁ。 幽霊そのものよりもウェイトを置かれている "場所"や"時間""気象"といった構成要素・・・。 本書に収録された、日本初紹介のゴーストストーリーの数々 その一遍一篇に、英国々民のこの季節に対する 想いが込められてるんだなぁ。 と実感した次第。 | ||||
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何しろヴィクトリア朝時代の怪談。 怖いというよりは、風俗や街の様子、人々の感じ方などの描写を読んで、あの頃はそうだったのだなと興味深かったです。 上品な女性たちは幽霊を見た恐怖で死んでしまうので、いま流行りのホラー映画を見たらみんな失神しちゃうでしょうね。 冒頭のディケンズのお話はどこかで読んだことあると思ったら、これのみ初出ではなかったようです。描写で読ませるのは凄いです! 朝日新聞の書評で紹介されていてハードカバーだと思い込み、書店で探してしまいました。はて、新刊ではないのかな?と端末で打ち込んで棚を探すのも楽しかったです。 | ||||
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ということで、1843~1901年の間にイギリスで発表された作品が集められています。 そして13編中12編が初訳という、この分野が好きで、ある程度はいろいろ読んでいる身としては嬉しいセレクションでした。 一方で「クリスマス幽霊譚」といいながら、あまりクリスマス(の雰囲気)どんぴしゃという感じの作品は少なかったです。 というか、冒頭のディケンズのクリスマス・ツリーから回想と空想を繰り広げていくエッセイが一番それっぽかったですね。 クリスマス時期・冬場が舞台の怪談集くらいに思って読んだ方が楽しめると思います。 以下、ほんのりネタバレありで、個人的に印象に残った作品を。 『死者の怪談』ジェイムズ・ヘイン・フリスウェル 収録作の多くは、方向性は違えど、だいたい話の流れに予想がつくものなのですが、これは途中で意外な事実が明かされて不思議な展開になるのでおもしろかったです。 あと、現代の目から見ると、弱って痩せている人間に、とりあえず瀉血してみるというシーンはすごく怖いです(笑) 『胡桃邸の幽霊』J・H・リデル夫人 そういうのはホラーじゃないと嫌う人もいますが、私は大好きな、いわゆるジェントル・ゴースト・ストーリー系。ちょっと切なくて、最後は優しい気持ちで読み終われる話でした。 ちなみに同時期に出た『幻想と怪奇 12』にも別訳が載っていました。 『青い部屋』レティス・ガルブレイス 冒頭から出てくるある言葉の意味が最後に明かされた時に、「ああ、これが思いつけなかったのは悔しいな!」とミステリ短編のような感想になってしまった作品です。 もちろん知っている言葉だし、ちょっと時間を取って考えれば考えつけた気がしてしまうんですよね、これは。 | ||||
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まず、この本の最大のセールスポイントは怪奇小説アンソロジーでは珍しい全13編中12編が本邦初訳ということだろう。 もっともそれにはわけがある。古典怪奇小説黄金期より前、ビクトリア朝期の英米ゴーストストーリーばかりを集めているのだ。 巻頭のディケンズを除けばあまり聞かない名前の著者が多いし、黄金期の例えばブラックウッドやM・R・ジェイムスと比較してしまうと他愛もない、と言えるほど怪奇小説としては洗練されていないものもある。 またもう一つの特徴として、英国伝統のクリスマスのゴーストストーリーを多く集められているのであまり深刻に怖い作品はなく、その点でも純粋にホラーを求める読み方はお勧めできません。 しかし「埋もれた傑作が見つかるかも」などと肩に力を入れず、冬の夜長の無聊の慰めにコーヒー片手にゆったりとした気分で読むならなかなか楽しめる短編集です。イメージ的には怪奇小説というよりシャーロック・ホームズが活躍した時代の不思議な実話を読んでいる感じでしょうか。 中でも気に入ったものをあげると・・・ 「クリスマス・ツリー」ディケンズ 編中唯一の未訳ではない作品。実は小説ではありません。 じゃあなんだ、と聞かれると困るのですが、クリスマスツリーのオーナメントにインスパイアされた文豪の幼き日の思い出からおとぎ話のような空想、コナン・ドイルの怪奇実話集にも出ていた当時の幽霊話など、まさに筆のおもむくままに綴られたフィクションともエッセイともつかない幻想作品です。こういうのを文章力の乏しい作家にやらせると「結局なにが言いたいの?」と言いたくなるようなとりとめのないものになりがちですが、さすがは文豪、ちゃんと読ませる小品に仕上がっています。 「胡桃邸の幽霊」 J・H・リデル夫人 今で言うところの事故物件にあたる古屋敷に出没する少年の幽霊と新しく屋敷のオーナーになった主人公の交流を描いた、いかにもクリスマスストーリーらしい心温まる作品。少年幽霊が死してなおどうしても忘れることのできないある人物が、今は成長して彼のことを”昔の悲しい記憶”にしてしまっていて幽霊がすぐそばにいてもなにも感じることができないのが哀しい。 「メルローズ・スクエア二番地」 セオ・ギフト これも幽霊屋敷もの。そこに入居したヒロインの出会う怪異の数々が描かれるのだが、幽霊の来歴・悪意を秘めた家政婦の正体・ヒロインの見た出来事の意味等、謎のほとんどが解明されることなく幕を閉じる。いわゆる怪奇実話に通じる、オチのない宙ぶらりんの不気味な後味が想像力を刺激する。 | ||||
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