幽霊綺譚: ドイツ・ロマン派幻想短篇集
- 幽霊 (229)
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本書は、これまで日本で未紹介だったドイツ19世紀初頭刊行の怪奇小説の翻訳です。 18世紀末から19世紀はじめにかけて、ゴシックロマンスのジャンルにおいて、イギリスと大陸の国(ドイツ、フランス)とのあいだで相互に影響関係があったことが知られ、ドイツでも「恐怖小説」(シャウアーロマーン)というジャンルが隆盛をみました。 本書には、1810年から1815年にかけて刊行されたアーペルとラウンの共著による『幽霊の書(Das Gespensterbuch)』全5巻およびそのフランス語版で1812年刊行の『ファンタスマゴリアーナ』から訳者が選んだ13篇ほどの、どれもそう長くはない怪奇譚が収載されています。 1816年夏スイス、レマン湖ほとりの別荘にバイロン卿、P.B.シェリーとメアリ、医師ポリドリが集い、その夕べのつれづれの折、怪奇談義が交わされたことは、そこからメアリの『フランケンシュタイン』の着想が生まれたことで文学史的によく知られていますが、訳者解説によれば、じつはその怪奇談義のきっかけをつくったのが、シェリーたちが別荘滞在中に読んでいた本書(正確にいうとフランス語版『ファンタスマゴリアーナ』のほう)だったということです。 まあ、いま読むと、本書収録の作品の多くは、幽霊綺譚といっても、悪魔(的なもの)に魂を売ったがゆえの男の破滅(「魔弾の射手」)とか、代々続く貴族の館にかけられた気味悪い肖像画に隠された呪い(「先祖の肖像画」)とか、貴族の家門の始祖が犯した罪によってその子孫が悲惨な最期を遂げる(「死の花嫁」)とか、高貴な家門のこの世ならぬ美しい女性の悲しい運命、あるいは鉱山に潜み財宝を守る山の精霊たちと人間との交渉をめぐる民話ないしメルヘンふうの物語(「花嫁の宝飾」)などといった、どこかですでに読んだことのあるようなストーリー、もう少し言えば、同時期のドイツ運命劇やロマン派メルヘン、さらには19世紀末あたりまでのイギリスの怪奇小説に頻繁にあらわれるきわめてパタン化されたおなじみの話型がすでにここにあります。 よくもまあこれほど同じような話型を飽きもせず、という感じですが、肖像画をめぐる怪奇譚は19世紀後半のコリンズやブラッドンらのセンセーション・ノヴェル作家や幽霊小説を数多く書いたヘンリー・ジェイムズ(「オウエン・ウィングレイヴの悲劇」)、そして下手ながらときに怪奇ジャンルに手を染めたトマス・ハーディまでもが用いているまったくもって類型的な話型です。 なぜこのような同じパタンの話がこんなに長く好まれたのか、そちらのほうが興味深いと言えば興味深いところがあります。 そう考えてみれば、この『幽霊の書』とほぼ同時期刊行の、E.T.A.ホフマンの『夜景作品集』(1816-1817)に収められた怪奇小説や恐怖小説というのは、そういう常套的な話型を単純に踏襲したものではなく、すぐれてオリジナルなものがあったといえるわけで、ホフマンはやはり傑出した作家であったことがわかります。 その後、怪奇話の新機軸、その新たなヴァリエーションは、20世紀初頭ぐらいになってようやくアーサー・マッケンやM.R.ジェイムズなどが開拓していくというところでしょうか。 なお、本書所収の「魔弾の射手」は、ウェーバーのよく知られた同題のオペラ(1821年初演)の原作となったものですが、物語の最後はちがっています。オペラでは救いのある結末に変えられています。 | ||||
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装丁はもちろんですが、内容も充実していてドイツの古い文献にあたっているような気分でした。 ただ怖がらせるだけの怪奇小説ではなく、物語としても十分楽しめました。 注釈や解説も丁寧でした。 | ||||
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