(短編集)
妖精・幽霊短編小説集: 『ダブリナーズ』と異界の住人たち
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アイルランドと言えば、文化と大自然、そして妖精の国だ。 実際に彼の地に足を踏み入れれば、海鳴りのする崖の上で…静謐な森の茂みで…そこかしこに妖精が潜んでいる…そんな気配すらする不思議な国である。 何を隠そうこの私も、アイルランドの独特の雰囲気に魅せられていただけに、特にこの地の妖精・幽霊譚を集めた本書に興味を抱いた。 そして本書は、ジェームス・ジョイスの傑作『ダブリナーズ』、また、同時期に書かれた妖精・幽霊譚(アイルランドとイギリスから採用しているが、主に前者)とを併読する試みに依って編集されており、厳選された作品に満たされた一冊であった。 さて、本書は「妖精との遭遇」「アイルランドの化け物」「心霊の力」「底なしの愛」「まつろわぬ魂」「霊界物質と祈祷書」「復活の日」「永久の眠りを恋人に」の8章構成で、ジョイスの他にも、かの有名なイェイツやディケンズを筆頭に、数多くの作家を収録している。 勿論、全てを追及したい方は各作家別の作品を読破するに越した事は無いであろうが、広く浅く読みたいと言う方にとっては、こうしたアンソロジー作品は非常に便利であろう。 因みに、個人的に一番惹かれたのは、やはり妖精を題材にした第一章であろうか…私達は「妖精」と言うと「ピーター・パン」に登場するティンカー・ベルのように「ちょっと意地悪だけど、愛らしい存在」をイメージするし、現に、私もアイルランドでレプラホンのマスコットを購入したが、可愛らしくキャラクター化されたものであった。 だが、本書を読むと、妖精が実はとてつもなく恐ろしい存在だという事が解る。 幼少期にシシリー・メアリー・バーカーの妖精画に魅せられた私としては、その落差に戸惑うものの、これが妖精の本質なのであろう…謂わば、日本の河童のように、今では愛されるキャラクターになっていても、元来は邪悪なもの…それがアイルランドの妖精なのだ。 そして、その他にも不思議な話、無気味な話、当時の心霊主義を思わせる話、更にはアイルランドの妖怪の代表・バンシーの逸話等々、興味が尽きる事は無いが、もう一編、私の興味を惹いた物語と言えば、それはラフカディオ・ハーン(小泉八雲)『雪女』だ。 何故なら、本書に収録されている作品は他の作品とは明らかに異質で、私達が良く知る日本を舞台とした「雪女」に他ならないのだが、何故か本書の中でも浮いていないのが不思議だからである…これは即ち、アイルランドの土着の怪異譚と、日本の伝説には何処か通ずるものがあるという事なのであろうか…本書の中に日本の古い伝説が紛れ込んでいても違和感が無かった事こそが発見でもあり、これまた興味深かった。 尚、古い作品にありがちな、回りくどい表現もあるが、その分、古典的な上質さもあり、怪異譚ながらもしっとりとした趣がある。 そして、何よりも、その特有の雰囲気からアイルランドに思いを馳せる事が出来る作品集であり、充実していたように思う。 | ||||
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ジョイスの『ダブリナーズ』を、同時期のアイルランド/イギリスの妖精・幽霊譚と併読していくという、ちょっと不思議なコンセプトの短編集だ。 収録作品は以下の通り。 第一部「妖精との遭遇」に、イェイツ&トーマス・クロフトン・クローカー「取り替え子」、クローカー「卵の殻の醸造」、レ・ファニュ「妖精たちと行ってしまった子ども」、ジョイス「遭遇」。 第二部「アイルランドの化け物」に、レ・ファニュ「ウォーリングの邪なキャプテン・ウォルショー」、ソフィー・L・マッキントッシュ「夜の叫び」、ジョイス「姉妹たち」。 第三部「心霊の力」に、ジェローム・K・ジェローム「科学の人」、ディケンズ「第一支線-信号手」、ジョイス「痛ましい事件」。 第四部「底なしの愛」に、イェイツ&グレゴリー夫人「キャスリーン・ニ・フーリハン」、ジェレマイア・カーティン「死んでしまった母親」、ジョイス「エヴァリーン」。 第五部「まつろわぬ魂」に、ウェルズ「赤い部屋」、イェイツ「ハンラハンの幻視」、ジョイス「蔦の日に委員会室で」。 第六部「霊界物質と祈祷書」に、フィッツ・ジェイムズ・オブライエン「何だったんだあれは?」、カーティン「聖マーティン祭前夜」、ジョイス「粘土」。 第七部「復活の日」に、アイルランド民謡の「フィネガンの通夜」、イェイツ&ジョン・トッドハンター「バンシー」、トッドハンター「いかにしてトーマス・コノリーはバンシーと出会ったか」、ジョイス「恩恵」。 第八部「永久の眠りを恋人に」に、ハーン「雪女」、メアリー・ルイーザ・モールズワース「さざめくドレスの物語」、ジョイス「死者たち」。 19世紀後半~20世紀のアイルランドとイギリスの幻想世界を楽しむことができる。伝統的な民話や俗信が、小説という新たな形を得て語り直されていった点が興味深い。当時の社会でいかに幽霊や妖精に需要があり、心霊現象や降霊会が流行っていたのかも。 なおかつ、ジョイスの作品と並べられることで、ジョイスのなかの民俗性も読み取れるし、従来の物語がいかに現代化されていったかも理解できる。 ほかにはなかなかない、おもしろいアンソロジーだ。 | ||||
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