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印
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印の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.62pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全8件 1~8 1/1ページ
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心の襞が丁寧に描かれている。親子愛と葛藤、人道に背く罪深い陰謀、自責の念からの解放。 | ||||
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エーレンデュルの犯罪捜査ストーリーは期待を裏切らない。彼の人物像はヘニングマンケルのヴァランダー警部と少し重なるところもあるが、エーレンデュルのストーリーはよりシリアスで深みがある。そして悲しみと涙を誘う。 | ||||
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ヘニングマンケルが亡くなった今、インドリダソンの日本語訳を待つのが楽しみ。 しかし、翻訳された柳沢さん、80にもなろうとされているのに、見事な仕事です。 訳者あとがきもすばらしかった。 | ||||
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読んで損はない | ||||
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北欧ミステリーらしい美しい湖水地方と寒冷な気候を舞台に、さらに幽霊や霊媒といったオカルティックな話題が加わった、酷暑にあえぐ日本の読者にふさわしい読み物である。 アイスランドの湖水の畔のサマーハウスで起きた首吊り自殺事件で、警察は自殺として処理したが、エーレンデュル刑事は死者の友人の訴えをきっかけに、個人的な関心から私的に捜査を始める(私的「捜査」は警察のルールからは甚だ逸脱したものだが、ヘニング・マンケルの刑事ヴァランダー・シリーズでもときどき見かける)。 物語は死者の生前のエピソードと私的捜査の進行が織り交ぜられて語られる巧みな構成であり、読者は、たんなる自殺にみえた事件が30年前の湖での水死事件や医学生たちの臨死実験と絡められて解きほぐされていくスリリングな展開にミステリーの醍醐味を堪能できる。 また、刑事物ではもはやおなじみとなった刑事の個人的エピソードも重要なプロットとして利用されており、本作品ではエーレンデュルが娘の要望でしぶしぶ元妻と会う話のほか、少年時代に吹雪で遭難したエピソードが第三者の出版物の引用の形でまとまって示されており、自殺事件への個人的関心と重ね合わされる。 ただ、自殺事件の捜査の過程で30年前の未解決の行方不明事件も解き明かされていくが、こちらは偶然ができすぎている感がある。 なお、死者が霊媒師のところで録音したテープに、霊媒師以外の男性の「気をつけろ」という声が録音されていたとされるが、これが誰の声かは最後まで解き明かされない。もしかしたら、あの世からの声という意味なのか? | ||||
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なぜこの作家に惹かれるのか、自分でもわからない。主役であるエーレンデュルは、特に憧れの対象にするようなスタイリッシュな主人公ではなく、むしろどこにでもいそうな地味な刑事である。シリーズ全体がどことなく物静かで、寂寥感に満ちている。そもそもがアイスランドを舞台にしていること自体がとても寂しい。 シリーズを通して、吹雪の山で置き去りにしてしまって以来行方のわからなくなった幼い弟のことに囚われている。どこか精神を病んでしまっているか病みそうなくらいにその記憶に取り憑かれている。とりわけ本作ではそれを強く感じさせられる。 死。あの世。臨死体験。あの世からのメッセージ。サイン。 それらが本書の主たるテーマだ。本書では事件と言う事件は起こらない。一人の女性が縊死をした。それは自殺として解決した。警察署は比較的事件に追われず、刑事たちの負担は現在はさほど多くない。だからこそエーレンデュルは、この時間を使って少女の縊死について、自殺と片付けられたにも関わらず深く調べることにこだわろうとする。自分の弟の行方に深くこだわり続けるように。 行方不明となった息子のことをエーレンデュルに相談するため定期的に訪問してくる老人がいる。今回は老人は癌で余命いくばくもないために最後の訪問だと言うが、エーレンデュルには過去の事件を今さら解決できるとは思えない。しかし、時間はある。老人の代わりにその時間を使ってみようと思う。 一方で車で出かけたきり、その車ごと行方がわからなくなっている少女という未解決事件がある。さらに縊死した女性の父親がボートから冷たい湖に落ちて急死したという過去の事件が冷たく横たわってそこにある。それは事故として解決済みな墓のように古い出来事だが、もしかしたら今回の縊死と何か関係があるかもしれない。 縊死した女性は、死んだ母からのサインを待っていたという。 一方で、冷水を使って心臓を止めた後にAEDを使って蘇生する、という危険な実験をやっていた男の存在がわかる。縊死した女性の夫だ。事件たちは時空を超えて、エーレンデュルの現在に集中してくる。 さらにエーレンデュルの娘の独特の個性のプレッシャー、別れた妻との再会シーンなどなど、主人公の私生活を揺する出来事も今回は印象的である。 というように地味ながら読み始めたら止まらない異様な面白さをもった作品である。文学的な叙述は他の娯楽作品の追随を許さないほど硬質で、イメージは豊穣だ。何度も気高い文学賞を受賞しているのもわかる。ちょっと心臓に負担がかかるほど重い読み応えながらも、他の追随を許さぬこの緊張を今回もまた楽しませてもらった。 シリーズ6作目である。今回は個性的な相棒の二人がほとんど登場しないのがちと寂しかった。彼らとの丁々発止もそれぞれの個性も魅力的なだけに、次作以降の邦訳への期待が深まるばかりだ。 | ||||
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約3年ぶりの、待ちに待ったエーレンデュル捜査官シリーズ続編です。 シンクヴェトリル湖ほとりのサマーハウスで自殺した女性マリア。彼女の友人カレンから、マリアと関係する霊媒師の話にエーレンデュルは関心を持ち、単独行動で捜査を進めます。 今回もシグルデュル=オーリとエリンボルクのトリオで捜査を進めるものと思いましたが、今回はそのふたりはほとんど登場しません。むしろ、死後の世界を執拗に取り上げ聞き込みをするエーレンデュルにふたりは呆れ苦言すら呈します。 ひたすらマリアの自殺について聞き込みをするだけで物語の動きが亀のようにゆっくりですが、そこはやはりインドリダソン作品。マリアの過去また関係者にまつわる不愉快で陰惨極まる真相が徐々に姿を表します。 一方、エーレンデュルの娘エヴァ=リンド、息子シンドリ=スナイルとの関係も修復が少しづつ進んでいく様子が見られ、心を閉ざしていた父は自身の過去に関する本を自ら読み聞かせます。 前作「厳寒の街」にて本作のタイトルは「凍てつく夜」になる予定だったそうですが、自殺したマリアが関心を持っていた死後の世界がメインテーマだと柳沢さんは感じられたのでしょう。 英題は"Hypothermia(低体温症)"と、これもまた物語のメインテーマ足り得るタイトルで、そういうところにも興味深さを感じます。 | ||||
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アーナルデュル・インドリダソンを読むのは、(レイキャビクの「悲しみ」のすべてのような)「厳寒の町」(2019/8月)以来になります。彼の新しい翻訳「印 エーレンデュル捜査官シリーズ」(東京創元社)を読み終えました。 レイキャビクの湖畔にあるサマーハウスで天井の梁からぶら下がって死んでいる女性が見つかり、自殺と断定されます。疑問を持ったその女性の友人がレイキャビク署のエーレンデュルを訪ねてきます。エーレンデュルは通常の<警察捜査>を離れ、個人的にその事件を追い求めていくことになります。亡くなった女性、マリアは幼少期に父親を亡くしていますが、支配的な母親・レオノーラが亡くなると精神的に追い詰められ、「死後の世界」にいる母親に会いたいと霊媒師に縋るようになります。果たして、マリアは自殺だったのか? 関連して、インドリダソンはいくつかの出来事を並行して描くことで、このスリラーに重層的に、多面的な視点を持たせながら事件の持つ悲しみの印(サイン)を明確にしようと試みています。 マリアの父親は果たして事故で亡くなったのか?一方、別の三十年前の未解決失踪事件に関連してその行方不明者の父親が死期を迎えていることにより、エーレンデュルは何とか解決してあげたいというシンパシーを抱きます。それらの悲しみの根底には、エーレンデュルと彼の失われた弟に纏わる事件もまたひっそりと横たわっています。エーレンデュルは、まるで西海岸「私立探偵小説」の主人公、リュー・アーチャーのようにマリアの関係者を訪ね歩きます。真実を蔽う薄皮を恐々とめくるように。 (個人的には、エーレンデュルとその元妻・ハットルドーラ、娘・エヴァ=リンドによるエピソードもまた、本書の読ませどころの一つだと思います。) 原作は、2007年に発表されているそうですが、ここに描かれているテーマについては、未来永劫、古びることはないのでしょう。喪失とそのことによって引き起こされる罪悪感、そして或る「印」を得ることにより齎される「再生」。そのことをインドリダソンはじっくりと描き切ろうとしているように思えます。 尚、アイスランドという土地を読むということは、「ボルガルフィヨルデュルのルンダルレイキャルダルールにサマーハウスを持っていて・・・」 (p.254)といったような文章にジッと耐えることでもあると認識しました。エーレンデュルのしぶとさを見習いながら(笑)。 | ||||
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