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噤みの家



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【この小説が収録されている参考書籍】
噤みの家 (小学館文庫)

噤みの家の評価: 3.33/5点 レビュー 3件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.33pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全3件 1~3 1/1ページ
No.3:
(3pt)

これはちょっとね

ひとりの女性に、こんな衝撃的な事件が二度も起きてしまうなんて、あるのでしょうか?お馴染みの捜査スタッフの他、登場人物がそれほど多くないので、もしかしたら犯人は?と推理したら、ドンピシャでした。ヒロインのイーヴィーにとって、悲劇を乗り越えた先の安らぎの場所にたどり着けたようなエンディングで良かったです。
噤みの家 (小学館文庫)Amazon書評・レビュー:噤みの家 (小学館文庫)より
4094068848
No.2:
(4pt)

(2022年―第52冊)「もっと前からこんな人生が送れたのだ。そのために必要なのはただ手を伸ばすこと」(530頁)

高校の代数教師を務める32歳のイーヴィ・カーターは夫のコンラッドとボストンの住宅街に暮らしている。12月のある夜、彼らの家で銃声が響く。通報を受けた警察が8分後に駆けつけるとさらに銃声がし、家に突入した警官たちの眼前には、コンラッドの射殺体、弾丸を受けて破壊されたコンピュータ、そして銃を手にした妊婦イーヴィの姿があった。イーヴィは殺人容疑で逮捕されるが、犯行を否認。彼女は16歳の時に、父親を誤射してしまった過去があり、当時事件を捜査したのがボストン市警・部長刑事のD・D・ウォレンだった。16年ぶりにイーヴィと再会したD・Dは、最初の銃声から警察が到着した直後の銃声まであまりにも時間が経過しすぎていることに気づく。
 一方、6年前に長期間監禁された後に生還したフローラは、事件を知って愕然とする。彼女はかつて監禁中に犯人に連れられて行ったバーで、一度だけコンラッドに会っていたのだ……。
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 アメリカ本国では大ベストセラーとなっているD・D・ウォレン刑事シリーズの第11弾です。日本では第1作の『 あなただけに真実を 』、第8作『 無痛の子 』、第9作『 棺の女 』、第10作『 完璧な家族 』の計4作品が邦訳出版されています。
 この『噤みの家』には『棺の女』と『完璧な家族』に出てきた曲者、フローラ・デインが再登場です。ですので、『あなただけに真実を』と『無痛の子』はよいとして、『棺の女』と『完璧な家族』は読んでからこの書に進んだほうが、より楽しめるはずです。

 前作『完璧な家族』から1ヶ月後の事件を扱っているという設定です。邦訳も『完璧な家族』が2022年2月に、そしてこの『噤みの家』は2022年4月と、あまり間をおかずに出来(しゅったい)しました。小学館がこのシリーズに力を入れていることが伺われます。

 さて、物語はD・Dとその情報提供者となったフローラ、そして容疑者/遺族であるイーヴィの三者の視点で展開します。特にフローラは単なる事件捜査の協力者というだけではなく、限りなく当事者に近い位置に置かれることになります。フローラを拉致監禁した犯人のジェイコブ・ネスはすでにこの世にいませんが、あの凶行が今もまだフローラを追いかけてくるというわけです。この邦訳書の39頁に「死なない程度の苦痛は人を強くさせるというのは本当だ」という文章が出てきます。ニーチェの言葉として英語圏でも知られるこのWhat doesn't kill you makes you stronger.という言葉が、苛烈な体験をしたフローラの心情をとてもよく表しています。

 あいも変わらず複雑に入り組んだ怪事件の謎の答えを求めて三者が奔走した果てに、やはり今回も一筋縄ではいかない家族の関係が浮かび上がってきます。父親を誤射したとして苦悩してきたイーヴィは今や未亡人となって間もなく子供が生まれます。フローラは監禁事件から生還後に母との関係にぎこちなさを感じてきました。D・Dは夫と幼い子供と家庭を築いていますが、刑事としての多忙な日々に追われています。各自がそれぞれの家族像を懸命に築こうと手探りする姿が描かれます。

 前作『完璧な家族』のレビューで私は、「リサ・ガードナーは、何事につけ、たどり着くことそのものよりも、たどり着くための努力の道のりこそが人間にとって尊いものだと、手を替え、品を替え訴え続ける作家だ」と綴りました。今回も家族の肖像を模索する女性たちの道のりを描く物語だといえるでしょう。
「こんな人生が送れるんだと思った。もっと前からこんな人生が送れたのだ。そのために必要なのはただ手を伸ばすこと。ドアをあけておくこと」(530頁)
 このイーヴィの感慨が読者の心に沿う物語です。

 なお、翻訳者は『 無痛の子 』、『 棺の女 』、『 完璧な家族 』に続いて満園真木氏です。この550頁に及ぶ長編を難なく読みこなすことが出来たのも、満園氏の大変読みやすい訳文のおかげです。
 イーヴィから「母に話したのか」と質問された弁護士のディレイニーが、「Mum’s the word.」と英語のダジャレで答えたくだりを、満園氏は「ママにも秘密のままさ」(267頁)と見事なまでにダジャレを使って日本語に移し替えています。思わず笑ってしまいました。

 本国アメリカでは『噤みの家』に次ぐD・D・ウォレン刑事作品として『When You See Me』が2020年に出版されています。Amazonレビュワーの75%が五つ星をつけているほどの高評価を得ているようです。
 今回の『噤みの家』に登場したFBIアトランタ支局の特別捜査官キンバリー・クインシーが再登場し、死亡した連続誘拐犯ジェイコブ・ネスが残したデジタル上の証拠を捜査するタスクフォースをD・Dとともに立ち上げるとのこと。さらに実話犯罪マニアのキース・エドガーも再登板。『噤みの家』ではキースとフローラの間にちょっと良い関係が始まりそうな兆しがありましたが、その行方も描かれることでしょう。
 ジェイコブの亡霊との戦いに終止符が打たれるのか、今から楽しみです。

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噤みの家 (小学館文庫)Amazon書評・レビュー:噤みの家 (小学館文庫)より
4094068848
No.1:
(3pt)

愛のように見えて愛ではないもの

「棺の女」、「完璧な家族」(2022/2月)に続く(ボストン市警・D.D.ウォレン・シリーズと言っていいのか、「棺の女」フローラものと言っていいのか?)、「噤みの家 "Never Tell" 」(リサ・ガードナー 小学館文庫)を読み終えました。翻訳が早い。
 妊娠中の数学教師・イーヴィが帰宅すると夫・コンラッドが射殺されています。そして、彼女はその残された銃を取り、夫のパソコンに何発もの銃撃を加え、警察に逮捕されることになります。D.D.ウォレンが捜査に向かいますが、彼女は16年前、16歳だったイーヴィが高名な数学者でありハーヴァードの教授でもあった父親を誤って銃で殺害していたことに気づきます。誤射による悲劇的な事件として処理されていましたが、果たして同じような銃撃事件が同じ人に二度も降りかかるものなのだろうか?尚且つ、殺害された夫・コンラッドの写真を見たサヴァイヴァー・フローラがジェイコブ・ネスと共にコンラッドに会ったことがあるとD.D.に告げます。ジェイコブ・ネスは、リサ・ガードナーの過去作品に於ける誘拐犯ですが、「怪物」の象徴のようにこのシリーズを支配していると言っても過言ではありません。二つの事件に関連はあるのか?事件の真相は?
 イーヴィ、D.D.、フローラという女性たち3人の視点から交互に描かれるストーリーは、シームレスに強いサスペンスを持って描かれ、申し分ありませんが、パズラーとしてはどうなのでしょうか?私は、少し不満が残りました。但し、パズラーであるがゆえにその理由を書くことができません。
 イーヴィの母、ジョイスを含む女性たちの物語の陰には、機能不全、共依存が厳然と存在しています。「共依存」が交錯することで多くの人生を複雑にし、生きずらさを生みだし、健全であるべき女性たちの道筋を歪曲してしまっています。愛のように見えて愛ではないもの。それは、まるで蜘蛛の巣に絡めとられて生き続ける蛾の姿を想起させます。(因みに、本書はダークウェブの仕組みをわかりやすく解説していていて、読みどころの一つだと思います)
 そして、本書では「怪物」ジェイコブの姿がすべて明かされたわけではなさそうですね。D.D.とフローラの物語はまだまだ続きます。
噤みの家 (小学館文庫)Amazon書評・レビュー:噤みの家 (小学館文庫)より
4094068848

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