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(アンソロジー)
死者だけが血を流す/淋しがりやのキング: 日本ハードボイルド全集1
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死者だけが血を流す/淋しがりやのキング: 日本ハードボイルド全集1の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.29pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全7件 1~7 1/1ページ
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日本のハードボイルド小説の全集第一巻。生島治郎篇。長篇一作と短篇六作が収録されております。 ハードボイルドという言葉に関しては、色々な見識があるので、個人的にこれがハードボイルドだ、という考え方はあまりなく、漠然と非情な感情がハードボイルドかハードボイルドっぽく思っておりまして、ハメットの「マルタの鷹」の最後の方のサム・スペードの台詞や黒沢監督の「七人の侍」の最後の台詞等にそういう物を感じておりまが、この中にはいっている短篇二作に、なんとなくハードボイルドっぽくない、と感じてしまったので、やはり漠然と認知バイアスっぽくこれがハードボイルドだ、という物を持っているかも。 という様な事は読む上で、あまり関係ないので、余計な感情を取っ払って純粋に楽しく読めました。ただ、これがハードボイルドだ、という見識には到達できなかったので、この叢書を最後に読むまでにはそういう境地に達したいものです。 あと、巻末の大沢さんの思い出話しが微笑ましくて良かったです。 日本のハードボイルド/私立探偵小説を俯瞰する叢書第一巻。ぜひご一読を。 | ||||
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このシリーズの最大の魅力は巻末の解説、書評です。星4にしたのは解説が良かったからで作品そのものは3.5というところでしょうか。北上次郎氏の解説を今後は読めなくなってしまい残念です。彼の文庫解説はほとんどが納得、同感できる内容でしたので、私の選書指針が失われてしまいました。 | ||||
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かつてのパソコン通信Nifty-Serveで冒険小説とハードボイルドフォーラム(FADV)を主宰していたくせに、日本のハードボイルドには明るくない。大藪晴彦は沢山読んだけれど、ぼくのリアルタイムハードボイルドと言えば、矢作俊彦、船戸与一、志水辰夫、大沢在昌、逢坂剛、佐々木譲などのどちらかと言えば冒険小説にかぶる人たち、少し遅れて和製チャンドラー・原?などである。 この日本ハードボイルド全集はそれに先立つ戦後復興期の時代を担う作家たちを紹介する全集と言える。この巻末解説によれば日本ハードボイルドの嚆矢は高城高であると言う。ぼくは北海道繋がりということで、釧路を舞台にした作品の多い高城高の作品はほとんど読んでいるのだが、本全集には彼の作品は含まれていない。 さて、本書は生島治郎の巻である。未だ実家に住んでいた十代の頃、読書家であった母が読んだのだろうと思われる『汗血流るる果てに』の文庫本を読んだ記憶はけっこうはっきと残っている。しかし、それとて既に朧ろ。 今日になってこの時代のこの作家の作品を読んでみて、まず驚くのは文章力である。そして今ではあまり書かれなくなったように思う独りの男の生き様であったり、気位であったり、洒落た会話であったり、に驚かされる。もはや現代に存在しないのではないかと思われるハードボイルドの世界は、実は戦後昭和のこの小暗い時代にこそ似合っていたのではないかとすら思われる。 暗闇が未だ恐ろしかった時代。金銭の価値が極度に重宝された時代。戦後復興とともに目立って行く人間の堕落。そのなかで足掻き抵抗する誇り高き生き方をまさぐるような主人公たち。悲しくも雄々しい心の悲鳴。そういったものが微熱のような高ぶりとともに感じられる本書は、超短編集であった。 本書唯一の長編『死者だけが血を流す』は、現代に通じるような選挙の裏側で暗闘する日本っぽい悪、そして勝負の世界。理想に燃える候補者もいれば、彼を追い払おうとする暗い力学も存在する。今も昔も変わらない汚らしい政治を背景に、ちっぽけな男たちや女たちが打つ一発勝負の博打の行方を、素晴らしいストーリーテリングで描いている。 短編小説では『チャイナタウン・ブルース』と『淋しがり屋のキング』で船舶専門のブローカーである主人公、久須見健三は相当に印象的だ。ヨコハマを舞台に怪しげな海外の船を相手取って食糧や雑貨を調達する仕事であるが、個性的な人物を物語の都度配置し、闇に傾斜した事件を解決に持って行く片足の主人公は、シリーズ化された生島治郎お気に入りの人物らしく、魅力的である。 他にこれがハードボイルド? と思われる不可思議で軽妙な作品も含め、この作家のストーリーテリングが冴える作品集となっている。今となってはなかなか触れることもなさそうな日本娯楽小説史に眠る作品たち。是非、今こそ、良い機会として、彼らを知らぬ現代の読者たちにお勧めしたい確かな作品集である。 | ||||
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楽しみにしています。内容は文句なしです。 | ||||
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「死者だけが血を流す」に顕著な、理想主義的な青臭さと過剰なまでの感傷はもはや日本には何処を探しても見当たらない。ハメットの『ガラスの鍵』などと比較すれば、あまりに説明的過ぎて、これがハードボイルドなのかと問われれば返答に詰まるが、初期長編ならではのエモーショナルさは捨てがたい。 二作収録されている横浜港を舞台にした久須美健三物が最もスタンダードなハードボイルドミステリのスタイルを採っている。大鹿マロイを彷彿させる黒人兵が登場する「淋しがりやのキング」の哀感は秀逸。 エヴァン・ハンターを思わせる「血が足りない」、一種のコンゲーム物「甘い汁」やバックステージ物「夜も昼も」などは中間小説誌全盛期に活躍した著者らしいストーリーテラーとしての本領が発揮されている。 田村隆一の奇矯かつ愛すべき人物像が描写される「浪漫渡世」は後の自伝的長編『浪漫疾風録』の原型。黎明期の翻訳ミステリというか早川書房の裏面史として興味深い。 | ||||
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今、手元に本がないので確認できないのだが・・・ 日本推理作家協会編『推理作家になりたくて マイベストミステリー』第2巻「影」で、大沢在昌は先輩作家の作品として生島治郎の「チャイナタウン・ブルース」を選び、生島治郎との思い出を書いた推薦文を書いていた。 そこに書かれていたネタと、今回の大沢在昌のエッセイは、同じ話を使いまわしているのでは? 前に読んだ覚えがあることしか、書かれていない。 それならそれで、前の文章を再録すれば済む話ではないのか? それにしても・・・。 戎光祥出版の『ミステリ珍本全集』は企画が大胆すぎて売れず、過剰在庫がバーゲンブックとなって処分されているせいか、今回の『日本ハードボイルド全集』には、島内透『白いめまい』も三浦浩『薔薇の眠り』も、映画『野良猫ロック ワイルド・ジャンボ』の原作小説として知ってる人は知っている船知慧『破れても突っ込め』も、何も入らないようなので、残念至極。 (これからの読者を考えれば、自分は持っているし読んだから良いんだ、ということにはならない) せめて大藪春彦の『野獣死すべし』は、角川文庫以降の用語規制改悪版ではなく、新潮社版を底本に使ってほしいと思うが、それすら叶うかどうか。トホホ。 (創元推理文庫版「日本怪奇小説傑作集」には、小松左京の「くだんのはは」が用語改変後の文庫版を底本として収録されている。すでに前例があるのだ) | ||||
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日本ハードボイルド全集全7巻のうちの第1巻にして、第1回配本の生島治郎集である。 一、概要 〇長編は生島の第2長編の『死者だけが血を流す』(1965年)を収録する。 〇短編はシップ・チャンドラー久須見ものの『チャイナタウン・ブルース』『淋しがりやのキング』、犯罪小説『甘い汗』、ハードボイルド風『血が足りない』、クラブ歌手人生小説『夜も昼も』、編集者実体験小説『浪漫渡世』の6編。 〇エッセイは大沢在昌の『宝物』、解説はこの巻の責任編集者の北上次郎氏。 〇全7巻のラインナップは、2 大藪春彦 野獣死すべしほか、3 河野典生 他人の城ほか、4 仁木悦子 冷え切った街ほか、5 結城昌治 幻の殺意ほか、6 都筑道夫 酔いどれ探偵、7 傑作集。 〇順に刊行されるのかと思っていたら、先に、6、都筑道夫が出て、その後は2→3→4→5→7の順に刊行される。7 傑作集に何が選ばれるかが興味深いところである。 〇毎月か隔月で出るのかと思っていたら、次回配本は7月、次々回は10月とのことで、このペースでは、完結までに2年ぐらいかかりそうである。 二、私的感想 〇『死者だけが血を流す』 ☆数十年ぶりに読んだ。ストーリーは分かっているので、登場人物の設定や、世代論、時代的な情念のほうに関心が向いてしまう。 ☆本書は1965年2月の書き下ろし刊行で、主人公牧は31歳。13歳の時が終戦前なので、1931年か1932年生まれになり、1933年(昭和8年)生まれの生島の1、2歳上になる。 ☆登場人物の過去、世代論、時代情念は、第一章の「白い朝」で牧が恋人の小夜子に語る形で、第四章の「泥にまみれて」で牧が昔の学生運動仲間の尾崎と飲みながら語り合うところで、翌日候補者の進藤との会話で書かれている。 ☆牧は13歳の時、一人で中国から引き揚げさせられ、北陸の伯父の家に住まわされる。高校を卒業して、10万円だけ持って上京する。あらゆる肉体労働をして学費を稼ぐが、やがて学生運動にのめり込んで行く。武装闘争の時代で、火炎瓶を投げ、血のメーデー事件等にも関わる。大学卒業時は1955年で、朝鮮戦争終了後の不況による就職難時代となっていて、学生運動のレッテルのある牧は就職できず、アルバイトの土方を続けていて、やくざに入ることになり、結局、組の尖兵として、北陸の街に戻ってくる。 ☆牧も、就職できた学生運動仲間も60年安保をどう過ごしたかは書かれていない。仕事で忙しいかったということのようだ。 ☆最近文庫化された生島の短編「世代革命」は、人口の5パーセントの明治生まれ老人が権力を握る戦後社会に対して、抑圧されてきた昭和元年~15年生まれの中堅世代が革命を起こすという話だった。本書も同様のテーマと思う。様々な権力者、権力志向(大抵は色狂い)の明治生まれの男達が登場し、牧は彼らに対して戦っていくが・・。 ☆ストーリーとしては、選挙運動の内幕が詳細に、カリカチュアライズされて書かれているのが面白い。主人公の情念を燃え上がらせるために、本書で一番魅力的な人物を殺してしまうという作者の非情がよく効いている。ミステリー的には、なぜ家が焼かれたのか、という謎が秀逸であると思う。 〇短編 ☆短編は全部初めて読んだ(と思う)。 ☆『チャイナタウン・ブルース』と『淋しがりやのキング』は似ているといえば似ているし、違うといえば全く違う。『チャイナタウン・ブルース』は痔、秘書、中国人の魅力で、好感度高いが、ハードボイルド的なのは『淋しがりやのキング』のほうか。 ☆残りの4編は多彩な短編を選んだということで・・。 〇エッセイ、解説。 ☆『宝物』はこれ自体が宝物のようなエッセイ。 ☆解説は初心者向けというよりは、マニア・ファン・研究者向けの解説。 ☆生島治郎の年表、作品目録は付いていません。 私的結論 〇うれしい企画。 〇傑作集の中身を早く知りたいな。 | ||||
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