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死神永生: 三体Ⅲ
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死神永生: 三体Ⅲの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.35pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全180件 101~120 6/9ページ
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読み終わっての一言としてはもう、これはイーガン「ディアスポラ」以来の一冊といってよいかと思います。素晴らしい読書体験でした。 ただ一つ疑問に思うのが、重力波で三体惑星の座標がブロードキャストされた途端、仕返しに地球の座標を発信することもなく、三体戦艦群が地球侵略をアッサリやめてしまう所。そもそも三体惑星は気候が厳しいから地球に移住しようとしたはずで、母星に未練はないはず。自分たちが住み着いたら空間曲率ドライブで太陽系を隠してしまえばよかったのでは....。 | ||||
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上下巻通しての感想です。 ※以下ネタバレあり 三体シリーズの最終巻。 Ⅱが大団円で終わったので、この後どう続けるんだろうと思っていたら、やっぱり宇宙は甘くなかった。 時代を飛び越えながら状況は次々変化し、絶望から更なる絶望へ。 クライマックスの次元攻撃は、よくもまあこんなことを思い付くものだと感心しつつ、太陽系が二次元に折り畳まれていくのを震えながらなすすべもなく見守るしかなかった。 スケールの大きさに少々酔ってしまったくらい、圧巻の描写。 SFのアイデアがこれでもかと詰め込まれているが、Ⅰ・Ⅱと同じく私のような理系はさっぱりの人間でも何となくの理解でぐいぐい読めた。 欲を言うなら三体人のビジュアルや生態についてもっと知りたかったので、地球人とのリアルな対面がなかったのは残念。 著者は元々書くつもりなかったんだろうな。 このように大変楽しませていただいたのは確かだが、どうしても引っかかる箇所がいくつかある。 個人の感想ということで駄文を書き連ねることをお許し願いたい。 ①ジェンダー観が古い Ⅰ・Ⅱを読んで男性キャラクターは個性的で魅力あるのに、女性キャラクターはいまいちだなあ、と思っていたのでⅢの主人公が女性と知って結構期待して読み始めたが… 程心は葉文潔と荘顔を足して2で割ったような「感情論で決断する聖女」だった。 引き出し少なすぎやしませんか。 執剣者に立候補する理由が「母性本能」って…その言葉久しぶりに聞いた気がする。外見が女性化すると思考も軟弱になるって短絡的すぎないか。 程心が「愛のために」下した二つの決断によって、地球人は滅亡する。 程心が女性として設定されたのはこのため? つまり、著者的には愛ゆえに誤った選択をする主人公は女性でなければならなかったのでは? 著者は、性別の設定は深く考えておらず、程心が男性だったとしても展開は変わらなかったとインタビューで答えているが、とてもそうは思えない。 性別の設定が無意識だったとしても、もし程心が男性だったらこうはならなかったのでは。 著者は程心のような男性もウェイドのような女性も書けない気がする。 ②恋愛描写に共感できない 雲天明と程心の関係が物語の一つの軸になっているが、序盤で程心に星を送る雲天明、死後に真実を知って彼が忘れられなくなる程心。 この恋愛エピソード、残念ながら共感できず。 言い方は悪いけど、安っぽいメロドラマ。 正直どういう顔をして読んだらいいかわからなかった。 二人の行く末にあまり興味が持てず読み進めていったが、結局二人は結ばれず。 それは別にいいけど、どうしても男女でカップルにならなきゃだめなのかね。 最後のオチとして何だかな… 上記二点がどうしても引っかかった。 この「洗練されていない」感じが逆に魅力なのかもしれないが、私はジェンダーからの解放がSFのよさの一つだと思っていて、そのような作品を好むので… 最後に。 雲天明のおとぎ話、深水王子のネタ既視感あるな…あ、これジム・ボタン!と思い出した。懐かしい。 小ネタではあるが、もしかしたら参考にしたのかもしれない。 | ||||
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遂に四次元世界にまで連れて行ってくれました。劉さんの豊潤なイメージ力と確かな筆力には脱帽です。 | ||||
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あっという間に読んでしまった。とはいっても1日1時間程度しか読んでいないが、ぐいぐいと進んでしまった。光速展開だ(笑) 上巻も含めて物語の展開が早いのがその要因であるが、理屈を考えながら読む方には頭が痛い展開だろう。 しかし、2019年夏に出版された「三体」から「暗黒森林」上下、そして「死神永生」上下の全5冊だが、今全巻読み終わってしまうと、疲れたというよりは三体ロスのような感覚に陥ってしまった。長い道のりだった。 この後はクールダウンで別の分野の小説を読んで、それからペーパーバックのDeath's Endに立ち向かう予定。 因みにこのDeath's Endは1年半前に購入していたが、英語力に自信がないので日本語版を読んでからと取っておいたのだ。 | ||||
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時間と空間、そして次元までもを越える、まさに「マジカル・センスオブワンダ(フル)・ツアー」(古典的に言えば「地獄巡り」?)!今作だけでも5、6冊分の中・長編級SF的アイデアが惜しげもなく投入され、「予想を裏切られる」以前に「予想が出来ない」展開の連続です。後から考えると「あれ?」と思う所や、舞台(時代?)転換のためストーリーの流れに困惑する事もありはしましたが、「グイグイ」読ませる熱量で衝撃の結末まで一直線です。読後に「あぁ、面白かった!」、久々にこう思えました。しばらくツマラナイSFは読みたくない!「ちゃんとした」料理を食べた後で、「ファストフード」や「ジャンクフード」はいらないなぁ、という感じです(笑)。 スケールと言いアイデアと言い、間違いなく2000年以降のSF史上、「金字塔」と呼んで良い作品でしょう。同時に「いかに大衆が愚かで無責任か」ということが、IからIIIまで貫かれた重要なテーマであったとも思います。熱狂的に支持したはずの人物や出来事を、正に手のひらを返したように非難・攻撃する人々が繰り返し描かれ、敵である三体人よりも主人公たちを翻弄します。最終的にはIの主人公 葉文潔の絶望と決断が正しかったのかとさえ考えてしまいました。SF小説ファンを自認する人には是非一読して頂き、賛否両論、あれやこれやと議論して欲しいです。 | ||||
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上下巻の感想です。 前半は楽観と悲観のジェットコースター、後半は広げまくった風呂敷をどうやってたたむのか違う意味でもハラハラ。 今作は三体人の侵略が小さな問題と思えるようなスケールでストーリーが展開され、作者のイマジネーションに圧倒されます。 地球人の住む宇宙は三体人侵略開始よりも前に、既に攻撃を受けていた?? 主人公の程心は前作の羅輯/大史コンビに比べると線が細いのは否めないです。また、雲天明の方がキャラクターとしては魅力的でした。ただ、彼を主人公にしてしまうと、程心との関係が羅輯と荘顔の二番煎じになってしまうので、致し方なしですかね。 程心のバディ、艾AAは暗くなりがちなストーリーに明るさをプラスしてくれて、なかなかいいキャラクターだと思いました。 程心の決断に批判的な意見が多いようですが、もし合理的な決断をしたら感情移入できないだろうし、そもそも物語がそこで終わってしまいます。 前作に引き続き、VRゲームのような小道具も効いてます。今回はなんとおとぎ話! それから、まさかの智子擬人化(笑)。和服姿だったり、迷彩服に日本刀を背負ったりとこちらも楽しめました。 時間的にも空間的にも前作のスケールを大きく超えて来て、SFならではの読書体験ができました。とにかく楽しかったです。 [以下ネタバレあり] 物語の最後に「時の外の過去」は程心が書いたものだとわかります。 本書はそれの抜粋という体をとっています。ということは、それを後の世代の人が読んでいるということになります。 この物語の後、おそらく宇宙は本来の姿である多次元宇宙に新生したのだと思うと、なんとも言えない清々しさを感じました。 | ||||
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私は天体観測が趣味であるが、三体シリーズは本物の「空想科学小説」であると思う。 2019年に出版された「三体」は、血なまぐさい中国の文化大革命から物語が始まり、それがどう天文学の「三体問題」とつながるのか分からないまま読み進めたが、知らぬ間に物語に魅了されていった。読み終わった後で評判だった英語版もペーパーバックで読んでみた(読了までかなりの時間を要した)。なお、文化大革命がなかったことにしようとしている中国共産党に劉慈欣氏が捕まらなかったのが不思議。SFの話しだったからか。 続編の「暗黒森林」は、三体世界との遭遇(攻防)の話しで、これも日本語版を読んだ後にペーパーバックで読み直した(こちらも時間はかかったが少し早く読むことができるようになった)。 本書「死神永生」は、その続編だが、今までと違って話のテンポが速く、あっという間にというのは多少大げさとは思うが、一日1時間(休憩時間)で読んで6日で読み終えた。連続して読んだらもっと早かったかもしれない。今は下巻を同じペースで読み始めて2日目だがおおよそ3分の1。もうだいぶ前にペーパーバックは購入済みで、下巻の読了を待っている。 シリーズとしては読了していないが、劉慈欣という「三体」シリーズのような発想ができる科学的知識とそれを物語として書く力を両立させることができる人間が、文化大革命を起こした共産党の「中国」にいたのかと驚くばかり。映画「メッセージ」にも触発されたが、テッド・チャン氏の「貴方の人生の物語」は読んだが、「三体」の英語訳を行ったケン・リュウ氏の作品や、本書の作者である劉慈欣氏の他の作品もいずれ読んでみたい。 そういえば最近の中国は有人宇宙ステーションを打ち上げたり、火星に探査車を送ったり、宇宙でも勢いがすごい(汗)。頑張れニッポン! あ、レビューを書くのもよいが「死神永生」下巻を早く読み終えねば! | ||||
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簡単にリスクがなく冷凍睡眠が行える装置のおかげでこれだけの年代を渡って物語が進む。 地球人独自の冷凍睡眠装置らしいけれども、三体人と和解後は三体側の知見も入ってるのかな。 ラストは、ちょっと前に読んだ杉谷庄吾[人間プラモ]「映画大好きカーナちゃん」の劇中制作映画を思い出した。 改暦して紀元で年数が数えられているけれども、これは中国的(日本も導入して和暦があるけれど。)かな。 歴史を考えると西暦で数えておいた方が時間の経過がわかりやすいと思う。 | ||||
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これまでと打って変わってSF満載。そして、宇宙の始まり、終わりまで話が広がる壮大な話に。1967年の文化革命の話からまさかここまで話が広がるとは思いませんでした。5巻も冗長なところも多いですが、面白かったです。個人的に何もないところから宇宙が始まるビッグバン説には納得が行かず、こういう風に話を持って来たかって感じで良かったです。フィクションなので、ありえない話なんでしょうけど、こちらの方が違和感ないです。冗長なので星3.5ぐらいですが、おまけして星4つにしておきます。 過去の評価としては、1巻 とにかく話が進まない。つまらない。 星1.5個、2巻 あらすじを読めば充分。読む価値なし。星 0個。3巻 三体編 クライマックスでまあまあ。星 3つ。4巻 ようやくSFっぽい話になった。星 3つです。 全体を通したら星2.5ぐらい。とにかく話が冗長すぎる。1〜3巻を1巻(0.5巻ぐらいで良いかも)、4,5巻を1巻の合計2巻にまとめたら、冗長さがなくなって、星4つぐらいの良い話になるのではないかと思います。まあ、高い単行本を買って読むほどではないですね。文庫本になってもおそらく全部で5000円ぐらい。それでも話の内容からして高い。価値としては2000円ぐらいですね。 | ||||
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このSF小説を読んだら、他のSFは読めなくなります。それ位凄い作品です。スケールが大き過ぎて自分の想像を遥かに超えてます。 | ||||
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素晴らしい。ここ最近、面白い作品に出会えてなかったが、これで解消された。 | ||||
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SFを普段全く読まないど素人なのでレビュー書くのは僭越ですが... めちゃくちゃ面白く、一気読みしました。 予想裏切られまくりで、話の展開や動機付けにも納得感があり、続きが気になって夜更かし必須です。1巻、2巻、3巻、どれも相当面白くワクワクします。宇宙や人類の成り立ちや行く末にも思いを馳せられるロマンチックさも(残酷さも含めて)存分にあります。 こんぐらい面白いSF小説、他にもあればぜひ読みたい! | ||||
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上下巻まとめての評価です。どうしても抑えきれずあちこちネタバレをしているので、未読の方は自己責任でご覧ください。 前作、『三体(Ⅱ)』を読んでから約1年。待ちに待った『三体(Ⅲ)』を目の前に置いてしばらく迷う。 今作も興奮を味わうことはできるのだろうか? 前作を読んだ時の興奮は幻だったのではないか? 長く複雑そうなストーリーにすんなり入り込むことができるだろうか? 杞憂だった。 冒頭、3頁にうまくまとめられた“これまでのあらすじ”を読むうちに心は既に“三体の物語世界”に転移している。 さすがに上下巻、840頁、約2千枚は長いので一気読みという訳にはいかなかったけれど、どんどん広がって行く展開に興奮し、一刻も早くストーリーの先を知りたいという強迫観念にも後押しされて、最近では珍しく短期間で読み切ってしまった。 前作、『黒暗森林』のクライマックスで地球に迫る〈三体艦隊〉襲来の危機は一応脱したが、地球と三体世界の未来は未だ不安定で、さらに羅輯の〈呪文〉に応えて囮の恒星を破壊した謎の存在も影を落としていた。 本書、『死神永生』は、その後の地球と三体世界の関係を描くだけでなく、“暗黒森林”に例えられた宇宙の真実にも迫って行く。そして、前作同様、冷凍睡眠で時を越えながら地球文明の興亡を見守る主人公たちの人生に重ねるように宇宙の未来が語られる。 【ところで、本書では、冒頭のあらすじから“暗黒森林”という言葉が使われている。前作の副題にもなっていた“黒暗森林”はどこに行った?】 本書の魅力の一つは登場人物である。 前二作には魅力的なキャラクターが多数登場したが、本書もそれに劣らない。 主人公は航空宇宙工学を専門とする若い女性、程心。彼女は独創的なアイデアを評価されて国連惑星防衛理事会戦略情報局に採用された後、実績を上げて、最終的には前作の羅輯のように人類の未来を委ねられる立場になる。(この展開は、銀英伝やアメリカのミリタリーSFシリーズの主人公が出世していくパターンに酷似しているが、もしかしたらこれは三国志からの伝統かも?) ただ、程心は羅輯と違っていつも自分の責任に真摯に向き合っているが普通の感覚を持った若い娘に過ぎない【ただし、アイドル属性あり】。その責任はだんだん大きくなり、普通の人間では背負いきれないような決断も下さざるを得ない。そして、結果に苦悩する。しかし、その苦悩が長くは続かないのは本書がエンタメ小説である所以か。 副主人公級のキャラクターとしては、まず、程心の学生時代の同級生で、片思いしていた彼女に星を一つプレゼントする雲天明という根の暗いコミュ障の青年。準主役兼トリック・スターとでもいうべき存在。地味キャラのまま退場かと思っていたらいつの間にか主役以上の大活躍。特に物語作家の才能を持っていたなんて予想外。さらに、その作り話の中に宇宙の秘密を織り込んでいるなんて有能過ぎる。超人か? 前二作で活躍した頼りになる相棒、史強に代わって主人公の相棒として活躍するのは、あいAA(えいえい)という天文学専攻の大学院生。若い女性でありながら有能な事業家であり、主人公大好きの萌えキャラ? 一方、ダークなバイプレイヤーとして前作の章北海の役どころで登場するトマス・ウェイドという戦略情報局の長官。なかなか謎の人物。『ゾンビーハンター』の司令官Sみたい。 また、前二作では智子(ちし/ソフォン)として登場していた三体の量子AIがアンドロイド・ボディをまとって再登場する智子(ともこ)もトリック・スター的。 訳者あとがきに、作者は本書が一般受けすることはないと考えて自分好みのハードSFに徹したというようなことが書かれているが、もしかしたらキャラクター設定も作者の趣味が優先したのかもしれない。 本書の魅力の二つ目は物語。 エンタメとしてストーリーと語り口が重視されるのは言うまでもないが、メインのストーリーのなかに織り込まれる逸話、サイド・ストーリーなども本篇を補強する。 『黒暗森林』のプロローグは、『三体』の冒頭で自殺した楊冬の墓石の表面を這う蟻の話で始まったが、本書は15世紀のコンスタンティノープル陥落の物語から始まる。何の意味があるのかわからずに読んでいたが、これが中盤、物語に大きく関係することに気付いて驚いた。 2番目のプロローグは、楊冬の生前のエピソード。彼女はある若手研究者から現在の地球環境が生命との相互作用で形成されたという説明を受ける。生命が存在しなければ地球は生命の星になることができなかったと聞かされて彼女は思う。宇宙は生命によって変わったのだろうか。自然は本当に自然なのか?これが本書、『死神永生』のメインテーマ。 そして、3番目のプロローグ。ここでやっと本書の準主役、雲天明が登場し、彼が片思いの女性に星をプレゼントするきっかけになる政策、星群計画が始動する。この星群計画の正式名称は“わが赴くは星の群れ”。この名前がアルフレッド・べスターの傑作『虎よ、虎よ!』の原題であることに何人が気づくだろう。 一番驚いたのが下巻の冒頭で語られる雲天明のおとぎ話。魅力的で幻想的なこのおとぎ話は、まさに本書の魅力のエッセンス。繰り返される“ホーアルシンゲンモスケン”が多分キーワードだろうとは思ったが、まさかここまで深い秘密が隠されていようとは。これって、量子コンピュータでも解読できない究極の暗号ではないだろうか? 魅力の三番目、本書は過去の様々な宇宙論SFのエンタメ的集大成であるということ。 本シリーズは、最初の第一巻から世界中の過去のSF作家の名作にオマージュを捧げた作品だと言われてきたが、本作になってもそれは変わらない。というか、ストーリーが“ファースト・コンタクトもの”から“宇宙論もの”に拡大していく中で、世界中の関連作品の集大成になった。 訳者あとがきで大森望氏は、光瀬の『百千』、小松の『果てしなき』、イーガンの『ディアスポラ』を引き合いに出して説明するが、評者は、そのほかに、ジェイムズ・ブリッシュ、ポール・アンダースンからブリン、ベンフォード、ベアらへと受け継がれていく未来史シリーズとの関連を思った。 中盤の展開がワールド・デストロイヤーからワイドスクリーンバロックを感じさせるのも楽しい。 評者は、作者が最新の宇宙科学と欧米及び日本の関連作品を十分に把握し、その最新の展開を取り込んで本書の物語を構築していると感じた。既存の名作を取り込んでいるだけではなく、そこに作者なりの奇想天外なアイデアを山のようにぶち込んで、しかも、読み易いエンタメ小説として完成させている。 実際のところ、作者は彼らの作品を読んでいるのだろうか、それとも、発想のもとになった最新の宇宙科学が同じというだけで、描き出したビジョンが結果的によく似たものになったということなのだろうか? 作者は文化大革命の頃に幼少期を過ごしたそうだが、カミュの小説を読んでその孤独を想像しながら、ウェルズ、クラーク、アシモフ、べスター、小松左京、田中芳樹らの小説、新海誠、士郎正宗、松本零士らのアニメに浸ったらしい。その経歴は、敗戦後の混乱期から英米のSF、アニメの影響を受けて育った日本SF作家第一世代を想起させる。作者とその背後に垣間見える、国情の違いに関わらず似たような経験をしているであろう世界中の無数のSFマニアを想像して胸が熱くなるのは評者だけではないと思いたい。 本書を読み終えた今、読んでいる間は気にならなかったいくつかの疑問を思い返している。また、登場人物やその相関関係、また、アイデアやストーリー展開にも個性的とも思える特徴があることが見えてきた。これらの特徴が本シリーズに固有のものなのか、それとも、作者の他の作品にも共通するものなのか、他の作品も読んでみたいと思う。 ところで、訳者あとがきに“死神永生”の意味は「死だけが永遠だ」と書いてあるのを読んで、半分納得しながらも、思わず「例外があるじゃん!」と突っ込んでしまった。 | ||||
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人間の想像力というか、SF作家の想像力と表現力は、ここまでのものを読者に現前させて見せることができるのか、と舌を巻いた。 Ⅰの内容も、Ⅱの内容も、Ⅲの内容も、それぞれは別のエピソードが描かれているのだが、そしてそれぞれのエピソード内で意外なというか仰天するような展開が続くのだが、大きく見ると、そのバラバラなエピソードが最終的にはすべて大きなストーリーに回収されていくのである。 その場で完結したように見えたエピソードが、すべてずっと先のストーリーの伏線となっていて、その場しのぎのエピソードなど何一つない。 そして、本書『三体Ⅲ』では、ついに三体文明すらかすんでしまうような展開が待ち受けている。 す そのタイムスパンは何百億年にも及ぶ。 もちろん、違和感がないわけではない。 例えば、本書『三体Ⅲ』の前の『三体Ⅱ』で示される黒暗森林理論は、ある意味では荒唐無稽である。 というのも、一つの星系の座標が多の宇宙文明に対して開示されると、必ずその座標開示された文明は、他の高度な宇宙文明によって潜在的な脅威を排除するために必ず破壊されるというセオリー(=黒暗森林理論)があるとされる。 この黒暗森林理論は作中のある1回経験のみから地球文明にも三体文明にも共有され、それがあたかも東西冷戦中のような相互確証破壊理論によって、地球文明と三体文明の戦略的パリティ(均衡)にいたるとされる。 しかし、わずか1回の事象からそのような理論が帰納的に導かれるというのは、あまりにも無理筋だ。 まるでホッブス『リヴァイアサン』の、人間の自然状態は「万人の万人に対する闘争」であるということから引いてきたような理論がアプリオリに提示され、そこから演繹的に展開されているのである。 ただ晩年のホーキング博士などは、宇宙の知的生命た探査は人間の存在を他の宇宙文明に知らせることになり、この小説的な危機を招来せしめるのでやめるべきと警告していたのではあるけれども(ぼくは後述するように、賛同できないが)。 そしてまた、『三体Ⅱ』では「黒暗森林理論」となっていたものが(書名も)、『三体Ⅲ』では「暗黒森林理論」と、断りもなく「黒暗」→「暗黒」となっている点も気になる。 あるいは、『三体Ⅲ』では、三体世界を人格的に体現する「智子」という女性ロボットが登場するが、そのいでたちときたら映画「キル・ビル」そのもの。 『三体』3部作はネットフリックスでブラッド・ピット主演によりドラマ化されるというが、これなどは映画化を意識した表現のようで、小説的には余計なものに感じた。 が、このような点があったとしても、それを無視してしまえるほどの驚愕的なスケール感が本書の神髄である。 ぼく自身は、宇宙には文明がありふれたものというこの作品の宇宙観とは異なり、知的文明の出現は信じられないほどの低確率であると考えており、また奇跡的に知的文明が出現したとしても、その相互の接触は絶望的な距離の隔たりによって不可能に近いと思っている。 しかし、そうであるにもかかわらず、このようなSF小説に出会えた幸せは、100%満喫したのであった。 | ||||
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黒暗森林、暗黒森林。周りはすべて敵で見つかったら抹殺される。分析されるまでもなく簡単に。実際にはぎょろ目で探索していましたが。そして、トマス・ウェイドの死刑。あれだけ進んだ文明においても死刑制度が存在している。この二つから中国という国家の本質を感じました。現在の中国の内政、外交、軍事状況をみれば明らかです。基本、自分以外の周りは敵なんです。意見が違うだけで仲間じゃない、即、敵なんです。そういう国なんですね。 さて、第Ⅲ部の展開はジェットコースター並みに早いです。冬眠を繰り返しては転換点に目覚めます。この冬眠は死を連想させますね。そして、再生する。激変する環境で無事に復活できるところは不思議ですが、それによって物語は回ります。二次元世界に落ちていく様相がものすごいです。本作、一番の見どころであったような気がします。 しかし、それにしても面白かった。この歳になってSFにどっぷりとはまるなんて。 そして、日本での発売は遅すぎだ。今後は早く発行してほしい。テレビドラマ化も楽しみだ。 | ||||
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『三体』は中華SFで、こんなに中国のSFが面白いなんて知らなかった。他のもちょっと読んでみている。 Ⅰは中国の文革から始まり、現代の読み手にとっては過去からスタートした。それが現実のわたしの今という時間を追い越し、Ⅱではさらに冬眠ということでもっと先の時間に飛ぶようになった。 Ⅲに至っては最初からジェットコースターに乗っているようなスピードですべてが展開していく。そして読み手の視点はヒロインの程心の視点にありつつも、そのいる場所の壮大さにどんどんどんどん外にぶっ飛ばされているような感じになる。 物語の始めのエピソードからすべてが伏線となりつながっているのでこぼれないように読んでいかないといけないのにスピードが速い! | ||||
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とにかく面白い。どんどん進んでいくんだ。 自分がどうかということが関係ない絶望に立ったときに人がどうなっていくのか。そのギリギリを想像力を膨らませて考えてるうちに次の場面に変わっていく。 著者の想像力の途方もない広大さ(この言葉さえ陳腐)にただただ驚き、自分もそれに便乗して世界を見せてもらっているような感じだった。 最期の程心と「ある男」の関係についてはふたりになるとそうなのかな。。。もう一人の「あの男」のことを思うと切ない。 誰か語り合いたい。 | ||||
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大森望氏もあとがきで述べているように、本作はヒロインの気持ちによって人類の運命が左右されるセカイ系の印象が強い。でも、ハードで残酷なので、少し困惑するところもある。あとがき読むまでは、宇宙の再構築まで描かれるので、イーガンやベアのような骨太SFの亜種のような印象だったが、あとがきで納得した感じ。読み応えがあり、満足だが、ロマンの欠片が欲しい気がする。こんだけ技術が進んでも、宇宙に戦争が尽きないのは悲しい。 | ||||
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創造力が必要とされるこれからの時代に最高の作品だと思いました。 著者はもちろん、日本語で読む機会を提供してくださった訳者の方々にも感謝したいほど素晴らしい作品でした。 | ||||
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三体1を読んだときに面白すぎて、三体2は1を超えられないんだろうなって思ったら2のほうが面白くてすごいと思った。2である程度話は完結してる雰囲気だったし、3はその後の後日談的な話だと思っていたら、しっかり期待を裏切られました。3はもう物理。読まない選択肢はないですね | ||||
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