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深い河



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【この小説が収録されている参考書籍】
深い河 (講談社文庫)

深い河の評価: 4.32/5点 レビュー 166件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.32pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全166件 101~120 6/9ページ
No.66:
(4pt)

十数年前に読んだときとは視点も感想も変わってしまった自分に気づいた。

初めて読んだのはもう十数年前。その頃は何となく、一番最初の章に登場した磯辺の視点からこの物語を読んでいたと思う。妻に先立たれた磯辺。妻のいまわの際の言葉にすがるようにインドに来た磯辺。生まれ変わりがあるのかについては懐疑的ながらも、生まれ変わった妻を捜し求める磯辺。

しかし、今回、久々に読み直したとき、今度は美津子の視点からこの物語を読んでいた。大学生の頃、人の気持ちを思いやることなく自由気ままに生きた美津子。その頃気まぐれにもてあそび、ぼろぽろにして捨てた大津という男と、人生の節目ごとに関わる美津子。判らないのは、どうして美津子がそんなに何事にも醒めているのか、人の痛みや感情を理解しきれないのかというところだった。彼女が生まれ育った背景は書かれていない。だから、何が彼女をそうしたのかがわからない。

ただ、ここに出てくる大津という男は、社会のどこにいてもどの国に行っても、そこにとけ込むことが出来ない。人間関係を築く能力にやや欠け、そのことで苦しみ、自分を包んでくれるゆるぎない大きな愛を求めて最終的にはインドにたどり着いている。そういう視点から見ると、美津子もまた、「どういう風に生まれて育ったからそうなった」と言うのではなく、生まれつき、そういった気持ちを理解する能力を欠いているということなのかもしれない。

磯辺については、今回読み直すと、以前とはかなり私自身の感じる感想が変わってしまった。

以前はこの物語の表面的な雰囲気ばかりに惹かれて、生まれ変わりを探して旅に出ているという設定に何となくひたったものだ。でも今読み直すと、長年連れ添った妻のことは空気ほどにしか感じず、妻の思いを訊くことも理解することもなく便利な存在と思って日々を過ごし、妻に余命宣告が出た時に初めて、その存在を失うことに恐怖している。それは愛情ではなくて、自分の日々の生活にとって都合の良い存在がいなくなる恐怖でしかないと、私には感じられた。もしもこういう形で妻を失うことなく、もっと歳を取るまで一緒にいたとしたら、磯辺はやはり、妻を空気のように扱い、思いを訊くこともなく理解することもなく日々を過ごしたのだろうと思う。そしてまた、生まれ変わりを探してインドに来たことで、「妻は成仏してくれる」と旅の仲間に語る磯辺は、その実、自分自身が救われたくて、自分自身が妻の不在を納得して受け入れる「喪の仕事」の途上にあるのだと、この歳になってやっと感じることが出来た。

十数年後にまたこの物語を読んだとき、私は、今度は誰の視点から、どんな感想を抱くだろうか。
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No.65:
(5pt)

最後の傑作

遠藤周作が最後まで追求したテーマが凝縮されています。何度も読み返したくなる作品です。
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No.64:
(5pt)

深い河

遠藤文学の構成、表現また思想などを称賛いたします。人間の心の奥底に潜む影の部分が特によく描かれています。
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No.63:
(5pt)

折れ釘と玉ネギ

本書は93年に出版された、著者にとっては最晩年の作品です。
これまでの来し方が結晶化したような、静かな迫力を感じさせるものでした。

物語には人生の途上で苦難を抱えた人物が連作で登場します。
彼らはそれぞれが少しずつ関わりを持ち、インド行きのツアーで出会い「答えのない答え」を探します。
著者がキリスト教への信仰を持つためか、本書の中でキリスト教的世界観が頻繁に登場します。
しかし押し付けがましさはなく、むしろキリスト教の持つ矛盾を色濃く描写しながらも、それでも尚その道を歩もうとする苦悩の中の決意を強く滲ませるものでした。

レビュータイトルの「玉ネギ」や「折れ釘」は「聖なる人」を描写したもので、本文中の次のような姿には胸打たれました。
 「死に瀕した病人の横で跪いた姿勢はさながら折れ釘のようだった。
  患者の心の曲がり具合に自分を合わせ、苦しみを共にしようとしていた。」

 「玉ネギが殺された時、逃げた弟子も玉ネギの愛の意味がわかったのです。
  裏切られても玉ネギは弟子たちを愛し続けました。
  だから彼らの心に玉ネギが刻まれ、忘れえぬ存在になったのです。」

 「何のために、瀕死の人たちを宿泊施設に運ぶのですか」
 「それしか・・・この世界で信じられるものがありませんもの、私たちには」

最後の場面を読み終えて本を閉じたとき、万感の思いが胸に去来しました。
むさぼるように濫読してきた中で、本書は心に残った数少ない本の1つです。
なお、同様に矛盾の中で信仰の道を歩んだ聖なる人として「 カンディド神父 」の自伝などもおすすめです。
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No.62:
(4pt)

無宗教30代男の視点

大切な妻を病気で亡くした男、神を信じない女、戦争の修羅場をくぐり抜けてきた男…。様々な人物が、それぞれの想いを胸に、インドのガンジス川に向かう過程を描いた作品です。

作者、作品共に有名ですので、多くの方がレビューや解説等を書いていらっしゃると思います。適切・的確な分析は、そうした方々にお任せしたいと思います。私としては、無宗教30代男という本書の読者としてはやや少数派と思われる者の立場として、レビューを進めたいと思います。

私は今のところ、既存の宗教を信じるということはしていません。僧侶や聖職者を尊敬することがなかなかできないからです。全てがそうとは言いませんが、必要以上の富や欲を持ったり、他者への思いやりと行動が不足した人が少なからずいるように感じています。また、作家の北杜夫さんは「宗教は多くの人を救ったが、それ以上に多くの人を苦しめた」という内容の文章を書いています。私もそう思っています。このあたりの事情は、古くからのキリスト教やイスラム教だろうと、ここ数十年くらいの歴史の浅い新興宗教でも同じことだと思います。高すぎる葬儀費用、戦争に駆り立てるプロパガンダ、聖職者の特権を悪用した児童虐待や不正蓄財…もし天国というものがあったとして、果たして彼らはすんなりそこへ行くことができるでしょうか。科学と情報技術とそれを活用する社会制度の発達で、こうしたごまかしや犯罪行為がけっこう明らかになってきました。
しかし、一方で、私は神の存在を信じたいという想いも抱えています。マザーテレサやマハトマ・ガンジー、キング牧師やダライ・ラマ14世など、宗教と深く関わりながら立派な生き方をした人たちはたくさんいます。私は、ほとんどの国家指導者や企業経営者よりも、彼らにシンパシーを感じています。神が存在すると証明することも、存在しないと証明することもおそらく不可能だと私は考えていますが、私たちの生きるこの世界を良くするために、神を信じるのも悪くないじゃないか、という気にさせてくれます。
人間の知性は大したもので、科学という強力なツールを手にしてからというもの、宇宙にあるモノを手際よく分析し、有効活用できるよう日進月歩しています。それでも我々人間はなかなか幸せになることができません。結局、一寸先は闇ですし、科学の恩恵を全ての人が享受できるわけでもありません。科学は強力ですが、決して万能ではありません。もちろん、人間の知性も。であるとすれば、その不完全な部分を一体どうやって補うのか。私は、21世紀の現代でも、宗教の役割は残されていると思っています。

前置きが長くなりましたが、本書はそんな私のような敬虔さに徹することができない、しかし神を否定したくない者にとって、いろいろ考えさせてくれる内容になっています。奇跡なんてありません。それどころか、救いすらあったのかどうか。読後の後味は悪かったです。結局私は何をすればいいんだろうか、答えは出ませんでした。また、面白いとも言いがたいので、評価の星は一つ減らすことにしました。年老いてもう一度読むことがあったら、違う感想になっているかもしれません。
なお、本書に出てくるヒンドゥー教の女神「チャームンダー」はとても気に入りました。彼女はまさに母でした。私はあんなに強くなれないなぁ…と思いますけど。

余談ですが「ヴィンランド・サガ」というマンガがあります。「深い河」と直接の関係は全く無く、作風から何から全然別物ですが、根底にあるテーマが似ているのではと思います。よろしければそちらもどうぞ。
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No.61:
(5pt)

人生、輪廻転生いろいろと考えさせられました。

映画の試写会以来で、時期的に、自分がはじめてインドに渡ったときと同じで、情景などよくわかりました。ありがとうございました。
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No.60:
(4pt)

一度では掴みきれない物語

学校の教科書に「沈黙」が載っていて、こんな重たく小難しい話はきらいだ、という刷り込みが出来上がってしまい、今の今まで遠藤作品には手を出しませんでした。最近インドにお住まいの方のブログでこの本を是非読んでほしい、といったことが書いてあって、興味を持ちました。なんとか完読できました。
5人の人物がそれぞれ生と死のあいだをたゆたうように想いを揺らし、その先にそれぞれの理由でインドを目指す。主旋律が美津子と大津の関係にあるキリスト教的なものへの思考なら、対旋律が磯辺と妻の関わりにある仏教的なものへの思考でしょうか。それらに沼田、木口のエピソードも寄り添いながら、インドへ、ヒンズー教に縁深い河、ガンジス河へと、思いも人生も流れ込んでゆく。
汎神論的なキリスト教のキリスト像が大津なのでしょうか(ラストを含め)。どうもキリスト教というテーマにやや重きをおいているためなのか、どうしても大津、美津子のエピソードに比べ、ほかの人物のエピソードがバランスが悪く感じ、終わり方もかなり唐突な感じもしないではありません。
たた、自分が定型化した物語を読みすぎたためにバランスが悪いと感じているだけで、これはこういう物語で、複雑で、一度では掴みきれない物語であるのかもしれないとも感じます。
読みながら、物語に寄り添うように、わたしはずっと昏い長い道を歩いてきて、ところどころかすかな声やほのかな光があって、かろうじて生きてきたけれど、この道の果てにあるのは、闇か、光か、無か、あるいはガンジスのような滔々とし全てを飲み込む混沌とした大いなる流れが待っているのか、などと考えていました。
インドにいったことのある方とない方では印象がかなり違うのかもしれません(私はありません)。
読後なぜかバラードの「結晶世界」や映画の「愛に関する短いフィルム」を連想しました。
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No.59:
(4pt)

気に入りました

子供にせがまれて購入しました。欲しかった本でしたので毎日繰り返し読んでいます。
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No.58:
(5pt)

ネタバレあり。未読の方、注意して下さい

現代日本では、「宗教」というと馬鹿にされたり、何か怪しげなものとして警戒の目で見られたりするような風潮があるような気がします。残念ながら、オウム真理教の事件や、9.11テロ、アフガニスタン戦争があったことで、その傾向が強まった時期があったかも知れません。
 ここ数年は、また「スピリチュアル」という名で、以前オカルトと呼ばれたものが持て囃されたりしていますが・・・・。わたしはこうしたスピリチュアルブームも一概に否定はしませんが、「夢を叶える」「願いを叶える」「生きる意味を探す」という所に重点を置きすぎている所があまり好きではありません。前は好きだったのですが、今は違います。
 スピリチュアルに熱狂しているのは主に若い女性ですが、それなら、伝統的な宗教にももう少し関心を向けたらどうか、とよく思います。そして、何教であれ、「信仰を持つ」ということは、「夢や希望を持って努力すればどんな願いでも叶う」「何か大きな力に守られて、絶対に悪いことが起こらない」「生きる意味がわかる」ということでは勿論ない。「夢や希望を持って努力しようがすまいが、どうにもならないこともある。寧ろ、どうにもならないことばかりである」「生きる意味など誰にもわからない」ということを覚えて、宇宙を支配する大きな大きな力の中に自分自身を解放し、委ねて生きる、ということだと思います。

 「自分は完全な無神論者だ」「宗教だの占いだのスピリチュアルだの信じないし、大嫌いだ」という人は、わたしの周りにも何人かいます。
 でも、わたしが思うには、「仏教」とか「キリスト教」といった従来の枠組みに囚われるから、また、それをお金や世俗的権力や影響力や、果ては悲しいことに暴力に直結させて考えるから、拒否反応が出てしまうのではないか?
 阿弥陀如来像の微笑みや、祭壇に飾られた十字架や、神社の静謐な空気や、タロットカードの神秘的な図案や、「サイキックリーダー」「スピリチュアルヒーラー」が身に着けたきらびやかなパワーストーンの向こう側にある、人の知恵では計り知ることのできない、何か途方もなく大きなもの。それに対し、遥か遥か昔から、人類が共通して抱いてきた純粋な畏敬の念。
 そういったものを、生まれてから全く意識したことがない、という人の方が少ないと思います。
 だから、この小説に出てくる人たちも、導かれるようにしてインドに集ったのだと思います。病、死、離別、哀悼、贖罪、虚無感、戦争の記憶。一人一人の凄絶なる思いや経験、どうしてもインドへ、ガンジスへ赴かなければならなかった理由が、あまり気取った所のない平易な文章で丁寧に描かれていて、強く胸に迫りました。
 特に、死に瀕している人々を背負って、ガンジスの岸辺に運ぶ大津は、作中でもイエス・キリストに準えられている通り、神に近い役だと思われました。わたしは今まで、「アガペー」という言葉をそれほど深く考えずに使ってきました(多分、うちの教会の牧師もそうだと思います)。けれども最近、読書をしたり、インターネット上の「見知らぬ友人」たちと語りあったりしている内に、その言葉を日々、意識せざるを得ないようになってきたのです。
 また、わたしは女神という存在に昔から心を惹かれるので、ヒンドゥーの女神たちが登場する場面は興味深く読みました。チャームンダーという女神は初めて知りました。釈尊の説かれたこの世の苦しみを一身に背負ったような、それでも愛に満ち、愛を与え続ける、醜い老婆の姿をした女神――わたしが知らないだけかも知れませんが、確かに、こういう存在は他に類を見ないような気がします。さすがに、釈尊を生んだ土地の人々の人生に対する洞察は奥深いと思わされました。
 そして、童話作家の沼田。彼と生きものたちとのささやかな交流に涙しました。わたしの家でも、何匹かの猫を飼っています。去年、祖母の後を追うようにして、一匹が他界しました。
 ものを言わない者というのは、なぜあんなに愛おしく、切なく、健気でいじらしいのか。当たり前の話ですが、ものを言わないというのは、言葉というものを持たないということです。人間は言葉を使って、本当に色々なことができます。言葉があるから、人間は愛を表現できるし、思いや考えを伝えられるし、幸せになれます。
 けれども、人を傷つけるのもまた言葉なのです。人は結局、「腹の立つことを言われるから」人を怨み、憎むのです。
 「その点、動物というのは何も言わないから、『憎らしい』と思うことがないからな」と、猫の顔を見ながらよく思います。
 最後に。磯辺が亡き妻の生まれ変わりらしい相手と巡り会える、というファンタジックな展開を期待していたので、インディラ・ガンジーと大津の死、という幕切れは意外でした(ガンジー首相が実際に暗殺されたことは知っていましたが)。わたしは転生を信じています。実際、そうとしか思えないような経験をしているからです。ただの偶然の一致だとか、馬鹿げた少女趣味のオカルト思想だとか一笑に付されてしまいそうなので、誰にも話したくないのですが(苦笑)。
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No.57:
(5pt)

◆神は存在というより働き、愛の働く塊なのだ

この小説は平成5年に出版されたものであるが、70代に突入した作家の作風とは思えないほどの瑞々しさ、ごく自然なドラマ性を感じさせる。
小説の構成は、様々な苦悩を背負った人々が、たまたま同じツアー旅行に参加することとなり、その各人ごとに物語が展開していくものだ。
その旅行先というのも、インド仏跡巡りというのだから、作者の何らかの意図を感じないではいられない。
要となるのは、大津という人物。美津子が学生時代に誘惑したカトリック信者である。

話はこうだ。
ミッション系の大学へ通っていた美津子は、周囲からけしかけられて、真面目なカトリック信者でもある男子学生の大津を誘惑する。
大津は不器用ながら純粋な愛を傾けるが、美津子にしてみれば、ウブな大津を弄んでみたくなっただけのことで、じきに飽きた。
その後、美津子は見合いで裕福な青年実業家と結婚するが、その生活に何一つ満たされることはなかった。
一方、大津は美津子からボロ雑巾のように捨てられた後、救いを求めてフランスのリヨンに渡った。
そこにある古い修道院で、数年の間、神学の勉強をしていたのだ。
ところがその後、美津子が同窓会で大津の噂を偶然耳にすると、大津はインドで修行しているとのこと。
そんなこともあって、美津子はインドツアー旅行に参加するのだった。

『深い河』の作中に登場する美津子と大津の会話は興味深い。何とかして神への信仰を中断させようとする側と、必死で神への迷いを断ち切り、救いを求める側。
これは、あるいは遠藤周作自身の自問自答だったかもしれない。
高校で多少の世界史をかじった方なら誰でも知っていることだが、キリスト教が布教の名を借りて多くの土地を奪い、それこそたくさんの人命を奪ったという事実。だがどうしてキリスト教がなくならないのか。神の存在を否定しないのか。
そう、信仰とは理屈なんかではない。ただひたすらに信じることなのだから。
著者は、大津の言葉を借りて次のように言う。
「日本人の心にあう基督教を考えたいんです」
ヨーロッパでは、唯一絶対と考えられている神の存在だが、東洋人にはその宗教観を受け入れるのが難しい。
大津の考えとして、「神は色々な顔を持っておられる。ヨーロッパの教会やチャペルだけでなく、ユダヤ教徒にも仏教の信徒のなかにもヒンズー教の信者にも神はいる」と。これは正に、遠藤周作が人生を懸けて問い続けて来た宗教観であろう。
神は存在というより、働きなのだと。

時に、情報の氾濫した世知辛い世の中で、私は秘かに神を信じてみたくなる。なぜなら、何を信じたら良いのか分からず、途方に暮れてしまう日々だからだ。
『深い河』は、迷い続ける人に優しく働きかける霊的な小説と成り得るかもしれない。
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No.56:
(5pt)

本が苦手な人にも読みやすい

好きな小説は何かと聞かれたら
私はすぐに「深い河です。」と言うと思います。
小説嫌いな私でもこの本を手に取った後
読むことに夢中になりました。

というのも
著者の情景描写がとても丁寧で
主人公の心情が感じられやすかったので
なんだか読んでいて涙が出てきてしまう場面もありました。

宗教・病・愛・旅・戦争
それぞれの問題に悩み、苦しむ各主人公たちが
とても「人間くさい」方法で他人を翻弄したり
愛したりするので
なんだか「自分ひとりじゃないんだ」って
安心させてくれる本でもありました。
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No.55:
(5pt)

人それぞれに深い河あり。

近所の図書館に行くと、たまにキリスト教系信者達
の勧誘を見かけます。一度だけ話してみたのですが
とにかく信じる者は救われる的な論法で合理性とか
はほとんど感じませんでした。特定の宗教とは縁が
ないので、かなり異様に感じた覚えがあります。

先日、なにげなく遠藤周作氏のこの本を読んでみて
あの時の違和感をうまく説明してくれているような
気がして溜飲が下がりました。美津子と大津の関係
はよく描けていると思います。筆者自身も自らのタマ
ネギ信仰に対する疑問の連続だったんでしょうね。
淡路島のタマネギの甘さはやっぱりイスラエルで栽
培しても無理でしょうし。

個人的には沼田さんというキャラが一番面白く
読んでいて爽快でした。
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No.54:
(4pt)

衝撃のラスト

ラストはすごく衝撃的になっています。
俗っぽさが大変うまく表現されています。
それが遠藤周作の素晴らしさかもしれません。
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No.53:
(5pt)

信仰に名前はない

著者はキリスト教をテーマにした小説をたくさん書いて、それぞれが強い印象を残すものでした。
その中でも「深い河」は人生の晩年に作られた本で、著者の信仰の一つの行きついた先を示すもののように思います。

信仰の名前は何でもよい。本書で印象に残った部分を抜粋します。

“信じられるのは、それぞれの人が、それぞれの辛さを背負って深い河で祈っているこの光景です。と美津子の口調はいつの間にか祈りの調子に替わっている。「その人たちを包んで河が流れていることです。人間の河。人間の深い悲しみ。そのなかにわたくしもまじっています”

私たちはどこまで名前にこだわる必要があるのでしょうか。
おすすめの本です。
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No.52:
(5pt)

これからインドのバラナシを旅する方、是非ともお勧めです。

この作品に出てくるインドのバラナシを旅行することになり購入した。
バラナシに向かう飛行機の中から読み始め、バラナシのホテルの中で、まさに登場人物たちが、バラナシを中心に活動する章から最後まで読み終わった。
遠藤周作がこの作品を書いてからかなり年月が経過しているが、バラナシの描写は、今のバラナシと全く変わらない。
自分も、この小説の中にいる様な感覚を楽しめた。
これからインドのバラナシを旅する方、是非ともお勧めです。
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No.51:
(5pt)

それぞれに考えさせる文章

わたしはインドに行ったことはありません。
それでも文章の中からインドの雰囲気、ガンジス河の持つ自然の力を感じることができました。
著者の考え方を登場人物を通して押し付けてくる表現ではなく、読者個々が感じ取ったうえで色々と考えることのできる一冊だと思います。
ますます著者が好きになった一冊です。
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No.50:
(5pt)

自分の人生の意味を考えさせられる

前半は、複数の登場人物の人生が挿話的に描かれている。
後半はそれら人々がガンジス河のほとりにたたずむ。

それぞれがそれぞれに生きてきた人生。
それを全て包み込み、生と死が共存するガンジス河。

ガンジス河のほとりに立たずむ登場人物と同じように、
自分の人生の意味とはなんなのかを考えさせられた。
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No.49:
(5pt)

深い河 に見る遠藤神学

大阪高槻カトリック教会アデリノ神父様の勉強会がきっかけで遠藤さんの宗教観をあたらめて考える機会を得ました。
ちょっと長い感想文になりますので、以下のサイトに掲載させていただきます。

[...]
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No.48:
(5pt)

何回も読み込んでしまった。

氏の作品は「イエスの生涯」に偶然出会った学生の時から読んできたが、この作品は氏の生涯の集大成である。

氏の作品によってキリスト教にもあこがれを抱いたが、"Believe in" と言った心境にはどうしてもなれないことを代弁してくれている。

最近になって、かえって仏教の方が science に近いことを知ったが、西洋人の強いエゴにはついてゆけなかった経験を思い出す。

20数年前発表の「スキャンダル」は、当時は若くて何も読み取れなかったが、年をとると解る。

最近、氏の作品が本屋の棚に置かれないのは寂しい。

To believe is to select what I think is right and logical. とあるキリスト教の一派の宣教師に話すと

I 100 percent agree. とおっしゃってくださった。

このとき、はじめて宗教から自由になれたと思った。
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No.47:
(4pt)

意外と明るさも

遠藤周作の最晩年(70歳)の作。『沈黙』や『侍』などの、救いのない暗さを期待して読むと裏切られるかも。主な登場人物は五人。その中で最も遠藤自身を投影していると思われるのは、リヨンの神学校で汎神論的な思想を非難され、神父失格の烙印をおされた大津なのだが、その後、彼がたどり着いたインド・ヴァーラーナスィでの自信に満ちた姿には、ある種の開き直りともとれる明るささえ感じられた。これが、キリスト教と日本の風土、神と日本人の問題について生涯にわたって取り組んできた遠藤が最後に到達した境地と考えていいのだろう。本を読むのに順序はないが、この作品はいくつかの遠藤作品に触れた後に読むと、より一層感慨が増すのではないかと思う。
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4062632578

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