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利腕
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利腕の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.57pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全21件 21~21 2/2ページ
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『大穴』のシッド・ハレー・シリーズ続編ということで、連続して読む楽しみを満喫させてもらった。さて最初に言っておくが、本書はずば抜けた傑作である。他の作品のそれぞれも素晴らしいが、主人公を最も深追いした作品、そして作家の描きたいことを最も深く掘り下げ、最も丹念に描写し得た作品という意味で『利腕』はずば抜けているのだ。この書では作家のメッセージをうまく受け取ることができた。それほどまでに本書は表現力の豊かな作品であるようにぼくは感じたし、それだけどっぷりと作品世界に浸かって、夢中で400頁を繰ってしまったということなのだ。 中でも、脅迫によって自己破壊・自己蔑視の極限に追い詰められた主人公が、恐怖を乗り越える過程の描写は素晴らしい。具体的には熱気レースに身を投じる男との出会いのシーンは、いつもぼくのいう小説的カタルシスの最たるもの。自己を如何に卑下しようと周囲の人物の眼に映る彼の姿は、読者の眼と同等に、ある種の尊厳に生きる男でしかないのである。それは恐怖を克服することでチャンプをものにしたことのあるシッド・ハレーの経歴であるし、前作「大穴」で過酷な闘いの中で、相手を捩じ伏せたハレーの土俵際での信頼性である。 『利腕』には、複雑に絡み合った4人の依頼主と3つの事件がある。うち2つの事件は、ハレーたちへの先制攻撃・脅し・暴力に満ちている。それらは、常にそうした危険の大きい職業に付随してくるはずの命題であり、シッドのような男の存在への思い詰めた問いかけでもある。 読みどころは多数ある。シッドと対極的な性格にある相棒チコ・バーンズとの友情や信頼は、最後の最後まで魅せてくれるし、過去の妻や新しき恋人との心の集積回路はデリケートで脆くできている。義父との、立場を越えた信頼関係や、調教師が「乗れよ」と差し出してくれる名馬フロティア。 縦髪と風のそよぎに、凭れかかる一瞬の安堵。また非情な暴力のさなかで、そのフロティアや、過去の障害レースでの優勝や、気球に憑かれ楽しそうに青空を舞う男のことや、新しい恋人を思い自らを鼓舞するシーンは秀逸であった。ぼくはフランシス作品のこのスポーツ感覚がたまらなく好きなのである。 | ||||
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