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残像に口紅を
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残像に口紅をの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.92pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全99件 81~99 5/5ページ
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無知な私には、言いたいことがイマイチわからない。実験的な手法により「これは作り物である」ということを読者に伝えたいのだろうか。それならばただのテーマ小説であり、そのテーマが作者にとってのみに重要な問題であるなら、わざわざこんな明瞭な世界の情景を構築せずとも、論文で良いではないか。 ここで描かれる、一つ一つ記号を失った世界は、とてもわかりやすいもので、正確なものでもある。とくに主人公の身近な人々の「残像」の描写は、感涙にすら値するものである。何かが消えゆく消失感に浸りたいのならばオススメ。 | ||||
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さすがに三部まで行ってしまうとRAPのRHYMEみたいだなぁという感じになってしまいますが、 二部の後半(例えば文庫で280ページ)くらいを開きパッと見たところで、 ここまでに多くの「音」が失われてるとは思えないほど、文書として普通の印象を受ける。 なんと恐ろしい語彙力であろうことか。 冒頭でいきなり「あ」を封じられているのに、情交場面を長回しで描くなど、余りも意欲的。 実験作が、きちんと”実験”として機能し、成果も出している、数少ない名作。 自分的に、これと「パプリカ」だけは今読んでも唸る作品だなぁと思う。 | ||||
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素晴らしかった!素晴らしさのあまり何度も読んでいる最中興奮して彼や友人に感想を伝えてばかりいた。久しぶりにこんな躍動的でワクワクして、言葉遊びを楽しめる文章に触れたなあ。そもそもタイトル自体が美しいじゃないか。「残像に口紅を」、だよ。 言葉がひとつずつ消滅していく。主人公の佐治のとる行動全てが書き手筒井康隆自身の行動でもあり、その挑戦をする姿勢が格好良い。だって普通の作家、こんなことしないもん。物語を描き続けていくことが作家だと思うもん。でも彼は試してみる。実践する。そして読み手の私はドキドキはらはらする。どの言葉が無くなったのか?今の世界は一体何が失われているのか?そして、消失したものを意識することによって、より悲しみと空白は増してしまうのか。 残像に口紅を、というタイトル。失われた影に化粧をする、美しくあれと捧げる紅。全てが消失してしまう最後、さてこの世界には何が残るのか。なにも残らない、という事実が残る?私の心の中に、何が残る?からっぽでがらんどうな文章?思考をぐるぐると巡らせても解らない、圧倒的な文章体験。秀逸なタイトル。 最後は言葉が少なくなってきたところで言い回しが複雑になっていたから、ちょっと疲れる部分もあった。だけれどもまた、時間を置いて再読しよう。楽しかった、ある意味文章のジェットコースター、波に乗っていた気分である。私はこういう人が「作家」だなあと強く思う。筒井康隆の本をもっと読みたい。 現実世界の皮をほろほろとはがされていくようで、実際の目に見える世界が歪むようで。SFなんて言葉で集約できない世界。言葉だけで綴る世界。なのに言葉を無くしていく世界。たまらない、すばらしい、すばらしすぎる。 偶然と幸福を噛み締めて、この本に出会えてよかった。年を重ねても、こんなにも躍動する出会いを経験させてもらえるなんて。 | ||||
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折り目などもなかったので非常に満足です。 ありがとうございました。 | ||||
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私はわりと近年の作品ばかりを読む向きで、筒井作品も数冊しか読んだ事がありませんでした。が、これを読んで格の違いを思い知らされてしまいました。 世界から音が1つずつなくなっていくという趣向の小説で、消えた音を使って叙述される物も同時に小説世界から消えていきます。メタフィクションのため、このアイディアでできそうな事を端から網羅している感があります。 言葉が消える事による作中世界での混乱をユーモラスに描き(第一次元)、次に消える文字の物がこれでもかと出てきて読者に予測させるちょっとしたゲーム性や、叙述の不可能性を逆手に取った文章の面白みを描き(メタ次元)、文学として制約の上で表現の豊かさを探ったり(メタメタ次元)。 特にこの、ただ単に単語や言い回しを言い換えるだけではなくて「いかに表現するか」「あたらしい文体が生まれるのではないか」と格闘する姿勢に、底なしのバイタリティを感じます。あくまで攻めの姿勢なんですよね。 また、物語としての余韻も鮮やかです。 セカイ系という言葉はもう古いのかもしれませんが、主人公の個人的な都合で世界が崩壊というのは、そういうことですよね。破滅が約束された世界での物語というのはどうしても胸が苦しくなります。 オチの付け方も目が覚めるようなものでした。私はもっと開かれたラストをぼんやりと予想していたのですが、なるほど、こう示されると、これがあるべき結末だなと思います。奥付を眺めながら呆然としてしまいました。 あと挿絵も面白いです(よく見ると切り取られてない部分も字の形になってる)。収録を判断したのが誰か知りませんがグッジョブ。 SFや実験小説は特にそうだけど、いかにマスターピースと呼ばれる作品でも、時間が経つ程ありきたりになっていくものです。でも、この名作に「過去の」という言葉が冠されるまでには、まだまだ21世紀の文壇は盛り上がる必要があると感じました。 | ||||
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「あ」がまず消えて、最後に「ん」が消える。そんな文字が消えていくスリリングな体験を味わうことができる唯一無二の作品。作者は執筆にあたり、消す文字の選択順についてどのように考えたのだろうか?残したい文字から選択したのか、消したい文字(消すと面白い文字)から選択したのか?筒井康隆の事だから、きっと後者だろうな。 | ||||
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実験の趣向よりも著者自身がこの試みの意味に疑問を感じているように読める点が面白いところです。例えば主人公・勝夫(=筒井康隆)が「読者はどのような展開を望んでいるのか」と考えたり、この試みが終わったとき俺は作家として飛躍できる、と自分を鼓舞している点などでそう感じられます。また登場人物が何度も目の前で消失したり、ボキャブラリーが貧困な人々が登場しオタつく姿を何度も描く点などは大衆(=友人の津田=読者)迎合的です。 その中でも勝夫の自伝の部分は秀逸です。例えば「エリート意識」の「え」が消失しているので「おのれの高貴さを衒い、学を衒い、生まれや家格を自慢し」を言い換えている点は著者のエリート意識への嫌悪をかえって強調することに成功しています。また自伝の途中で「は」を消失させ「男親、女親」を「男、女」とそっけなく言い換えた点は著者の両親への感情を良くあらわしています。 このように小説の裏にいる著者を意識して読めば本書の中弛み感も楽しく読めるのではないでしょうか。 | ||||
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「いろはにほへと ちりぬるを〜」 誰もが知っているいろは歌だが、最初にこの歌を詠んだ作者については諸説が挙 げられている。それは別の話なので省く。 古人は全ての仮名を使って(ん_についての言及は避けよう)いろは歌を詠んだ が、筒井康隆はその逆に挑んだ。 全ての音が、徐々に消えていく。 そしてその音を持つもの達も、存在しなくなる。 初めは緩やかに。読者にはその異変に気づかせる事も無く。 何かが変なのだが、得てして変化の渦中に居る者にとっては、それが緩やかなも の程気付きにくいものである。 では、異変を感じ取った時には? 残された世界は? 日本語圏でしか堪能できないのが非常に残念だが、日本語を読み書き話す人には 是非読んで欲しいとさえ思う。個人的には、日本文学史上に残る傑作だと思う。 この作品は文章での表現について納得できない制限を感じた筒井氏だからこそ創 り得た作品だと思う。 いろは歌同様、以降の作家が同様の技法を試みても、二番煎じと取られかねない。 この本はエンターテインメントとして勿論楽しめるが、読後に語彙論について考 えた人も少なくないだろう。 | ||||
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筒井の「現実=虚構」と言う持論と卓抜した言語感覚を活かした奇想天外な実験小説。「言葉狩り」への反骨精神もあるのか、作家である主人公がこの世から文字が段々と消えていく様を"小説"とした描いたもの。文字が消えると、その文字を使用した名前を持つ人間、物質も消える。 この趣向が分かった際、ドタバタに逃げるしかないと予想したが、どうしてどうして。消えた文字が少ない間は、同時に消えて行く家族への感傷小説(題名は娘への想いを綴ったもの)。文字数が1/3程度減った段階で、筒井には珍しい情交シーン。文字数が半分前後まで減った時点では、文壇批判と自伝。本当に使用可能な文字が減っているのかと疑うほどの自然な文体で驚かされる。自伝の途中で、残っている文字数が1/3程度になって、流石に同じ単語や同音異義語が多くなり、文章に不自然さが見られるが、これが歪んだ過去と共鳴し、読む者に不思議な印象を与える。それにしても、普段は自伝や情交シーンを描かない筒井がこうした実験小説の中でそれを試みる点にチャレンジ精神を感じる。ここまで来ると、もう最後はどうなるかと興味津々。残り10文字程度で、主人公が丘の上の建物に登って景色を俯瞰した感想を述べる辺りは圧巻。よくもここまで、単語が残っていたと感心する程。消して行く文字の順序はどうやって決めたのだろうか ? 小説(現実)の虚構性、筒井の異常なまでの言語感覚、反骨精神が楽しめる秀作。 | ||||
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使える文字が少なくなってゆく中での実験小説 なぜこのような実験小説を書いたか背景がわからずに レビューを書いていたのですが、そんな事情で生まれた小説なのですね しかし天才です。 まるで筒井自身のような小説家が私小説を書いているような 内容で、すこしづつ使える文字(音)が無くなってゆく中で 表現しようとしている小説である.目次も第一部〜第三部と 3つだけで目次の意味をなさないし、あとがきなどの解説も無い 本当に本文だけの小説である。しかも単行本であると、小説なのに 袋とじはあるわと、とても実験的である。 このような小説に一貫した内容をもたせるのは無理で、冒頭にも 最後の方はドタバタになると書いてあったが、意外と最後の方まで 意味の通った文章ですごいなと思った.また、最初に「あ」が消えているはず なのに、まったくどこに消えているのかわからないぐらいすごい本でした。 | ||||
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言葉が消える。 すると、人が、ものが、残像を残して消えていく。 最初はわからない。 消えた文字探しをしたりして、おもしろがる。 それもだんだん強がりに過ぎなくなって、やけっぱちになったり呆然としたり。 そして言葉がなくなって不便さもきわまり、さて行き着くその先は。 言葉が不自由になるにつれて、文章としては滑稽で笑いを誘うのに、その心は悲しみに暮れている。 このギャップが、泣き笑いを誘う。 不自由な言葉の中では、エロティックなシーンでも、楽しいような脱力するような、奇妙な感覚を呼び起こす。 まさに悲しきエンターテイメント。 読めば読むほど、題名の秀逸さに驚かされる。 | ||||
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使える言葉と、その言葉の文字が名前に入った物質が次々と消えていく。 凄いことやってると思うが、読んでみるとめんどくさいだけ。 | ||||
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まず『難しい文章!』と最初から思いました。でも一章の最後で登場人物が『気付いていたかい?もうすでに一文字消えてるんだ』って言葉で、やられた感がありました(笑)『五十音が段々消えてく』ってのは知ってたけど、まさか既に消えてたとは。一体どの文字が消えてたのかちょっと探したりして。こんな感じで最初はワクワクするんです。それが文字が消えるにつれ、いたはずの人が消え、主人公もその存在を忘れる。また消えたか。でも誰が消えたのか分からない。実際に小説から文字が消えてく空しさ、そして主人公が感じる虚しさが伝わって来て、なんとも言えない気分になります。こんなにも切ない『実験小説』が他にあるだろうか。そして最後の一文字になった時、あなたは何を感じる? …とまぁ、書いていて訳分からなくなりましたが(笑)途中文字が減るせいで、言い回しがしんどくなってきて、読むの辛くなります。でも最後まで読みたいと思ってしまう小説です。 | ||||
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音が消えたとき、音をもつ”言葉””認識””概念”も残像へと変わり、消えていっちゃうこの話。 ”あ”が消えれば、”朝”が消え・・・ 文章ももちろん消えた音を除いた文章で書かれています。 一見、トリッキーな作品なかと思いきや、消えた言葉が持つ”価値”などを無意識に再認識する、という 意味合いもあり深い作品でした。 一章、二章、三章の構成のなっているこの作品ですが、 ・一章は『日常への残像』 ・二章は『実験的な感情描写』 ・三章は『ある言葉で物語を描く語彙のすごさ』 であると個人的に思います。 ただ、私が文学作品をあまり読んでいないため、三章は一章のテーマが若干薄れ作家の文章力を主人公に表現させたような気がします(もちろん使える音が減ってますけど・・) 最後まで読んでみての感想としては、 言葉からもたらさせる感情と言葉自体への感情が違う、ということが私にはとても新鮮でした。 | ||||
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氏の作品と言うのは多くがエンターテインメントやドタバタを強く意識してあり、作者自身の心情や自己表現などといった表現者としてのエゴの部分を非常に制限されたものばかりだった。けっして読者に心を開かず、奇想天外なアイデアで楽しませる、圧倒する、驚かせる。それは氏自身の徹底したサービス精神であり、身辺小説を主とする既存の日本文学への痛烈な皮肉でもあったろう。 今作品は言葉が消えていく世界という究極の虚構世界を舞台にしており、一見すればこれまでの氏の作品同様、筒井節が遺憾なく発揮された作品に仕上がっている。作品の着眼点、そこから派生する作品構造など、言葉の専門家たる小説家が為し得る知的ゲームの臨界といった出来栄えで、非常に野心的、刺激的だ。言葉がなくなり制限されゆくなかで、文体は柔軟に変化し、後半、言葉がほとんどなくなった世界では限られた音を重ねるため、文章が詩のように韻を踏む文体になり、ぎこちなく、それでも止まることなく物語が進むそのさまは、まるで電池の切れかけた玩具の車が懸命に走り続けようとしているようで、滑稽でもあり、また切なくもあった。 しかしそういった超虚構世界を舞台に選んだにも関わらず、今作はぎゃくに氏自身の内面の吐露がいちばん色濃く出る結果になった。それが非常に興味深い。両親との関わりや自分の過去、文学観など、これまでになく自身の内面に踏み込んでいる。言葉が制限されるなかで、内面の吐露がぎゃくに制限を緩めたのだ。そんななかで語られる「弱いから反抗するのだ」「一生反抗だろうな」などの言葉は涙が出るほどに切ないし美しい。氏が一見悪ふざけともとれるような小説を書き続けてきた裏に、痛切なる決意があったのだと思うと、氏の過去作品のどれもに新たな感銘が生まれてくるのだ。 | ||||
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「言葉狩り」問題で作者が断筆宣言した当時、「言葉にある種の制限があった方が逆に作家の文章表現は高度になるのではないか」との趣旨で断筆を批判した文化人がいた。 おそらく、この作品を読んでいなかったのであろう。 言葉にある種の制限が強制的に加えられた場合、その制限の度合いが緩ければ、文章表現で豊かな言語世界を築き得るが、一定限度を越すと作品内世界がどんどん崩壊していく事を、作者は断筆以前に、この作品で実証していたのだ。 筒井康隆は、なぜ一度断筆するに至ったか、を考えながら読むと、いっそう哀しくなる傑作。 文庫版の解説は、こうした点を全く見ていない揚げ足取りに過ぎない。 | ||||
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実験的なもので好きずきではあるが、その技術と発想にはうならされる。 ちょっと中だるみしているという感じもあるが、ラストは圧巻。 タイトルのでもある、消えてしまった「かつて娘だったような気が するもの」の「残像」に「口紅」を、という発想は、残酷さと切なさが 交じりあって感動的でさえある。 あと10文字~5文字で仮名が全て無くなる、というくらいの時が 一番面白いのでは? | ||||
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SFで怖い小説ってたくさんありますよね。宇宙人が攻めてくるといった古典的なものから最近だったら遺伝子技術云々というものまで。この本の作者の筒井さんはもともとSF作家として始められた方なんです。かといって、この本がSFだ、といっているわけではなくて、けれどたぶんにそういう要素はあると思います。この小説の中ではほかでもない言葉が消えて言ってしまうのです。一口に言ってしまったけれどこれって恐ろしいでしょう?だって、そしたらまずなにより小説が存在しなくなってしまうのですから。そう、少しずつ言葉が失われていくのです。この言語的、文学的大実験の世界へあなたもどうぞおいでくださいな。 | ||||
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最初の章は、『世界から「あ」を引けば』であり、以後、この小説に「あ」の文字は現れない。この章で、筒井康隆を連想させる作家と評論家が登場して、"言葉が消え、その言葉が示していたものが世界から消える”ルールの設定がなされる。章が進むにつれて、どんどん言葉が消滅していく世界。第2部に入るときには、すでに28文字が消失している。そして、凄いことに、単に文字が消えていくことに汲々とした物語ではなく、文字が消えることに哀しみを感じる感動的な物語になっているのである。奇跡のような実験小説の傑作。 | ||||
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