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石の血脈
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【この小説が収録されている参考書籍】
石の血脈の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.09pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全6件 1~6 1/1ページ
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1963年に新人賞公募で3席に入選デビュー、その8年後に初の書籍発行で短編集と長編を同時に出版、その初の長編がこの「石の血脈」だそうです。最初から500ページ超の長編とはすごいですね。 吸血鬼伝説、イスラムの暗殺教団、狼男、狗神、クロノスの壺、古代の巨石信仰、サンジェルマン伯爵など、怪しい要素をふんだんに盛り込んだ伝奇小説です。 これらキーワードは好きなものばかりなんですが、結論から言うと作品としてはいまひとつでした。 ものすごい量の知識をお持ちなのはわかります。が、スケールの大きな話を作ろうとしていろんな要素をぶちこんだものの、実際の舞台は東京の真ん中だけ、半村氏が長い間バーテンダーの職をしておられたという夜のバー街、それにリッチな邸宅やマンション、大企業の役員室、そして怪しげな会員制クラブのようなところだけ。登場人物もほぼ日本人ばかり。広げた大風呂敷の中身は小さなものでした、という感になってしまいました。 数えてはいませんがたぶん3分の1強は濃厚なセックス・シーンでもうお腹いっぱいです。吸血鬼化するのに絶対必要な過程というのはわかりますが、こうも同じようなものを延々と繰り返されると・・。小松左京氏などもそうですがこの時代の作品にエロシーンは絶対必須のようで、逆にそれがすぐれた作品を損なっている気がします。悪い意味で昭和の男臭きついです。 吸血鬼が石化してケルビム化し、何千年の後に再生し永遠の命を得るというアイデアは、果てしない時間と永遠を感じさせて秀逸です。そしてそれは果たして完遂されるのか・・。最後の章はとても好きです。 セックス・シーンを削ってポイントを絞り、長さを半分くらいにすればよかったんじゃないでしょうか。妖しい欧米風を盛り込んでいるにしては泥臭い。個人的にはもう少し洗練された雰囲気が好みでした。 | ||||
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私とすれば、最期が納得いきませんのです。とはいえ、アトランティス、巨石、暗殺教団、吸血鬼、狼男等々、普通の小説にすれば、楽に3冊は書けるほどの材料を放り込んで、まとめ上げるなんて、博識で、相当の労力を要する、ほとんどすべてをかけるようなお仕事です。でも、その後。「産霊山秘録」、「妖星伝」などを書き、「雨やどり」で直木賞を獲ってしまうのですから、この作者の本当の力量たるや、物凄いものがあると思います。 | ||||
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怪奇小説。 主人公は建築の権威であった今井の弟子で、夏木建設の若き設計課長である美青年・隅田。隅田は夏木建設の専務の娘・比沙子と結婚し、その実力も広く知られ、将来を嘱望されている。夏木建設が伸びたのは東日グループの仕事を多く受注したからで、そもそも今井がのし上がったのも本人の実力もさることながら東日とのつながりがあったことも大きかった。 そんなある日、隅田の新妻である比沙子が失踪。隅田は、友人の会沢(建設会社社長で半分ヤクザ)の協力のもと比沙子を探す。その一方、野心家の隅田は、今井のように東日やその最大発注元であるQ海運につながっていければ、建築の世界でのし上がっていける・・という底意もある。 そんなとき比沙子が東日会長の三戸田にかくまわれていることが判明。また、今井は三戸田のためになにかを設計していたらしいが、それを引き継ぐべく隅田も三戸田のもとに出向する。ここで、学生時代の恋人である香織に再会。香織は三戸田すらしたがえている。隅田はこのとき飲まされた薬に導かれるように香織と交わり、香織にすっかり支配されてしまう。 香織はアルバニアに行ったとき、ケルビムとよばれる石人の蘇生に立ち会い、ここで病液を受け取った。この病液は性交を通して、隅田や三戸田、さらには、三戸田と交わった比沙子にもつぎつぎに感染し、彼らは異常性欲を得たあと、石化し、数千年の眠りを経て不死化することになる。ただし、近親相姦をすると獣性発現し、狼人間になってしまう。香織の実弟・次郎は狼人間にされている。狼人間は、命令に絶対服従。更に、Q海運のボスは、4000年前にケルビムから蘇生したサン・ジェルマン伯爵。今井はケルビムの安全保存のための施設の設計を要請されていたらしいが、これを断って自死したらしい。この設計を隅田が受け継ぐ。 組織の秘密を守るため、会沢は殺され、カメラマンで同じく隅田を探していた伊丹は香織と交わるが、伊丹は狼人間になってしまう。どうも異母兄妹だったらしい。隅田はすっかり不死のエリートになることに夢中で伊丹とは衝突。隅田の仲間たちは順次石化し、眠りに入るが、伊丹と次郎は「命令服従」のくびきを自己催眠で破り、つぎつぎとケルビムを破壊する。石化のはじまった伊丹も狼人間たちに殺されそうになるが、すでに石化していた比沙子の捨て身の妨害により一人だけ助かる。 暗殺教団とかシュリーマンの話とかいろんなものをあれこれ盛り込んでいるので、けっこうややこしい。 | ||||
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冒頭は面白い。何が始まるかとワクワクさせる。百メートルを六秒で走る謎の包帯男、建築様式に秘められた暗殺教団の歴史、アトランティスの壷とシュリーマン。 これらがどんな風につながっていくのかと楽しみにして読み進んでいくと、だんだん話が小さくなってきて・・。サラリーマンのバー通いと乱交パーティの話に落ち着いてしまう。 小さな建築会社の社長がひとり気を吐いて格好いい。彼をもう少し活躍させてくれたらな、と残念に思った。後半、男女の愛憎劇に比重が傾いたのが失敗かと思う。と言うのも、女性に全く魅力がないのだ。魔女か淑女しかいない。これも時代か。 前半が星五つ、後半が一つで、中間を取って星三つにした。 | ||||
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「ウソを吐くなら大きいウソを吐け」という作者の信条が良く出ている大作。プラトンによるアトランティス伝説、シュリーマンによるトロイの発掘、ミイラや仙人に代表される不老不死思想、世界各地に見られるストーンヘッジ等の巨石信仰、吸血鬼・狼男伝説、そして謎の暗殺教団。これらのエピソードを一纏めにして、現代日本に甦らせた雄大な構想の作品。 一応楽しめるのだが、構想の雄大さの割には後半、邪教にありがちな入信時の性儀式が中心に描かれ、肩透かしを食った。焦点が矮小化されて、せっかくのロマンが尻すぼみの感がするのである。結末に至って、急に不老不死計画が崩れるのも取って付けた感じがする。また、作品の本質とは無縁なのだが、幾ら小説だとは言ってもイスラム教において、実名を挙げて、スンニ派を正統派、シーア派を異端と記述してあるのは筆が滑ったとしか言いようがない。キリスト教の事を考えれば、例えばカトリックを正統派、プロテスタントを異端と言っているようなもので、宗教のような機微なものに対して記す言辞ではないだろう。 作者らしい構想の雄大さが楽しめ、後半更にロマンが拡がればより傑作になったと思われる作品。 | ||||
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つい先頃「産霊山秘録」を読んだのですが、久しく半村SFには手を着けてなく、本作も「アトランティス、暗殺集団、狼男、吸血鬼…」などと裏に書いてあるものですから手を出しました。物語は「アトランティスの壷」強奪事件から始まって、主人公の三隅、その友人の伊丹らを謎のプロジェクトに巻き込んでいく、といったところ。随所に古代文明やら古代宗教の名前が出てくるので、側にパソコン置いて、片っ端からGoogle検索しないとおいつきません。ただ初出が1971年なので、この人の作品にしてはやや生煮えな感じがしました。全1巻完結660ページですから大作は大作でしょう。本作に触発されて、フリーメーソンやら、メガリスやら、検索すると読みごたえアップですね。なら昔読んだ「妖星伝」、歴史物なら「どぶどろ」、現代(ていっても終戦直後)なら「晴れた空」の方が、個人的には評価は上です。¥990分、楽しめたかというとちょっとビミョーだなぁ。 | ||||
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