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無垢の博物館
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無垢の博物館の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.75pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全8件 1~8 1/1ページ
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漱石の苦悩と谷崎の耽美を併せ持つ傑作。 帯に書かれた『壮大な愛の墓標』という言葉が実にピッタリと嵌まっている。 正直な話、これほど上等な小説に☆ひとつのレビューが付くというのは理解に苦しむ。 リアリティーが欠けるだの、主人公が身勝手で偏執的で気に食わないなどという批評は、この小説の出来映えになんら瑕疵を与えていない。 この作家の指向として、本全体がまわりくどい文体ではあるが、じっくり読んで、長い螺旋階段を降りるように登場人物の心情に浸ることが楽しみかたの一つだと思う。 映画化とかしたら嬉しいなぁ。 | ||||
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面白いといえば、面白いです。 ただ、期待しすぎていたのか・・・ちょっと物足りない感はあります。 もし、イスタンブールに行かれる予定がある方は、ご旅行前に是非この本を! 現地にある無垢の博物館が、何倍も楽しくなりますよ! | ||||
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傑作『雪』に続く新作小説。前作同様、定評があるという英訳で、と思ったが長さに気圧されて翻訳で読みました。 遠縁の娘に恋をして、婚約者も捨て、彼女との愛の実現を求めて、すでに結婚してしまった彼女が両親と住む家を何年も訪れ続ける、良家の青年。その何年もの苦しい思いが、さまざまな角度から描かれ、ときには延々と続く描写に、読者も主人公とともに身もだえしながら読み続けることになる。 そして描かれているのは、愛、であると同時に、現代トルコの貧富の差、不安定な政情、そして近代化によって変貌していくイスタンブールの町、人々の価値観、セックス観、風俗。それらすべてに哀惜を込めながら、彼女の家から盗み出す小物、当時を伝える絵画、写真などのコレクションによって、博物館を作ることを主人公は志すようになる。 作者本人も実名で出てきて、前作『雪』を退屈な小説と言われた、などと書くお茶目な遊びもある。トルコ現代史に愛を込めた全体小説と、哀切なラブストーリーを同時に実現した佳品ですね。 | ||||
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トルコの一青年の波乱に満ちているがよく考えると誰でも身に覚えのありそうな生涯を描いた小説。著者は人間の一生は誰もが波乱に満ち、数奇な運命を辿るとものである、そしてその体験は誰もが一つの博物館になりうる程のものが詰まってると訴えたかったと思われる作品。人生は(無垢かどうかは人によるけど)博物館であると謳った傑作。 著者はノーベル賞を獲ったとかで難しそうで敬遠する向きもあるかもしれませんが、文章は明晰で話も明快であまり難しく捉えないほうがいいと思います。他にも翻訳があるそうなので、ぜひ読んでみたいです。 | ||||
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結局のところ、フェスンはなぜ死ななければならなかったのか? はじめからケマルはフェスンの望みを叶えるつもりはなく、むしろ邪魔をしている。ケマルとフェスンは確かにお互いに愛し合っているようにみえるが、その愛は小説の中の言葉を用いるならば、近代化したトルコの西洋化した愛であって、(上巻の犠牲祭の章にあった)イブラヒムの挿話によって示された、昔ながらの自己犠牲的な愛情表現ではなかった。その帰結として。 ケマルが偏執的にコレクションしたのはフェスンへの肉欲を抑えるためでもあるだろうし、フェスンもまた鳥の絵を描くことで、女優になる夢からの精神的束縛から逃れようとしている。その努力甲斐なく結局はお互いに諦める事はできなかったのだが、しかしそれはしかたのないことのように感じる。トルコが近代化されていく様を詳細に描いているため、彼らを悪人にすることはなく、罪はなかったと思えるはずだ。それゆえ、近代化への単純な批判以上の微妙な問題提起が表現できているように思う。 テーマ的な部分以外にも小説の技法として面白い要素が盛りだくさんです。ただ中盤の、ケマルの独白にややうんざりさせられ、読むのがしんどい箇所もありますが、最後まで読めばその苦労は報われるように思います。 それにしてもケマルの読者への最後のメッセージと333Pの「この言葉を本当に聞いたのかは、実のところ定かではない。」という箇所。なんとも深いことだろうか! | ||||
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結局のところ、フェスンはなぜ死ななければならなかったのか? はじめからケマルはフェスンの望みを叶えるつもりはなく、むしろ邪魔をしている。ケマルとフェスンは確かにお互いに愛し合っているようにみえるが、その愛は小説の中の言葉を用いるならば、近代化したトルコの西洋化した愛であって、(上巻の犠牲祭の章にあった)イブラヒムの挿話によって示された、昔ながらの自己犠牲的な愛情表現ではなかった。その帰結として。 ケマルが偏執的にコレクションしたのはフェスンへの肉欲を抑えるためでもあるだろうし、フェスンもまた鳥の絵を描くことで、女優になる夢からの精神的束縛から逃れようとしている。その努力甲斐なく結局はお互いに諦める事はできなかったのだが、しかしそれはしかたのないことのように感じる。トルコが近代化されていく様を詳細に描いているため、彼らを悪人にすることはなく、罪はなかったと思えるはずだ。それゆえ、近代化への単純な批判以上の微妙な問題提起が表現できているように思う。 テーマ的な部分以外にも小説の技法として面白い要素が盛りだくさんです。ただ中盤の、ケマルの独白にややうんざりさせられ、読むのがしんどい箇所もありますが、最後まで読めばその苦労は報われるように思います。 それにしてもケマルの読者への最後のメッセージと333Pの「この言葉を本当に聞いたのかは、実のところ定かではない。」という箇所。なんとも深いことだろうか! | ||||
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パムク待望の新作をさっそく手に入れて読み始めてみると、 どうやらこれは不倫の愛の物語であるらしい。 イスタンブルの裕福で軽薄な青年実業家ケマルは、 非の打ちどころのない婚約者との結婚を目前にしながら、 ふとしたきっかけで遠縁の美しい娘フュスンとの情交に溺れていくのだが、 上巻半ばの盛大な婚約式の場面を境に物語は突然様相を変え、 『新しい人生』や『黒い本(The Black Book)』でのように、 主人公が失われた恋人を求めて彷徨う探索の物語と化す。 ところがそれだけでは終わらないのがこの小説の怖いところで、 絶望的な不倫の愛として始まったはずの物語は、 いつしか平凡な家庭の団欒の中に何食わぬ顔をして入り込んだ 偏執狂的な蒐集家の物語と化していくのだが、 このいささか冗長でグロテスクにすら思える部分にこそ、 「人生は何かの繰り返しで成り立っており、 その記憶をいかにとどめるかで人は幸福にも不幸にもなりうる」という、 パムクが本来描きたかった主題が隠されているのだろう。 ただ、ケマルはそれで幸福でいられたとしても、 フュスンはどうだったのかという一抹の疑問は残る。 結局のところフュスンは、日々の積み重ねの記憶の中に ケマルのようには幸福を見出せなかったように思えるし、 彼女に指摘されるまでケマルはイヤリングに気付かない。 それでも人は執拗に記憶を追い求め、 自分だけの「無垢の博物館」を築こうとするが、 そこには記憶をめぐる認識の非対称性が横たわっている。 私はこの小説をそんなふうに読んだ。 | ||||
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パムク待望の新作をさっそく手に入れて読み始めてみると、 どうやらこれは不倫の愛の物語であるらしい。 イスタンブルの裕福で軽薄な青年実業家ケマルは、 非の打ちどころのない婚約者との結婚を目前にしながら、 ふとしたきっかけで遠縁の美しい娘フュスンとの情交に溺れていくのだが、 上巻半ばの盛大な婚約式の場面を境に物語は突然様相を変え、 『新しい人生』や『黒い本(The Black Book)』でのように、 主人公が失われた恋人を求めて彷徨う探索の物語と化す。 ところがそれだけでは終わらないのがこの小説の怖いところで、 絶望的な不倫の愛として始まったはずの物語は、 いつしか平凡な家庭の団欒の中に何食わぬ顔をして入り込んだ 偏執狂的な蒐集家の物語と化していくのだが、 このいささか冗長でグロテスクにすら思える部分にこそ、 「人生は何かの繰り返しで成り立っており、 その記憶をいかにとどめるかで人は幸福にも不幸にもなりうる」という、 パムクが本来描きたかった主題が隠されているのだろう。 ただ、ケマルはそれで幸福でいられたとしても、 フュスンはどうだったのかという一抹の疑問は残る。 結局のところフュスンは、日々の積み重ねの記憶の中に ケマルのようには幸福を見出せなかったように思えるし、 彼女に指摘されるまでケマルはイヤリングに気付かない。 それでも人は執拗に記憶を追い求め、 自分だけの「無垢の博物館」を築こうとするが、 そこには記憶をめぐる認識の非対称性が横たわっている。 私はこの小説をそんなふうに読んだ。 | ||||
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