シンコ・エスキーナス街の罠
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私にとってのバルガス=リョサ第2弾。これはかなり面白い小説でした。20世紀末のペルー~政情不安定でゲリラ組織によるテロ・拉致が頻発する中で沸き起こる、ある財界著名人を巡るスキャンダルと殺人事件・・・アルベルト・フジモリ大統領初め実在の人物が何人か出てきますが、これはあくまで小説。しかし、ちょっとミステリーじみた展開と、一方での官能的描写などは読み応えたっぷり。南米文学とはいえガルシア=マルケスのような幻想的で摩訶不思議な世界ではなく、私の感覚ではかつての流行作家:フォーサイスなどに近い。そして、ここで描かれる「国家権力による政敵・報道弾圧」は、基本事実に依拠しているようで、私は韓国の朴正熙政権時代をも思い起こします。 著者のバルガス=リョサ自身も、1990年に新自由主義的政策を掲げて大統領選に出馬し、決選投票でフジモリに敗れていますから、何かと因縁を感じる作品でもあります。ちなみに「シンコ・エスキーナス街」は首都リマに実在する、「かつての植民地時代の繁華街~その後はかなりアブナイ地域」らしいです。 しかし、バルガス=リョサ~面白いわ!私は2作品を読んですっかり気に入りました~(*^^*) | ||||
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ヤバい状況から脱するために権力者に立ち向かう貧者と、欲望のおもむくまま同じ過ちを繰り返す金持ち。 この小説から受け取ったメッセージは、自分の命やキャリアが危険にさらされた時に、人はどんな選択をするのかということ。 | ||||
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本書は、サスペンス小説。リアルで、実話風の推理小説。 なので、読者は、読み進めるうちに小説であることをつい忘れ、 本当の出来事が書かれているように誤解し、信じてしまいそうで、こわい。 しかし、本書冒頭で、作者「バルガス=リョサ」は注意喚起しています。 「展開される出来事は事実とは一致していないし、作者は常に作品において絶対的自由を有している」(6頁) 要するに、実話ではない、ので誤解しないでね、と読者に語り掛けています。 この話は全部真っ赤なウソだからね、信じないでね、と読者に小声でこっそり教えてくれています。 うまいなあ、こういう出だし。逆説的で。 この本に書いたことは全て、身の毛もよだつ真実である! 当事者しか知らない恐るべき真相! と大声で語る暴露本ではない、ようです。 ドキュメンタリー風フィクション。 最初の一文は、「目が覚めたのか、それとも夢を見続けているのか?」(7頁) 現実なのか、夢なのか、どっちだか分からないことを書いたので、 あらかじめお断りしておきたい、というようなことを言われると、 よけい信じちゃいそうです。 現実の真相が、ウソの中にこっそり混ぜ込まれているような気がして。 とは言え、実話であるはずがないことを明示する「出だしの一文」です。 原書タイトルは、『Cinco esquinas』 「五叉路」(274頁)という地名。 「五つの通りに由来している」シンコ・エスキーナス街の名前。 ややこしい、出口の分からない、迷ってしまいそうな「五叉路」が、この小説の舞台です。 二十世紀の前半までは、そこは「犯罪のない美しい歴史の街」だったのだが…、 二十世紀の後半になると、「腐敗と退廃が支配している」ペルーの「リマ市の中で最も危険な地域」 この小説の時代背景は、1990年から2000年までの「フジモリ政権時代」 作者は、実在の人物に着想を得て何人かの登場人物を創造しており、 名前もそのまま用いているため、リアル。リアル過ぎるくらい、わざと正確? 作者「バルガス=リョサ」は、 当時の状況を「鋭いタッチで再現している」(269頁、「訳者あとがき」より) というのですから、読者はいつのまにかフィクションと歴史的事実を混同して しまいそうになります。 そんなこんなで、読者は、現実的な臨場感たっぷりな小説の流れの渦に意識を失って、 自然体で巻き込まれていけます。 裏表紙の「見返し」の作者の顔写真は、 「どうだった? フィクションを楽しんでくれたかな」 とでも言ってるみたいに、ニンマリほほえんでいます。 《備考》 訳者の「田村さと子」さんは、「訳者あとがき」に、 「作品の頂点をなしているのは第二十章であろう。バルガス=リョサ独自の、異なる物語と時間との不連続性を調和した文体で絡み合わせて語りながら、一つのフィクションの世界を創造している」(270頁) と書いています。 ということで、第二十章「つむじ風」に注目し、読み直してみました。 なるほどね。 「目が覚めたのか、それとも夢を見続けているのか?」(7頁)、 夢と現実(うつつ)の境界不明の幻視世界がこの本(章)の中に現れていました。 権力と金と性の欲望に現を抜かす悪党たちがめちゃくちゃに絡み合い、 権力と暴力がよじれ合って、テロが渦巻いているペルー、そしてリマ。 著者「バルガス=リョサ」の政治・社会状況のえがき方があまりにもリアルなので、 あらかじめ、この本の物語は全部フィクションだよ、と念を押されていたにもかかわらず、 怖くなりました。暗闇の中に流れる血は見えないので。 | ||||
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3年前に発表されたそうだが、リョサの存在感相変わらずと云った長編。 二組の夫婦と自分をジャーナリストのはしくれと想っているゴシップライターの女を中心に展開する物語で、最後はペルーに政治的大変動が起きる。 圧巻はクライマックス直前、夫々の登場人物たちの進行場面、場所は勿論みな異なっているのを一つに並べて描いている所で、リョサはまだまだ健在なりと云う処か。 感慨深いのは、悪役が大統領の側近なのだが、その大統領、後に逮捕までされた人物と最初に大統領選を戰った相手がこの作者であると云う事。こうしてこの作品を読んでいると、本人には悪いか゜矢張り大統領選に敗れて良かった氣がする。 | ||||
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2016年、リョサ80才の作品である。80才になってなお、衰えない創作意欲はファンとしては嬉しい限りだ。 今作も、ペルー社会の闇、権力との闘争、テロ、エロス、実験的な技法などのリョサらしいテーマやモチーフが随所に見られる。 社会的な追求だけで終わらせずに、これからどうなるのか? といった物語の面白さや緊張感も保たれた、非常に読みやすい作品だ。 リョサの他の作品もそうだが、様々な登場人物が現れては錯綜して行き、そのバラバラのパズルのピースが徐々にハマって行く快感もまた味わえる。 しかしながら全盛期の圧倒的な作品と比べれば、かなり劣るというのが正直な(ファンとしては悲しい)感想でもある。先ほどパズルのピースと言ったが、この作品はそのピースがかなり大きい。 まるで長編小説の第一部だけを読んだような物足りなさも感じる。これから面白い所が始まるんじゃないのか? というのが率直な感想だ。 この作品で一番謎めいていて、一番悪辣で、一番魅力的な人物がほんの端役で終わってしまう。パワーのあった頃のリョサなら、この人物の視点も最初から物語に盛り込ませていた筈だ。 とは言っても、やはり面白いのは面白い。過去のヘビー級の傑作を知っているから、どうしてもハードルが上がってしまうが、それらを知らずに読んだと思ったら十分満足できる作品である。 特に後半に出てくる、リョサお得意の会話ごとに人物や時間が目まぐるしく変わる手法は読んでいて気持ちがいい。しかもたっぷりある。最近の作品ではこの手法を使用しないことが多かったので、これを読めただけでも私としては満足だ。 ここからは蛇足になるが、翻訳に対して一言。 会話のリズムがかなり悪いように感じられた。突っかかるような、下手な役者が棒読みしているような違和感が多かった。声が生きてないのだ。 私が神経質なだけなのかもしれないが(むしろそうであって欲しい)、どうしても気になったので、偉そうに書いてみた。会話以外の地の文に関しては、何の問題もない。とても丁寧な文章で非常に読みやすかった。 以上、蛇足でした。 | ||||
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