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雪
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雪の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.03pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全38件 21~38 2/2ページ
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ドイツに亡命していたトルコの詩人が祖国に帰り、少女の自殺が多発している町を調査するが・・・というお話。 トルコの陥っている政治と宗教の相克の凄まじさが、日本のそれと比較にならないくらい複雑で入り組んでいるのが痛いくらい判る小説。たかがスカーフをまくかどうかだけで自殺したりするのが、信仰心のない私のような世俗の塵芥にまみれたいいかげんな人間にはよく判らず、宗教というものがいかに人間にとって心の桎梏になりうるかが不可解でもあり壮絶だな、と思いました。この政治/宗教の部分が結構複雑で理解しにくくもありますが、訳者あとがきで親切に解説してあってなんとか読み切れました(訳者の方ありがとうございます)。 そこに人間の営為の根本である恋愛を絡めることで、著者はこの小説に普遍性をもたらすことを目論み、見事に成功しているように感じました。 美しくもあり、時には汚れ、迷惑でもあり、脆く儚い属性の雪がタイトルの「雪」の政治、宗教、恋愛、詩に対する暗喩ではないかと思いましたがどうでしょうか。 そしてどんなお話を書いても圧倒的に面白くなってしまうパムクの真骨頂は今作でも健在。他の作品でも読んで思いましたが、この人の場合殆ど恋愛部分がプロットの牽引役になっているのは偶然なのか、意図的にそうしているのか、人間が逃れられない宿業との信念があるのか、パムクを読む上で理解の一助になるのでは。 ここ20年くらいの世界を見渡して説話芸術においてこれほど面白い作家を私は知りません。更なる紹介に期待します。また、私事ですが雪の降る季節にこのような小説を読めたのも僥倖でした。 | ||||
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最近のハヤカワepi 文庫はヤバいですなあ。 爆発寸前というか。 天下取りマヂカというか。 どんな人たちが編纂してるのかを知りたいくらいだ。 出ないかな。 「BRUTUS 、ハヤカワepi 編集部特集号」(880円) さて、冗談はさておき、ほんとうに待望の、というか予期せぬうれしい発売である。 パムクの「雪」である。 装丁も美しいのである。 ちょっと立ち読みしたらバスバス突き刺さるセリフが溢れかえっていたので下巻まで買ってしまったのである。 実はまだ読み終えていないのである。 なんやろ、ハードカバーで立ち読みしてもぜんぜん来ないのに、文庫版やどバチバチおもろそうな本てあるよね。 あれですわ。 どれやねん。 えーと、内容は、パムク初の政治小説である。 ひとつ引用しとこうか。 「神に見捨てられたら最後、その人を待っているのは孤独だけです」 、、、、、、、、、後は推して知るべし。 、、、、、、、、、いやムリやろ! | ||||
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半分ぐらいまで読んでいましたが、もういいかという感じで、切り上げるように早読みで読み終えました。もともとが、トルコに行ったことがあったので、興味を持った本です。トルコに行ったときも、この地方はやはりなかなか入れない地域でした。デノミがされ、EUにも微妙な感じで関わり、トルコ語であり、イスラムでありながら政教分離であった、かの国は、まだまだ問題がいろいろとあるのでしょう。クルド人問題もありますし。Kaの行動も不審でしたが、起る出来事も不思議。イスラム教への回帰の考え方も出てきており、日本人には少し分からない問題も多そうです。今思い出すと懐かしい小説ですが、読んでいるときは結構かったるかったです。 | ||||
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とにかく翻訳が悪く読むのに苦労します。 出版社もよくこの訳でOKしたものです。 ぜひ、きちんとした翻訳で再度読みたいので検討ねがいたいです。 | ||||
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翻訳が原作の良さを潰しています。読み進めるのには我慢が必要。新たな日本語版を心待ちにしています。 | ||||
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著者は非常に真面目な方なのだと思う。本作『雪』には遊び心が無く、ひたすらに大真面目な世界が描かれる。そして、テーマは「民族とムスリム」という下手な批判が許されないタイプのものだ。これまでも幾つかのレビューで記載したのだが、僕は純文学であればこそ、絶対に面白くなけれならないし、リーダブルでなければならない、と考えている。小説(純文学)の原則は文章の芸によって物語られた事が、すべての規範にならざるを得ない。「純文学は芸術です」確かにそれはそうなのだろう。だかそんな事を言ってみた所で、小説が下手であれば-これは断言したい-お金を貰う資格は無い、と思っている。そして問題の核心だが、文章が余りに酷過ぎる。無論トルコ語など読めない僕に原書を当る事はできないし、原書がそうなのか訳者の責任なのかは解らないが、これほどアン・リーダブルな文章を読んだのは記憶にもそう無い。〜政治性と民族という極めてデリケートな問題を扱っているため、下手な批判は差別につながりかねないし僕のレビューもその轍を踏んでいるかも知れない。だが、本作は純文学の衰退に関わるとても大きな問題を抱えている、と締めくくりたい。 | ||||
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作品のよさについては、皆様のレビューにゆずります…。 こんな評価の理由は、私にはこの訳文の読みにくさが我慢できなかったということです。 全体として皆様はこの本に対し高い評価をされていますので、一般的にはそこまで読みにくい文ではないのかもしれませんが。 何度も文頭に戻って主語を確認したり(それでも主語が不明だったり途中ですり変わったりするんですけど)、 私に集中力がないのかもしれないですが、日本語を読んでいるのになんでこんなストレスを感じるのか、驚くほどでした。 自動翻訳機にかけたのでしょうか? この文体が、オルハン・パムクの特徴ある繊細なものなのだ!それをそのまま表現しているのです!なんて言われたら、 納得するしかないです。私はトルコ語はできませんし。 きっと、正確に読みやすく訳すのは非常に難しいのだと思いますが…でも…、 こういった読みにくい訳でしか手に入らないなら、次は時間がかかっても英語で読もうと思います。 | ||||
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素晴らしいの一言。出会えて良かった!本気で思った。無人島に行くならこの本を必ず持っていく。書き出しから最後まで、冷静で安定していて魅力されました、書き出しから最高でしたし。日本人も、話題性より質の高い作家が出てほしい、もうそんな本必要ないくらいに思えた。 | ||||
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イスラム社会の現実感、空気感と共に進行する作品の緊張感は 他の方々の言われる通り素晴らしいと思うのですが、 それにしてもこの(私にとっては愚)訳は苦しかったです。 物語のリアリズムに触れる意味が大きいと思えるだけに残念。 新訳する必要があると思う。 なんか我慢し続けて読んだ、という思いが作品の★8つに対して 訳文がマイナス☆5つ。 | ||||
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けっこう時間がかかった。重厚な本だ。そして今の時代の本で、トルコという国の本だ。 しっかりとその土地に根付いた物語で、ヨーロッパとトルコの関係、イスラム圏の中でのトルコの位置、トルコの国内事情がよく判る。 この本を読み始めて改めてグーグルでトルコという国の位置を確かめた。イラン、イラク、シリアに接し、さらにグーグルで地図が描けない国に接し、ヨーロッパ側ではブルガリアとギリシャに接している。そして舞台となる実在する町、カルスも眺めてしまう。 読んでいる半ばで映画「ペルセポリス」も見た。スカーフの存在の重さ。コーランに書かれていることと今の時代を生きることの乖離。決断の重さ。ヨーロッパに接しているからこそ起きる矛盾。 様々なことを包み込むように雪は降り、やがて止む。その3日間の出来事だが、それはとても重い。クーデターを中心にして不思議な渦が生まれていく。2項対立ではなく、様々な立場があるため、渦は思ったようには動かない。主人公は巻き込まれていく。 トルコを、イスラムを知るのにいい本だと思う。知識としてではなく、現実の有様を見て知るのに近いものだと思う。 | ||||
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詩を書くことにしか興味が無い、主人公Ka。そのKaは、作者オルハン・パムク自身のスタンスを反映させているように私は読んだ(『父のトランク』でも、そのようなことが示唆されていた)。本書のメインテーマの一つともいえる、トルコという文化の境界的特性と、そこにおける筆者の置かれる立場(西洋的でありながらも東洋人)を巧みに作品として結晶化している。 安易にいずれかの立場に拠って立つのではなく、引き裂かれた状況下でKaは迷走する。主人公が特定の宗教や政治的立場に身をおいていないからこそ、この作品は、遠く離れた日本の我々にも共感を与えるのだ。 筆者の筆力も相当なもので、絶え間なく振り積む雪のように次々と新たな事件が起こり、読者を決して飽きさせない。構成も堅牢で、一々頷きながら読んでしまった。 ところどころに光る、筆致のクレバーさ、そして著者の真摯さは、信じて読むに価する作家であると感じさせた。ドスト、プルーストなんかの匂いも感じさせてくれる。 ただ、散散言われているように、やはりこの日本語訳は、読書の流れが滞る。校正ミスも目立つ。しかし半分くらいまでくれば、後はジェットコースターのように展開が進んでいく。そこまでの辛抱だ。 | ||||
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はじめから終わりまで憂えるトルコとトルコ人がぎっしり詰まってました。 他のレビューを参考にして購入したため、読み始めは、誤植や訳のアラ探しの ようなことも頭のどこかで行っていましたが、そのうち忘れて小説の世界に 引き込まれていました。 何も解決してはいないのに、読後は嫌な気分になることもなく、 遠い異国の地方都市に思いを馳せてしまいます。 トルコ人作家がトルコとトルコ人を客観的に見てて、 ひとつの物語として楽しめるお勧めの本です。 | ||||
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あまり小説を読まない方ですし、特にこのような厚い本は読まないのですが、これだけは吸い込まれるような感じで一気に読んでしまいました。遠い世界なのにどこか身近な感じのする不思議な小説でした。 | ||||
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良質な文学作品は、きめの細かい炭酸飲料のように私の心の隅々にしみわたる。しみわたったあと小さな気泡をたくさんうみだす快感にしばらく身をゆだねていたいと望んだ。特に男の恋愛に対する率直な文章は、読んでいて恥ずかしいという感情が実は自分の心のどこかに触れているからだということを理解したあとは、なるべく恥ずかしさという壁を張り巡らさず、そのままの感情を自らに問うべきだと思い直した。恋愛感情によって極度なまでに盲目になりながらも、それゆえに繊細な心の状態を引き起こし、霊的ともいえる「詩がやってくる」という感覚は、自らの人生においても起きたのではないか。自動筆記のように言葉があふれ、それをなんとか書きとめていくだけが精一杯だったということがあったのではないか。しかしながら、それをこのような小説の形に完成させられるオルハン・パムクの力量に読後は感嘆するしかない。真実があいまいな形で過去に消え去ろうとするぎりぎりのところで、ミステリー小説としても読める解がキーピースとして与えられ展開の妙に引き込まれる。私たちが恋愛を考えるとき、宗教を考えるとき、幸福を考えるとき、故郷を考えるとき、芸術を考えるときに、複雑に折りたたまれた細かな感情の襞にこの作品の気泡は質の高い刺激を与えてくれるのである。 | ||||
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以前、『わたしの名は紅』を読んだ時にも、 隅々まで計算し尽くされた構成の巧みさが印象に残ったが、 本書『雪』の構成は、おそらくそれ以上に緻密だと感じた。 いちおう純文学のカテゴリに入る作品ではあるが、 本格推理系の作品が好きな人は、大いに楽しめるのではないかと思う。 主人公の詩人Kaが、雪の降り続く地方都市カルスに閉じ込められ、 一種のクーデタに遭遇するという設定自体は、 どこかカフカの『城』を思わせるが、 本書は同時に、現代における最大の主題の一つとしての イスラーム急進主義と暴力を扱った政治小説でもあり、 読者の意表を衝く筋運びの面白さで読ませるような、 骨太のエンタメ系の魅力をもたっぷりとそなえている。 数日間の出来事を、単に経過順に整理して記述するのではなく、 「心的リアリティ」とでも言うべきものに沿って描いていく文章は、 決して読みやすいものではないが(ちなみに、設定や主人公の名前以上に、 文章の拠って立つ論理そのものが、カフカによく似ていると感じられる)、 全篇を貫く緊張感がダレることは一度もなく、 いちど読み始めれば、むしろ中断するのが惜しく思えるはずだ。 (といいつつ、私自身は何度も短い休憩を入れながら、2日間で読んだ。) 他のレビューを見ると、訳文にはいろいろと注文もあるようだが、 今年刊行予定という『イスタンブル』や、その他の作品が早く読めるよう、 訳者の和久井氏には今後も頑張っていただきたいと思う。 | ||||
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小説とはいずれも交差点や「際」で紡がれなければならない。それがその運命というものであり、その存在意義でもある。 2006年のノーベル文学賞を受賞したオルハン・パムクは、本書『雪』によって、その命題を見事に達成している。小説とは、「中心」で歌ったり、叫んだりするものではなく、世界の片隅、周縁、際で呟かれるものなのだ。雪に閉ざされたトルコのいまや田舎町。しかしそこは隣接するアルメニアなどとの交通の場所でもある。パムク自身、アルメニア問題での発言で社会的制裁を受けたようだが、どこぞの島国の太平楽な作家たちとは違うよなあ。テレビに出て暢気に社会問題とやらについて発言したり、寺めぐりの旅行記でお手盛りの気散じをしたりといった奴ばらとは根本的に違う。 『テヘランでロリータを読む』という今年話題になった小説について、高橋源一郎はこういう社会・国家における作家はシアワセだといった類の発言をしていたが、これなどお気楽作家の 典型的なものだろう。少し説明するなら、社会的な危機状況のなかで、小説がその存在意義を高めている社会においては、作品は真剣に読まれる。この事態が作家にとってシアワセだというのだ。ほんとにゲンちゃんもシアワセなのね! 世のなかを見ろよ! 飢えない時代というが、そんなことないぞ! 人が死なないというが、どこに目をつけとるねん! ノーベル賞などというものが、あらゆる賞について回る愚劣さ、汚らしさから免れているわけではないが、逆に、この作品の意義がこの賞を受けたことで減じることはない。 | ||||
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トルコという国を見つめて来た私にとって、この小説の舞台がトルコの東の「カルス」という小さな地方都市、降りしきる雪の中で進められていく静かなロマンスや、この国で繰り広げられてきた思いがけない政治や宗教の切実な話が重い説得力を持って迫ってくる優れた本だと思う。 トルコの抱えてきた「クルド」の問題、トルコが掲げてきた「政教分離」、何気なく受け止めてきたそれらの事が実はその中で思いがけない矛盾を孕んでいたことなど・・・。 つい先日その「カルス」を歩いて来たばかり、あの美しい並木道や優しいパン売りの少年が目に浮かぶ。 旅先で知り合ったイギリス人女性は「カルスは何も無いくすんだ町だった」といったが、私も2,3度のカルスの認識は彼女と同じ感想しか持てなかった。 ところが今回のカルスの印象は歴史の残る美しい村だった。そこで展開される詩情漂う物語は只の物語ではなく、後ろに流れる歴史が切ない重さを与えている。 星1つ足りない評価は「翻訳」。文の流れが滞る。 | ||||
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オルハンパムックがついに日本語訳!この本は「唯一の政治小説」だそうで、彼のその他の本とはかなり毛色が違います。評価は賛否大きく分かれるようですが、単純に他の作品より読みやすかった・・・ミステリー的要素のためでしょうか。 結末は切ないです。「オリエンタル」な歴史上のトルコではなく、今のトルコの息吹が感じられます。 | ||||
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