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時の娘
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【この小説が収録されている参考書籍】
時の娘の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.18pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全72件 1~20 1/4ページ
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薔薇戦争の知識が浅く、イギリス人の同じような名前には混乱しましたが、それを差し引いても面白かったです。 今後似た事象を見たら「トニイパンディだ」って言いたくなりそう。 | ||||
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多くの人が知るリチャード3世像が、一枚の肖像画をきっかけに覆る。 怪我で病院のベッドから動けない有能な刑事が、ふとしたことから目に止まったリチャード3世の肖像画と、定着している悪人像との間の違和感から、歴史的事実を集めて歴史的評価を覆す過程が描かれる。定説となっているリチャード3世は、王位を手に入れるために子供だった甥たちをロンドン等で暗殺させ、権力を安定させるために言葉巧みに王妃を誘惑し、王冠を手に入れたのも束の間、正当な王位継承者に戦いで敗れ、逃げ損ねて殺される、というものだ。権力を手に入れるために欺瞞も暗殺も躊躇わず民に憎まれたと信じられているリチャード3世。ところが実は、家族思いで自分に厳しく、善政を敷いて国民に愛された、愛情深い男だった、ということを、作者は残された歴史的記録や手紙を結びつけて証明していく。 ベッド探偵である主人公は、一枚の肖像画を見て、判事の顔だと思う。それが極悪の犯罪者リチャード3世だと知って驚く。医師や看護師に見せると、それぞれの立場から、やはり、定説とは違った感想を述べる。そこで刑事は考える。歴史は権力者によって書き換えられる。リチャードを倒して新しい王朝を開いたヘンリーが、自分に都合の良いように側近に証言をさせ、罪を捏造してリチャードを極悪人に仕立て上げたのでは無いか。 もちろん事実は藪の中、何しろ500年前の話である。それでも、シェイクスピアやトーマス・モアの書いた戯曲や記述によって、リチャード3世の悪役像は歴史の中に、我々の頭の中に事実のように定着している。その恐ろしさ。繰り返し語られれば、嘘も歴史的事実となる。気をつけなくちゃ。 面白かった。 | ||||
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本が送られて来た時に、表紙と初めの10ページくらいが少しずつ折れ曲がっていだのが残念。表紙のリチャード3世の絵が特に大事なのに。 リチャード3世の遺骨を発見したおばさんの映画「ロスト キング500年越しの運命」を観てこの本を買った。内容はとても面白く、また訳もとても良い。江戸川乱歩や高木彬光にも影響を与えたという。しかも女性作家が男性名前で書いたといい、更にこの作品が1951年に書かれていて作者は次の年に亡くなっているというので驚いた。 | ||||
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「世界中のすべての印刷機が何年間か停止してしまったらどんなにいいだろう…」大衆の期待する通りの型にはめて書かれる書物に対する作者?の、この憤りは現代の出版業界にも当てはまる。当たりをとったテーマや内容までも量産体制で垂れ流し…さて、マンホールに落ちて入院生活を余儀なくされた警部は暇を持て余して過去に遡って二人の幼い甥を殺害したとされるリチャード三世の真実に迫ろうとする。歴史は時の権力者の都合の良いように書き換えられている。民衆は無責任に自分たちの信じたいことだけを信じようとする。伝聞ではなく残された事実だけをもとに仮説を繰り広げてゆくその面白さは抜群だが、エドワード・ヘンリー・リチャード誰が誰やら名前の泥沼にはまりこんで難渋した。 | ||||
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故・高木彬光氏も絶賛の推理小説。 ベッドディテクティブ。 ミステリー好きなら必読の1冊。 | ||||
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最近YouTubeで歴史系のチャンネルを聞き流すのが好きで、そのリチャードIII世の回に、うぷ主さんとやらが好きな本として挙げていたので興味を持ちました。 歴史の作られ方は近・現代のマスコミによる世論誘導や扇動と大差はない。 敗者は語る口を持たないのだ。 と、頭ではわかっていたことを実体験のように感じさせてくれる秀作だと思う。 日本人の自分にしてみるとコナン・ドイルやアガサ・クリスティものみたいなびっくり展開ではない。 丹念に丹念に、ぼんやりしている違和感を表出させていく。 結論が想像できている読者からすると少々まどろっこしい感じがなくもないが、この書籍がそもそもイギリス人読者を想定してると考えるとそれも分かる。 イギリス人にとってリチャードIII世は甥殺しの簒奪者だからね。 人間とは先入観からなかなか自由になれないものだから、リチャードIII世に明確なイメージを持ってる人は抵抗を感じながら読むことになる・・・その心を懐柔していくように一枚一枚と花弁がほころんでいく。 その過程が面白いなと思いました。 他の方も指摘されているように訳はちょっと読みにくいです。 描かれた時代と日本での出版時期を最初考えずにいきなり読み始めたので戸惑いました。 何年の作かとかを考えてそのつもりで読むとそんなに違和感はありません。 改めて権力者が書かせることや喧伝することには慎重になろうと思いました。 | ||||
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嬉しくて早速読んでいます。 | ||||
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リチャード三世に興味があります。 とんでもない悪党と言われているこの王様ですが、実態はどうたったのか? 傑物だったのか?それともすごい変わり者? この時代についての歴史を流れだけでもわからないと厳しいと思います。 百年戦争からの薔薇戦争の流れ、登場する様々な人物ですが、同じ名前がぞろぞろと出てきますし。 気になった点ですが、翻訳されている方はあまり歴史に興味ないんでしょうか、という点。 メリー・スチュアート → メアリー・スチュアート ヘンリー・チュードル → ヘンリー・チューダー 一応どの歴史書でも後者なんですが、どちらが正しいんでしょう。 リチャード三世のDNAを調べるとどうも血筋と合わないみたいな結果だったそうなのですが、 あれこれが面白いなぁと思います。 まだ読み始めたところなのでこれからの展開が楽しみです。 | ||||
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すぐに届いた。本は綺麗な状態。そして面白い。 | ||||
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細部には違和感もあるが(それは英米のこの手の本にはつきものだ。)話の骨格はさすがにこのジャンルの老舗ともいえる。 | ||||
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基本に英国誌があり、知識の前提に乏しい身にはついて行くのがやや苦しい部分がありました。シェークスピアのリチャード3世を読んでいたので、そのまま入れたところはありましたが。定説を覆して行くスリル感を楽しみましたが、途中からやや冗長な感を受けました。どこまで、この説が現在、受け入れられているのか気になるところですが、本当のことなんて誰にもわからない、歴史は作られるもの、というのが大外れしない見識も一つですね。 | ||||
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歴史推理物はこれがたぶん初めてでそれほど愉快なものに思えなかったのですが、 なぜか気になって購入し通読しました。 リチャード3世というとぼくなどは黒澤明の『蜘蛛の巣城』を思い出しますが、 定型化された悪役の権化が実はそうでなかったら…というお話。 この本の面白いところは訳者も指摘していますが、着眼点と推理の過程です。 歴史学者が鵜呑みにし誰もが教科書に載っていることを疑わなかったのに、 退屈で死にそうな入院した刑事がリチャード3世の肖像画を前情報なしで見た時の印象と、 伝聞で教えられた事とがあまりにも違っているのに驚いたのが出発点。 やがて「由緒正しい」教科書や歴史書を読み漁るうち、次々に矛盾点が見つかり、 どうもリチャードは王位継承者とされる2人の子供を殺したのではないと 確信を持つに至ります。 とはいえそこは警察官の端くれ、事実を調べてみないことには始まらんとばかり アメリカの留学生を助手に安楽椅子探偵を開始します。 問題は、当事者は遥か昔に全員死んでいる…ということ。 記されている記録は当時の為政者(すなわち第二の容疑者ヘンリー7世)の 都合の良いように書き換えられ、権威のある著者でさえ又聞きを採用する有様。 では、こんな頼りない手掛かりでどうやって真相を究明するのか…? そして調べが進むにつれ、問題の焦点が「行方不明の二人の王子はどうなったのか? 誰が彼らを殺したのか?」へ絞られてゆきます。そこで明かされるのは… ただ資料を読み漁るだけなのに、徐々に組み上げられてゆく状況証拠と 心理的推理の城が真犯人の動機や手段を解き明かしてゆくのはドキドキもの。 まるで犯人の背中に迫り手錠を掛けるようなサスペンス。 いくらリチャード3世が冤罪だったとはいえ、それはなぜ?どうして?どのように?は 通り一遍の歴史書を読んでも分かりません。「ある視点」を軸にそれまで 「動かぬ証拠」であったものがダイナミックに崩されてゆく痛快さは まさしく本格推理の名に恥じません。 ところで著者はスコットランド人なのですが、昔スコットランドで起きた 詐欺まがいの犯罪事件を痛烈に批判しているのは、本書の真骨頂であります。 この公平な目と思いやり、そしてユーモア。 この本を読みながら「いったい今日まで誰もが疑わず教えられて きた『トニイパンディ』はどれだけあるのだろう?」…と思うと、実に 嘘寒い気分にさせられました。自分はどれほど確信を持って 歴史を「知っている」のだろうか? もしもそれが根も葉もないどころか、悪意を持って書き換えられた ものだとしたら…そして、その事が原因で戦争やテロが起こるとしたら… 「自分が信じたい歴史」は無数にあるけれど、混じり気なしに 真実である歴史はそれほど多くないのかもしれません。 | ||||
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歴史ミステリの金字塔にして古典といえるパイオニア的一作。初読時にはとても感銘を受けたものの、二十数年ぶりに再読するとこいつがかなりヤバイ小説でした。 初めに通説とされるもの(本作の場合はリチャード三世による先王の王子二人殺害)を紹介してから、学説や文献へ疑問を投げかけ、真実はこうなのだと説明するという展開でして、読んでいるとなるほどごもっともと納得させられるのですが、よく考えると真実を保証してくれる根拠がまるで提示されておらず、昨今氾濫するトンデモ歴史本の論理展開そのままなのであります。いや、ホント、明治維新百五十年で大量に出版された明治維新見直し本(薩長史観否定本)と気味悪いくらいに似ているんですよ。権威をこてんぱんにやっつけることで溜飲を下げるという楽しさはあるのですが、どこまで検証が正しいかという保証は心もとなく、立場が変わったものの、一方的な主張で相手を攻撃しているという点では批判されている側の正史と大して違わないのですね。英国史に疎い読者には信憑性が判断できず、詳しい方の見解をうかがいたいところ。おまけに主人公のグラント警部、学術書よりも、読みやすい、一つのイメージを喚起させるということで歴史小説の方を好意的に捉えていたりして、このあたりも近年のトンデモ歴史の支持者に通じるところがあるような。そう考えると本作以降に乱立される「歴史の真相」(歴史の定説を覆す)モノのパターンを確立してしまったという点では功罪半ばする一作といえるのではないでしょうか。 ただ昨今のトンデモ歴史本とは一線を画するのは最後の最後で種本を明かしてしまい、詳しく知りたいならそちらを読んでよと振ってしまっていること(!)。 英国ではリカーディアンという人たちがいて、リチャード三世の冤罪を訴え、活動しているという話です。作者もいったいどこまで信用していたかは定かでなく、どうやら本書の執筆目的はオリジナルの新説を立てることでも歴史的事件を検証することでもなくて、世の中にはこんな説(歴史の教科書とは異なる説)もあるんですよとダイジェスト的に紹介することだったのではないでしょうか。 | ||||
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凄い面白いです!時間を忘れて危険(笑)シェイクスピアを知っていてリチャード三世をよく観て知ってる人なら尚更。安楽椅子探偵ならぬ病室ベッド探偵。まず始まりが奮ってる。熟練の刑事が病院に入院してくる。そして暇な彼はふと壁に書けられた一枚の画に着目する。リチャード三世の肖像画だ。そこから話が始まる!そんな物語です。 星5つ | ||||
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シェイクスピアの呪いも薄れ、遺骨が見つかったり、カンバーバッチがその血縁だったという尾びれまでついて、今ではすっかり汚名を返上しているリチャード3世ですが、本書が発表された1951年はそうではなかったんでしょうね。 負傷した警部が病室のベッドで歴史上の人物を推理するという設定。一介の警部が中産階級の教養人サークルに属している人間として描かれていたり、全編を通して漂う「もちろん、薔薇戦争の頃には、フランスはまだイギリスの一部みたいなものだった」と語ってしまうような香ばしい歴史観にも時の流れを感じます。 いま読んでも普通に面白いですし、ミステリーの裾野を広げたという意味でも重要な一冊だと思います。 | ||||
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歴史ミステリーは、読んだ覚えがない。安部公房の『榎本武揚』は、世に知られた榎本を裏切者として見たものだったから、あれは歴史ミステリーなのかもしれない。でも他には覚えがない。ぼくには。 戦後の出版。生まれる前の本。ハヤカワ文庫の初版が出たのが、42年前か。ぼくはその頃はドストエフスキーか山岳書ばかり読んでいた頃。ミステリには何の関心も持っていなかった。ハードボイルドにも。冒険小説にも。 本書は、犯人追跡中にマンホールに落ちて怪我をした警部が、入院中の退屈さを凌ぐために歴史資料をひっくり返して、子供二人を殺させた悪人として知られるリチャード三世の素顔を探る。肖像画を見ているとどうも殺人者という風に見えない。真犯人は別にいるのではないか? そんな直観が、彼を思わぬ歴史解釈へと引っ張り出す。警察捜査の手法で暴き出す歴史の真実、というところに本書の面白みがある。何せ30冊も増版を繰り返し、今なお、ミステリの傑作として名を遺しているのがこの作品なのだから。 さて入院と言えば、ぼくも今年の一月と二月に二度、半月ずつの入院を経験した。その時には、ミステリ小説を一日か二日で一冊ずつというペースで読み、退屈と闘わずに済ませていた。それぞれの本の中の事件が一晩か二晩で解決する。そのスピードで次から次へとミステリを読み漁っていた。 本書のグラント刑事は、何日も何日も同じリチャード三世の事件に関わり、一つの事件に対し何冊もの資料や歴史本を読み漁る。手伝いのアメリカ人学生や親しい舞台女優にも外部での調べ物を手伝ってもらいつつ事件を探る。歴史を探る。 ミステリ読者は次から次へと新たな事件を求めるのに、捜査を職業とするグラント警部は一つの歴史的逸話の向こうの真実を暴き出そうと執念を燃やす。まずこの違いが、本作なのであると思う。執念と的確な捜査力や推理力。何を見るべきか、誰を探すべきかを知っている捜査畑の眼で見た歴史的真実。そこが本書の魅力、と言っていいだろう。ぼくのようなただのミステリ好きではこの物語の主人公は務まらないのだ。 何よりも一般に知られている歴史的資料は胡散臭いものばかりで、不自然で理屈に合わないものばかり。再調査・再推理の妥当性を嗅ぎ取ったグラントと助手訳のキャラダイン青年の知的好奇心の行方にぼくらはおつきあいすることになる。勝者に綴られた歴史は真実を隠蔽する。本書冒頭にある「真実は時の娘」と言う言葉と本書のタイトルを結び付け、良質の歴史ミステリがかくして出来上がる。 本日、本業を終えたその足で駆けつけた札幌翻訳ミステリー読書会の課題書が、実は本作である。このような機会がなければ英国史に暗いぼくが本書と出会うことはなかったであろう。主催者の方々の、価値ある名作を掘削してくる選定眼には、ただただ敬服と感謝を表したい。懇親会の食事と呑み物と、そこで交わされた貴重な話題やご意見にも深い尊敬と感謝の気持ちを! | ||||
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イギリスの歴史なんて全然知らないので 検索に次ぐ検索で、ほんとそれに2時間くらいは費やしました。 そういう意味ではタブレットでの電子書籍は楽でしたね、ネット検索すぐできたので。 物語はそれなりに面白かったです。 歴史を疑うって大事だなぁと認識しました。 | ||||
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もともとこちらのレビューで気になっていた本でもあり、たまたまイギリスBBCのドラマ『ホロウ・クラウン/嘆きの王冠』を見る機会があって直後に読みました。手に取った最初の印象は「え?こんなに薄いの?」。歴史関係の本というと分厚いものと想像していましたが、意外にもコンパクトな本でした。以下、無知で素人の個人的感想です。 この本を読むにあたって、ドラマは、有名俳優が多数出ていたこともあって主要な役どころや親子関係などを顔で記憶でき、英国史を全く知らない私でも「あ、〇〇がやっていた役ね」と理解できたので役立ちました(逆に知識ゼロで読んでいたら、人間関係がちんぷんかんぷんで断念していたかも)。薔薇戦争のことも、このドラマで知りました。 なので、私のように歴史的背景を知らない人には結構おススメです。但し、シェークスピアの原作を映像化したものなので、リチャード3世は奇形で面従腹背、醜悪な人間としてこっぴどく描かれています(その役を、偶然か意図的か実際のリチャード3世の血統であるベネディクト・カンバーバッチが演じています)。 そのドラマの後だと、死後、数百年にも亘り汚名を着せられてきたリチャード3世の姿が哀れで切なくなり、「よくぞ名誉を挽回してくれた!」と本書に拍手を送りたくなりました。 ただ歴史に詳しくない者として、本書の中で見つけて行った証拠文献などの真偽を正確には判断できないため、「それが真実だと本当に言えるの?」と全面的には受け入れられないところもあり。そういった点で、ミステリーとしてはスッキリ解決、これが真相だねと私自身は信じきれなかったのが正直なところ・・・。これが日本の歴史なら、勘所を押さえることができると思うのですが。 しかし、歴史というものの偽造、ねつ造、そして卑劣さといった一面を知ることができたという点で非常に面白かったし、本書で語られたリチャード3世の姿が本当ならファンになりますね。 | ||||
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この歴史推理小説が傑作と言われていることは、ずいぶん昔から知っていた。 しかし、歴史が苦手な自分には楽しめないような気がして、敬遠していた。 このところ少し世界史を勉強して、もしや読めるのではと、手にとってみた。 読んでみると、本書で設定されている謎はシンプルなもので、恐れるほどのことはなかった。 邦訳版は、訳者の工夫なのか、最初にアンドレ・モーロワという人の「英国史」から数ページが引用されている。 準備としてはそれを読むだけで十分で、予備知識は全くいらない。 作中の登場人物は、警部をはじめ善人ばかりで、ほのぼのとした気分になれる。 カバーは、ロンドン塔を描いた旧版がいい。 しかし、現行版は、活字が大きいのはもちろん、二枚の系図を見開きに変えてあることに感心した。 細かい改善に、編集者の職業的良心を感じる。 | ||||
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数年前「リチャード三世の遺骨発見!」というニュースを知ってから、気になっていて読んでみたいと思っていたジョセフィン・テイ作の長編推理小説『時の娘』を、入手して読むことにした。 何十年ぶりかで読んだ漱石の『倫敦塔』も本書を手にすることに背を押してくれたようである。 漱石は、この随筆のなかでポール・ドラローシュの描いた「ロンドン塔の王子たち」から、この二人の少年を幻視しながら書いていたのが印象的だった。 本書は、ジョセフィン・テイが1951年(昭和26年)に、発表したグラント警部シリーズの一作である。 『時の娘』なぞという題名が不思議なので少し調べてみたら、フランシス・ベーコンの「真理は、永遠の娘であり、権威の娘ではない」という名言からの典拠であることを知った。 なるほど怪我で動けずベッドで探偵するグラント警部は、こともあろうに五世紀も前の歴史上の人物「リチャード三世」の真の姿に迫ろうとして思考を巡らせるのが本書のテーマである。 リチャード三世については、シェークスピアの戯曲によって極悪人という烙印を押され何世紀も世に喧伝されている。 「リチャード三世の遺骨発見!」のニュースを、あらためて読んでみたら、リチャード三世の名誉回復に血道をあげている歴史愛好家も大昔から存在していたようで、そのうちの一人(フィリッパ・ラングリー)が、リチャードの遺骨発掘(2012年9月)したことに貢献したことなどを知ったのである。 発見された遺骨は、DNA鑑定が行われた結果、2013年2月に遺骨はリチャードと断定され、「せむし」とされた体形は誇張ではなかったことが証明された(「せむし」という発見で、グラント警部の本書中での仮説は残念ながら外れていた)。 俳優のベネディクト・カンバーバッチがリチャード三世のDNA分析で血縁者と判明し、レスター大聖堂に「国王の礼をもって」改葬されたとき、桂冠詩人キャロル・アン・デュフィーによる詩を朗読した。 評者は、「リチャード三世の遺骨発見!」というニュースを、ジョセフィン・テイ女史が泉下で知ったら、どんなに驚いたかなどと思いを巡らせながら本書を読み進んでしまったのです。 ベッドで寝ているグラント警部の手足となって歴史資料を漁っていたアメリカ青年ブレント・キャラダインは、リチャード三世の汚名を雪ごうとする歴史家たちが書いた資料など数多く見つけ、本を書こうと意気込んでいたから気落ちしてグラントに、このことを話す。 「大発見などそうそうそこらにころがっているわけではないよ。先駆者になれなかったら、改革運動の先頭に立ったらいいじゃないか?」と励まし、「何にたいして?」「トニイパンディ」と、グラント警部が言うと、キャラダインは途端に気を取り直して元気をになる。(P327) 「トニイパンディ」(Tonypandy)というのは、広く信じられている歴史的な神話、当事者が虚構と知りながら意図的に流布され信じられるようになった偽史の代名詞として用いている言葉である。 グラント警部が、二人の容疑者を比較した箇条書きをしてみた。 まぁ、このことはネタバレになるから、ここで詳しくは書かないでおこうと思う(すべて状況証拠でしかないのだが)。 「歴史は勝者によって書かれる」という言葉があるが、ブレント・キャラダインが蒐集してくる史料からグラント警部が推定すると、リチャードを貶めたら、誰が多くを得たかを考えれば、おのずと二人の少年を亡きものとした犯人を指し示すことが可能となる。 著者自身も本書『時の娘』を、発表したことでリチャード三世の「トニイパンディ」を、世に問いたかったのは間違いないだろう。 本書を読み終え、詳しく調べたらロンドン塔に幽閉された後のエドワード五世と弟リチャードの消息は、現在に至るまで判明していない。 本書『時の娘』が、歴史ミステリの傑作であると思いながら楽しんで読み終えることができました。 <追記> イギリスの歴史に詳しくない評者のような読者にとって、登場人物紹介が少ないのは不親切であると苦言を呈したい。 なぜならランカスター家とヨーク家の系図以外の登場人物が多すぎるからです。 | ||||
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