長いお別れ

【この小説が収録されている参考書籍】

評判

長いお別れの評価:

4.36/5点 レビュー 290件。 A ランク

Amazon書評・レビュー点数毎のグラフです

平均点4.36pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全101件 1〜20 1/6ページ
No.101
(3pt)

ブラックボックス

訳知り顔で何でも知っており、ケンカというか護身術も巧みな、一見するとヒーローのような主人公である私立探偵マーロウは、依頼人であれ友人であれ人妻であれ、彼らによって(結果的に)利用される人物として描かれている。
 彼は彼自身の良心や倫理観といったものによって行動しているのだが、それにもかかわらず/だからこそ、そのような利用される人物へと機能していくこととなる。マーロウの言動と同様にその存在は、皮肉な構造を持っている。
 小説というものは、そのような歪なものだ。真正面から論理的に説明する、ということになれば学術書に近くなるだろう。人間の社会は矛盾を抱えている、社会においても、個人においても。これは永遠に変わらないだろう、人間の社会という言葉がそれなりに機能するあいだは。また、言語や物語といったものも、矛盾や不安定さを内包しているかもしれない。深酒や賭博や殺人や自殺は、そのような矛盾からもたらされるものだろう。合理主義的精神からみれば、そんなものは無用の沙汰なのだが、最大公約数的な社会の継続的運営には残念ながら必要悪として生じざるを得ないのだろう。近代功利主義の妥当性とも言えるかもしれない。そのような悪の頻度や規模を抑制する、というのが妥当な対応だと思える。

 訳者村上春樹による解説で興味深い言及があった。チャンドラーが心理描写を採らないことに関して、心理的過程といったものに対しブラックボックスと例え、その蓋を開かれることを望まない箱、と言っていた点に、村上の世界観や言語感の一端があらわれているように思える。恐らく、西欧文化の流れにおいては、謎や真理は隠されているもので、だからこそ探究されるものであり、(賢明な)人々はその探究への労力を惜しむべきでない、という姿勢が脈々と受け継がれているように思う。それはオイディプスにおいて端的にあらわれている。それに対し、村上は開けられなくてもよい、解明されなくともよい、と述べ、あたかもニュートンが諸法則の根本原因に触れないように、人間や社会が内包する謎を謎のまま扱う、というような姿勢がここに見られるだろう。そのような姿勢は、彼の多くの作品に見られるものである。
ロング・グッドバイ (Raymond Chandler Collection) Amazon書評・レビュー: ロング・グッドバイ (Raymond Chandler Collection)より
4152090103
No.100
(3pt)

ブラックボックス

訳知り顔で何でも知っており、ケンカというか護身術も巧みな、一見するとヒーローのような主人公である私立探偵マーロウは、依頼人であれ友人であれ人妻であれ、彼らによって(結果的に)利用される人物として描かれている。
 彼は彼自身の良心や倫理観といったものによって行動しているのだが、それにもかかわらず/だからこそ、そのような利用される人物へと機能していくこととなる。マーロウの言動と同様にその存在は、皮肉な構造を持っている。
 小説というものは、そのような歪なものだ。真正面から論理的に説明する、ということになれば学術書に近くなるだろう。人間の社会は矛盾を抱えている、社会においても、個人においても。これは永遠に変わらないだろう、人間の社会という言葉がそれなりに機能するあいだは。また、言語や物語といったものも、矛盾や不安定さを内包しているかもしれない。深酒や賭博や殺人や自殺は、そのような矛盾からもたらされるものだろう。合理主義的精神からみれば、そんなものは無用の沙汰なのだが、最大公約数的な社会の継続的運営には残念ながら必要悪として生じざるを得ないのだろう。近代功利主義の妥当性とも言えるかもしれない。そのような悪の頻度や規模を抑制する、というのが妥当な対応だと思える。

 訳者村上春樹による解説で興味深い言及があった。チャンドラーが心理描写を採らないことに関して、心理的過程といったものに対しブラックボックスと例え、その蓋を開かれることを望まない箱、と言っていた点に、村上の世界観や言語感の一端があらわれているように思える。恐らく、西欧文化の流れにおいては、謎や真理は隠されているもので、だからこそ探究されるものであり、(賢明な)人々はその探究への労力を惜しむべきでない、という姿勢が脈々と受け継がれているように思う。それはオイディプスにおいて端的にあらわれている。それに対し、村上は開けられなくてもよい、解明されなくともよい、と述べ、あたかもニュートンが諸法則の根本原因に触れないように、人間や社会が内包する謎を謎のまま扱う、というような姿勢がここに見られるだろう。そのような姿勢は、彼の多くの作品に見られるものである。
ロング・グッドバイ Amazon書評・レビュー: ロング・グッドバイより
4152088001
No.99
(3pt)

表紙に問題あり。

カバーはキレイでしたが、本自体は表紙、裏表紙ともに角に
折れがありました。新品の筈ですが、残念です。
長いお別れ (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 7-1)) Amazon書評・レビュー: 長いお別れ (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 7-1))より
4150704511
No.98
(3pt)

表紙に問題あり。

カバーはキレイでしたが、本自体は表紙、裏表紙ともに角に
折れがありました。新品の筈ですが、残念です。
長いお別れ (ハヤカワ・ミステリ 260 世界探偵小説全集) Amazon書評・レビュー: 長いお別れ (ハヤカワ・ミステリ 260 世界探偵小説全集)より
4150002606
No.97
(3pt)

表紙に問題あり。

カバーはキレイでしたが、本自体は表紙、裏表紙ともに角に
折れがありました。新品の筈ですが、残念です。
長いお別れ (1958年) (世界探偵小説全集) Amazon書評・レビュー: 長いお別れ (1958年) (世界探偵小説全集)より
B000JATSCW
No.96
(3pt)

村上訳を読むことは、少しがっかりすること。

この作品はもともと駄作だと思うし、村上小説も好きではないが、久しぶりに翻訳を読んでみた。
特に期待もないので、こんなものかというところだが、一点だけ。
 To say goodbye is to die a little.
の訳について。フランス語は、
 Partir, c'est mourir un peu.
「わずかのあいだ死ぬこと」は問題外で誤訳と言っていい。「死ぬ」という語が使われている理由を
理解していないのが丸出しの訳だ。しかし、「少しだけ死ぬこと」も残念だ。「だけ」はやめてほし
かった。
ロング・グッドバイ (Raymond Chandler Collection) Amazon書評・レビュー: ロング・グッドバイ (Raymond Chandler Collection)より
4152090103
No.95
(3pt)

村上訳を読むことは、少しがっかりすること。

この作品はもともと駄作だと思うし、村上小説も好きではないが、久しぶりに翻訳を読んでみた。
特に期待もないので、こんなものかというところだが、一点だけ。
 To say goodbye is to die a little.
の訳について。フランス語は、
 Partir, c'est mourir un peu.
「わずかのあいだ死ぬこと」は問題外で誤訳と言っていい。「死ぬ」という語が使われている理由を
理解していないのが丸出しの訳だ。しかし、「少しだけ死ぬこと」も残念だ。「だけ」はやめてほし
かった。
ロング・グッドバイ Amazon書評・レビュー: ロング・グッドバイより
4152088001
No.94
(2pt)

(2023-73冊目)「さよならを言うのは、少しだけ死ぬことだ」(571頁)

.
 ハリウッド界隈で私立探偵稼業をしている41歳のフィリップ・マーロウは、泥酔していたテリー・レノックスを偶然助けて介抱する。彼の妻は富豪の娘シルヴィアだが、その彼女が惨殺されて遺体で発見される。テリーは自分がやったのではないと身の潔白を主張するが、メキシコへの逃亡を企て、マーロウにそのお先棒を担がせることになる。後日、テリーが逃亡先で自殺したとの連絡が入り、マーロウ宛ての手紙が届けられる……。
------------------
 1953年に出版されたレイモンド・チャンドラーのハードボイルド小説です。2007年に村上春樹氏が翻訳したものを2009年に文庫化したのがこのハヤカワ・ミステリ文庫版です。
 村上氏の50頁に及ぶ訳者あとがきを含めて650頁に垂んとする大部の著作で、手にずしりと重い文庫です。

 「釈迦に説法」とか「全国津々浦々」と、アメリカ小説の翻訳語としては随分日本語臭の強い表現が散見され、少々鼻白みます。あの北米大陸の地形には日本のように津や浦がそれほど多い印象はないので、どうもしっくりきません。
 その他にも翻訳調である日本語が多く、英語の原文が透けて見える気がして、どうもしっくりしません。

 それからこれは翻訳の問題ではなく、チャンドラーのスペイン語の理解が不十分なために起こったことですが、ラテン系のキャンディーという登場人物が「Es muy ocupado.」(272頁)とか「La señora es muerta.」(498頁)と奇妙なスペイン語を話しているくだりも興ざめしました。正しくは「Está muy ocupado.」「La señora está muerta.」とするべきところでしょう。

 さて、物語のほうですが、どうにも回りくどい気がして、私の肌には合いませんでした。70年前の白人男性中心のアメリカ社会が兎にも角にも遠く感じられて、その世界に没入できないという思いを抱えたまま600頁の旅に乗り出してしまったという思いが残ります。
 後段、ある男女がいとも容易く同衾する場面があり、そのこだわりのなさに、これってまさしく村上春樹文学に登場する男女関係そのものではないかと感じてしまったほどです。(かといって、村上文学が必ずしも嫌いなわけではありませんが。『1Q84』は傑作だと思ったものです。)

.
ロング・グッドバイ (Raymond Chandler Collection) Amazon書評・レビュー: ロング・グッドバイ (Raymond Chandler Collection)より
4152090103
No.93
(2pt)

(2023-73冊目)「さよならを言うのは、少しだけ死ぬことだ」(571頁)

.
 ハリウッド界隈で私立探偵稼業をしている41歳のフィリップ・マーロウは、泥酔していたテリー・レノックスを偶然助けて介抱する。彼の妻は富豪の娘シルヴィアだが、その彼女が惨殺されて遺体で発見される。テリーは自分がやったのではないと身の潔白を主張するが、メキシコへの逃亡を企て、マーロウにそのお先棒を担がせることになる。後日、テリーが逃亡先で自殺したとの連絡が入り、マーロウ宛ての手紙が届けられる……。
------------------
 1953年に出版されたレイモンド・チャンドラーのハードボイルド小説です。2007年に村上春樹氏が翻訳したものを2009年に文庫化したのがこのハヤカワ・ミステリ文庫版です。
 村上氏の50頁に及ぶ訳者あとがきを含めて650頁に垂んとする大部の著作で、手にずしりと重い文庫です。

 「釈迦に説法」とか「全国津々浦々」と、アメリカ小説の翻訳語としては随分日本語臭の強い表現が散見され、少々鼻白みます。あの北米大陸の地形には日本のように津や浦がそれほど多い印象はないので、どうもしっくりきません。
 その他にも翻訳調である日本語が多く、英語の原文が透けて見える気がして、どうもしっくりしません。

 それからこれは翻訳の問題ではなく、チャンドラーのスペイン語の理解が不十分なために起こったことですが、ラテン系のキャンディーという登場人物が「Es muy ocupado.」(272頁)とか「La señora es muerta.」(498頁)と奇妙なスペイン語を話しているくだりも興ざめしました。正しくは「Está muy ocupado.」「La señora está muerta.」とするべきところでしょう。

 さて、物語のほうですが、どうにも回りくどい気がして、私の肌には合いませんでした。70年前の白人男性中心のアメリカ社会が兎にも角にも遠く感じられて、その世界に没入できないという思いを抱えたまま600頁の旅に乗り出してしまったという思いが残ります。
 後段、ある男女がいとも容易く同衾する場面があり、そのこだわりのなさに、これってまさしく村上春樹文学に登場する男女関係そのものではないかと感じてしまったほどです。(かといって、村上文学が必ずしも嫌いなわけではありませんが。『1Q84』は傑作だと思ったものです。)

.
ロング・グッドバイ Amazon書評・レビュー: ロング・グッドバイより
4152088001
No.92
(1pt)

チャンドラーにgood-bye

長年海外ミステリーが苦手なのは訳者が悪いと思ってた
一人称単数で書かれたハードボイルドが好きなのでその昔清水訳で読み始め断念
村上春樹ならいけるかとハードカバーで買って断念
最近ユッシ・エーズラ・オールスンの特捜部Qシリーズを読んだらえらい面白い
ピエール・ルメートルのカミーユ警部シリーズも面白い
エイドリアン・マッキンティもネレ・ノイハウスも面白い
これはもう海外ミステリー慣れしたんじゃないかと村上訳文庫で再挑戦
なんとか読了したけど全く面白くない
マーロウが金髪女について蘊蓄垂れだした時点でゴミ箱に投げ込みたくなる(というか今までは投げ込んでた)
どうやらチャンドラーの文体が私に合わないらしい
ロング・グッドバイ (Raymond Chandler Collection) Amazon書評・レビュー: ロング・グッドバイ (Raymond Chandler Collection)より
4152090103
No.91
(1pt)

チャンドラーにgood-bye

長年海外ミステリーが苦手なのは訳者が悪いと思ってた
一人称単数で書かれたハードボイルドが好きなのでその昔清水訳で読み始め断念
村上春樹ならいけるかとハードカバーで買って断念
最近ユッシ・エーズラ・オールスンの特捜部Qシリーズを読んだらえらい面白い
ピエール・ルメートルのカミーユ警部シリーズも面白い
エイドリアン・マッキンティもネレ・ノイハウスも面白い
これはもう海外ミステリー慣れしたんじゃないかと村上訳文庫で再挑戦
なんとか読了したけど全く面白くない
マーロウが金髪女について蘊蓄垂れだした時点でゴミ箱に投げ込みたくなる(というか今までは投げ込んでた)
どうやらチャンドラーの文体が私に合わないらしい
ロング・グッドバイ Amazon書評・レビュー: ロング・グッドバイより
4152088001
No.90
(3pt)

ミステリというよりハードボイルド

【ミステリというよりハードボイルド】
ハードボイルド風のミステリというよりハードボイルド小説という印象を受けた。ダンディな男性の友情と愛を描いていて全体的に渋さを感じた。クリスティのようなキャッチーなキャラは出ないし、館シリーズのようなコテコテのミステリというわけではないので、それらが好きな人、ミステリが読みたい人には合わないと思う。もう少し年齢を重ねてから読めばもっと楽しめたかもしれない。

【評価】
オススメ度3
読みやすさ2
意外性  3
長い別れ (創元推理文庫) Amazon書評・レビュー: 長い別れ (創元推理文庫)より
4488131077
No.89
(1pt)

表紙カバーが

表紙カバーが無数のカビのように汚れていました。新品を購入したはずですが残念です。
ロング・グッドバイ (Raymond Chandler Collection) Amazon書評・レビュー: ロング・グッドバイ (Raymond Chandler Collection)より
4152090103
No.88
(1pt)

表紙カバーが

表紙カバーが無数のカビのように汚れていました。新品を購入したはずですが残念です。
ロング・グッドバイ Amazon書評・レビュー: ロング・グッドバイより
4152088001
No.87
(2pt)

漢マーロウ、ついに金持ちばばあ相手にやり逃げに性交する

不幸なことに丁寧に仕込まれた伏線に気付いて大筋がわかってしまった
ただそれは、半世紀以上も前に作られてすりきれるまで模倣されてしまって
模倣作の海をだいぶ泳いできたせいで、作者は、ちゃんと読者にフェアなミステリを提供していたから、読み取れたということだ。作者は、そうなるように書いた。
半世紀以上前のアメリカでアル中やデメロールの被害がこんなにあったのか
今回のマーロウは、ずいぶんマチズモにとらわれていて、こわもて相手に執拗にからみあげている
この時代の客は、そういうマッチョな男を求めていたのかな
いまだともっと、柔らかな物腰の櫻井ボイスの、このシリーズでいうところのカマ野郎主人公になるのかなって、それがまさに村上春樹の小説じゃねーか あれは、村上春樹版フィリップマーロウだったのか
やれやれ系ハードボイルドがここから生まれたのか
ロング・グッドバイ (Raymond Chandler Collection) Amazon書評・レビュー: ロング・グッドバイ (Raymond Chandler Collection)より
4152090103
No.86
(2pt)

漢マーロウ、ついに金持ちばばあ相手にやり逃げに性交する

不幸なことに丁寧に仕込まれた伏線に気付いて大筋がわかってしまった
ただそれは、半世紀以上も前に作られてすりきれるまで模倣されてしまって
模倣作の海をだいぶ泳いできたせいで、作者は、ちゃんと読者にフェアなミステリを提供していたから、読み取れたということだ。作者は、そうなるように書いた。
半世紀以上前のアメリカでアル中やデメロールの被害がこんなにあったのか
今回のマーロウは、ずいぶんマチズモにとらわれていて、こわもて相手に執拗にからみあげている
この時代の客は、そういうマッチョな男を求めていたのかな
いまだともっと、柔らかな物腰の櫻井ボイスの、このシリーズでいうところのカマ野郎主人公になるのかなって、それがまさに村上春樹の小説じゃねーか あれは、村上春樹版フィリップマーロウだったのか
やれやれ系ハードボイルドがここから生まれたのか
ロング・グッドバイ Amazon書評・レビュー: ロング・グッドバイより
4152088001
No.85
(3pt)

新訳の意義はあるが、村上訳、清水訳には及ばない

本書はレイモンド・ソーントン・チャンドラーの第6長編"The Long Goodbye”の新訳版である。
 大昔に清水俊二訳で最初に触れて以来、村上春樹訳、そして田口俊樹訳と合わせて4回目となるが、スカダーものでハードボイルド・ミステリ翻訳者として評価を高めた田口氏の訳だけあって、たしかにスルッと分かりやすく読めた。村上春樹によるチャンドラーの新訳は全部読んでいるのだが、なぜか期待ほどの読後感ではなかった記憶があり、印象を確かめようと思って、せっかくなので続けて15年ぶりに村上訳「ロング・グッドバイ」を読んでみた。
結論としては、たしかに田口氏の訳は読みやすかったが、村上春樹訳、そしてチャンドラーを日本に定着させた清水訳に比べて、翻訳文体の格調やチャンドラーらしさという点で及ばない、というのが私の印象である。
たしかに、田口氏はハードボイルド翻訳に強く、私自身もローレンス・ブロックの「八百万の死にざま」や「聖なる酒場の挽歌」で読みやすい田口流ハードボイルド節を堪能したし、ミステリ翻訳者らしく本書のプロットも(無いに等しい小説だがw)わかりやすく、だからこそ読後感がスッキリしていたのだと思う。
 ところがその後、村上訳を読むと、村上氏が「ロング・グッドバイ」巻末の解説「訳者あとがき」で、「本当に意味での魂の交流の物語であり、人と人との自発的な相互理解の物語であり、人の抱く美しい幻想と、それがいやおうなくもたらすことになる深い幻滅の物語」(チャンドラー著、村上春樹訳「ロング・グッドバイ」(早川書房)「訳者あとがき準古典小説としての『ロング・グッドバイ』」P.554より引用)と記しているように、正に現代文学の頂点の一つに昇華するような、ミステリ小説という狭い枠を超えた読み物として、あらためて心に印象付けられた。もしかしたらそれは、田口訳によってプロットや語り口がミステリ小説らしく整理されたからこそ、再読して味わえたのかもしれないが。しかし、両翻訳を比較すると、今回の新訳は村上訳に比べて、翻訳を通じてとは言え、印象としてチャンドラーらしさが伝わってこなかった。そもそも、プロットを読ませる(味わう)小説ではないので、チャンドラーらしさ、いわゆる「チャンドラーの文章はあらゆる意味合いにおいてきわめて個人的なものであり、オリジナルなものであり、ほかの誰にもまねすることのできない種類のものだった」(チャンドラー著、村上訳、前掲書P.536より引用)とチャンドラーの文体の本質を喝破した村上氏のあとがきを体現した、翻訳言葉としての日本語の使い方も品格の高い村上訳に比べると、本新訳はよくできたハードボイルド小説の翻訳書に留まっている(そもそも、プロットを読ませる(味わう)小説ではないので)、というのがあらためて翻訳文体を比較しての感想である。
 あと一点、言及すべきは、巻末の解説についてである。本書「長い別れ」の巻末には、「訳者あとがき」と書評家による「解説」があるが、解説の冒頭がいきなり、「田口俊樹がレイモンド・チャンドラーを翻訳する。素晴らしいことである。」(本書P.584より引用)となっている。まあ、ミステリ・マニアからすると、"The Long Goodbye”の新訳で気になるのは翻訳者であろうし、また前述の通り本書には訳者あとがきがあって、田口氏がけっこう、解説の領域まで踏み込んで記しているので重なりも多く、冒頭からこうぶち上げたいのはわからないではないが、そもそも本書のターゲットはミステリ・マニアだけでなく(マニアならぶち上げなくても翻訳家の田口氏は知っているだろうけど)、初見・初読で創元推理文庫の本書を手に取るマニアでない一般読者もあろうと思うが、いきなり訳者の名前から解説を始められても戸惑ってしまうのではなかろうか。海外文学の名作だったら、各出版社から文体の異なる翻訳が出版されるのは当たり前なので、海外文学の名作に比肩する(あるいは入れられる)本書であれば、ミステリ初学者でもわかるような解説の構成にするべきと思料する。本書の解説はまさに、マニアックなミステリサークルの内輪受けと言わざるを得ない。同じ創元推理文庫の新訳の解説でも、ベンスン殺人事件(日暮雅道訳)の戸川安宣氏の解説は、「本書はS・S・ヴァン・ダインのデビュー長編・・・(中略)・・・の最新訳である。」(ヴァン・ダイン著、日暮雅道訳「ベンスン殺人事件」(東京創元社)P.385 戸川安宣「ファイロ・ヴァンス登場」より引用)と冒頭にあり、その後も、「ファイロ・ヴァンスの横顔」「ヴァン・ダイン作品の特徴」、、、と章立てして初学者でもわかりやすいように説明されており、せっかくマニアに限らず多くの読者を呼び込める本書なのだから、私自身はこうしたスタイルの解説が望ましいと思う。
 なお、解説の構成が散漫だとか、自己陶酔型の筆致や文体が好みに合わないとかあるが、それは個人の主観なので多くを語らないとして、一つ読んでいて看過できなかったのが、本書P.598 6行目「村上訳の特徴を一口に言えば中立的であることだろう。・・・(中略)・・・文句なしに及第点の翻訳と言うことができるだろう。」
「及第」の由来は、昔の中国で、科挙の試験に合格すると大きな屋敷で働くことに手が届く、とうことであり、よって、試験や審査に合格するという意味である。「及第点」は及第に必要な点ということであり、それもギリギリ届くというニュアンスなので、あまりいい評価ではないという、上位者(審査官)が下位者(受験者)に向かって使う言葉である。無論、翻訳(書)に資格や合格点がある訳ではないし、作家、翻訳者、評論家(書評家)は対等の立場だと思うので、村上春樹でなくても、訳者に対し「及第点」という言葉は失礼だと思う(文句なしに及第点とか日本語がよくわからないw)。私は点数をつけるなと言っているのではなく、評論家は良くないと思えば星2つとか、60点とかつけるのはおかしくないと思うが、この言葉を使うのは評論家としては失格だろう。
 私はハルキストではないし、この書評家の言葉によって、世界のムラカミの評価が落ちるとはこれっぽっちも思わないが、こうした言葉をそのまま世に出してしまう編集者、そして出版社の見識を疑わざるを得ない。出版不況の中大変だと思うが、評論家・書評家の育成も出版社の使命なので、短編ミステリ・シリーズの発刊などチャレンジしている東京創元社には不況に負けず、ミステリ業界のレベルアップに向けて頑張っていただきたい。
ちなみに、本書と異なり、早川書房の「ロング・グッドバイ」の村上春樹氏による訳者あとがき「準古典小説としての『ロング・グッドバイ』は、チャンドラーへの愛情に満ちつつ冷静な筆致と質の高い日本語で書かれた、この文章だけでもお金を払う価値のある巻末解説となっており、必読である。
 本書の評価だが、これだけの名作なら読者の選択肢を広げる意味で良いと思うので、新訳の意義としては十分あると思うし、田口訳のミステリ翻訳書のとしての読みやすさは高く評価できるので、星4つと言いたいが、解説で星1つ減点して3つとしたい。初読の人には、清水訳か村上訳をおすすめする。
長い別れ (創元推理文庫) Amazon書評・レビュー: 長い別れ (創元推理文庫)より
4488131077
No.84
(2pt)

そば屋で飲むギムレット

一言でいって原作の雰囲気が伝わってこない(あくまでも個人的意見)。テリー・レノックスはアメリカのギムレットは偽物で、一度英国で飲んだらそれが分る、と言った。この本も同じだ。これがチャンドラーと思ったらチャンドラーが泣く、と思う、個人的意見。清水訳のほうがまだましだし、この本は訳していないがチャンドラーを多く訳している田中小実昌がすきだ。この文体は銭形平次にはぴったりだがチャンドラーにはちょっと、と思う
状況がわからないシーンが多いが、特にアイリーンと出会う、バーの場面は謎だらけ。女を座らせるためになぜウエイターがテーブルを引くのか?普通椅子だろう。また女が「夏の雲を刷毛で書くような声で」とはどんな声だ? それから頭にきていたコメディアンがなぜ最後の一言で機嫌を直したかさっぱり分らなかった。私だけだろうか?
ロング・グッドバイ (Raymond Chandler Collection) Amazon書評・レビュー: ロング・グッドバイ (Raymond Chandler Collection)より
4152090103
No.83
(2pt)

そば屋で飲むギムレット

一言でいって原作の雰囲気が伝わってこない(あくまでも個人的意見)。テリー・レノックスはアメリカのギムレットは偽物で、一度英国で飲んだらそれが分る、と言った。この本も同じだ。これがチャンドラーと思ったらチャンドラーが泣く、と思う、個人的意見。清水訳のほうがまだましだし、この本は訳していないがチャンドラーを多く訳している田中小実昌がすきだ。この文体は銭形平次にはぴったりだがチャンドラーにはちょっと、と思う
状況がわからないシーンが多いが、特にアイリーンと出会う、バーの場面は謎だらけ。女を座らせるためになぜウエイターがテーブルを引くのか?普通椅子だろう。また女が「夏の雲を刷毛で書くような声で」とはどんな声だ? それから頭にきていたコメディアンがなぜ最後の一言で機嫌を直したかさっぱり分らなかった。私だけだろうか?
ロング・グッドバイ Amazon書評・レビュー: ロング・グッドバイより
4152088001
No.82
(1pt)

1分もたず

「さよなら、愛しい人」に続きAudibleで聴き始めたが即リタイア。登場人物の1人ならともかく前編朗読が鼻づまりじゃ牢獄だよ。
ついでに言えば男性専門職でも会話部分の女性パートを芝居っ気たっぷりに読むのは気持ち悪い。ジェンダレスの時代とはいえ、会話の多い作品は性別を意識して男女二人を起用して欲しいものだ。
ロング・グッドバイ (Raymond Chandler Collection) Amazon書評・レビュー: ロング・グッドバイ (Raymond Chandler Collection)より
4152090103