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ノースライト



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【この小説が収録されている参考書籍】
ノースライト
ノースライト (新潮文庫)

ノースライトの評価: 3.76/5点 レビュー 181件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.76pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全121件 81~100 5/7ページ
No.41:
(5pt)

読みごたえあり。

作者らしい登場人物の内面をしっかり描いて、サスペンスではあるものの、非常に深みのある作品です。
ノースライト (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ノースライト (新潮文庫)より
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No.40:
(4pt)

家をは何か?家族とは何か?

「64」とはかなり趣の違った小説。
物語の発端が、「引き渡して断金の支払いも済んだ家が、誰も住んでない家のようだ」ということ。
その家を設計した建築家が、いなくなった?家族を探す物語。

建築家の家族の物語に、建築家「ブルーノ・タウト」の物語がからんできます。

読後感は「64」に比べてすっきりしますが
謎解きの方は、?????
ミステリーとして読まなければ☆4つ。
ノースライト (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ノースライト (新潮文庫)より
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No.39:
(4pt)

ミステリーより心の機微

ノースライト、読了しました。

ミステリーとしての思わぬ展開といったことより、仕事上でつまづいてしまった男のプライドとか、元妻との関係の機微、流れ者として子供時代を過ごすこと、建築家のリアルみたいなところがリアルで面白かったです。

元々の連載は、ゼロ年代前半だったということで、バブル崩壊後の雰囲気が出ていてよかった。若い作家にはこういう雰囲気は出せないと思う。
ノースライト (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ノースライト (新潮文庫)より
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No.38:
(5pt)

横山の挑戦する新しい分野のミステリー

この単行本の作者紹介の短いコラムに「新たな一歩となる長編ミステリー」とある。些か陳腐な描写で
見逃しやすいフレーズだが、この作品を読みながら常にこれはやはり横山の新しい挑戦なのだと
実感しながらページをめくることになった。今までの作品で、警務・刑事に関わらず警察を
舞台にするか、元々の自分の仕事である新聞記者を題材にするか、何れにせよ出来るだけ
感情移入を最低限にしながら、深い人物描写と何よりプロット設定の巧さと筋運びの新鮮さで
読者を惹きつけて来た横山が、この作品では大いに自己変革に取り組んでいる。

バブルの後遺症もあり、自暴自棄になっている腕は一流の建築家青瀬稔。彼のところに、
自分の住みたい家を作っていいという依頼が入る。全身全霊を込めて彼が作った家は
素晴らしい出来栄えとなるが、この依頼主が姿を消したところから物語が始まる。
この依頼主一家はどうしてしまったのか。そして、唯一のヒントはこの家に残された、
伝説の建築家ダウトの椅子。この依頼主一家を探す青葉の追跡
と並行していくつかのストーリーが展開される。離婚した青葉の元妻と娘との関係、
今雇われている建築事務所の所長岡嶋の家族問題、そしてこの建築事務所の浮沈を
かけた展示館の建築に纏わる汚職問題。すべてが、青葉を中心に関係し、それぞれ
との関係で、青葉という人間を深く描いていく。なかなか「大きな事件」は起きない。
社会派ミステリーという横山お得意のカテゴリーでもない。しかし、この作品が間違いなく彼の
代表作の一つに数えられるだろうという確信を持ちながら、一気に読み上げた。

横山秀夫という現代日本のミステリー作家で最高峰と言える人間が、また新しい山に登り始めた。
素晴らしい作品だ。
ノースライト (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ノースライト (新潮文庫)より
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No.37:
(5pt)

殺人事件も起きないが、素晴らしいミステリーである

上質なミステリーを読むのは無上の喜びだ。

バブルでブイブイ言わしていた建築家が、バブル崩壊でやさぐれ、妻とも離婚し、小さな所沢の設計事務所で糊口をしのぐ。

そんな彼に、あるクライアントから「信濃追分に土地があるので、あなたが建てたいように建ててください」という依頼がある。

そうして完成した家は、平成の建築200選にも選ばれるが、クライアント家族は、引き渡しから何カ月たっても入居していない。

ただ、ぽつんと北向きの窓に向かって1つの椅子だけが置かれていた。

そして元の都内の借家からも姿をけしてしまっている。

バブル崩壊、ブルーノ・タウト、美術館建設のコンペ、家族のつながり、親子のつながり・・・。

さまざまな要素が重ねあわされてミステリーが紡がれていく。

殺人事件など起こらなくても、すごいミステリーはすごい。

『64』から6年ぶりの新著だが、気になるのは本作が雑誌に連載されていたのは2004~5年のことという。

著者の体調がすぐれないからなのだとしたら、次作も期待して快癒を祈りたい。
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No.36:
(5pt)

木漏れ日のように優しいミステリー

たった7日間だけの昭和64年に発生した後,迷宮入り目前の誘拐事件を軸に,組織のエゴに翻弄されながらも,それぞれの立場で真相を追求する人々を描いた『64』は,ミステリーとしても,警察小説,社会派小説としても実に読み応えのある作品でした。
 6年ぶりの長編となった本書は,重厚でシリアスだった前作とは対照的にヒューマン・ドラマの趣きが。木漏れ日や鳥のさえずりが似合う優しく穏やかな情景と,それぞれに心の傷や悩みを抱えながらも絆で結ばれている人間模様を背景に,些細な疑問がやがてミステリーへと発展して行きます。
 主人公に新築家屋の設計を依頼した一家が謎の失踪を遂げる,というアプローチは,それだけでもサスペンスにしてミステリーなわけですが,本作には探偵も刑事も登場しません。一級建築士の主人公が一家の足跡を追ううちに,近代日本建築に大きな影響を与えたブルーノ・タウトに行き当たり,やがてはライフ・ワークの中に自分のルーツやら,見失いかけていた大切なものを思い出す・・・そんな「自分探し」の旅も重ねながら,謎が解かれていきます。果たして事件の真相は・・・ミステリーなのに切ないほどに心優しく,清々しい。『64』とは違った意味で読み応えのある1冊でした。
ノースライト (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ノースライト (新潮文庫)より
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No.35:
(4pt)

家や建築業界をテーマにした再生感動作品として、オススメです(^-^*)/

主人公建築士の再生物語です(^-^*)/

正直、ミステリーと言える定義の謎ではないように思いますし、
主人公の究極の家が何故か無人で、その謎を追い始めた(起承転結の)承の部分は、
建築的な専門話(特にタクト関連)も多く、謎の追う記述もあまり盛り上がらず、長過ぎるなぁと感じて欠点に思いましたが、

記者が登場した『転』の辺りから、ガラッと面白くなり、一気に引き込まれて、感動のラストまで導かれていきました!

作風としては、突拍子もない謎から始まる不思議な縁&感動という流れが、道尾秀介さんの幾つかの作品と同じような雰囲気に感じた次第です。
承の箇所をもっと少ない量でコンパクトにまとめてくれたら、☆5の名作になるのに……とは思いましたが、
今のままでも充分に面白い作品でしたし、
個人的には約10冊振りに感想を書きたいと思えた、熱量と感動が見事な作品であり、素晴らしく感じました!

家や建築業界をテーマにした再生感動作品として、オススメです(^-^*)/
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No.34:
(4pt)

鳥が描かれる

・ヒガラ
・ベニマシコ
・ハジロカイツブリ
・キビタキ
・アオサギ
・キュウカンチョウ

 街にいない鳥を鳴かせて、人気のない里の雰囲気を出す。
 都会の鳥の不在を知らせ、街の雑踏をさりげなく示す。
 別れた女との距離を測らせる小道具。
 そして、真相に導く、重要な媒介者とさせたり。

 タイトルは、作品全体を照らす要素であり、鳥の描写と同じで、雰囲気を醸し出す言葉である。
 余韻だったり、想像、あるは妄想なのかもしれないが、横山さんは読者にそれを求める作者である。自分は、そういうのに浸りたいのだろうなと思う。
ノースライト (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ノースライト (新潮文庫)より
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No.33:
(4pt)

ミステリーというよりは、静かな家族の物語

設計した家を巡る物語。
住民の痕跡を辿る中で分かっていく過去との接点と、腐っていた建築家が立ち直っていく姿が静かに展開していきます。

大きな展開は少ないですが、静かに進んでいく流れで一気に読むことができます。

建築を軸にそれぞれの思いが最後に分かったときの結末はなかなか読み応えあり。
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No.32:
(5pt)

ノースライト

元々ミステリー物に興味があった者ではありませんが、ある書評で作家、登場人物、椅子など多くに地縁・知縁性が興味を惹き、求めたものです。
具体的には、作者の祖父は私が地方銀行に就職した時の頭取、作者が過って勤務した地元新聞社は毎日の購読紙を出しているJ社、登場するJ新聞社員も興味津々。Y邸の信濃追分は建築や椅子などを扱う弊社事務所の隣接域、椅子に関わる地元高崎に深い縁のあったブルーノタウトの住んだ洗心亭は何度も訪ねた場所等々。
美しい謎を追い求めると止められず、そのボリュームに腐心しながら読み耽った。
友人にも貸したが、数日で読了したと好評、また多くの書評を目にする。

外装は綺麗に整えられ、新本と変わらない綺麗さ。
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No.31:
(4pt)

6年ぶりの大作

信濃追分に新築した自宅に引っ越す予定の一家が忽然と姿を消す、という冒頭の謎はミステリー感たっぷりですが、ミステリーの範疇には入らないと思います。また、横山秀夫氏のお得意の警察ものではなく、主人公も一級建築士と、これまでとはかなり毛色が違います。

一級建築士が消えた家族を追う展開も、読み進めていくにつれミステリーとしての緊張感は薄まり、その点を期待した読者には期待外れかもしれません。但し、家族再生物語や仕事を通じた男の友情ドラマとしての読み応えは十分です。
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No.30:
(5pt)

美しく優しさが溢れた世界

美しい謎を追いかけて一気に読み終えた。
直後は少し拍子抜けした感があったが、じわじわと様々な想いが溢れて読み返して号泣した。
建築業界に身を置く同業者として、作品の背景を容易に想像できたこともあるが、光と影が波のように寄せては引く展開に引き込まれました。
横山秀夫=警察小説だと思っている方には物足りなさを感じるかもしれないが、老境に差し掛かった作家の深みのある慈悲に満ちた世界に浸れると思う。
横山作品のターニングポイントになる予感がする。
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No.29:
(5pt)

朝から読み始めて、やっぱり一日で読んでしまいました。

横山秀夫氏の『64』以来の新作ということでGWの読書用に取っておきましたが、謎解きの妙味、複雑な人間模様、燃え尽きていたようでいて熱く再生していく登場人物達の存在感、幾つものストーリーラインが互いに共鳴し合って重奏を奏でるさまなど、期待通りの一気読み作品でした。最初はいつもながらの重厚感ある滑り出しでなかなか興が乗らなかったのですが、青瀬が信濃追分に向かう箇所から一気に物語が動き始め、あとは最後まで一瀉千里。#51からの事務所の面々の頑張りとチームワークの描写は特に迫真で、「青瀬は天井を仰いだ。「木鳴き」の音がする。新しい家は鳴く。自身の最良のバランスを探し求めてミクロの修正を試みる。」(160頁) など、相変わらず手練れの文章表現力で、自分の周囲が視界と脳裏から排除され、自分とこの本だけが存在するといういわば浮遊体験を一日味わうことができました。著者に感謝です! (なお一点だけですが、タウトまわりの話は伏線として必須としてもやや過剰な感じもしました。)
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No.28:
(5pt)

感動の心理ミステリー!

刑事ものではないけど、流石です。これはミステリーとしてではなく・・・ 人間ドラマとしても 面白いです
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No.27:
(4pt)

新しいテイスト

警察ものが好きなので、今回は全くテイストが違いました。彼の天才的な描写は相変わらず素晴らしいです。次は再び警察ものを期待しますが、新作はまた6年待たなくてはならないのかな・・・。首を長くして待ってまーす!
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No.26:
(4pt)

再挑戦

これまでの警察小説を評価して横山秀夫氏の作品は、全て読んでいる。今回は、主人公目線で、謎を追いかける。まさにこれまでよりも一番と言える作品を創り上げようとする作者の気持ちが感じられる。一気に読ませる筆力は衰えは知らず、主人公と作者の再挑戦がだぶる。まだまだ、代表作と言える作品を世に送り出して欲しいので、星4とした。
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4101316732
No.25:
(4pt)

ノースライト

64以来の長編ミステリーを聞いて、書店で購入しました。
本編400頁あまりを一気に読みました。

一級建築士の青瀬が、吉野夫妻に望まれて設計した新築の家、Y邸。
しかし、そこには誰も住んだ形跡もなく、浅間山を望むように「タウトの椅子」が置かれていただけ……。
そこから青瀬が椅子を頼りに、タウトをたどり、吉野夫妻をたどり、その中に無名のまま亡くなった画家の記念館のコンペの話が絡みつつ、それらの出来事を通じて青瀬が再生していく物語でした。
謎ときという意味ではミステリーであり、人の死を扱うものではありますが、いわゆるミステリー小説のように殺人犯を捜したりする話ではありません。
大切な人の死をどうとらえるか、家族をどうとらえるか、仕事とはなんなのか、誰のために生きるのか、色んな思いが詰まったいいお話でした。

ただ、細かなところをじっくり読むと「あれはどうなった?」と消化不良が残るかも。
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No.24:
(5pt)

心を揺すられるミステリ

今年のベスト1は、もうこれで決まりかな、と思われるほどの手ごたえのある力作である。

『陰の季節』で松本清張賞を獲得しデビューした横山秀夫は、その後も手堅く印象深い短編小説を連ねてミステリ界を賑わせる。短編であれ、長編であれ、映像化される作品も多く、確実に彼の一時代を築け上げた感がある。単発短編から連作短編へ。さらに多作ではないにせよ印象的な長編作家への緩やかな脱皮をも遂げてきたがその後静かなブレイクを経て6年前に『64』ではダガー賞候補にまで名を連ねる快挙を遂げる。まさに国産ミステリ界の至宝と言っていい。

 そして忘れた頃になってこの新作。そしてまたも快挙の予感。歳を重ねるにつれ円熟味を増す文体、素材、深み、そして、美しさ。読み始めは、エンターテインメントというより何か懐かしい素敵な純文学を読んでいるかのようなノスタルジーが心に蘇る。一行一行の、否、一語一語の言葉の扱いの丁寧さ、行間への気配り。それ以前に積み重ねられてゆく言葉と世界への静謐なる導入部。これは横山長編の個性としか言いようがない何かであると思わせる期待。

 主人公は一級建築士。バブル後の離婚、孤独、失われた職への誇り。渡りの過去。ダム工事現場の職人であった父に従って全国を落ち着くことなく渡り歩き山間の飯場暮らしの中で育てられた過去。古い記憶。

 提示される謎は、消えた一家。

 発注者の望み通り全力を傾倒し仕上げ、しかも『平成すまい200選』に選ばれ世間にも高く評価された建築物である信濃追分の家には、誰も済まず、一脚の木の椅子だけが置かれていた。椅子からはドイツ亡命者であるブルーノ・タウトという建築士の姿が浮かび上がる。巻末資料として列挙されている関連書籍の量からして、著者の心が相当にタウトに集中したのは作中でも重心となって見られるほどである。日本の軍国化が進む頃、日本古来の文化の消滅に危機を唱え、少なからず救いの手を差し伸べようと指導を試みたこの異国人の姿は、本作の建築士の物語に、相当な厚みを加えているように思われる。

 さて様々な謎が深まる中、主人公の所属する建築事務所では、ある美術館のコンペティションという現在が熾火の如く発熱してゆく。パリで亡くなった地元女性美術家の記念館を市の予算で建立する企画に、競合各社、市議会内での争い、マスコミの取材合戦が絡んで炎は膨れ上がる。メインストーリーの静かな謎の上に、現在と過去とが重なり、多くの社会的・家族的・親子的・恋愛的葛藤がさらに積み上げられてゆく。重層構造。

 スタートとなった謎そのものは、本質に近づいたり遠のいたり。個性豊かな登場人物たちとの距離感も、時に熱く、時に素っ気なく、危うく、儚く、移ろいやすく。そうしたデリカシーと重厚さのすべてを捉えるべく、著者のペンの力は全巻を通して、凄まじく圧倒的、かつ美しい。

 良い小説とは起承転結が明確だ、と改めて思う。振り返ってみれば、書かれたものに無駄は一つもなかった。すべてがすべてに関連付けられるものであった。まいった。謎解きにではなく、人間たちの綾なす偶然。偶然が産み出す、罪と、贖いに。そして何よりも愛に。父、妻、子、そして友への。

 心を揺すられるミステリ。数年に一度の傑作である。
ノースライト (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ノースライト (新潮文庫)より
4101316732
No.23:
(4pt)

極上の時間

なんて、読みやすい文体。情景描写も美しく、量産作家ではなく、本物の小説家の作品を読んだ、極上の時間でした。タウトの椅子の話は、結局どうでも良かったのかな・・・という気がしますが、建築家生い立ちと家族。元同級生、今、上司の話など、ヒューマンドラマでした。
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4101316732
No.22:
(5pt)

横山ミステリーの新境地

あの『64(ロクヨン)』以来六年ぶりとなる、横山秀夫待望の新作長編ミステリーである。
 主人公の青瀬はバツイチで、十三歳の娘とときどき会うのを楽しみにしている。そんな彼が信濃追分に建てた家が建築専門雑誌に載った。「あなた自身が住みたい家を建ててください」依頼人のその一言が青瀬の創作欲に火をつけ、青瀬自身にとっても渾身の一作となった。
 ところが肝心の依頼人家族が、せっかく建てたその家に引っ越しておらず、雲隠れしていることが分かった。どこへ消えたのか? 何があったのか? 新築の家にポツンと残っていた椅子を手がかりに、青瀬は真相を突き止めるべく動き始める。そして……。
「横山秀夫といえば警察小説」と思っているファンにとっては、少々肩透かしに感じられるかも知れない。本作の主人公は何と建築士である。もっとも横山自身が自分を「警察小説作家と思っていません」とインタビューで語っている。しかしそれを差し引いても、本作は、従来とは作風が少し変わっているような気がする。組織と個人のせめぎ合いがない。犯罪らしい犯罪も起こらない。主人公に軋轢がかかって東奔西走するというよりも、ある謎の解決に向かって主人公が自ら道を切り開いてゆく。建築に関する専門用語が頻出するが、その迫力に背中を押され、読むのがつらくなるようなことは全くない。
 エンターテインメントの観点でいえば『64(ロクヨン)』には及ばないかも知れない。しかしこの作品には『64(ロクヨン)』にはない何かがある。というより、これまでの横山作品にはなかった何かがあるような気がする。ミステリーに殺人は必ずしも必要ではないと常々思っているが、それを証明するような横山ミステリーの新境地と言えるのではないか。読み始めたら止まらないストーリーテリングの妙と、絶妙な比喩を交えながらの緻密な心理描写は相変わらずで、一文一文が丁寧に書かれており、密度が濃く、読み流すことのできない重さを持っている。「円熟」という形容がふさわしい、だれにでも安心してお薦めできる一冊である。
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