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ある男
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ある男の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.97pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全191件 161~180 9/10ページ
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人間存在(あるいはアイデンティティ)、家族、愛について、いかに不安定ものかということが、様々な登場人物やそれを取り巻く人間関係を通じて複線的に描かれ、時として交わることで、重厚な物語となっています。 冒頭から引き込まれ、あっという間に読了しました。 スッキリとした読後感はありません。 私自身は、自分の家族やパートナーとの過去の記憶が頭をよぎり、冷汗が背筋を流れ落ちる感覚を覚えました。 設定はやや特殊ですが、問われているのは普遍的でもあり個々に異なる「自分」、「家族」、「愛」の存在です。 答えは簡単に見つかるものではありませんし付き合うには重すぎる問いですが、この問いと大事な人に真摯に向き合い続けるしかない、そう感じました。 | ||||
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さすがにレベルが高い 愛に過去は必要なのだろうか、という普遍的な問いと 現代の諸問題を包括する作品 構成に無駄がない 大半の日本人は在日の弁護士には共感できないだろうが、 代わりに悠人という登場人物がその機能を担っていた とても文章がキレイで読みやすいのだけれど、三人称の限界なのか、小説風のレポートみたいで、正直心に染み込んではこず、再読もないので星4つ | ||||
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平野さんの本は何を読んでも密度が濃く納得させられます。 今回もやはり素晴らしかった。 | ||||
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途中でなんかまわりくどいなーと思ったところもありましたがが、後半は一気に読みました。明るい話ではないけど、最後は暖かい気持ちで読み終えました。 | ||||
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平野啓一郎による純文学とエンターテイメントの融合。 ミステリーの仕掛けを盛り込むことで、物語の速度が速くなり、次へ次へと進まされてしまう。彼の文体は純文学畑の、耽美で衒いのあるものだが、その文体とストーリーテーリングの力が見事にマッチした良作。 あと、他のレビューに在日三世である必要はないとありますが、帰化した在日であることは有効にこの小説で機能しているし、必要な要素であると思う。 ヘイトスピーチの問題もストーリーの中で決して浮いていない。要素が詰め込まれ過ぎだという主張も分かるが、あくまでストーリーの中で必然性とともに描かれている。 | ||||
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俳句”蛻(ぬけがら)にいかに響くか蝉の声”とは。 ミステリー、不安なきもち、淡いきもち、変えたいきもち、今置かれているきもち、愛、自問自答、主義、思想。 そして、流れるような文学を感じる旋律。 事象を間接的に捉えていき、本質に迫っていく遠近感。 新たな人生に飛び出すのもいいのかも。 それとも、仕切り直して歩んでいく人生もいいのかも。 ある時、自分自身を振り返ってみる。 「本当にこれで満足なのか」自問自答し、見つめ直し、その答えを見つけていく。 その答えが自分の歩むべき人生。 | ||||
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ストーリーは複雑で登場人物の人間関係をよく押さえておかないと途中で分からなくなる。従って、本書を二度読む必要があると思う。 ブローカーに金を払って別人に成りすます意味はどこにあるのであろうか?自分の過去の人生をデリートしたいと思う「ある男」。しかし、成りすましの人生は必ずしも幸福な人生とは限らない。宮崎県で文房具屋を経営する出戻り女店主が再婚した「ある男」は、死刑を科された殺人者である父親の息子であり、ボクサーとして頭角を表し、新人王を取るも自分の過去が暴かれるのを怖れ、失踪し、旅館の跡取り息子の次男を装い、文房具屋の女店主と結婚し、子供を二人儲け、幸福に暮らし、林業に従事するが、伐採中の事故で死亡する。この「ある男」の過去を調べる弁護士城戸は在日朝鮮人であった。この過去を否定せず、過去と向き合う城戸の人生と暴かれていく「ある男」(過去を消した男)の半生が対比的に述べられる。著者はどちらが幸福なのか、結論は出さない。あくまでも読者に結論を委ねる。 特異な人生と平凡な人生(妻や子供の愛情に支えられる人生)。想像もつかない人生が本書に書かれている。何が幸福なのか、著者は読者に問いかける。問題提起の本だ。 | ||||
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まずは、子供が覚えたての言葉を使いたがるのと同じ感じで一言。 平野作品は初めてだったが、全編通じて衒気が鼻についた。 ちなみに街で無作為に大人100人にインタヴューし、「衒気」の読み方と意味は?と問うたら いったい何人が正確に答えられるのだろう。 少なくとも当方は「衒気」を用いた人と会ったことが無いし、多分これからも無いと思う。 普通にひらがなで書けよ! 何が三島の再来だ! 万人向けの分りやすさを馬鹿にするな! ちっとは池上彰を見習え! などと毒づきながら読んでいたのだが、読み進めるうちに著者の「芸風」を受け入れ始め、 いつしか読めない漢字が出てくるとニヤつく当方が居た。 これでも本作は平野作品の中で読み易い類とのこと。 やれやれ… と言いつつ次はマチネの終わりにをポチっとしそう。 どうやら、この衒気が鼻につく作家の術中にハマったようだ。 社会問題から市井の人の何気ない日常まで、まさに内容てんこ盛り。 いちいち挙げたらきりがないので、少々考え込んでしまった部分をひとつだけ。 主人公が妻の浮気を偶然知ることになるのだが、まるでポストに入っているチラシをポイっと捨てるようにあっさりスルーする。 そこに拘って関係を崩壊させるのか、妻が自分を大事にする「一面」が真実ならそこはスルーなのか。 最初に読んだ時は「何でスルー!?」と思ったが、白黒つけるのが解とは言い切れないわけで。 ちなみに夫婦間でこの話題、話せないよなぁ… | ||||
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自分自身の中にある変身願望をそのまま映したような本でした。正直、読み進むうちにドキッとしました。 変身は是か非か。あるいはその為の方法は。など、登場人物の重なり合いの中から多くの気づきを与えてくれます。 平野啓一郎さんの淀みない文章も印象的です。 | ||||
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在日という、日本では難しいテーマと正面から取り組み、尚且つ推理小説的な面白さを兼ね備えた傑作だと思う。詠み進むうち、高村薫がかつて「レディジョーカー」で描いた世界を、幾度も想起させられた。主人公を始め登場人物達は。いずれも「普通」の日本人社会から疎外された存在である。城戸がこの物語を織りなす人々に共感を覚え、弁護士としての職務範囲を超えて行ったからこそ、この小説は成立したのであろう。 | ||||
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平野さんの本を読んだのは初めてです。「日蝕」でその存在は知っていましたが、どうしても「難しい・・」印象が拭えませんでした。ただ、万城目学さんのエッセイを読む中で、再び平野さんのことを思い出し、そのタイミングで新作「ある男」が書店に並び、読み始めたしだいです。ぱらぱらとページを捲ると、その文章の「読みやすさ」になにか安心して、じっくりと時間をかけて読み込んでみました。もともと読書家でもない私ですが、その表現力には驚きました。例えば、自分と同じ「景色や人物、表情や動作」などを見ても、こんなにも豊かに、奥行きのある言葉で言い表すことができることに、ただ感心して想像を膨らませて楽しみました。特に心に残ったのは、城戸が語る「このままでいいのか?」から「これでよかったのか?」へと考えが揺らぐ中年期の迷いや、花ちゃんが背の高いコスモスと背比べしながら、記念写真をおねだりする場面で、その様子を「その時風が吹いて、コスモスの花がのぞき込むように、右に左に身を揺らせていた。」という表現は、目に浮かぶようで癒やされました。また、物語の登場人物を通して「平野さんの思想や観念」を知ることができて貴重な読書体験となりました。主人公などに、感情移入することはありませんでしたが、全体を俯瞰するような感覚で読めます。そこが物足りないと感じることもあるかもしれません。そして主題の「過去、現在、未来」について。過去は上書きされて現在、未来へと続く。今が幸せなら、辛い過去もその試練だったと思える筈、今が辛い状況だとすれば過去は単純に間違いだった、といえるのか?これは上書きできるのか?人生、仕事、家庭での「最期」にどのような境遇でいられるか。幸せだったか、不幸だったか、意味があったのか、無かったのか。それを判断するのは「自分」ではなく、関わってきた周りの人々なのかもしれない。周りの人々のその人に対する「感情や印象」は様々。それらを組み合わせた結果、「その人」「ある男」になるのかな?なんて考えさせられた作品でした。「マチネの終わりに」は家族が今読んでいるのでその後読むとして、平野さんの2冊目として「空白を満たしなさい」を読んでみることにします。難しい文章でなさそうなので。。 最後に、難解な漢字がたくさん出てきますので電子辞書のバッテリー残量には注意してくださいね… | ||||
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ーおもしろかったです! 探偵もののような、サスペンスのようなドキドキ感。 続きが気になって気になって、久しぶりに没頭した小説です。 平野さんの本は、「マチネの終わりに」に続く2冊目。 マチネは少し難しく・切なく、噛み砕きながら読んでしまいましたが 今回は圧倒的に前のめりに、どっぷりつかってすぐに読み終えました。 マチネのような恋愛小説かと思いましたがちがいます。 人間の存在、個人とは、過去とは、現在とは、人をその人と たらしめているものは何か?ということに深く、深く迫っています。 マチネとはちがった「愛」、そして「存在への問い」を見せられました。 ー分人主義の考えが伝わる 著者が提唱している分人主義はネットの記事などで少し知っていました。 人にはいろいろな顔があるのではなく、いろいろな顔をもつ分人が個人を構成している、 というものですよね。その考えがベースになっている話だと解釈しました。 個人は一面ではないというメッセージが、よく伝わります。 著者の「私と何か」も読んでみたいと思いました。 マチネのような恋愛小説を期待している方にはあまりお勧めしませんが 別の切り口で「人を想うこと」について考えさせられた1冊でした。 | ||||
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本作の最も重要なテーマは「人間のアイデンティティとは何か?」。名前、家族、出自、記憶、記録、そして時の流れ。「私」を「私」として成り立たせているものは何なのか?「私」は「私」のままなのか?「私」は「私」であり続けなくてはならないのか?本作のシチュエーション自体は特殊なのかもしれないが、それが問うていることは人生における本質的なテーマであり、誰もが立ち止まって考えるに値する問いであろう。 本作を読んでいて、文脈は全く異なるもののオーウェルの「1984年」の中に出てくる「過去とは記憶と記録が一致しているもの」という指摘を思い出した。改めて含蓄の深い言葉であると感じた。 「恋愛」も本作における重要なテーマではあるが、「マチネの終わりに」ほどの位置づけではないので、「マチネの終わりに」で作者を知った人には少々物足りないかもしれない。 しかし、それ以上に思わせぶりな余韻があちこちに仕掛けられていて、想像力、妄想力を掻き立てられる。おそらく続編が書かれることはないだろうが、この余韻だけで何杯かのお酒を飲めそうである。 | ||||
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壁にぶつかって痕がついて 水に浸かって潤って 火に近づいて焦げついて 穴を通って痩せ細り 風に飛ばされ乱れきり 宙に浮いて無重力 芯はなく 身体の力を抜ききって 反応して 順応はしない ボコボコになればいい そのうちうっすらと膜ができて 僅かに触れられるぐらいに 「自分」が現れて すぐ脱ぐ 剥がすを繰り返す | ||||
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書き出しから心を掴まれる。最初はミステリーを読んでる感覚である男"X"の謎が少しずつ明らかになって繋がっていく感じに引き込まれる。話が進んで色々な背景がわかってくうちにXの事を好きになってる自分がいて、そうなるほど感傷的になった。 読んだ後は何とも言えない悲しさと優しい愛を感じた。 愛に過去は必要なのか?難しい。 | ||||
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作品中での「法律」の描き方があまりに的確で驚いた。驚きつつ調べると筆者は京大法学部卒。的確なのも当たり前か。ただ、これほど的確に「法律」を扱う作品にはなかなか出会えない。その「的確さ」を味わうだけでも読む価値あり。 | ||||
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『ある男』の登場人物は異色だが凡庸だ。『マチネの終わりに』の二人の主人公蒔野聡史と小峰洋子は凡人ではなかった。聡史は音楽に異才を発揮できたという意味でだけではなく、資本主義の凡俗な価値観に囚われていなかった。洋子にしても、アメリカ資本主義の低俗にがんじがらめな夫との価値観の相違は明らかで、分かれた理由もそこにあった。 しかし、『ある男』の主人公城戸章良も他の登場人物もある意味凡人だ。城戸は弁護士という特殊な職務のついているし、日本国籍とはいえ在日朝鮮人三世だという特殊性は持っているものの、通俗的な感性の持ち主で特別な存在とは言えない。ただ、知性のレベルで、例えば妻と比較したときに凡庸に社会悪から目を背ける程には俗人ではない程度だ。城戸は極右排外主義の風潮に対する不安を感じていた。東日本大震災以来の妻との関係の歪みもそこに由来していた。妻の香織には〈いつまでも赤の他人のために何かしようと努力し続ける夫が、よくわからないのだった。〉震災後の動揺が夫婦で異なった。ところが調査中に知り合った美凉には共感され、美凉は反ヘイトのデモストレーションに参加する。城戸の躊躇を軽々と超えてしまったのだ。美凉の「三勝四敗主義」も魅力的なスタンスだ。 過去を変えていった男の過去を追いかける城戸の疑問が、この小説の主題なるだろう。「愛にとって過去とは何だろうか?」ということだ。 「自分とは何か、ではなく何だったのか」「どういう人間として死ねのか」読者は城戸とともに考える。城戸はとにかく、カテゴリーに人間を回収する発想が嫌いで、在日という出自さえも面倒で仕方がない。人間は本来多面的だ存在だ。〈アイデンティティを一つの何かに括りつけられて、そこを他人に握りしめられるってのは、堪らない〉との思想は、作者の「分人主義」を想起させる。 『ある男』は特別な存在でない主人公たちに作者の思想を仮託したが、それは私たち庶民が巻き込まれる政治や社会的風潮を丹念に調べて背景に描くことによって可能だったのだと思う。やはり平野啓一郎には目が離せない。 | ||||
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「マチネの終わり」から2年。平野啓一郎は前作の「過去は変えられる」のフレーズに象徴された、人間にとっての愛と時間の関係をこの作品においても追求し、これまでの考えを進化させている。過去を消して別の人格として生きる男と彼を追う人物を並行して描き、人間の存在意味、および愛について迫る。難しい主題を扱いながらミステリーのスタイルを採用したことで読みやすい。つまり、純文学のテーマを扱いながらエンタメ小説の体裁という前作の手法は今回も成功している。明晰な日本語はいっそう磨かれて美しい。 ある地方都市で実家の文具店を手伝うバツイチの女性・里枝は林業会社に勤める職人・谷口大祐と再婚した。優しく働き者の夫との間に女の子が生まれて、幸せに暮らしていたが、夫はある日突然の事故で死んでしまった。葬儀の後で、亡くなった夫は谷口本人ではなく、まったく別の人物だったことがわかった。では、死んだ男は何者だったのか。以前に女性の離婚手続きを扱った弁護士・城戸章良が里枝の依頼を受けてその男の素性を明らかにしようと動く。 出自から明るい未来を奪われている人がいる。過去に深く傷を負った人もいる。そうした過去を捨て別の人間として新たに生きる人がいる。谷口大祐を名乗った「ある男」がそうであった。「ある男」の素性を調べるにつれて弁護士は自身のアイデンディティが揺らぐのを感じる。彼は、高校時代に帰化したことで在日朝鮮人3世としての過去を消して生きている。結婚して10年余りになる妻との間には亀裂が広がりつつある。外にはヘイトスピーチに象徴される排外主義がこの国で広がりを見せていた。弱者の弁護に献身しながらも、彼は漠然とした不安を抑えられないでいる。 一方、里枝は、愛した夫の過去が別人のものだったと知って、夫への愛を自問する。夫は、本当はどのような人物だったのだろうか。過去の事実を知っても夫を愛せただろうか。過去を知っていたらどこまで愛せたのだろうか。そもそも愛に過去は必要なのだろうか。それでも、夫と一緒に暮らした3年半は幸福だった。この記憶があれば生きていけると里枝は思う。 厳しい現実を前にして必死で生きる人たちが描かれている。過去に傷つきながら、一歩ずつ前へ進もうとする人たちだ。しかし、過去がどうであれ、人を愛することが何物にもまして力になる。なにより痛みを抱えた人には愛が必要なのだ。弱者へ心を寄せる著者の筆致に胸を突かれた。政治的な意見の表明を躊躇しない著者らしく、この作品にはヘイトスピーチをはじめ、この日本社会の在り方についてのアクチュアルな問題意識が流れている。「ある男」はまさに現代の日本文学を代表する一冊と私は高く評価したい。 | ||||
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ストーリーに引き込まれました。 自分とは、何かを考えさせられました。 | ||||
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繰り返し目を通す小説になると思いました。 そのときどきで、誰に自分が共感していくのか 変化を楽しみながら読んでいきたいです。 | ||||
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